読んでから時間が開いてしまったので3〜4巻まとめて。救出されたトウヤとミノリやセララたちのような低レベルプレイヤーを集めて初心者合宿が行われることに。吟遊詩人の五十鈴、妖術師のルンデルハウスを加えてパーティを結成するが、初めてのダンジョン攻略はなかなか上手く行かない。同じ頃、シロエやアカツキ達円卓会議はマイハマで大地族との交渉を行っていたが、そこにゴブリンの大群が現れたという情報が入り……というお話。
最初はまるで咬み合ってなかった初心者パーティが、連携を合わせて「パーティ」らしくなっていく様子が楽しい。3巻は全体的に説明が多くてもっさりした読み応えの巻だったけど、リ=ガンにより明かされたこの世界のあらましは、色々今後明かされていくであろう謎への想像を掻き立てられてわくわくする。
また、リアルでは引っ込み思案だった五十鈴の少女らしい悩みや葛藤がとても可愛かった。まるで王子様のような外見のルディの外見に女の子らしく内心ときめきつつ、でも実際の行動は割りと残念な彼に世話を焼きつつ、最終的に扱いは大型わんこになってしまうというあの独特の空気感が凄く好き。ルンデルハウスの正体については、アニメで初見だった時にはわからなかったけど改めて読みなおすとミノリと五十鈴は予め正体を予感していたんだなあ。フレンド登録のやりとり前後からの二人のルンデルハウスへの態度を読み返すと、明らかに気を使っている部分が見て取れてどきっとする。
あとクラスティとレイネシア姫の関係がとても好き!!「お姫様」としての自分を演出しながらも本音ではだらけたいなまけたいレイネシアと、彼女の本心を見抜いて興味を持ち、利害の一致もあるけど完全にお姫様の反応楽しむために絡みに行ってる感じのクラスティのやりとりがたまりません。彼女が勇気を振り絞って立ち上がってくれたからこそ円卓会議が迅速に動けたというのはあるんだけども、なんだかんだで言い様に使われちゃってる感じのレイネシア様可愛すぎる。
それにしても、4巻はアニメ以上にミノリの有能っぷりが印象的だったように思う。彼女の「師匠」であるシロエのやってる全力管制戦闘が割りと頭おかしい(褒め言葉)んだけどそのシロエの司令塔としての役割をかなり見劣りするとはいえ模倣できてしまうのは改めて物凄い才能だよね…。
それにしても、4巻最後の描き下ろしイラストに悩殺されましたこれはひきょう!!
「うらら」一覧
甘城ブリリアントパーク5
高校生なのに遊園地の支配人代行・可児江西也は悩んでいた。アトラクションの改装で集客が伸びてきたまではよかったが、もう一押し目玉となる企画が欲しい。何かないかと考えていると、ファンサービスのつもりで作った中城椎菜が歌ったCDがコアファンにバカ売れしているとの情報が入ったのだった。…これしかない!アイドルをプロデュースするのだ!そうして、甘ブリ初のアイドル(?)ユニット、『タスクフォースABC』が誕生することに!しかし、アイドル業界はライバルが多く、それを生業とする猛者が集う魑魅網魎の世界。果たして、甘ブリを救うべく西也の奇策は成功するのか―!?(「BOOK」データベースより)
ティラミー総攻でおねがいします(迫真)
「『鋼鉄のミッチ』その後」が!すごくよかった!!特に挿絵のワイシャツ1枚前はだけで縄拘束+首輪と鎖な西也はぜひともアニメで見たかったですというか特別編が擬人化回だってわたし信じてるから…!!あとコボリー先生の新刊は何日目の何ホールで買えますか。
3巻から引き続きパーク内外で起きるエピソードを収録した中編・短編詰め合わせなシリーズ第5巻。そろそろ本編の進展はまだか
バイト3人組の最後のひとり、AVさんこと安達映子さんの家庭の事情にこちらも家庭の事情でおおわらわなマカロンが巻き込まれる『安達映子も大人じゃない』、これまで妄想でしかなかったマスコットトリオ擬人化を現実のものとするミラクルアイテム「鋼鉄のミッチ」がまじ素晴らしいありがとうございますありがとうございますもとい、トリオの中でも唯一の結婚経験者(バツイチ)であるマカロンの父親ぶりに思わずにやりとさせられるお話でした。人間・妖精の姿と次々に入れ替わるドタバタぶりもさることながら、後半だんだん素が出てきちゃうハラハラ感がめまぐるしい。しかし、マカロン人間版の容姿、このいかにも芸術系出の面倒くさい男っぽい感じの外見凄いこれはあるわ……って思った。
しかしいろいろな意味で凄かったのがモッフルのアトラクションリニューアルをめぐるあれこれを描いた『リアリティ・バイツ』。コア層向けにリニューアルしたせいで人気は高くなったけどそのせいで待ち時間がえらいことになってしまったモッフルのアトラクションをめぐり、西也からの要請でアトラクションの再リニューアルの決断を迫られる話。万人が絶対に納得出来るようなアイデアなんてあるわけなく、どちらかを切り捨てなければいけないモッフルの苦悩が胸に痛かった。途中のエピソードを踏まえて、それでも辛い決断を下すモッフルと、不完全燃焼感が燻るラストがとても良かった。1巻のラストもそうだったように、あくまでご都合主義の奇跡を許さない展開がとても良かったです。
それにしても、バイト3人組・マスコットトリオの物語もひと通り終わったしそろそろ次は本編が動くかな?アニメも文句なしに面白かったし今後の展開が楽しみです。
個人的には栗栖隆也の再登場待ってる、超まってる。
甘城ブリリアントパーク4
東京西部の遊園地「甘城ブリリアントパーク」で、高校生にもかかわらず支配人代行をしている可児江西也は悩んでいた。以前よりも集客は伸びてきたが、目標としている人数には全く足りない。ダメダメ遊園地を建て直すには、ゲストが喜ぶアトラクションの改装が今すぐ必要なのだっ!『お菓子ハウス』はメルヘンテイストからアクションに!『フラワー・アドベンチャー』はお花畑から血まみれに、…って、血まみれ!?なんでホラーになってるの!!待てよ、流血沙汰といえば、まさか面接の時に大量出血していた、あの女が原因か―!?遊園地を救うだけじゃなく、こんな難題あんまりだぁぁぁ!! (「BOOK」データベースより)
3巻から引き続きパーク内外で起きるエピソードを収録した中編・短編詰め合わせなシリーズ第4巻。
バイト3人組のひとり・伴藤美衣乃にかけられた呪い解呪のためにティラミーとパークの面々がひとはだ脱ぐ『伴藤美衣乃の特殊な事情』の、解呪の儀式が課程からオチから実にヒドい(褒めてる)身内ネタ楽屋裏ネタまでぶちこんだクイズ大会に次々と明かされるマスコットトリオ+西也のガッカリ話に腹筋を抉られます便所飯の破壊力ときたら!!!京アニがアニメで西也が便所飯してるところを描いてくれなかったのが本当に残念です!!(漫画版にはあった)
そんな中で、パークのリニューアル案に対する西也の反応に対するいすずの反応(ややこしい)やら、ラティファの呪いに関する話など、今後への伏線なのかな?と思われるエッセンスがそれとなくつめ込まれていて、今後の展開に想像してはそわっとしてしまう。リニューアルに対する西也の反応は、次巻のモッフルの話への伏線とも思えてその辺踏まえて読み直すと楽しい。あと、西也が美衣乃に微妙な反応してたのは呪いのせいもあるんだろうけど一種の同族嫌悪だったんじゃないかなあと。溜め込んでしまうところとか結構似通ってるよね……。
個人的に一番好きなのは西也のプライベートや家庭の事情が透けて見える『ファミリー・アフェア』。子役を辞めた事が原因で家族(特に母親との)仲が冷え込んだらしい事はこれまでも何度か描写されてきましたが、父親側の事情が明かされたのはこれがはじめて。
未だ西也の中に大きな傷を残し、人格形成に大きな影響を与えたであろう両親との確執。二人と別居してもなお『比較的優先順位の高かった悩み事』であったはずの話を「どうでもいい」と鼻で笑えるようになったのはきっと彼の中でとても大きな変化であるはずで、パークと離れたことでその変化を感じ取れるというのが面白かったです。あとそれとなく描かれたオフでの様子にとてもニヤニヤする。
アニメでまさかのトリを飾った『プロモーションビデオを撮ろう!』は文字で読んでも映像で見ても腹筋崩壊必須のヒドさ。なんどでもいいますが西也も脱ぐべきだったとおもいます。アニメでもいってたじゃない!ひとはだもふたはだも脱いでやるって!!!物理的にも脱ごうよ!!!
それにしても、改めて読むと随所随所に挟まれるいすずのデレっぷりたまらないですね……すごいこう、じわじわと着実にフラグを積み上げてる感じたまりません。
電子書籍で読める、少し昔の単巻完結タイトル10選
※2022/04/18 「Kindleで買える、おすすめ&気になる単巻完結タイトル10選」から改題
個人的に大好きなのでおすすめしたい単巻完結ラノベ(一部ラノベじゃない)をまとめました。Kindleで買えるラノベが少なかった時代に「Kindleで買える単巻タイトルを〜」というお題で書いた記事だったのですが、現在は殆どのタイトルが電子書籍化していることを踏まえて改題&未読やこの記事の後に続巻が出てシリーズ化したタイトルを省いて、この記事を最初に書いた2014年よりも前に読んでたおすすめの単巻タイトルを(「ボンクラーズ、ドントクライ」以下3タイトルを)追加しています。
今、結構昔のタイトルもちゃんと電子書籍になってて良い時代になりましたね……って綺麗にまとめようとしたんですがおすすめしたいタイトル何割か普通に電子書籍になってなかったのでやっぱり良い時代になるまでにはもう少しかかりそうです!「氷雪王の結婚」と「迷走×プラネット」の電子書籍化を頼むよマジで!!!
「好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年上期」投票します。
企画元:好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年上期
また最終日にギリギリ投票ですが、参加させていただきます。既存タイトル4、新規タイトル3で計7作品です。
既存シリーズ
新規シリーズ
艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 2
枯渇する資源…枠開放しても足りない入渠ドッグ…ハズレルートで大惨事…旗艦だけ残して終わるボス戦…
秋イベント第四海域「アイアンボトムサウンド」 あのトラウマが蘇る!!
四方海域を鎮めた鎮守府の元に「飛行場姫」と呼ばれる深海棲艦が発見されたという知らせが舞い込む。金剛姉妹を中心とした夜襲作戦が発動し瑞鶴達も支援艦隊として作戦に参加するが想定外の事態が続出し作戦は失敗。鎮守府に帰還した瑞鶴は提督からとある命令を受け、存在を秘匿されていたひとりの艦娘と対面する。
秋イベント「鉄底海峡を越えて!」をベースにしたストーリー。主にE4(+E5)の攻略がメインなんだけど、無謀な出撃による疲労の蓄積とか少しずつ底をついていく資源とか、戦艦でも重巡でも続々大破したり羅針盤にツンツンされてボスにたどり着けないもどかしさとかもう色々とあの時のトラウマを思い出してしまってやばい。まさに“鉄底海峡”と呼ぶにふさわしい激戦で、体力的にも肉体的にも疲弊していく彼女たちの姿にもだもだする。秋のE4は最終的に、試行回数が3桁届いてましたよねー…。
普段は明るく振舞っている艦娘達だけど、誰もがかつての「戦争」の傷痕に誰もが傷つき、苦しみながら戦っている。不幸な最期を迎えた艦娘達はもちろん、戦争の後まで生き抜き「幸運」の名を得た彼女達だって傷つかないわけが無い。でも、その傷を受け止めて新たに立ち上がり、迷いながらも戦っていく姿がアツかったです。
特に史実の比叡がどうなったかはよく知らなかったので、彼女の最期には衝撃でした。かつての己の無力を悔やみながらも明るく笑う比叡がすごく愛しく、そんな彼女の脆さを心配する金剛・榛名と比叡と同じ想いを抱きながらも長姉とともにある霧島がとてもかわいい。
そして、坊ノ岬沖海戦で多くの犠牲をだし、鎮守府の中で誰よりもかつての戦いで傷つき、いまだ人間を信じられずにいる大和の頑なな心を溶かしたのは同じ立場に居る「艦娘」達の熱い想いと、そしてかつて運命を共にした「仲間」への誇りと、戦うために生まれてきた「戦艦」としての心。比叡とのガチの殴り合い展開が熱すぎるんですが、その後の金剛とのライバルとかいてともと呼ぶ雰囲気には思わずニヤニヤしてしまいました。
夜戦メインのマップであるだけに今回は主役の瑞鶴はじめ空母組の活躍は少なめでしたが、出番は少なくてもしっかり存在感を見せてくれていたというか、ちょっと出のキャラクターたちもそれぞれ魅力的なのが楽しかったです。あと相変わらずこのノベライズの提督さんは、現場と上層部の軋轢を一人で背負い込んで無理しながら艦娘にはそれを悟らせないようにしようとするあの偽悪者っぷり、本当にたまりませんやっぱりど受けだと思う。
個人的には滅多にこの手の創作にでてこない長波(当鎮守府のファースト嫁艦)が活躍してくれたのがうれしかったです!!長波可愛いよ長波!!
(仮)花嫁のやんごとなき事情 〜離婚の誓いは教会で!?〜
正体がクロウにばれてた!!大混乱に陥るフェルだけど、せめて自分の口から真実を伝えたい、その上で自分にできることがあるなら少しでも役に立ちたいと決意。ところが、時期を同じくして何故かクロウに避けられ続けて……気まずいままエルラント中央教会へ向かったが、クロウから飛び出したのは「神誓を解除したい」というとんでもない一言だった。
少しずつ物語の黒幕が見えてきて、いよいよ物語も佳境に入ってきたなという展開。今回の黒幕の人はしょっぱなから胡散臭さ漂わせてたよなあと思いつつ、カイズ猊下の不器用ぶりに大変ときめきました。いろいろな意味で、彼は再登場してほしいキャラだなあ。同時に、前々から少しずつ姿を表しつつあった彼の不気味な動きが恐ろしい。
色々ふっきったフェルのオトコマエぶりが安定すぎるのに対し、クロウのめんどくせー男っぷりがヤバい。割りとフェルを嫌いになって邪険にしてるわけではないというのは一目瞭然というくらいなんだけど、傷つけるのを恐れるあまりわざと嫌わせてそばから手放そうとする男の人は面倒臭いとおもいます!!そしてすっかり二人の保護者というか姑ポジションになってしまった感じのあるガウェイン先生がクロウとフェルの恋愛的な意味でも、バトル的な意味でもとてもかっこよかった。
しかし、途中までの面倒くさい男ぶりが光りすぎだったぶん、クロウのクライマックスの言葉には思わずニヤリとしてしまいました。最後の最後でフェルに真意伝わりきってない感じするのがまた不憫感あって素敵です!!個人的にはやっぱりクロウには不憫もいいけど、ふてぶてしい、ちょっとこわい旦那様であってほしい。これから物語はもっと過酷になっていきそうな雰囲気ですが、今後の展開も楽しみにしてます。
——では改めて。これからよろしく、共犯者どの?
ログ・ホライズン2 キャメロットの騎士たち
セララを救出し、アキバの街に帰還したシロエ達。だが、彼らが街を離れている間にアキバの街はますますおもしろくないものになっていた。同時に、大災害が起こった時に一緒に居た双子が初心者狙いの悪徳ギルド『ハーメルン』に囚われていると知ったシロエはとある企みを企てるのだが……円卓会議結成まで。
事態の解決には関係なさそうな料理の発見から様々な手を積み重ね、遂には無法地帯と化していたアキバに「円卓会議」という統治システムを築き上げてしまうまでの流れがめちゃくちゃ面白かった!しかも同時並行で双子を勾留しているギルドを統治システムの効力を他のギルドにわからせるための「見せしめ」役にとして壊滅させてしまうという一挙両得ぶり。ほんと、軽食屋「クレセントムーン」あたりからの流れが鮮やかすぎて心が躍る。
やはり、アニメ版とくらべて各キャラクターの心の動きがたくさん描かれているのが美味しいなあ。特に、アニメだと円卓会議の面々を相手に冷静にふてぶてしく動いているように見えていたシロエが案外周囲のメンツに緊張してるとか、とてもニヤニヤする。特にこの部分はアニメ版で第三者視点からのシロエがどういうふうに映っているか知っているから余計ニヤニヤしてしまった部分かもしれない。逆に、アニメを後から見たら内心どれだけ動揺してるかとか想像できて楽しかったんだろうなあ。円卓会議結成のあたりは挿絵でも文章でも盛り上げてくるので、テンション上がりっぱなしだった。
ギルドという存在に根強い抵抗感を覚えていた彼が新たな仲間と歩き出す為に、待っていてくれた仲間たちと共に新たなギルド<記録の地平線>を作ることを決意するまでの心の動きが本当に美味しいんですけど、にゃんた班長をギルドに誘うシロエが可愛すぎてちょっとどうしたらいいかわからない。この、なんですか、このシロエは、いけない!!!萌えすぎていけない!!!アニメでこのセリフカットされたのがあまりにも惜しい!!!
円卓会議の場面ではあれだけツンツンしておきながら、「戦闘訓練」と称してお掃除をして帰っていくアイザックさんはツンデレだと判断できます。
仁義なき新婚生活
表紙にホイホイされた。後悔はしていない。
極道一家の長男・佳月は姉が郷島組の若頭と望まぬ婚約を強いられている事に腹を立て、郷島組に殴りこむことに。若頭と押し問答を繰り返すうち、何故か勢いあまって姉の代わりに自分が嫁ぐという話になってしまって!?結婚式はウェディングドレス姿、日常でも常にフリフリの服を着て女として過ごす事になり、夜はもちろん……×××!?というお話。
嫁とは名ばかりの人質のような役割と思っていたら服装的な意味でも性的な意味でも「嫁」として扱われて、家族の反応もなんか歓迎ムードだぞ!?旦那になった男はどっちもイケるとかいって普通に押し倒してくるぞ!?と、このあたりで割りと主人公は泣いていいと思うわけですが、こうなったらこうなったで仕方がない!とちゃんと嫁しながら逆転のチャンスを狙う主人公が大変男前可愛い!
同じ極道の家の息子でも普通の少年として育てられ、極道として生きるには甘すぎる考えの持ち主である佳月と、あらゆる面で「組の跡取り」として育てられ、家庭の温かみを知らずに育った健吾。正反対の二人がお互いの持たざる部分に惹かれ、身体から始まった関係が少しずつ心も寄り添っていく様子が凄く良かった。劇的な変化やエピソードがあるわけでないんだけど、少しずつお互いに打ち解けあっていっていることがわかるようなエピソードが入ってくるのが美味しかった。
特に、食生活が少しずつお互いの好みに感化されていくのとか、たまりません。最初は冷凍食品と外食ばかりで佳月の手作りの料理にも難色しか示さなかった健吾が、冷凍食品を出そうとした佳月に「朝御飯は味噌汁がいい」「冷凍食品なんて捨てちまえ」ってごねるシーンとか、佳月が最初苦手だったフレーバーティーをすっかりお気に入りにしてたりするシーンとか。そういうちょっとしたエピソードに、気づくたびにニヤニヤしてしまう。
極道モノは殆ど読んだことなくて、性的な意味でも展開的な意味でももっとハードなものを想像していたけど、予想してたよりずっと可愛らしく、微笑ましいお話でした。番外編でやってきたブラコン弟に新婚生活のラブラブっぷりがバレる話とかほんともう、ごちそうさまでした!!という感じ。しかしそれだけでなく、受の佳月がどんなにフリフリの可愛い服を着ていても中身は任侠心溢れた義理堅い男の子という部分がしっかり描かれていて、とても好みのお話でした。
個人的に佳月のプロポーズのセリフが個人的ツボヒットでした。色んな意味で、このお話のすべてが凝縮されきったセリフだなあと。男前受最高!!
「俺も男だ、責任は取る。……一生傍にいて味噌汁作ってやるから、きっちり食えよ」
わけありの方、歓迎します。 斎藤さん家の五ツ星アパート
「わけありの方も大歓迎」をうたう斎藤ハイツに集まるちょっとワケありの人々。そんな彼らが斎藤ハイツや斎藤家の人々とともに繰り広げるちょっとしたお話を描く、連作短編集。
2編目の「笑う門には空き巣が来る」が凄く良い悪友ですよってステマされて手にとったんですが、本当に良い悪友だった!!アホの子・隆之介とインテリ眼鏡・雪夫の凸凹空き巣コンビがひょんなことから『漫才師』と正体を偽って斎藤ハイツに住まうことになり、彼らの正体に疑念の目を向ける大家さんの娘さっちゃんを納得させるため彼女を笑わせようとするというお話なんだけど、純粋に自分よりも頭の良い雪夫に憧れる隆之介と頭は悪いがどこまでもまっすぐな隆之介に憧れる雪夫の関係性がとても好き。『刎頚の友』の勘違いには笑った。
他の物語も、どれもちょっと微笑ましくなったり最後でちょっとホロリとさせてくるようなお話でとてもおもしろかったのですが、凄かったのは
そのすべての物語を受けて始まるエピローグ的な位置づけにある短編「渡る世間に魔女はなし」でした。どこか繋がりそうで繋がっていなかったこれまでの物語を、一人の人間を主人公とした物語として綺麗にひとまとめにしてしまう流れが、これまでの色々なモヤモヤを一気に払拭していくようで。ちゃんとした物語として独立しているのに、さりげなくこれまでの物語の後日談まで盛り込んでるの本当にズルいと思いました。
すべての物語に関わっていたその人の独白に、その人生の重みを感じてどこか切なく、でもほっこりしてしまう。ちょっと幸せな気持ちになれる読了感のある物語でした。面白かった!