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吸血鬼のひめごと The Secret of Vampires

[著]鈴木 鈴 [絵]片瀬 優

親しい仲間達との別れから2年後、半吸血鬼である事を隠しながら日本の高校に通い始めたレレナ。自らの正体を両親以外の誰にも打ち明ける事ができずに思い悩む毎日の中、彼女は“あの人”の面影を持つクラスメイトと、吸血鬼の“主人”だと名乗る少年に遭遇する。そして人の欲望を叶える代わりにその願望を喰らうという魔物を共に追う羽目になり、再び「非日常」に巻き込まれていく…
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ある時気がついたというか目覚めた。

「愛の反対は?」と聞かれたなら、私は「憎悪」ではなく「無関心」と答える人間。ということは憎悪もまた一つの愛の形なのではないかと思った次第でありまして…

(「いつも感想中」さん)

リンク先で論じられた通り、「憎悪」が一つの愛の形とするならば、私が決して少なくない(一般人の平均から比べて)、今まで読んだライトノベルの中でたった2回だけ、読んだ事に憎悪を抱いたシリーズが何を隠そう今作の前身となる「吸血鬼のおしごと」であります。(ちなみにもう1つは神坂一の「闇の運命を背負う者」だこんちくしょー!「スレイヤーズ」本編最終回も微妙だったけど、あれほど最終巻イラネと思った作品も他に無いと思う。)

シリーズ序盤のまったりした吸血鬼ラブコメからはうってかわった欝全開のダークでグロな展開は最終的にサブヒロインの無駄死に、ライバルキャラクターの精神崩壊を経て主人公の暴走による自滅に至り、挙句取り残されたメインヒロインを放置プレイしたまま終了、というあまりにも報われない展開になってしまい、当時こういう展開に耐性の薄かった私は初めて読み終わった文庫を泣きながら壁に投げつけたのでした。

そんなこんなで絶対に出ないと思っていた続編が登場という事で、著者のその後のシリーズも「おしごと」でのショックから立ち直れず、1巻で挫折してしまった私は買うかどうか散々に悩みました。ものすごく悩みました。それでも結局手に取ったのは結局今月購入予定の新刊が比較的に少なかったからというだけの理由に過ぎないわけですが、本を実際手にとって、読み始めて思ったのでした。ああ、私はこのシリーズが本当に好きだったんだなあ…、と。

さて、続編となる「ひめごと」は前作を読んでいない人でもギリギリ楽しめるくらいの内容になっています。「お・り・が・み」と「マスラヲ」よりもリンク度合いは低い(だって主要キャラほとんど残ってないもんな…)ので前シリーズを知らない人でも結構楽しめるのではないでしょうか。当然前作を読んでいた方が楽しめるのは事実だと思いますが。そして、最初はほのぼの気味だった「おしごと」と違って今回は初っ端から結構ダーク気味。なんかもう「おしごと」であれだけの事をやられた後なので、もう欝展開もグロもダークもどんと来いだ!!という気分ですね。ある意味安心して読めます。

前シリーズを読んだ時点で正直「足手まとい」「グロシーンと虐げられ担当」「舞に出番喰われすぎなメインヒロイン」という印象しかなかったレレナ(失礼)が、この2年間でものすごく成長していて、前シリーズの役立たずっぷりを知っている読者としては新鮮でした。でも、そんなレレナが成長した原因を考えると…って感じで切なくなったりはするのですが…。特に半吸血鬼としての能力を生かして戦闘までそれなりに出来るようになっている事には驚きました。そういえば前シリーズで秘められた戦闘能力が……みたいな伏線があって、回収されずに終わったけどその辺がクローズアップされたりするのかもしれません。

新キャラもポジション的には前作で喪われたキャラクターたちを思い起こさせる要素を持ちながらもちゃんと別のキャラクターとして独立していて、すごく良い感じ。ただの人間だけどいつのまにやら巻き込まれてしまった青磁がなかなか熱血少年として良い味出してます。というかそれ以上にその従者(?)のたまが良いですね。何気に青磁の家にも色々ヒミツがありそうで、今後の展開が楽しみ。

そんなこんなで、久しぶりに読むと非常に面白かったです。個人的には今後レレナが新しい仲間を得て、過去の傷から立ち直っていくような展開を期待します。今作になってからレレナの「いい子」っぷりが実に良い感じになってて、ただの虐められキャラのまま終わるのは本当にもったいなく感じてしまうので。





まあそんな明るい展望を期待しつつ、全滅エンドの可能性も忘れないようにして読みますけどねっ!?


ツァラトゥストラへの階段

[著]土橋 真二郎 [絵]白身魚

学校でふと意識を失い、目を覚ました福原を待ち受けていたのは暗い部屋の中で自分と同じように手錠と鎖で繋がれた男女。そして部屋の真ん中から吊り下げられている一人の人間。彼らに与えられたのはトランクの中に入った大金と1丁の拳銃…。部屋に残った人間のうち1人が最後に首を吊られてしまうという“ゲーム”に巻き込まれた11人はそれぞれの思惑の元、脱出の為動き出すが…
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「扉の外」で色々と物議をかもし出した土橋さんの新作。「扉の外」のような人間を使った悪趣味な頭脳ゲームに、ライトノベルらしい異能バトル要素を加えたような内容で、前作を楽しめた人は結構楽しめるんではないかという内容になってます。まあ個人的には異能バトル要素いらなくね?とかむしろ「扉の外」の続編希望とか人知れず思ったわけですがその辺はきっと作者さんにも諮りきれない大人の事情があるのでしょう。他の作品でも同じような印象を受けた事があるんだけど…尖がったマニア向け作家を無理に一般受けさせようとして作者の持ち味そのものが薄味になってしまったような印象というか、そういうのが拭えない新シリーズです。(…ちっともほめてない気がすすのは気のせい)

とはいえ相変わらず人間の暗部をさらけ出すような、悪趣味(こっちはほめ言葉)なゲームシステムは健在。さりげなく「扉の外」と共通したキーワードが登場する事からひょっとして尻切れトンボで終わった「扉の外」との世界観共有があるのかな??と期待してみたりしてます。

適当にキャラ設定変えればそのまんま「扉の外4」と言っても行けちゃいそうな「Split Game」に対して、後半の「Interest Game」はかなりサバゲーから頭脳ゲーに近いというか、異能要素も相俟って今までとは多少毛色の違うゲーム展開になってました。というかゲームでの敗北がそのまま「死」に繋がらないこの「囚人ゲーム」に於いて、「プリズナー落ち」という「死」と同等あるいはそれ以上の重い「ペナルティ」の存在を印象付けて今後の展開に緊迫感を与える為の話という印象?というか、「SplitGame」の方が作者さんの本領発揮という感じを受けたりしました。

あと今回は主人公固定で行くみたいだし、もうちょっとキャラクターにも重点を置いてほしいなあ…。主人公が「囚人ゲーム」に参加する事になった動機がちょっぴり無理やりすぎるような気がするし、性格上、様々な女の子の間でグラグラしてきやがるので感情移入しづらい。ヒロイン格も無難な方面に行ってしまって「あの」正樹愛美・蒼井青子を超えるには到底魅力が足りない感じ。まあ前作は正樹愛美のキャラが何気に突き抜けてたっていうのはあるんでしょうが…。

そのほかゲームの難易度が上がってて私の弱い頭では理解するのに時間がかかったりと気になる部分もありましたが、ゲームシステムは相変わらず凄く面白いし、続きが楽しみな1作です。



【追記】そういえば、後書きの話だけどある意味2巻の後書きが気になる展開に!!


面白検索キーワード&今月のオススメ[2007年10月分]

さてさて毎度微妙に趣旨が変わったり変わったりして微妙に迷走気味の「今月のまとめ」コーナーですが、
検索ワードが毎回同じような本ばかりになって面白くない」という理由から、
大幅に前半の方向性を変えてみました。

人気検索キーワードで取り上げた本のまとめっていうのが何気に難しく…。
だって何故か途中までしか読んでもいないのに人気検索ワードの2位が某香辛料とか!
検索キーワードTOP5の5位以外、全部今月読んだ本じゃないとか!
どうしろと!ある意味オモシロいけどさ!

というわけで

2007年10月のオススメ本。


されど月に光は届かず(⇒感想

鉄球姫エミリー(⇒感想

お狐サマの言うとおりッ!(⇒感想

「魍魎の都」がツボ過ぎでした!おかげで暫く脳内歴史モノ祭でしたよ!
鉄球姫エミリーはエミリーのお下品ぶりとそれとは裏腹なグロ展開に燃え。

2007年10月の人気(?)感想三選。


キノの旅XI(⇒感想

ドアーズ1(⇒感想

アビスゲート(1)(⇒感想

早い話が「アクセス数の高かった順」というやつで。
随時当サイトの検索ワードの4割を占めるキノたんと神坂新シリーズ作品が仲良くランクイン。
アビスゲートはとにかく、DOORSはマジオススメです。さすが大御所(違)


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彩雲国物語 隣の百合は白

[著]雪乃 紗衣 [絵]由羅 カイリ

年末に士気が下がる左右羽軍の面々を盛り上げるため、武術大会が催されることになった。優勝者は宮廷一の色男・櫂瑜様の恋愛指南が受けられると聞いて左右羽軍以外の部署の官吏達や御馴染みの面々までが飛び入り参加して…!?
他、邵可が黒狼を継ぐきっかけとなった話、そして百合姫から見た通称「悪夢の国試」の顛末のお話の計3本+αを収録。
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遂に黎深様の時代がやって参りました。

後半2篇がまさに黎深様スペシャル。ここんところ、全体的に出番も無く影が薄くなりがちな黎深様の登場を心待ちにしていた貴方は絶対買いの1冊となってますw

「恋愛指南争奪戦!」はあらすじやタイトルからも想像出来る通りの、典型的なコメディ話。必死に優勝を狙う武官達を容赦なく追い落としていく御馴染みの面々の容赦ない姿も素敵過ぎますが、オチもいい具合にいかしてます。しかし、終始笑いの止まらない作品だっただけに、ラストではしんみりしてしまいましたね。

次の「お伽噺のはじまりは」は、紅家三兄弟の兄弟想いな姿が伝わってくる良い話。弟たちの為に自らの手を血に染める事を決意した邵可の姿にも胸を打たれるのですが、それ以上にラストの黎深・玖狼のやりとりが素敵すぎでした。黎深かこいいよ黎深。

そして書下ろしとなる「地獄の沙汰も君次第」。天上天下唯我独尊まっただなかの黎深が、邵可の傍に居たいが為に国試を受けようとして…という話。邵可や秀麗にはあんなにストレートな愛情表現をする黎深様が百合姫や「悪夢の国試組」に対してみせる素晴らしいツンデレっぷりに、最後までニヤニヤが止まらない話でした。紅家の経済力をフル活用した挙句、最終的には「あの」前王まで巻き込んで……というくだりではもう爆笑しっぱなし。黎深様かこいいよ黎深様。

そして更に何げに良い味出しすぎなのが、コウくんこと幼少時代の絳攸。黎深を無邪気に慕うその姿は様々な意味で同情を禁じえませんでしたが、その後も黎深と百合の仲を誤解(でもあながち間違いではない)してみたり、百合と噛み合わない会話をしてみたり……と可愛さ炸裂でした。

今まで出た「彩雲国物語」の短編シリーズの中では文句なしに一番面白かったんじゃないでしょうか。特に紅家及び吏部ファンの人は必読の一冊です。


れいしん様かっこいいよれいしん様。


Dクラッカーズ・ショート 2 過日 ?roots?

[著]あざの 耕平 [絵]村崎 久都

「情報屋」の水原が組んだ相手は、ブルーのウィンドブレーカーを身に纏い、凶暴な悪魔を操って「ウィザード」と恐れられ始めた少年・物部景だった。派手で、一見無茶そうに見える景の行動に不安を抱く水原だったが、彼らの活躍を聞いたセルネットは、予想もしない大物を差し向けてきて…!?
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「Dクラッカーズ」シリーズの短編集第二段。コンビを組み始めた頃の水原と景の騒動の話や景と甲斐氷太の初対決、セルネットの執行細胞トリオ誕生秘話などなど物語のはじまりを描いた短編のほか、幼い頃の梓達を描いた短編やいつもは強気な千絵が覗かせる弱音の話、各キャラクターの過去話を中心にとにかく美味しい短編が目白押しとなっています。

とりあえず、子供時代の梓と景が可愛すぎる。現在以上に押しの強い梓が、今以上にヘタレな景をつれまわす姿は見ていてほほえましいのなんの。「夜道」でのやりとりも良かったんだけど、様々なキャラクターがさりげな?く登場する「夏祭り」は本当に最初から最後までニヤケ笑いが止まらなかったです。ラストはちゃんとラブラブな展開で落としてくれるのも嬉しいポイントですね?。

シリアス方面の短編では、甲斐氷太との初バトル「狂犬」も面白かったのですが、景と水原の出会いを描いた「相棒」がドツボ。ヘタレながらも必死に景の役に立とうとする水原の姿が非常に印象的でした。そして二人の前に立ちふさがる敵がまた、いかにも憎めない“悪役”という感じのキャラクターで良いんですよね。本編には登場しないのがちょっぴり残念だと思うほど魅力的なキャラクターだったと思います。

ラスト近くの「Dクラッカーズ・ショート・ショート」は、5巻「追憶」ラストで景が“王国”へ向かった後に、残された面々が決意も新たに「実践捜査研究会」を再結成するという内容で、次巻への期待がいやがおうにも高まります。次回は遂に執行細胞・女王との直接対決…ということで、ますます来月発売の最新刊が楽しみになってきました…!


天元突破グレンラガン 2

[著]砂山 蔵澄 [絵]品川 宏樹 [原作]GAINAX

螺旋王配下の四天王の一人・チミルフをなんとか倒し、ダイガンザンを手に入れた「大グレン団」。しかし、その戦いで祓われた犠牲はあまりにも大きかった。特にシモンとヨーコの落胆は激しく、自暴自棄になったシモンは大グレン団の中で孤立してしまう。そんな中、戦闘中にラガンのコントロールが効かなくなったシモンは奇妙なコンテナばかりが広がる谷に不時着して…
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アニメの「第二部」にあたる部分を描いたノベライズ第二段。1巻の突き抜けるような熱さが控えめになってしまっていますが、その分前回とは別の方向で面白くなってきました。

精神的主柱でもあったカミナを失い、途方にくれるシモンとヨーコが謎の少女・ニアの真っ直ぐな信頼をきっかけに立ち直っていくという過程がすごくツボでした。特に立ち直ったシモンの売り口上がまたかっこいいのなんの。前半ずっと鬱々した展開が続くので、後半の成長したシモンの姿が余計頼もしく感じました。

ただ、個人的にニアのキャラクターはいまいちピンとこなかったかも。なんか微妙に信頼の仕方がおしつけがましいというか、信頼の寄せ方が少々無責任すぎるように感じてしまい…なんでもシモン一人に任せておけばいいってもんじゃないだろという気がしてしまって。信じることが何より難しいあの状況の中、結局彼女の無条件の信頼がシモンを立ち直らせたのは確かなのでしょうが、ちょっとあの信頼の置き方は怖いなあという気がしてしまうのでした。彼女に魅力を感じられるかどうかで、物語への移入度がぜんぜん変わってしまうような予感がするのでちょっと残念。アニメを見ればまた違ってくるのかなあ…。

むしろ大グレン団へと襲い掛かる螺旋王配下の四天王達が非常に魅力的に描かれてます。この辺の心象描写は小説版オリジナルらしいとのですが…特にチミルフを失ったアディーネのくだりとか、目の敵にしていたカミナの死を知ったときのヴィラルのなんともいえない複雑な心情なんかはすごく上手く表現されていて、魅力的でした。とにかく敵それぞれのドラマがすごく素敵だったので、この辺目当てに買うのは十分アリかと思います。

でもやはり他所の感想なんかを見てると、ある意味当たり前かもしれませんがアニメの副読本として読むのが正しい楽しみ方って感じはしますね?…一部アニメで脳内補完していかないと物足りない部分を感じました。もちろん、アニメを知らなくても普通に楽しめることは楽しめるんですけども。


RIGHT×LIGHT 空っぽの手品師と半透明な飛行少女

[著]ツカサ [絵]近衛 乙嗣

船の事故で両親と妹を亡くした啓介は、妹の手を掴めなかった「右手」で掴んだ物を消してしまうという呪いにも似た力を得る。事件以来孤独を恐れ、周囲に怯えながら生きてきた彼はある日、自らを魔術師と名乗る半透明な少女・アリッサに出会い、何故か彼女にとり憑かれる羽目に!?
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過去の事件がトラウマになってしまって、周囲の顔色をうかがいながら生きてきた主人公が前向きで正義感の強いアリッサと出会って変わっていくというとても素敵なボーイミーツガールものでした。最初は謎の“仮面”達に襲われているアリッサを見ても助けようとすらしないくらい臆病で酷薄だった啓介が、気持ちがいいくらい真っ直ぐなアリッサの物言いに共感して過去の自分を取り戻して、さらには過去の事件のトラウマから解き放たれていく…という過程は凄く直球な青春物語という感じでとっても素敵。

色々とトラウマとかグログロした展開もあり、魔術師達の話だけあってエグい展開も多少はありますが、表紙イラストから印象的な「空」のイメージが良く似合う、とても爽やかなお話でした。エピローグも綺麗にまとまってて…特に主人公が自らが作っていた「壁」を自覚する所なんかは凄く良かったです。

個人的にはいささか主人公の後半の行動がかなり唐突過ぎるのと、後半になるにつれて露骨に奈須きのこ臭がプンプンしてくるのはどうかなーと思ったりしますが、まあ面白かったので無問題です。よく判らない所でやたらと強調文字を使うのがちょっと厨臭いとか、後半の行動原理がもうどうしようもなくどっかの衛宮士郎だろとか、多分ツッコミしちゃいけない部分。強調表現は、地の文で十分に表現できていたと思うんで余計な事しない方が普通に良かった気がするんだけど。

ただ、「魔法」と「魔術」の定義の違いのあたりは、ちょっと説明不足気味なものを感じたかも。前述の奈須きのこ作品をはじめとして既存の作品でもそういう設定の作品がちょくちょくあるようなので説明不要と思われてるっぽい印象を受けましたが、そういう知識がまったく無い人には判り辛かったんじゃないでしょうか。

そんなこんなで全体的にバトルシーンがちょっとイマイチな印象を受けたのですが、ボーイミーツガールものとして読むと非常にツボな作品でした。イラストも雰囲気に合ってて、文句なし。続編が出るか、新作が出るときには是非ともバトル分薄めにした少年少女の成長物語を読んでみたいなあ。


アビスゲート 1 果て見えぬ淵の畔に

[著]神坂 一 [絵]芳住 和之

クラウスと叔父のルグナードは傭兵として仲間達と山賊退治に向かう。ところが、山賊達は目の前で邪悪な“海”・アビスゲートに飲み込まれ、依頼料が出なかった事に腹を立てた傭兵仲間の一人が依頼主を刺殺してしまう。二人はアリサという少女と共に、依頼主を殺した男を追う羽目になるのだが…
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正直スルーする気マンマンだったのですが「DOORS」が面白すぎたので思わず買ってしまいました、神坂一の新シリーズ。「スレイヤーズ」「ロスト・ユニバース」のような不思議な力が満ち溢れた異世界を舞台にしたファンタジーものです。

しかし、どうしても上記2作品を中学・高校生時代にリアルで追いかけていた人間としては主人公が「盗賊虐めが趣味の貧乳天才美少女魔術師」だの「祖母コンでマントマニアな刃物マニア」くらいキャラがトんでないと物足りない気分になってしまうのです。あと妹が触手とか。

今回の主人公・クラウスは確かに多少ヘンな所はあるけど(魔力を使うと●●になる…という設定には噴いたw)凄く正統派なキャラクターでした。以前家族をアビスゲートの災害で失ったらしい描写があって、その為アビスゲート災害には過剰に反応してしまうっていうくらいで、それ以外はいたって普通。……彼のキャラは「スレイヤーズすぺしゃる」で毎回依頼を持ちかけてくる依頼人達よりも余程薄い気がする。

でも「キャラクターが濃くない」以外は流石ベテランというか、安定した面白さでした。轟音と共に、突然海が現れて世界の一部を飲み込んでしまう災害“アビスゲート”や、その仲から現れる異形の怪物たちという設定は面白かったし、バトルも結構熱いし、主人公クラウスと謎の少女アリサもなんかの伏線がありそうで……と、普通にファンタジーを読みたいならかなり楽しめる作品だと思います。とにかく“アビスゲート”という災害の設定が面白くて、異形の怪物達のおぞましさにゾクゾクしながら先を読み進んでいきました。

ただ、ひたすら濃ゆいキャラクターたちの破天荒な行動に振り回されるような展開を楽しみにしていたので、ちょっと個人的に「読みたい」と思っていた神坂作品とはズレていたかもというのが印象だったり。


魍魎の都 姫様、出番ですよ

[著]本宮 ことは [絵]堤 利一郎

歌人・清原元輔の末娘である諾子は父と共に、時の権力者である藤原兼家の家で催される「宵庚申」の宴に招待される。気が乗らないながら宴に参加した諾子だが、彼女の事を田舎者と馬鹿にした相手の女性が突然亡くなってしまう。犯人として濡れ衣を着せられそうになった諾子は自ら事件解決のため捜査に乗り出すが!?
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久しぶりにコテコテの平安モノなラブコメが読みたくなってうずうずしていたら「bookslines.net」さんの物凄く楽しそうな感想が目に入って衝動的に購入。「十二国記」は友人に借りたし、中学時代はティーンズハートしか読まなかったのでホワイトハート(X文庫)は初体験だったりします。

うわぁ?やばいヤバイたのしい面白い!!魅力的なキャラクター達といい、時代背景といい、ピッタリすぎるほどにツボポイント直撃でした。元々、十二単とか狩衣とか藤原氏とか陰陽師とか安部晴明とか源頼光&頼光四天王あたりはもう、名前が出ただけでも無条件でときめくポイントなので、とにかく時代背景だけでもニヤニヤが止まらなかったりするのですが!!

そして、ヒロインである諾子の破天荒でお転婆な行動がめちゃくちゃ可愛い。勉学が大好きで学の高い自分に自信と誇りは持っているけど、自分が美人ではない事や男と違って大学に行けないこと、鄙つ女(田舎者)であることに物凄いコンプレックスを持っていて、その為ますます虚勢を張ってしまう姿がとにかくなんだか可愛く思えてしまうんですよね。そして彼女とまるで正反対で文官一族に生まれたのに武術が好きという粗忽者・橘則光との初々しいコンビの姿がひたすら微笑ましい。ツンデレ全開のお姫様の姿に始終萌え萌えさせてもらいました。

この他、気障で典型的な権力者の息子という趣きの道長様や、とにかく個性豊かすぎる頼光四天王など、個性豊かなキャラクターがとにかく素敵。ミステリー仕立ての本編も凄く面白いし、諾子の正体があの才女ということは?…って考え始めると続きにどういう展開が待っているのか楽しみでなりません。個人的にはもう一人の才女さんとの対決も描いてほしいなあ。とにかく、続編が楽しみすぎる1冊でした。

余談ですが「頼光四天王」というと、今まで読んだ作品の影響で物凄く「悪役」イメージだったので彼らが一応味方な設定(今後裏切らないとは限らないけど)というだけでかなり新鮮で胸がときめいたりします。いや、頼光四天王の存在を知ったのが夢来鳥ねむの「緋翔伝」だったりするので、物凄く悪役なイメージなんだ…(「緋翔伝」はかなり神漫画なので、絶版でさえなければ全力で布教したい作品の1つなんですが…)。

番外編では橘則光と四天王がメインと聞いたので、切実に読まなければと思いました。四天王いいよ四天王。


鉄球姫エミリー

[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史

王女ながら自ら大甲冑を纏い、「鉄球姫」という二つ名で呼ばれる少女・エミリーは跡目争いを回避するため辺境の古城で静かに(?!)暮らしていた。しかし病弱な弟王に代わり彼女を王位に据えようとする動きは後を絶たず、遂には親王派筆頭である貴族が彼女に暗殺者を送り込んで…
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勝気で傲慢で自己中で超下品(強調)な王女・エミリーがお付の護衛騎士や装甲侍女達とお下品な会話をしながら辺境の地でそれなりに平和に暮らしているという話…だと思っていたら、序盤のお下品でコメディな展開から一転、真っ逆さまに殺伐で血みどろで欝なお話になってしまいます。グロくてバイオレンスな展開が苦手な人は拒否反応を示しそうなのですが、その辺りさえ大丈夫なら非常に面白かったです!

序盤では王女のあまりに唯我独尊まっただなかな発言に正直閉口したりしましたが、その発言の中に王女なりの自尊心とか意地みたいなものが見え隠れし始める頃から一気に面白くなりました。意地を張って修道院入りを見送っているうちに取り返しの付かない事になってしまい、それを悔やんでいるのに、人前でそれを言えないエミリーが意地らしくてそして可愛く思えて、一気に惹きこまれます。特に城攻めに遭ったときにエミリーが呟いた本音(傍にいないマティアスに向かって「妾も修道院のこと、考えていなくもなかったのだぞ」的なセリフの部分)なんかは胸に堪えました。

そして彼女達を襲った"亡霊騎士"と呼ばれる暗殺者の側にもまた彼らなりの"事情"があって、快楽のために殺すとかではなく生きるために仕方なくやっている…というのがまた。彼らが"亡霊騎士"に身を堕とす切っ掛けにはまた切ないドラマがあって…というのが素敵でした。作中で行われる殺人は本当に容赦なく、登場人物の生存率は限りなく低いという展開が続くのですが、どんなに酷い展開でも敵側を憎むことが出来ませんでした。

圧倒的な力を持つ強敵である亡霊騎士達に、独りで立ち向かう王女の姿が凄く熱かったです。ただ、キャラクターたちの会話(特にエミリー)は非常に面白いんだけどバトル描写がイマイチ読み辛くて、イマイチ何が起こっているのかわかりづらかったのが残念だったような。描写が多すぎて文章が読み辛いというかテンポが悪いというか…ううむ。