“029” の検索結果 | ページ 17 | 今日もだらだら、読書日記。

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“文学少女”と慟哭の巡礼者

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

クリスマス以来なんだか良い雰囲気のななせと初詣にやってきた心葉。二人の距離感が着実に縮まっているのを感じながら次は映画に行こうと約束をするが約束の日の直前になり、ななせは階段から落ちて入院してしまう。彼女のお見舞いに行った心葉の前に現れたのは、あの朝倉美羽だった…!ななせと芥川は「美羽が嘘をついている」と言う。でも心葉は、その言葉を信じることが出来なくて…
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これまでの話で少しずつ過去の出来事から立ち直って来ていた心葉が、幼馴染でトラウマの元凶(笑)朝倉美羽と向き合うことになる物語。読者側から見ると明らかにいろいろと魂胆ミエミエの嫌な女・美羽と、そんな明らかに怪しい彼女の言動と、ななせや芥川の言動を秤にかけ、しかも美羽の言葉を「信じられない事が出来ない」心葉の姿に前半では散々イライラ(そしてハラハラ)させられましたが、今まで積み重ねてきたストーリーが思わぬ伏線になり、思わぬ形で物凄く綺麗に落ち着きました。もうなんていうか、「お見事!」としか言いようがありません。ほんとに最高傑作っ。

自分以外の心葉に近づく人を排除しようとする美羽の行動は凄くヤンデレ的なんだけど、同じくらいに、本性を露にした美羽にあそこまでされて、親友と心を許した女の子から警告を受けてもなお美羽を疑えない心葉も違う意味合いでかなりヤンでたとおもう。お互いに歪な形で依存しあっていたからこそ、その関係が崩壊したときのショックは大きかったし、その崩壊を必死で食い止めようとする美羽の姿が無性に哀しかった。そんな中、心葉を救おうとして、どんなに傷つけられても美羽に真っ向からたち向かうななせと、3人の間で板ばさみになって壊れそうな心葉を温かく支えてくれる遠子先輩という、二人の対照的な姿が印象的でした。流人くんや竹田さんの思わぬ活躍も良かったなあ。

そして今回のキモとなるのは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と、"井上ミウ"の投稿作「青空(ソラ)に似ている」。ひそかに読んでみたいと思っていた"井上ミウ"の処女作品は、心葉がなぜ美羽と同じ新人賞に小説を投稿したかの理由、そして削られてしまった初稿のラスト部分まで含めて物凄く綺麗な話でした。普通に泣けた…。

そして最後は遠子先輩の綺麗な笑顔と、遂にこの物語の最大の謎である「文学少女」の謎を示唆して幕引き。彼女が語る"なりたい人"の姿とあまりにも重なってしまう笑顔が印象的でした。っていうか、そ、そそそそんな言葉で終わられると次が気になってしょうがないじゃないっ!!

大好きなシリーズだけに次で完結というのは本当に寂しいですが、続きが本当に楽しみです。


天元突破グレンラガン 1

[著]砂山 蔵澄 [絵]品川 宏樹 [原作]GAINAX

遥かな未来、人間は穴を掘って地中深くに居住地を作り、隠れるように暮らしていた。そんな集落のうちの1つで「穴掘りシモン」と呼ばれる少年・シモンは穴掘りの途中で金色に輝くドリルと顔面だけの不思議なロボットを見つける。彼は地上に憧れる兄貴分・カミナと共に地上に旅立つのだが…
 

同名のテレビアニメ作品のノベライズ。公式で確認したら8話くらいまでの内容をノベライズしているようですね。アニメ自体は以前から気になっていたんですが基本的に朝アニメは絶対起きられないし録画すらも無理なので視聴を諦めておりました_| ̄|○

結局事前知識としてはとにかくドリルらしいということ、公式ブログが炎上したことくらいしか殆ど知らないと言う状況で読み始め。

予想以上に熱かったです。勇者シリーズとか、90年代の熱血系ロボットアニメとかに通じる熱さ。兄貴分のカミナがなんでもかんでも「気合だ!」とか「度胸だ!!!」とか言ってる姿はなんでも勇気でなんとかしようとするGGGの面々を思い出してみたり。

気弱でネクラな少年・シモンと、そんなシモンに激を入れる熱血青年・カミナのやりとりが凄く良かったです。とにかくセリフが熱くて。ラスト付近は王道ド真ん中のアニメだけになんとなく後の展開に予想がついてしまうのですが、カミナとヨーコの関係に苦悶し、肝心な所で力を発揮できないシモンにもどかしいものを感じつつもその苦しみに共感してしまったり。最近のアニメでは中々おめにかかれない熱さと、ド真ん中過ぎる王道展開にかなり惚れました。アニメ本編、レンタルで見ちゃおうかな?。

ただアニメ公式サイトに掲載されている粗筋と比較する限り、微妙にオリジナル展開もあるようだけど基本的には忠実に本編の内容をそっくり「ノベライズ」しただけのようなので、アニメ本編を既に見ている人にとっては無用の長物かもしれません。完全にアニメを知らない人向けに作られているんだけど、既にアニメ本編は終盤に差し掛かっているようで今更見るのもなんだかなあで、ちょっと発売時期を逃しちゃってるよなぁ。ガガガ文庫創刊時くらいのラインナップに居れば、いい具合にアニメにもっていけたかもしれないのに、なんか勿体無いですね。



…よもや、アニメはもう終盤だから今から入るんならDVD買えっていうガイナックスの策略か!!??


バカとテストと召喚獣3

[著]井上 堅ニ [絵]葉賀 ユイ

泊りがけの学力強化合宿を控え、修学旅行気分で浮かれるFクラスの面々。そんな中、明久は文化祭のときのとある写真をダシに脅迫を受ける。同時期に雄二も翔子から文化祭のときのある言葉をダシに結婚を迫られ…挙句女子風呂覗きの濡れ衣を着せられた二人は真犯人をあげるべく、女子風呂を目指す…—!?
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バカの中のバカ達が繰り広げる、ハイテンションなギャグコメ第三弾。3巻になると流石にテンションが落ちるのでは…と微妙に心配していましたが、相変わらず良いバカっぷりで安心しました。

今回は徐々に全学年の男子と女子、更には教師までをも巻き込んだ女子風呂覗き大作戦。無駄なまでに熱い情熱を傾ける男子生徒たちの姿が実に熱いのですが目的が目的なので熱ければ熱いほど何かが可笑しいという状態に。雄二の押しかけ女房こと翔子はますますエスカレートするし、最初は清楚なヒロイン然としていた瑞希はすっかり嫉妬の鬼と化すし、秀吉は学校公認の性別:秀吉状態で、以前よりパワーが上がっている印象すら受けます。

バカテストも相変わらず全面的にテンションおかしいけど、今回は第4問がツボでしたね。だって先生興味シンシンじゃねえか!!!本編ではやっぱり古今東西がツボすぎま。バカテスト番外編という感じで大爆笑。

一方で、ちょっとした誤解から美波VS瑞希の争いが遂に勃発しそうで、次回以降が凄く楽しみになってくる引きでした。といっても次回は水着で短編集だそうですが。秀吉の水着が個人的に一番気になる(笑)

まあそれはとにかく。
最近、明久に萌えてしょーがないのですが。

正直、「バカとテスト」最大の萌えキャラは秀吉じゃなくて明久。本人全くノンケでバカでモテない(と思っている)のに実は何気に美少年という設定(確か2巻辺りを参照)で、雄二との関係を誤解されたり、何かと女装シーンがあったり、メイド姿の写真で脅迫されたり、今回はムッツリーニに○○○○姿を激写されたり、明らかに△△ッ気のある××××に告白されたり(しかも本人は告白されたと気づいてなかったり)…女子生徒のオシが強いので、女子生徒相手にも普通に受に見えます。

ぶっちゃけ個人的には「おと×まほ」のかなたんや「ゼランディーヌ」のすめらぎを遥かに超える萌え女装少年キャラです。正直今回の○○○○姿の明久の挿絵が無かったのはマジで万死に値すると思う。

今、女装少年好き腐女子のみんなに全力でお薦めしたい一作。


Dクラッカーズ 4 乱?rondo?

[著]あざの 耕平 [絵]村崎 久都

執行細胞の決定でマーケットにカプセルが無料で配布されるようになって以来、何も知らない一般人までがドラッグに手を出すようになり、街は混乱の極みにあった。千絵と梓達はカプセルのルートを割り出す事で執行細胞—そしてその先にいる“無慈悲な女王”を追おうとするが、捜査は行き詰まり—…
 

千絵と梓、景と水原、そして甲斐氷太と茜という超豪華メンバーが手を組んで執行細胞を追うという話。今まで最大のライバルだった<ウィザード>物部景とドラッグドッグスの<狂犬>甲斐氷太が手を組むと言う展開は、もうそれだけでめちゃくちゃアツいですね!せっかく仲間になったのだから二人が背中を合わせて戦うというようなシーンを見たかったけど、それが無いのがまたらしいといえばそれらしい。グループで動いてもどこまでもフリーダムで、それなのにちゃんと美味しい所はまとめて持っていく甲斐氷太に惚れそうでした。そしてそんな甲斐を影から心配する茜ちゃんが可愛いなぁ?。

そして同時に今回美味しい所もってきまくりだったのが、家出中学生の久美子。自分だけ何も出来ない事と、退屈にかまけて好き勝手暴走して?…というあたりはある意味テンプレ通りの行動ではあるんだけど、なんだかとても危険な位置に居るというのに不思議と和んでしまう、不思議な魅力を持つキャラクターだと思います。彼女と景のでこぼこしたやり取りも凄く良かったです。

それにしても、主人公格である梓と景は……気がつくとある意味すっかりバカップル状態と言うか。皆に冷やかされて慌てる梓と、冷やかされるのが嫌でわざと距離を保ってる景が非常に微笑ましい。

後半は遂に発見した執行細胞達とのバトル…なのですが、イマイチバトルが盛り上がらなかったかなあ。特に理由はないんだけど。他の部分が凄くテンポ良く読めるのに対してちょっとだれてしまっていました。特にベリアルと甲斐の戦いがキツかった…。

ストーリー自体は1段落して次から新章突入という感じでしょうか。座談会でネタになっていた景の浮気というのが猛烈に気になります(笑)セルネットも本格的に動き出すようですし、ますますこれからが楽しみです。


ドージンワーク ノベル 彼の愛情、彼女の欲望。

[著]坂東 真紅郎 [挿絵/原作]ヒロユキ

一山当てようと同人界に飛び込んだのは良いが、画力がなくて全く売れない長菜なじみ。いつものように某同人誌ショップを物色していたところ、彼女のファンである星純一郎から話題の同人ゲーム「かわせみの呼び声」のオンリーが開催される事を聞く。売れセンのゲームでもあることだしと、仲間達と共にサークル参加をすることにしたのだが…
 

初っ端でいきなりソーラがコスプレイヤーという素晴らしいカウンターを食らい、それ以来内容よりも原作の相違点ばかり気になってしまってあんまり楽しめませんでした。ストーリー自体もなじみたちがオンリーイベント(おそらく「ひぐらし」)に参加する姿を描く…というか、その姿を通して作者の同人界に関する薀蓄を垂れ流すというような内容になっていて、現在同人界にリアルで身を置く人間としては知ってる事だらけで「ああ、あるあるw」的な笑いポイントが幾つかあった以外はちょっと微妙。あと、女性向に関する薀蓄はちょっと勘違いしてる印象も受けたのであんまり本気にしない方が良いです。(確かに人口は多いけど、皆カップリングでえり好みするから一部の壁大手以外はそんなに部数出ないと思うんだよね…ていうか今回かねるの書いた女性キャラの男体化なんて、常識的に考えて人選びすぎだろ…)

あと、アニメとあわせて発売したくて無理に出してしまったんだと思うんですが、小説版とコミック版4巻終了時点での辻褄が全く合わないのは酷いなあと思った。一応スタンスとしては「4巻終了前後のなじみたちの日常を描いた外伝」という感じなんだろうけど、そうすると決定的に辻褄が合わない部分が幾つか出てくるんですよね。特にかねるの同人誌の売上部数がほぼ同時期になるはずの原作と小説版で10倍近く違ってしまっているのがしょっぱいなあ。

ただ、この売上部数の違いについては、原作の方が明らかに大手同人誌作家のズレた感覚という感じで、小説版の方が親しみを覚えられたりします。ちょっと特訓したくらいでゲームジャンルで女性向やってるかねるが100部完売って…それ普通にめっちゃ売れ筋作家じゃね……?(;´д`)

それこそ二次創作同人誌として読むなら同人界の薀蓄本としてそれなりに面白かったと言えるのかもしれないのですが(つかラストのなじみたちの売上冊数は親近感沸きすぎだw)これを公式ノベライズとして「正史」扱いされるのは激しく萎えるなあと思いました。ていうかソーラがコスプレイヤーについての薀蓄を語り始めたときは本気でどうしようかと。

原作を知らなくてとりあえず気になるって人は素直に原作読みましょう。原作が好きでしょうがない人は同日発売のアンソロジーコミックを買ったほうが無難です。同人界の知識を軽く抑えておきたい人にはお薦めできる…かも…?


 

ちなみに、「アンソロジーコミック」の方も一緒に買ってみました。
こっちは普通に面白かったです。公式アンソロジーとしてはいい仕事してるなあという印象でした。ジャスティスvソーラネタが比較的多め?

阿部川キネコさんの漫画、かねるとちゃみぃが重なって見えるんですが…あと「辣韮の皮」の皮のアニメ化はある意味「ドージンワーク」より危険な事になりそうな予感がしますwww

個人的にはなじみの「全部同じアングル・バストアップのみの同人誌」の忠実再現に爆笑した。

それにしても面白いから良いけど、まっつー&椿あすコンビは自分達の漫画のテンプレが出来上がりすぎじゃないかと…買う前に予想した内容と全く同じだったのである意味噴いてしまいました。


少年伯爵は月夜に目覚める

[著]流 星香 [絵]おおきぼん太

若いながらも気丈で良い領主であったベルナルド伯爵。王子の誕生日会に出席した彼は猟銃の誤射で瀕死の重傷を負ってしまう。領民のためにも死ぬわけには行かない—と命を取り留めたベルナルドだったが、その身体は吸血鬼へと成果ててしまう。一方、王都に現れる怪物を退治する軍部の小隊長・レオニールは力を求めているうちに自らの血を持て余すようになり—!?
 

「801ちゃん」でJUNEとBLの違いネタがありましたがこれはまさしく“JUNE”ラノベ…。

妙に描写がキラキラしてます。賢い美少年とワイルドな軍人さんとか世界設定とかいろいろと、実にお耽美です。戦闘中に飛び散る血を“真っ赤な蝶”と表現しているのを始めとして過剰なお耽美表現が普段そういう小説を読まない私にとっては新鮮で、とても印象的な小説でした。しかし「真っ赤な蝶」はバトル描写になると1Pに何十回連呼してるんだよという状態で微妙に五月蝿い印象を受けましたが…。

人の生き血を求め、人に触れれば生気を吸い取ってしまう【求血鬼】になってしまった「強気なオレサマ少年(←と、キャラクター紹介に書いてある。オレサマ…?)」ベルナルドと、血を持てあまし、力を求める余りに理性を失い凶暴化してしまう【給血鬼】になってしまったレオニールが様々な苦難に出会い、血を求め与え合う主従関係を築くまでのお話となっています。エロい要素はありませんが逆にエロという要素を使わずどこまでエロく出来るか限界に挑戦してるのかと疑いたいほどアレな感じ。ぶっちゃけライトJUNEノベルというのが妥当な表現な気がします。帯も軽くBL小説のノリですね。

ワイルドで野生的なレオニール、伯爵に命を捧げる従順な執事・セルバンティス、どうみても妖しいアル中医者ハニーデューク等と伯爵様とのカップリング妄想の余地も大量に(笑)

領民のために死ねないと思ったのにもかかわらず、吸血鬼になってしまったことで爵位を奪われた伯爵について来た使用人3人+セルバンティスの5人のまるで家族のような暖かい関係が実に良いです。まるで父親と母親のようなオースティンとマーゴットも素敵なのですが、ドジッ娘だけど伯爵様を思う気持ちは人一倍なミリアムが凄く可愛い。だからこそ、ベルナンドが他人に触れられない身体になってしまった時のお互いの悲しみは察して余りあるものがありました。

ストーリーは明らかにシリーズ化を前提に作られており、表紙に釣られてなんとなしに買ったんだけど凄く面白かったので続編にも期待。しかし、後書きなんか凄いな…なんか現代世界でキャラクターの座談会とか作者が登場とか、凄い久しぶりに読んだ気がするよこういうノリ…

挿絵については表紙に釣られた割にモノクロ絵はあまり好みじゃなかった?とか色々思うところがありますが、とりあえず作中で何度も何度も“金髪”と描写されている主人公の髪の色が思いっきり白髪で描かれているのは流石に酷いと思います。

ていうか白髪にされると、どうみてもベルナルドが某ジャンプのエクソシスト漫画の主人公にしか見えないんですが。


おと×まほ2

[著]白瀬 修 [絵]ヤス

母親と金色の猫・モエルから半ば強引に“魔法少女”をすることになってしまった少年・白姫彼方。今日もノイズと戦い、学校ではクラスメイト達に弄られる日々を送っていたのだが、突然魔法少女仲間のグレイスが戦闘中に行き倒れてしまう。更に、新たな“魔法少女”や巨大な敵まで現れて—!?
 

女装魔法少年が大活躍する魔法少女モノ第二段。なんか普通に魔法少女モノとして面白かったです。魔法少女モノとして。

しかし、1巻でも同じ不満を書きましたが、主人公である彼方がちっとも男性である意義を見出せていないのが「女装」魔法「少年」モノとしては痛すぎる。確かに全く彼方が男である事を意識していなかったであろうと思われる1巻から比べると作者の人もかなり意識して、一生懸命他の「魔法少女」達との性差を出そうとしてるんだけど、まだまだ弱い。そういう違いを出そうとする描写はあるんだけど、そこで描写される“性の違い”が、こっちにはちっとも伝わってこない印象を受けました。頑張ってる姿勢は評価できるんだけど、正直題材が難易度高くて料理できてないって感じがする。

元々ヤスさんの絵が完璧に女の子のグラフィックなのもあり、余程男らしい行動を取らないと女にしか見えないんですよね。髪の毛くらいはショートカットでも良かったろうに。んで普段は普通に男言葉で、変身中は髪の毛が伸びるくらいの設定にしても良かったんじゃないの?

ただ、見事に彼方と他の少女達の性的な立場が逆転してしまっているのは面白いですね。色々理由をつけてうっかり下半身を触ろうとしてしまうグレイスとか、元々百合属性をお持ちの幾瀬依とか、何かと彼方にイタズラしようとするいいんちょとか。特に恐らくこのシリーズで唯一?の常識人であろうグレちゃんがだんだん周囲(主にモエル)に染められてしまっていく過程は面白かった。この辺りの性の逆転が、唯一このシリーズが「女装少年モノ」である特徴と言えるんでしょうね。(ただ、露骨なセクハラ描写等の関係で大多数の男性相手に門戸を狭めているのもここだといえるから、実際これどうなんでしょうね…)

というわけで、相変わらずこのシリーズ、彼方が男だという現実を直視しなければ普通の熱血美少女バトルモノとして楽しく読めます。特に終盤では上位のノイズである存在“ディスコード”が登場し、グレイス達魔法少女の戦う理由も提示され、更には黒幕の存在まで提示され…と、非常に盛り上がったバトルが楽しめました。黒幕だった“彼女”については、前半から怪しげな言動が目立ったのでよもや…とは思いましたが、予想通りで。新魔法少女(?)である幾瀬依の戦う理由も凄くかっこよかった。ただ、彼方が戦う理由がイマイチ見えてこなかったのがモニョっとしたかな。

グレイスとモエルのでこぼこコンビが今回は最高に良い味出してましたね。モエル、ただのヘンタイ猫と見せかけていい奴だ。

まあでも今回のモエルの一番の名場面は、絶対にこれだけどな!!!↓

「まだまだだねグレ子。
 ———女の子のように見えて本当は男の子。重要なのはそこさ


ああ、作者さん…そこまで萌えポイントを判っていらっしゃるのにどうして女装少年がちゃんと描写できないのさ!!!(悶絶)

何はともあれ、魔法少女モノとしては普通に面白くなってきたし、張られた伏線がイチイチ美味しすぎなので(黒幕らしき彼女とか、3巻では大活躍?っぽい彼女とか…)次回もしっかり買おうと思います。ただ、やはり1巻で挫折した人が多いこの現実を鑑みると、こんなに正統派な美少女燃えバトルをやってるのに、彼方が男の子だという理由で門戸を狭めてしまっているのが勿体無く思えてしょうがありません。


とらドラ5!

[著]竹宮 ゆゆこ [絵]ヤス

文化祭を控えたある日、いつものように夕飯の買い物をしていた竜児と大河の前に大河の父親が現れる。"大河とよりを戻したい"という父親の言葉を喜んだ竜児は、必死に渋る大河を説得して親子の関係を修復させようとする。大河も満更ではなさそうな様子だったのだが、それを聞いた実乃梨が意外な反応を示して!?
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うわ?今回ヤバイよ色々な意味で最高傑作??!!!!

今まで盛り下がり気味だった文化祭を盛り上げるため、生徒会が用意した最優秀クラスへの“ご褒美”につられて盛り上がる文化祭の裏で、大河と彼女の父親の話が進行します。なんだかんだいって父親の事で頭が一杯な大河を見た竜児が大河にヤキモチを焼いたり、そんな大河を巡り実乃梨と竜児が激突したり、竜児や大河の複雑な家族関係が垣間見えたり…と今までに無く重い展開が続きますが、そんな中でも各キャラクターの魅力がぎゅっと凝縮されていて、めちゃくちゃ惹き込まれました。

大河と竜児の関係ももちろんいつも通り良いのだけど、今回も4巻に引き続き亜美と実乃梨がめちゃくちゃ素敵です。特にラストの実乃梨の独白が、いかにも“恋”よりも女の子同士でワイワイやっていたい年頃の女の子の発言って感じでめちゃくちゃ可愛かった。「私、レズなのかな」には噴きましたがwあと、こういうときだけ喋り方がまともになるのも個人的にはツボだったり。

つかもう、4巻以降のみのりんの魅力は正直神がかってる!!

亜美はすっかり竜児に“気を使わなくて良い友達”ポジションを確立されてしまっているようで恋の戦線(笑)からは脱落気味?でも自動販売機でのやりとりでの亜美が凄くかっこよくて素敵でした。竜児も言うとおり、一人だけ一足先に大人になってしまった印象というか、離れた位置から皆を見ているようなお姉さんポジションが板についてきて凄く魅力的。逆に亜美ちゃん全開としか言いようが無いミスコンでの姿も忘れられないけどw

ミスコンの舞台で打ちのめされた大河が舞台上で強く立ち上がるシーンは凄くかっこよかったのですが、後の実乃梨の独白を聞く限り既に何度も受けた傷だからこそすぐに立ち上がれたというのが正解なんでしょうね。一番強そうに見えて、女性キャラの中で一番脆いのが大河なんだろうなあ。でもそんな彼女に少しでも早く近づきたいと障害を乗り越えて必死に疾走する竜児が凄く印象的でした。ラブコメなのに、めちゃくちゃ熱かった!!恋愛模様も大河に転ぶか実乃梨に転ぶか良い具合に混沌としてきて、先が読めません。ほんと続編が楽しみ。

しかし、ラストの北村の行動だけが少々唐突で微妙に不服。竜児と踊るものだとばっかり思っていたので実に不服ですよ。つか今回そんなフラグ立ってたっけ?竜児側に実乃梨フラグが立ったから強制的に大河イベントが変更されてしまったのか!?(違う)

スピンオフを見る限り、北村はすみれに…っぽかったし、本編でも今回はどちらかというと目立ってなかった印象なのですが。うーん、わからない。


繰り世界のエトランジェ 第1幕 糸仕掛けのプロット

[著]赤月 黎 [絵]甘福 あまね

生物から伸びる繰り糸を視、それを繰る事が出来るという異能を持つ高校生・睦月透真。失踪した母の代わりに“依頼”を引き受け、連続殺人事件の犯人を探していた彼は雨の公園でボロボロの制服を来た少女・カタナと出会う。更にその日家に帰ると、母の実家から使わされたというメイドの少女・冥まで現れて…?
 

スニーカー大賞奨励賞の作品を改題したものらしいです。「投稿作」って言われると納得なんですが、実に「詰め込みすぎ」な作品。

人を繰る“繰糸術”」からはじまって「自らを人形と名乗るメイド少女」「古の異能に改造された、全身狂気の少女」「戦闘中に性格が凶暴になる主人公」「蟲使い」だのときて、極め付けに「“何をされても声さえ上げない。当たり前だ。だって心が死んでいるんだから。”」というセリフに悩殺され…と、設定や世界観が片っ端からツボヒットでした。新人さんの作品は基本的にあまりチェックしないのですが、この作品だけはスニーカーの告知をみて以来めちゃくちゃ楽しみにしてたってくらいには。

しかし、ちょっとストーリーが消化不良。冥とカタナで別個のバックグラウンドがあるんだけど、カタナ側が中途半端に謎だけ提示されて、何も消化されていないのが微妙すぎる。つか、「月姫」始めてアルクェイドルートやってたら中盤から突然翡翠ルートの後半に突入してしまったような消化不良さ(わかる人だけわかってください…)。表紙からしても明らかにカタナがメインヒロイン扱いで、ストーリー前半もちゃんと彼女がメインヒロインしてるんだけど、途中からいつのまにかメインヒロインが冥になってしまうので、凄く違和感感じました。

改稿して出版する事が出来たんだったらカタナを完全なサブヒロインの位置付けにして、彼女の追っている敵とか彼女自身の正体には踏み込まない方がスッキリしたと思うのですが。なんか後書きを読むとカタナを推したい編集と冥を推したい作者の間で色々あったようなので、その辺の余波なんでしょうか…後半カタナ空気だし。設定とかがめちゃくちゃ好みだけに、凄くもったいない。

しかし、世界観やキャラクターはめちゃくちゃ好みだったので、次巻以降で落ち着いてくれるのを期待…?ご主人様とそれ以外で性格変わりすぎな冥ちゃんや、王道すぎるツンデレ娘のカタナはどっちもめちゃくちゃ可愛かったので、続編でもうちょっと出張ってくれるのを祈ります。兎に角パーツパーツがいちいちツボすぎるので、次回はもうちょっと美味しく調理していただきたいところ。ラストがあんな終わりかただし、「第一幕」と銘打たれているのできっと2巻は出るでしょう。

あと、個人的にはたった1P先の事だとはいえ、とあるキャラの死を挿絵でネタバレするのはやめてほしかったです…多分死ぬと思ってはいたけど、ああいう風に時間差でイラストバレされると興ざめ。

ところで、ラノベでエロゲっぽい異能バトル系作品の主人公の名前が結構な確立で「とーま」なのは、なんかのお約束でもあるんですか?いや、ナインエスとか禁書とかのことですけど…。


腐女子彼女。パート2

[著]ぺんたぶ

—つきあいはじめた2つ年上の彼女は腐女子でした—
腐女子の彼女・Y子に振り回される非オタク男子の恋愛を描いたノンフィクションブログ本第二段。

 

同名のブログの書籍化第二段。ボケとツッコミの激しいテンポの良い会話と、時々ナチュラルに展開される愛の言葉の応酬が魅力です。

彼女のBL趣味に振り回される著者の姿を面白おかしく?…という部分は前巻から比べて鳴りを潜めてしまったのがちょっと残念。というか、明らかにY子の行動に動じなくなってきてるよねセバス。露骨に動揺してるのはエロゲーやBLゲーを進められたときのやりとりくらいでしょうか。あと声優さん関係のやりとりは面白かった。どちらかというと今回は腐女子属性がどうのというよりも、単純に「彼女に振り回される男子」というノリになってきてますね。

ですが会話のテンポが良くなっていて、文章自体は前巻よりも面白くなっている印象受けました。普通に自分の両親に彼女を見せに行くやり取りが面白かった。つか、大分「化物語」の影響受けすぎじゃね?多少脚色を入れて書いているのかなとはおもうけどこの会話をリアルで交わしていたのならこの人たち、ある意味凄い。

そして、何気にライトノベルネタが多くてニヤリ。冒頭で「化物語」や「戯言シリーズ」「ハルヒ」に関するやりとりがあるほか、中盤でDSを買うというネタでは脳トレか言語トレーニングソフトを買おうとする著者に対しY子がボン太くん目当てにスパロボWを買おうとするというやりとりがあります。同日発売の「となりの801ちゃん2」でも「ミミズクと夜の王」が取り上げられていて、密かにニヤリでした。何気にラノベが一般オタクに認知されてきたということか!!

そしてこのブログ本の魅力は、やはり腐女子ネタよりも、ノリツッコミの激しい「化物語」のような会話の中、普通に愛の言葉の応酬が始まってしまってしかもそれが浮いてないというこの展開じゃないかと。ほんと二人とも相手が好きなんだなあ?というのを感じられて素敵です。普段ヘタレでY子さんの言動に振り回されっぱなしのセバスが時々突然会話の主導権を握りだすのも凄く萌え。

今回で完結とのことで、お二人とも末永くお幸せに?!

ちなみに「腐女子の奇行にふりまわされる男子」的なネタを読みたいなら、同日発売の「となりの801ちゃん」をオススメ。こちらは腐女子×オタ男子 オタ男子×腐女子(←すいません、素で間違えた)なので会話もそちら方面に濃いし、全体的にLOVE分よりもオタク分の方が高かったりします。というか、同じ腐女子の彼女を扱ったネタなのにここまで展開が違うのかと比較しながら読むと中々面白いですね。「腐女子彼女」のぺんたぶさんは思いっきりツッコミなんだけど、「となりの801ちゃん」のチベさんはどっちかっつーとボケというか。「801ちゃん」の2巻では全く服装構わないチベさんの服を選びに行くエピソードがドツボでした。


となりの801ちゃん2
[著]小島 アジコ
宙出版(2007.8)

 
夏コミで「チベくん総受本」を買いに行く気マンマンの私です。