“029” の検索結果 | ページ 10 | 今日もだらだら、読書日記。

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ネクラ少女は黒魔法で恋をする5

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

ネクラだった自分を克服し、演劇部にもクラスにも自らの居場所を少しずつ作っていた真帆。ところが、憧れの先輩・一之瀬とは犬猿の仲と言う生徒会長に黒魔法少女である事を指摘され、彼の『死んだ人を生き返らせる』という願いに協力するよう持ちかけられる。それを拒否したところ、翌日から心なしか周囲とギクシャクしはじめて…
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「ネクラ少女?」シリーズ完結編。生徒会長の策略により再びネガティブ思考の罠にハマってしまった真帆が、上手くいかない周囲との自らの後ろ向き思考との齟齬に苦しみながらも奮闘します。ラブコメとしても青春物語としても綺麗にソツなく終わった印象。

とにかく疑心暗疑に陥りながらも必死に自分の思考に負けないように頑張る真帆の姿が印象的。一度こういうのに陥ると自分から立ち直る事ってなかなか難しいし、1巻の頃の“ネクラ少女”の姿から考えると信じられないほど精神的成長を果たした真帆の姿をみて、こちらまでとっても暖かい気持ちになりました。「ネクラ少女」としての彼女の姿が見られなくなったのは残念だったけど、その不満を打ち消して余りあるほどの成長振りに嬉しくなりながら、エピローグで●●の記憶が無い事を一之瀬先輩に確認しちゃうチャッカリした姿に思わずにんまりしてしまったり。

でも何より、そんな彼女を時には厳しく、時には暖かく迎え入れてくれる演劇部の面々や、裏表なく元気いっぱいに受け止めてくれる大河内、普段は情けないけどやる時はやる永音先生、ツンデレだけど実は姉想いな妹の夏樹、そして今回遂に正体を明らかにしたオジ様・伊丹氏などの周囲の暖かさが胸にしみます。とにかく最初から最後まで、仲間や友人の暖かさを教えてくれる素敵なシリーズでした。本当に真帆は良い仲間を持ったなあ…。

個人的には一つだけ、やはりシリーズ通して神門との三角関係が全く描けてないのが残念だったけども。4巻では一之瀬先輩が空気だっていったけど、5巻は一之瀬と真帆が接近した所為で神門が完全に空気に……やはり神門は2巻でのゲストキャラ止まりにしておくべきだったと思うんですよ。おそらく神門が出張ってくる3?4巻をすっとばして1、2、5巻を読むだけでも十分物語としては成立してしまう気がして、まるで3・4巻だけまるで別シリーズを挟み込んだかのように浮き上がっているように感じるんだよなあ。単純に誤解させるだけじゃなくて、神門が“恋敵”として一之瀬先輩につっかかっていくような展開があるだけでもここまでの違和感は生じなかったと思うので、そういう描写が全く無かったのは本当に残念でした。

でも無理に二人をくっつけず、彼氏彼女以前の関係のまま含みを持たせたエピローグには大満足。
面白い物語を本当にありがとうございました。


黄昏色の詠使い5 全ての歌を夢見る子供たち

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

意識を取り戻さないクルーエルの容態は日増しに悪化していった。ティンカは少しでも彼女を救う可能性を求め、サリナルヴァが副局長を務めるケルベルク研究所へ彼女を移す事を決める。治療のためなら仕方ないと周囲が思っていた中、唯一クルーエルを移す事に反対したネイトは一人で研究所を目指そうと学園を飛び出すが…?
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灰色名詠を使うミシュダルとの対決やクルーエルとアマリリスのに決着がつく、第一部(というかEpisode1)の完結編となるシリーズ第5巻。

クルーエルを心配するネイトやミオ、そしてクラスメイト達の姿に思わず心が暖かくなりました。1巻を読んだときに感じた独特の「綺麗さ」や「暖かさ」が全開のお話になってて、大満足でした。特にクルーエルとネイトが二人で詠を唄い合うシーンは本っ当に最高。

ちょっと中盤辺りで詰め込みすぎというか少々わかりづらい印象を受けたのですが、エピソード2への波乱をちょっと含みながらも最終的には誰もが哀しい想いをしていない、素敵な決着のつけ方はなんともこのシリーズらしいというカンジで大好きでした。

……なんて感想もあるにはあるんですが、もうその辺は正直建前で。今回はとにかくネイトとクルーエルの二人に悶えた…ッ!!クルーエルを心配するネイトの姿がもうとにかく可愛いのなんの。本文でも挿絵でも、散々悶えさせてもらいました。もうとにかく今回はかなりオープンにラブラブな二人を見られます。

?——おやすみのキス、して?

「だめですクルーエルさん。僕、おやすみのキスなんて絶対しません」
「ねえ、クルーエルさん」
「もし僕が……おやすみなさいじゃなくて、おはようございますってキスしたら……クルーエルさんは目を覚ましてくれますか?」

ぶっちゃけこのやりとりを見たときは電車の中なのにも関わらず転げまわりたい衝動にかられました。
お、おおおおおおおお持ち帰りィィィィッ…!!!(落ち着け)

今後は4月に短編集、そして完結編となるエピソード2へ続いていくとのことで、個人的にはもうひとりの美少年キャラ(と勝手に脳内で認定しました)シャオ君とネイトの対決がとっても楽しみです。


ベン・トー サバの味噌煮290円

[著]アサウラ [絵]柴乃 櫂人

烏田高等学校の学生寮では『自立した生徒を育てる』という教育方針の下、昼食・夕食が出ない。少ない仕送りを少しでも有効に利用しようと閉店間際のスーパーの半額弁当を手に取ろうとした佐藤洋は、嵐のような『何か』に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。数日連続で弁当争奪戦に敗北した洋は、『氷結の魔女』と呼ばれ怖れられる少女・槍水仙に教えを請うのだが…
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いや?ネットでの評判は聞いていたけど、予想以上に面白かった!閉店間際のスーパーの半額弁当を狙って繰り広げられる命知らずのバトルロワイヤルに、何も知らないオバカな主人公が巻き込まれて少しずつ成長していくという物語。面白そうだとかネットでの評判とか「ある種バカテスに通じる」なんて自分的後押し発言もあったわけですが、購入を決意した元凶がこの発言であったことは紛れも無い現実です。責任とってくだs(強制終了)

内容を一言で言うとやってることは半額弁当版『学校の階段』、ただしキャラクターは『バカテス』風味、みたいな。バカテス風味というか、洋のキャラがどこかバカテスの明久っぽいのか…性格はとにかく、貧乏でヘタレでバカで趣味最優先の金の使いっぷりら辺。個人的にはやはりメイン4人のキャラクターが凄くツボでした。ヘタレでバカな洋と孤高の強者なのに寂しがり屋な槍水先輩のほのかなラブ描写にニヤニヤしつつ、最初はクールなクラス委員というイメージだった白梅梅が後半に行くにつれガンガン壊れていく姿に爆笑しつつ、やはり一人の腐女子として一人何か間違った方向に暴走する白粉花を応援せずに居られません。ていうかとりあえず『筋肉刑事』シリーズ読ませろ。話はそれからだ。なんかもう素晴らしく阿呆らしそうで実に気になる。彼女にはスーパーダッシュに咲く一輪の腐った花として頑張っていただきたいです。

キャラクターも魅力的ですが、『半額弁当』に賭ける漢達の(無駄に)熱い生き様には思わず胸を震わされる。ブツはただの半額弁当だが、幾つかの暗黙の了解と共に在る闘いは妙に気高い。半額弁当を手に入れることが出来なくても、認め合った宿敵同士でお互いを恨んだりせずに声を掛け合う様子は恐ろしく清清しい。個人的には顎鬚の「ワン公」って呼び方が、まるで鍛え概ある後輩に対する態度のようなカンジで凄い好きだったりします。そしてそんな強敵たちを乗り越えて半額弁当を漸く手にしたときの喜び、弁当の美味しさの描写といったらもう……最高です。本当にありがとうございました。

考えると金の無い学生時代、中学時代から人一倍食べるようになった私はどれだけ安いお金で腹を満たせるか色々手を巡らせたものです。なんとなく、そんな学生時代の自分を思い出して懐かしくなりました。いつから自分は食を“浪費”するようになってしまったんだろう…。いや、今コンビニ弁当派なのは単純に職場の近くにスーパーがないからなんですけど、ね…orz
ともかく、明日から腹が減ったからと調子に乗って暴食するのはやめようと思いました。

「なんで半額弁当?」とか言っちゃ駄目。考えるな、感じるんだ!!!


天元突破グレンラガン3

[著]中島 かずき [絵]品川 宏樹 [原作]GAINAX

ロージェノムを倒し、地上に人間と獣人の共存する国を作り上げた大グレン団。総司令になったシモン、その補佐になったロシウを筆頭に殆どの大グレン団メンバーは樹立された政府の要職になり、そして7年間の平和を謳歌していた。ロージェノムが遺した言葉に不安を感じたロシウを除いて。そして7年後、月から謎の新たなる敵が襲来して…!?
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アニメ版の「第三部」を描いたノベライズ第三弾。いきなりシモンが大人になってるよ!?いや、以前から第三部でいきなり大人になるって話は聞いてたんですが…実際目の当たりにするとビックリでしたw

7年間の平和な生活によりすっかり平和ボケした大グレン団の前に、更に強大で絶望的な敵が襲い掛かる!という展開で、今までになく絶望的な敵と立場が大きくなりすぎてしまった所為で1つにまとまれない味方……と、後半までもどかしい展開が続きます。かつての大グレン団の面々と、ロシウ率いる“第二世代”の戦後派の対立は本当に見ていてもどかしいというか、「そんなことしてる場合じゃないでしょー!!」と叫びたくなってしまいました。正直「あの」行き当たりばったりな大グレン団に政治なんてものが勤まるとは思えなかったのですが、もろにその予想とおりだったというか…彼らを疎ましく思うロシウの気持ちも正直判る。

それでも、彼らもただのうのうと7年間を貪っただけではないんだなあと思うような描写が多く、その辺は非常に楽しめました。父親になった二人の葛藤とかも興味深かったし、それ以上にキタンの葛藤する様子は凄く感慨深かったです。自分よりもずっと若い筈のロシウが、どんな思いで感情を殺してあの判断をしたのかなんて、以前のキタンだったら気付かなかったんじゃないかなあと思いますし。2巻まではただのキレやすいバカ男としか思えなかった(酷)のがすっかりいい男になって…(正直、そのいい男っぷりが死亡フラグに思えてしょうがないのはきっと気のせい。…なんかそんな噂を聞いた気がするのもきっと気のせい。)

そしてなんといっても一番成長したのは総司令になったシモンでしょう。特に2巻でのうじうじしっぱなしのシモンの姿が印象に残っているので、ニアがああいうことになってしまっても、自分の処刑を叫ぶ市民達の姿を見ても、自分の殻に篭らず毅然として対応している姿は物凄くかっこよく感じた。ほんと大人になったんだねシモン…。ヴィラルとの凸凹関係も非常に良かったです。こういう元宿命のライバル同士がなんだかんだいいながら共闘する姿って言うのは燃えますね!!

というかあれはどうみてもシモン×ヴィラr(強制終了)

後半の、大グレン団の活躍はやはりこうでなくちゃというか、この人たちは前線で戦ってるのが似合うよなあといわざるを得ない爽快な展開。ていうか、もろに「俺達の戦いはこれからだ!!」な終わり方なんですが、まだ4巻があるんだよね!?(笑)

最終巻が楽しみです。


メイド刑事6

[著]早見 裕司 [絵]はいむら きよたか

突然海堂のお屋敷に現れた男は、さくら夫人に料理対決を申し込んだ。彼は、両親が破滅したのはさくら夫人が過去に取ったとある行動が原因だと言うのだが…?そして命を狙われた堂本大臣の警護の為、保養先に“メイド刑事”として同行した葵に、木ノ上の魔の手が迫る…!?
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さくら夫人の過去が明らかになる短編と、葵の両親の敵である木ノ上との対決を描いた中編の2本を収録。相変わらず良い意味で「いつも通りの」メイド刑事、という印象で、面白かったんだけど語るべきことが見つからないのも事実だったりして。

短編の方は珍しく“メイドの一里塚……”が出てこない、ちょっと番外編的なお話。いつもお客さんの状態を見て料理を作るという「料理人」ではなくて海堂家のシェフとしてのさくら夫人の細やかな気遣い溢れる、良い話でした。本当に前しか見えてない対決相手・高橋の痛々しさに苦笑しつつ、最後に改心した後に高橋に向けられた人情にほこほこしてしまいました。

中編は遂に後がなくなった宿敵・木ノ上との最終決戦。宿敵の影を前にいつもの冷静を失いがちな葵に、“メイド刑事”としての自分を取り戻させたルカの言葉が非常にかっこいい。メイドとしても一人の人間としても少しずつ、しかし着実に成長した現在のルカの姿と、初登場の頃の向こう見ずな彼女の姿を重ねて思わず感慨を覚えたりしてました。

そして木ノ上との直接対決はベッタベタな「中ボス戦」という印象。結局葵は敵側の内紛に命を救われたという印象を拭えませんが、木ノ上との闘いを経て一つ大きな壁を乗り越えて成長した事を感じさせる終わり方にちょっと嬉しくなりました。しかしこの御時世に忍者て、発想が素敵過ぎます(笑)今後は更に大きな敵に向けて戦っていかなければいけないであろう「メイド刑事」の、今後の活躍に期待。

しかし、今回の中編を読んで、こっそりこのシリーズを実写ドラマで見てみたくなりました。水曜21時の刑事モノサスペンス枠(「はぐれ刑事」とか「相棒」とかやってる枠)でドラマ化したりしないですかね?ライトノベルのシリーズの中では最も実写に向いてるシリーズだと思うのですが…。


フルメタル・パニック! せまるニック・オブ・タイム

[著]賀東 招二 [絵]四季 童子

漸く合流を果たした宗介達<デ・ダナン>メンバーは、各地に散らばったミスリル残存勢力を救援しながら少しずつ軍備を回復させていった。一方、レモンやレイス達と協力してとある情報を探っていたテッサは宗介達僅かな護衛を連れて“ウィスパード”の秘密が眠る街ヤムスク11へと向かう。しかしそこにはレナード達<アマルガム>の勢力が待ち受けていた。ウィスパードがもたらす「ブラックテクノロジー」の秘密が今明かされる…!!
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「ウィスパード」達の秘密をはじめ、重大な事実が次々と明らかになるシリーズ最新刊。
レナードの豹変。
かなめに隠された重要性。
そして何故この世界が“フルメタの世界”となったのか…その秘密。

崩壊するはずだった国家が、崩壊しなかったかもしれない。
統一を保つはずだった国家が、分裂してしまったかもしれない。
そして、もしかしたら——米ソの冷戦が終わっていたかもしれない。

そしてそれを変えたのは、間違いなく“ウィスパード”と呼ばれる存在で。
ブラックテクノロジーという「呪い」を受けた子供達だった。

お母さん。
あと一分早く産んどいてよ……。

明かされた事実がとにかく重過ぎて、しかし同時にそして作品に仕込まれた様々な仕掛けにただただ、驚きを隠せませんでした。今の世界とフルメタ世界の歴史が違う理由やウィスパードの存在なんて、フルメタを“フルメタ世界”たらしめるための前提設定であるとしか思っていませんでした。それが一気にひっくり返された衝撃といったら…。

正直、難しい説明が続く中盤は今までの熱い展開から比べるとぜんぜんだるいし、前に出た2冊の強烈なカタルシスを考えると、説明だらけの文章は読み進めるのがちょっときつかった。個人的に中盤までで印象に残っているのは、もう最初で最後になるであろうと思われる宗介&レナードの共闘シーンくらいです。だから、中盤の読みづらさを差し引いて、評価自体は少しだけ減らしてます。

でも、何もかもが、最後の最後で一気に打ち砕かれました。

(※以下、本物語の結末に関する記述があります。未読の方はご注意ください。)




露骨な「フラグ立て」の様子に、序盤から「まさかな…」と思いました。
でもなんか、彼ならば大丈夫のような気がして。
そんなフラグへし折って、なんとか生き延びそうな気がして。
今だって、どこかからへらへら笑って、出てきてくれそうな気がする。
なんか、もう、本当に読み終わったあとは涙が止まらなかった。

正直、以後の展開は殆ど覚えてません。
涙が止まらなくて、本の文字が読めないなんて経験初めてでした。
エピローグでの各キャラクター達の行動が、また痛々しい。

自分を責めるテッサ。
感情を露にするマオ。
そして、泣けない自分を憂う宗介。
無意識に流れた、かなめの涙。

シリーズ中でも最大級に能天気だった短編が、こんなフラグにつながっているなんて…。


現実って、虚構の世界であっても残酷だ。



前に温泉に入ったのは、いつごろだっただろうか?
だれと行ったっけ?
だれが発案して、だれが大騒ぎを起こしたんだっけ?


MAMA

[著]紅玉 いづき [絵]カラス

生粋の魔術師の家計に生まれながら、全く魔術の才能に恵まれなかった少女・トト。<サルバドールの落ちこぼれ>と周囲から冷たい目で見られていた彼女はある日、偶然迷い込んだ神殿の書庫の奥深くで、封印された“人喰い”の魔物と出会う。魔物を封印から解き放った彼女は魔物にホーイチという名を与え、“ママになる”と宣言するが…
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「ミミズクと夜の王」の紅玉いづきさんの新作。表題作である「MAMA」と、その後日談的作品の「AND」が収録されています。前作「ミミズク」よりも本作のほうが児童文学的な印象が少しだけ薄くなって電撃(というかライトノベル)っぽいイメージが強くなったような気がしますが、やはりどこか童話というか児童文学風というかな世界観を持つ素敵な物語でした。

落ちこぼれといわれてバカにされる少女が『人食いの魔物』の母となり、どこか歪んだ依存関係を築きながらも魔物を従えたが故に、あれほど逃げ出したかったサルバドールの狭い世界に縛られる事になるという物語。「ミミズク」もそうだったのですが、この方の描く、どこか危うげなまでの純粋さを持った主人公が大人の世界の中で一人で生きていく為に凛々しく成長していく姿が密かに大好きだったりします。「わたくしを護りなさい」とホーイチに命令するトトの姿は非常にかっこよかったなあ。

物語の開始当初は確かに孤独だった主人公はしかし、後半では既に『ふたりぼっち』ではなくなっている。でもなかなかそれに気付けなくて、周囲の人たちの暖かい心が透けて見えてくるのがもどかしいかった。大人たちの中で虚勢を張る彼女に「あなたはもう独りじゃないよ」と言ってあげたい衝動に駆られた。

個人的にはトトも凄く良いキャラなんだけど、彼女を変えるきっかけとなったティーラン王女が大好き。大人たちの世界に巻き込まれて大人にならざるを得なかった子供というのは基本的に大好きなキャラ属性なのですが、そんな中でもティーランの生き様は恐ろしくかっこよかった。そんな強い彼女だけに、トトがサルバドールを出奔した際のセリフが胸に来る。「AND」での確信犯たっぷりな彼女も素敵。

そして「MAMA」の後日談となる「AND」は、ホーイチがかつて喰らった少年の耳飾を盗み出した盗賊の兄と、嘘つきなその妹が、ティーランの頼みでそれをしかるべき人物に返すために旅をするというお話。血のつながった兄妹ではない二人の、冷たいようで暖かい関係がとても見ていて楽しかったです。

「虚言だな」
「ええそうよ」

という本当に短いやり取りの中で透けてくる二人の関係が非常に好きで、もっと沢山二人の旅を見たいと思ってしまいました。

物語もキャラクターもとにかく素敵な、どこか暖かい物語でした。
ほんと名作。紅玉さんの次の作品がとても楽しみです。


ツァラトゥストラへの階段2

[著]土橋 真二郎 [絵]白身魚

“パルス”に感染して異常な能力を得たもののそれが日常生活に生かせる訳でもなく、むしろ能力の影響で何をやっても失敗ばかり。自らの能力をもてあます福原の元にパーティへの招待状が届いた。情報収集も兼ねて舞には内緒でそのパーティに参加するが、彼を待ち受けていたのは新たな“囚人ゲーム”で…
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例によって悪趣味なゲームルールだのドロドロな信頼関係は絶好調で、良い意味で“いつも通り”のクォリティを安心して楽しめる印象になってきた気がする土橋さんの新シリーズ第二段。

今回は「キング」「クィーン」の役割を持つ男女が20組のペアとなり、周囲を探索しながらチェスゲームにも似た陣取りゲームを繰り広げるというお話。福原とペアを組んだ女性・カレンはどうみても腹にイチモツもってそうな感じでしょっぱなからギスギスフィーリング全開だし、前回で福原の手で痛い目に合わされた人物が敵「キング」として登場したり、「クィーン」にもまさかの彼女が参戦したり…と相変わらずの容赦ない展開が素敵です。精神的だけでなく、今回はプレイヤーである福原達にも直接的な暴力的な危険が迫り、また能力の使いすぎによる肉体的に痛々しい展開も目白押し。

今回のラストで必ずしも主人公側が勝利するわけではないというのが立証された訳だし、ますます続きがどうなるのかわからない展開に。続きが非常に楽しみです。あと今後のあとがきの動向も非常に楽しみです。なにこのカオスな後書き!

ただ“囚人ゲーム”を中心としたストーリー展開は非常に面白くて、物語の中に引き込む力も強いんだけど、前シリーズと比べるとどうも丸くなってしまったというか、キャラクターが薄いのはライトノベルとしては結構痛い気がするのですが。由紀・舞・飛鳥の3人がヒロイン格ということになるんだろうけど、3人が3人で存在感を食い合ってどれもインパクトに欠ける。

やはり「扉の外」好きとしては正樹愛美級の強烈なキャラが出てこないのがちょっぴり物足りなかったりするわけです。どれか一人適当に淘汰しても構わないので3巻以降でもっと強烈なキャラ付けを!マジお願いします!

あと、これ言っちゃおしまいかもしれないけどやっぱ異能バトル設定いらないとおも(ゲフンゲフンゲフン)なんか全体的に、行き詰ったらトンデモ能力が開花してなんだか僕らがよくわからないうちに片付けちゃいました!!みたいな展開が多くて、ちょっとその辺が不満だったり。


生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録 1

[著]葵 せきな [絵]狗神 煌

私立碧陽学園生徒会——全校生徒達による純粋な人気投票により生徒会メンバーを決めると言う特殊なシステムを採用している。必然的に美少女ばかりが集ってしまう生徒会に、杉崎鍵は成績優秀者のみに与えられる特権「優秀枠」を使って生徒会に潜り込む。“生徒会を自らのハーレムに!”という目的のために…!
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後書きで「4コマ小説」なんてかかれてましたが、ほんとに4コマ漫画をそのまま小説にしたらこんな感じになるんだろうなーという感じの作風でした。ちょっぴり変な美少女達ばかりが集う生徒会で、ひたすら語ったり遊んだりしてるだけの小説。良くも悪くもコンセプトを聞いて「冗長そうだなあ…」と敬遠していたのですが、いつも感想中さんの感想を読んで撃沈。だから今「バカ」って単語に弱いんだと何度言えば略。

未成年なのにエロゲーオタで人生と言うギャルゲーにてハーレムルートの完遂を目指す主人公・杉崎鍵がすげえアホカッコいい。頭脳的な意味ではなく、優良枠をゲットするためだけに猛勉強して最低レベルの成績を学年トップまで引き上げてしまうという行動が凄くバカ。そして美少女に目がないアホ。しかし突然偉いカッコイイことを言う。それが実に良い。バカでアホで浅い人間のように見えて、実は非常に深い人間性を持っていると言うか……とにかく凄くかっこよかったですね。普段バカやってるときと、時折見せるバカではない一面のギャップが実に絶妙でよかったです。

そしてそんな彼がハーレムエンドを目指す「本当の理由」が明かされたときは、不覚にもじわっと来た。こんな素敵な男の子に思ってもらえる女の子は本当に幸せだと思う。まあそこでハーレムエンドを目指そうとするのは、やっぱりもう、バカとしか言いようがないけど。

とにかくひたすらキャラクター同士の掛け合いだけで最後までぐいぐい引っ張っていく内容で、本当に「4コマ小説」というか、娯楽小説という名にふさわしい作品でした。また、杉崎が持っているどこか深くて大きい人格に、美少女達がツンツンを装いながらもどこか心の底では甘えてるみたいな雰囲気がなんだか暖かくて心地良い。

パロディネタだらけの危険なギャグも非常に面白くて、好感触。特に「放送する?」と「創作する?」は腹を抱えて笑った。ギャグではないんだけどなんだかほの暖かい気持ちになれる「恋する?」もかなりツボでした。次巻が非常に楽しみです。

唯一、挿絵がちょっと微妙だったけど…うーん、絵自体は嫌いじゃないんだけど良くも悪くもこの人の絵、「挿絵」ではなくて「イラスト」なんだよな。ラノベじゃなくてエロゲとかに向いてる絵だなあと思いました。悪くはないんですけどね、うん。

あと、真冬とはいい友達になれそうです。
鍵は受だと思います。


繰り世界のエトランジェ 第2幕 偽りのガジェット

[著]赤月 黎 [絵]武藤 此人

“虫遣い”を倒した透真と冥は姿を消した母・操の手がかりを追って統堂本家に向かう。ところが…統堂本家のあったはずの場所には何も無く、二人は謎の機関<山田太郎>により取り囲まれてしまう。冥を助けるため、彼らに拘束された透真だが…
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とりあえず<山田太郎>ってネーミングがあんまりだ。

すいません、どうしてもその機関名だとどんなにシリアスやってても緊張感が足りません。とりあえず角川書店は作者の人からこのネーミングを提案されたとき、同じ角川で去年ドラマ化された同名の貧乏学生が主役のギャグ漫画があるからっていう理由で却下してほしかった。というか、もうこれまであんなに中二病全開の機関や必殺技が登場しまくってるんだから、最後まで中二なネーミングセンスをつけるべきだ。駄目なんだよどんなシリアスな場面でもあの貧乏苦学生が脳内に浮かぶんだよ!!!

…とまあ、山田太郎なる機関名の是非については置いておいて、なんか良くも悪くも牙を尖れた獣の印象と言うか、1巻を読んだときは台風の日に大荒れのサーフィンをしているようなイメージと言うか、なんかもう作者の好きなタイプの属性を詰め込んでいて、それについていけない人は容赦なく振り落とされていく荒削り感といいますか。ツッコミどころ満載の穴だらけな部分と、それを超える設定やキャラクター、物語の「属性としての面白さ」が絶妙なバランスで同居しているような印象を受けたのですが、それが見事に平均化されてしまって全体的には面白くなったんだけど物語としての魅力は半減してしまったなあという感じの2巻でした。

うーん、確かに物語としてはぜんぜん2巻のほうが面白くて、上手くなってるなあという印象なんだけどそれでも「1巻とどっちが好きだった?」と聞かれると、もう問答無用で1巻なんですよね、私は。なんか、言葉には言い表せないけどあっちのほうがぜんぜん好きだった。

挿絵が変わってしまったのにもその傾向に拍車をかけました。2巻の作画の人が悪いと言うことでは全く無いのですが、なんていうか、1巻の挿絵担当の甘福さんのイラストが持つ独特の透明感といいますか、そういうイメージがぴったり物語とハマっていたのに結構思いっきり違う方向のイラストになってしまったのが残念だったというか、物語の変化も踏まえて私の中では「別の物語」に近い印象になってしまったと言うか…うーん。特にカタナの別人ぶりにはちょっと泣いた。1巻と2巻の間で年とりすぎですカタナさん何があったんですか。

新しく登場したキャラクターの礫も非常に魅力的だったし、前述しているように物語自体は非常に面白くなってきているのですが…うーん。1巻で提示された属性萌えだけで2巻に期待をかけたら予想してたのと違ったと言うか、どこぞの文学少女風に言えばタイの民間食堂で激辛坦坦麺を食べるつもりで挑んだら、一流シェフの作ったカレーの味がした、みたいなイメージだ。

イマイチ続きに興味がもてなかったと言うのもあるので、3巻を続けて買うかどうかは微妙かも。