遂にローマ正教と学園都市が戦争をはじめる……とはいっても、学園都市で生活する大多数の生徒達にそんな実感はない。戦争の影響で食料が値上げされると心配した吹寄が今のうちに鍋を作りたいと言い出したら、いつのまにやらクラス全員(+α)ですき焼きパーティに行く事になってしまって!?
戦争に実感が沸かなくて値上がりの影響なんか心配してるクラスメイト達と、一連の事件で魔術側の事件に多くかかわってしまった当麻の隔絶が妙にうすら寒かったです。確かに当麻の想像するとおり、真っ先に前線に送られるのはいくらでも替えが利く普通の生徒達で、しかも本人達はそれに全く気づいてなくて…というのが。ぜんぜん外れた感想になってしまうけど、ほんと気づかないうちに自分達が巻き込まれていってしまう“戦争”って怖い。
しかし、ちょっと人数が増えすぎて把握が追いつかない分が多々。海原光貴もそうだけど、シェリー=クロムウェルは前の巻あたりからずっと「…この人、当然のように出てきてるけど誰だっけ?」状態でした。前回登場したサーシャも思い出すのに時間が必要だったし、結標も8巻が印象に残ってない人にはキツかったんじゃないですか?せっかく「短編集」だったわけだし、上手い事各キャラの設定を再確認させるような使い方をして欲しかったです。つか、こういうキャラクター数の無駄に多い作品は最初のページに軽く人物紹介を載せろと。
前回で「打ち止め」達と訣別し、彼女達を守るために海原の誘いを受けて“グループ”の一員となった一方通行。もうすっかり裏主人公というか禁書シリーズの真の主役状態だったりしますが、自分の大事な人を守るために敢えて裏道を行こうとキモを据えて、ますますかっこよくなってます。特にラストの見開きで描かれる“グループ”は「ヒール(悪役)」って言葉が恐ろしいまでに似合うイラストでした。
それにしても、一方通行の大活躍に押されて今回の当麻は出番少なめですが、少ない出番で光りすぎです。魔術側と対峙する際に言葉が通じないと説教できないからと外国語を学ぼうと決意するシーンではうっかり噴き出しましたが、それを本気で言っているというのが恐ろしい…。あと、「レベル0」の集団であるスチルアウトに向けて放った言葉は同じレベル0の当麻だからこそ響く何かがありました。久々にクリティカルヒットな説教を聴いた(笑)
良い意味で「悪役」として、裏主人公的な立場を確立した一方通行と、その正逆の位置に居る当麻。この見事なすれ違いっぷりもまた良いですが、完結するまでには1度くらい二人が手を組む姿がみたいなあ。
魔術側と科学側の戦争に向け加速する本作、続きが本当に楽しみです。