やすみが「声優」として壁にぶつかりそして大きく成長するお話。ド直球な成長物語でめちゃくちゃおもしろかった〜〜!!壁にぶち当たった時の閉塞した空気、そんな中で必死にもがく由美子の葛藤と、そんな彼女の最高の相棒で、最悪のライバルである夕陽のやりとりが最高によかった。ところで完全に「ただのファン」になってるめくる先輩推せる〜〜。
やすみが声優としての壁にぶつかり、大きく成長する物語
夕暮夕陽をめぐる一連の炎上騒動も落ち着いて今度こそ日常を取り戻した由美子は、改めて声優として崖っぷちな自分の前途に思い悩む日々を送っていた。そんな彼女の元に、夕暮夕陽が主役を務めるロボットアニメ『幻影機ファントム』での主人公のライバル役が舞い込んできて……。2巻までは「アイドル声優」としての二人の姿がクローズアップされていたけど、3巻は純粋な「声優」としてやすみが成長する物語。新人声優として崖っぷちであるという自覚とプレッシャーに押しつぶされそうなところに舞い込んだ大きなチャンス。現場でのアウェー感、普段とは真逆のキャラを演じるという事への悩み、新人声優として崖っぷちという事へのプレッシャー、収録が上手く行かなくてだんだん自分以外の物が見えなくなっていく閉塞感。特に初回の収録の話は本当に読んでいて胸が押しつぶされそうになりました。
ともすれば自分の内に引きこもりそうになってしまいそうな状況で、それでも周囲に相談したり、無理矢理にでも外部への働きかけが出来るのが由美子の強みだなと思うのですが……逆にそれをしてもなお届かない、もっと上を求められてくるという展開が(それだけ彼女が周囲から期待されていることの裏返しでもあるんだけど)しんどかったです。
焦燥感の中でも続いていく「女子高生」「声優」としての日常が尊い
(めくる先輩まじかわいい)
なんとか最低限リテイクをもらわない程度の演技は出来るようになったものの、まだ先方の求めているところには届かない。そんな焦燥感を抱えながらも、女子高生としてそして職業・声優として続いていく平穏な日常の描写にほっこりしてしまうし、2巻ではそういう描写も控えめであったので3巻で再びこういう自然体なエピソードが見れるようになったのが実に尊い。由美子と千佳の気のおけない掛け合いも満載で楽しかった。学校のクラスメイト達とカラオケに行く話でクラスメイト達のコメントに合わせて木村のオタコメが混ざるの面白すぎるんですけど、そりゃあ憧れの声優ふたりとカラオケ行ってしかもお互いの持ち歌交換してたらそりゃ冷静じゃいられないよね。というか自分から持ち歌交換振った由美子がさりげに「夕暮夕陽のファン」の顔を隠せないのににまにましてしまった。
声優としてのお話は、やはり桜並木乙女・柚日咲めくるとの合同ラジオイベントからの打ち上げ焼き肉会が楽しすぎて!開き直って由美子の前では時々「ただの声優ファン」になっちゃうめくる先輩が可愛すぎるんですけど、めくる先輩は「ただの歌種やすみのファン」でもあるわけで…仕事に厳しい先輩声優の顔と声優ファンの顔、由美子の前でキャラが一定しないのが本当に可愛い。いやほんとめくる先輩可愛すぎやしませんか!!!
最高の相棒/ライバルなやすみと夕陽の関係が熱かった!
歌種やすみが演じる「シラユリ」のクライマックス回の収録で、由美子は再び壁にぶつかってしまう。最後の収録を目前に控えて、彼女が最後に助けを求めたのは自らの相棒でありライバルでもある夕暮夕陽=渡辺千佳だった。千佳に助けを求めることへの葛藤は今回の話の序盤からずっと語られてきていたのですが、それでも自分のプライドを曲げてでも助けを求める由美子と、そんな彼女のひたむきな姿に自分には敵わないものを見てしまう千佳の姿が印象的でした。その由美子への劣等感をその場で口にしちゃうところが実に千佳ちゃんらしくて可愛いんだよな。様々な感情を覚えながらも由美子の手を取ってくれる千佳の姿が、なんて頼もしいことか。ライバルあり、ラジオが決まって以来声優「歌種やすみ」の一番近くにいた相棒であり、孤高の陰キャである千佳だからこそ見える、由美子の弱点にも納得。
もうこの時点で翌日に撮影が成功するのは決まったようなものなんですけど、そこからの収録の様子がとにかく凄くて、ひたすら圧倒されるばかりでした。魂をぶつけるような歌種やすみの熱演、それに夕暮夕陽やかつて由美子が憧れた声優達が引き込まれていく様子、現場の高揚した雰囲気、それと同時に展開されていく「幻影機ファントム」という物語のクライマックスに釘付けになりました。
毎回クライマックスの盛り上げ方がとにかく上手くて読み終わると暫くの間「面白かった〜〜!!」としか言えなくなってしまうシリーズなんですが、今回はド直球で王道な少女たちの成長物語で、ひときわ面白かったです。
それで「幻影機ファントム」のアニメっていつ放送されますか──!?