“竹岡 美穂” の検索結果 | ページ 2 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:竹岡 美穂 (28 件 / 3 ページ)

ウォーターソング

[著]竹岡 葉月 [絵]竹岡 美穂

惑星開発が進み、人々は宇宙に飛び出した。しかし、都市整備に失敗したこの惑星では濃酸の雨が降り、人々はスペーススーツを着込まなければ外に出られない。そんな都市で子供達は男女の微妙なバランスを保ちながら日々を過ごしていたが、地球から転校生がやってきて…!?
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「しゃっぷる」の竹岡葉月さん&「文学少女」の挿絵担当の竹岡美穂さんが姉妹コンビで贈る作品にして竹岡葉月さんのデビュー作。後書きの仲良さそうな姉妹っぷりがとても楽しそうなのですが?…いいなあこのほのぼの具合w 宇宙開発で人類が宇宙に飛び出した世界を舞台に、2つの惑星を舞台に繰り広げられる2つのお話です。

酸の雨が降る惑星を舞台に、子供達の小さな戦いを描く「僕らに降る雨」が凄くお気に入り。まず屋外ではもっさりとした宇宙服を着てもさもさと投稿する風景がなんともおもしろい。しかもそれでは音が聞こえないので内臓マイクによる通信で会話したり、金づちや何かで相手の宇宙服を叩いて呼び止めたり……という設定が妙にシュールで、そしてリアルに想像できるのが楽しい。メインのお話は転校生・アサヒがやってきたことをきっかけにバラバラになったクラスを主人公のナットが再びまとめあげ、大人たちにある形で反抗をするのですが、子供ならではの万能感というか、クラス皆で団結して大人たちに対抗するワクワク感が伝わってきてとても楽しいお話でした。

そして表題作となる「ウォーターソング」は「僕らに降る雨」で台風の目となった転校生・アサヒの両親と過去に纏わる物語。少々序盤で間延びした印象…というか、おもしろくなってくるまでにちょっと時間がかかったなあという印象を受けたのですが、美しくもちょっと哀しいお話でした。狂気要素のない新井素子的というか、天野こずえのSF短編を読んだ時のような読後感というか。

物語から感じる爽やかな透明感というか、そんな感じのイメージが竹岡美穂さんの挿絵ともぴったり合致していて、文章と挿絵の調和も良かったです。突き抜けたおもしろさはないけどほんのりと心が癒される一冊でした。


“文学少女” と神に臨む作家 下

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

様々な人に追い詰められる中、ななせの「書かなくてもいい」という言葉に救われた心葉。しかし、それが許せない流人の「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」という言葉が心葉の不安をかきたてる。そして、ななせを大切にしたいと感じる一方で遠子の事を見捨てて置けない自分も自覚して…
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様々な人々の想いが結実する「文学少女」シリーズ完結編。

上巻から引き続き、ひたすら重い展開の連続で、読んでるこちらの心臓的にも気が気じゃなかったのですが、それまでの鬱屈とした展開があっただけに事件が解決に向かい始めてからが凄すぎて、ただただ次々に明かされていく真実に息を呑むばかり。上巻を読んで立てていた予想が殆どひっくり返されるような状態で、本当に凄かった。最強ヤンデレ決定戦も美羽→流人→回りまわって元祖“文学少女”シリーズが誇るヤンデレ・竹田さんが優勝カップを持っていくような状況(それ関係ない)いや、今回の彼女は変な意味で光輝いていたなぁ…そして流人、あれだけかっこよくひっぱっといて後半ヘタレすぎる…(笑)

全然関係ありませんが、丁度これ読んでる最中地元では記録的集中豪雨と酷い雷に見舞われており、この物語の序盤を読むにはあまりにも雰囲気ぴったりすぎる状況に陥ってました。このゴロゴロ言いっぷりはきっとヤンデレカップルの呪いに違いない。

一見無関係だとばかり思っていた1巻からの全てのエピソードが少しずつ小さな役割を果たしてこのラストへと繋がっていくという展開が非常に素晴らしかった。そして全てのエピソードを経て大きく成長した心葉が今まで探偵役を務めてきた“文学少女”に代わって、“文学少女”自身の事件を解決していくシーンでは胸が熱くなりました。

そして遂に迎える遠子先輩の卒業シーン。この作品を読み返す前に「月花に孕く水妖」のエピローグから「神に臨む作家(上)」までを再読したのですが、2回目に読んだ時に「水妖」で語られる“未来”の解釈について物凄く違和感を感じて「あれっ?」と思ったのですが……(具体的に言うとななせを思わせる表現を使っておきながら一度もこの女性に関する人物名が断固として明かされなかった辺り

あああああこういう結末か……。

再読時に一瞬だけ脳裏をよぎった展開が割りと冗談になってなかったという…個人的には、私は元々こっちの展開支持派だったんで嬉しいことは嬉しいんだけど、どんでん返しすぎて素直に喜べないというか……とりあえずななせのけなげな一途っぷりに涙が止まらない……。心葉と付き合いだしてからはヒロイン的な守られポジションに立っていた彼女ですが、精神的に一番強かったのは彼女だったんじゃないかしら。エピローグでの言葉が胸に刺さる。

というか、唯一不満点を挙げるとすればこの卒業の部分だったりします。叶子にあんな言葉を突きつけた以上、心葉と遠子はどんな形であっても「狭き門」を通ってはいけないんじゃないかと思ったんです。お互いに暖かい時間を築きながら、お互いを支えあいながら作家として再生してほしかった…。(以上ネタバレ)それが心葉のために必要な行動だったとはいえ、なんかそこだけは少しだけ残念でした。

とはいえ、最後の最後まで予想を裏切られる展開の連続でありながらも、物語のおもしろさという点では最後まで期待を裏切られない名シリーズでした。素晴らしいエンディングを、本当にありがとうございます。




コラボアンソロ、竹岡さんのコノハちゃん楽しみですハァハァ
(意訳:あとがきが色々と台無し!)


黄昏色の詠使い7 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

サリナルヴァからの依頼で凱旋都市・エンジュで披露される触媒の調査にやってきたネイトたち。コロシアムでは学園対抗の名詠対決が行なわれており、そこで彼らはとある名詠学校の生徒たちと知り合うが…。一方、シャオとその一派もエンジュに侵入していて…
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「第二楽章」本格始動なシリーズ第七弾。漸くクルーエルの体調も戻り、いつも通りの日常に戻ったネイト達に再び試練が襲い掛かる……というお話。舞台をトレミア・アカデミーから凱旋都市・エンジュへと移した新展開。……さて、段々キャラの把握が追い付かなくなってき……げふげふ。味方はとにかく、敵側のキャラクターが予想以上に把握できていない自分に気がついてびっくりした。そして今回もまたキャラが増えます。

今までの物語の舞台は基本的にトレミア・アカデミーという枠組みの中に閉塞していたので、もうまず他に名詠学校があって、学校によって様々な教育方針を持っているということが物凄く新鮮だったり。いや、考えてみたら当たり前なのですが…。ネイトとクルーエル、エイダとミオの4人を除き、舞台と共に彼らを取り巻くキャラクター達もほぼ一新されてます。しかし、物語の展開が5巻から引き続きクライマックス直前といった雰囲気なのであまり「心機一転・新シリーズ開幕!」という感じではないかも。

新キャラでは色名詠の使い手・レフィスが良い味出してました。天然系朴念仁は良い…ヘレンとのカップルぶりもなかなか良いのですが、異端の名詠士同士となるネイトとのコンビっぷりが中々美味しいものがあってお気に入りだったりします。しかし、何より少しずつ単なるクラスメイトから仲の良い友達、そしてかけがえの無い親友と一歩一歩進展していくネイトとクルーエルの関係が素敵。やはりクルーエルのために頑張るネイトの姿はかっこいい反面どこか可愛らしいというかなんというか。クルーエルに触発されて少し女の子らしい一面を覗かせるエイダにも色々と先行き不安ながら何かのフラグが見えたり見えなかったりします(なんていうか、とても先行き不安なフラグだけど)。

何かと言葉を濁す半面、不穏な言葉を口にするアーマにアマリリス、再びクルーエルを襲う不穏な影、動き出したシャオ一派、そしてネイトとシャオの邂逅……と、物語はこのまま一気にクライマックスに突入する模様。今回はその序章といった感じで散々盛り上がった4巻5巻あたりと比べるとちょっと急展開すぎる部分が気になってしまったのですが、これからまたぐんぐん盛り上がっていくと思われる8巻以降が楽しみです。

…ていうか、ひょっとしてミオにも何か秘密があったりするんだろうか…物語の根幹に関わりそうなキャラクターを残してキャラクターが一新される今回で唯一居残ってる件といい、なんか微妙にそう受け取れるような表現が見え隠れ……。


“文学少女”と神に臨む作家 上

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

ななせと付き合い始めた心葉はそれなりに幸せな日々を送っていた。ところが、そんな二人の間を流人が裂こうと画策し始める。一方、かつての“井上ミウ”の担当編集をしていた男性も心葉に接触を図る。そんな最悪のタイミングで、遠子先輩から激しい“裏切り”の言葉を向けられ、愕然とする心葉に追い討ちをかけるように事態は動いていって…
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本編完結編となる卒業編にして“文学少女”天野遠子の物語、前編。

そうかぁ?シリーズ最強のヤンデレは流人くんだったのかー。
今まで文学少女界のヤンデレ代表だった朝倉美羽のとってきた行動が子供の悪戯に見えるほど本気で怖いよ本気の流人くん。心葉の行動を読んで常にタイミングバッチリに行動を仕掛けてくる流人くんの姿に、もうホラー的な恐ろしさすら感じる。更に“死にたがり”こと竹田さんがサポートに回って、なんというか最悪のコンビが結成されてしまいました。もうなんていうかあれですね、男のヤンデレって流行ってるんですか?(違う)

流人くんの手の上で思うがままに転がされ、みるみる追い詰められていく心葉が不憫でなりません。やめて流人くん!心葉のヒットポイントはもう0よ!! また、遠子先輩の“裏切り”の言葉もなんというか……もうちょっと言うにしても、タイミングや言い方があるでしょう、としか言いようがない。ただ「読みたい」という以上に深遠な理由があるんだろうけど、あまりにもあのタイミングは心葉がかわいそう過ぎる。

遠子先輩の両親と、彼女を引き取った流人の母親・櫻井叶子の3人がかつてたどった道、そして叶子描く物語『背徳の門』、そして現在の心葉・ななせ・遠子の関係の奇妙な一致がとても不吉な何かを指し示しているようでなりません。物語は次回で完結・最終巻とのことで、「月花を孕く水妖」でのエピローグを信じれば…非常に重いラストが待っているようにも。少しでも3人が幸せになるような結末が訪れますように。

…それにしても、遠子先輩の「本を食べる」性質とか、流人くんの最後の爆弾発言とかって、実際のところどうなんでしょうね。本を食べる遠子先輩という設定からして、ある程度の不思議要素が世界設定に織り込まれているであろう事はなんとなく想像つくんですが…。


黄昏色の詠使い6 そしてシャオの福音来たり

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

授業が自習になって、ミオやクルーエルと共に名詠術の練習をしていたネイトは、ミオからクルーエルの誕生日がもうすぐだと聞かされる。話を聞いて、母親がかつて自分に見せてくれた夜色名詠術で“贈り物”をしようと決意するネイトだったが、失敗ばかりで…ネイトとクルーエル達の愉快な学園生活と、“第二楽章”へと続くエピソードを描いた短編集。
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女 装 ネ イ ト 萌 え 。 (挨拶)

クルルとネイト、カインツとイブマリーのラブラブっぷりや、本編には出てこない愉快な仲間たちの暴走っぷりも最高だったのですが、とりあえず今回の感想はこれに尽きます。「白奏」サイコー。ネイトは絶対女装が似合う子だと思ってたんだ!!

クラスメイト達に押し切られてイヤイヤ女装させられてしまうくだりも最高ですが、女装したネイトをみた先生方が彼をイブマリーだと勘違いして取り乱す姿が妙に笑えました。しかも潜り込むのは男子禁制の“女の園”で、緊張感も無駄にバッチリ。女装潜入モノの醍醐味を存分に味あわせてもらいました。腕の細さを指摘されて、身体を鍛えようと密かに決意するネイトとか、もう最高です。本当にご馳走様でした。

本編自体が優しくてシリアスな物語が多く、コメディ路線は向いてないんじゃないかなとかちょっぴり心配していたのですが、本編とは打って変わってコメディ全開なストーリーが非常に新鮮で、面白かった。濃ゆい学友達に振り回されるクルルとネイトには同情を禁じえませんが、同時にこれまでずっと重苦しい展開が多かった分、物凄く楽しそうな様子が伝わってくるのが純粋に嬉しかったです。特にエイダは本編のシリアス路線でも、短編のコメディ路線でも大活躍で素敵でした。

個人的にはそんな短編側の濃ゆいメンツに加えて、イ短調のメンバーまでが勢ぞろいするオールスターな黄奏「走れ、そいつはあたしのだ!」が一番お気に入り。「なんでもあり」という言葉から、物凄いドタバタなストーリーが展開されるであろうことは予想が付いたのですが、これは予想以上。目的の為には手段を選ばないエイダ&キリエコンビとイフレティカの3人にも爆笑でしたが、帰ってきた爺ーズと親バカ全開イ短調の皆さんが最高!

本編は“第二楽章”に突入し、ますます重い展開になっていきそうな勢いですが、こういう息抜きな短編もちょくちょくやってほしいなあ。ドラマガ本誌連載の短編はまだストックがあるようなので、第二段を激しく期待しちゃいます。


黄昏色の詠使い5 全ての歌を夢見る子供たち

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

意識を取り戻さないクルーエルの容態は日増しに悪化していった。ティンカは少しでも彼女を救う可能性を求め、サリナルヴァが副局長を務めるケルベルク研究所へ彼女を移す事を決める。治療のためなら仕方ないと周囲が思っていた中、唯一クルーエルを移す事に反対したネイトは一人で研究所を目指そうと学園を飛び出すが…?
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灰色名詠を使うミシュダルとの対決やクルーエルとアマリリスのに決着がつく、第一部(というかEpisode1)の完結編となるシリーズ第5巻。

クルーエルを心配するネイトやミオ、そしてクラスメイト達の姿に思わず心が暖かくなりました。1巻を読んだときに感じた独特の「綺麗さ」や「暖かさ」が全開のお話になってて、大満足でした。特にクルーエルとネイトが二人で詠を唄い合うシーンは本っ当に最高。

ちょっと中盤辺りで詰め込みすぎというか少々わかりづらい印象を受けたのですが、エピソード2への波乱をちょっと含みながらも最終的には誰もが哀しい想いをしていない、素敵な決着のつけ方はなんともこのシリーズらしいというカンジで大好きでした。

……なんて感想もあるにはあるんですが、もうその辺は正直建前で。今回はとにかくネイトとクルーエルの二人に悶えた…ッ!!クルーエルを心配するネイトの姿がもうとにかく可愛いのなんの。本文でも挿絵でも、散々悶えさせてもらいました。もうとにかく今回はかなりオープンにラブラブな二人を見られます。

?——おやすみのキス、して?

「だめですクルーエルさん。僕、おやすみのキスなんて絶対しません」
「ねえ、クルーエルさん」
「もし僕が……おやすみなさいじゃなくて、おはようございますってキスしたら……クルーエルさんは目を覚ましてくれますか?」

ぶっちゃけこのやりとりを見たときは電車の中なのにも関わらず転げまわりたい衝動にかられました。
お、おおおおおおおお持ち帰りィィィィッ…!!!(落ち着け)

今後は4月に短編集、そして完結編となるエピソード2へ続いていくとのことで、個人的にはもうひとりの美少年キャラ(と勝手に脳内で認定しました)シャオ君とネイトの対決がとっても楽しみです。


“文学少女”と月花を孕く水妖

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

夏休みに遠子先輩たっての頼みで、半ば強引に麻貴先輩の別荘につれて来られた心葉。ところが、彼らの前に八十年前に起きたという惨殺事件の影が忍び寄る。八十年前の事件との様々な符合を自ら仕組んだ麻貴先輩の思惑とは…?
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心葉と遠子先輩がすごした、まるで“夢のような”夏休みの物語を描いた番外編。
単なる番外編かと思いきや、最後で物凄い不意打ちを喰らわせられました。なんとなく序盤から普段と違ってどこか不安そうな遠子先輩の描写が大量に出てくると思ったら、こういう幕引きですか!一気にクライマックスとなるであろう「卒業編」が待ち遠しくなってしまいました。ていうか、これでななせエンドがほぼ確定となった訳ですが!大どんでん返しで遠子エンドをちょっぴり期待してたのに!

麻貴先輩の別荘を舞台に巻き起こる八十年前の惨劇の謎解きや、文学作品の薀蓄も勿論、いつもの通り魅力的ですが、今回はとにかく遠子スペシャルといっても過言ではありません。麻貴先輩やお手伝いの魚谷さんにヤキモチを焼く遠子先輩、不安げで儚い遠子先輩、そしていつもの通りの“文学少女”な遠子先輩……と、彼女の魅力が余すことなく描写されています。最近は琴吹さんがヒロイン扱いで遠子先輩の影が薄かったと言うのもあるけど、とにかく遠子先輩がめちゃくちゃ可愛い。ななせさんも可愛いんだけどやはり遠子先輩好きだ…!

ところで、ラストの麻貴先輩と○○○のやりとりは…意味に気が付いたら本当にニヤニヤが止まりませんでしたね。麻貴先輩、ななせさん以上のツンデレ娘だと見た!そんな二人に全く気づいてない、ウブな心葉がまた微笑ましい。

今回取り上げられた泉鏡花の作品の如く、夢のように美しく、そして夢の終わりの儚さを感じさせる番外編でした。読み終わった後、しばらく余韻に浸ってしまった程。もうとにかく卒業編が楽しみです。


黄昏色の詠使い4 踊る世界、イヴの調律

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

灰色名詠を操る"敗者の王"の襲撃から数日。休校になっていた学校も始まり、今までと同じ平和な日々が再びやってくるはずだった。ところが、"敗者の王"の襲撃の際に不調を訴えていたクルーエルが校内で倒れ、昏睡状態に陥ってしまう。更に、姿の見えない生物の姿が見え隠れしはじめて…
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クルーエルの秘密、名詠式やセラフェノ言語の秘密、そして夜色名詠の真実…などなど、物語の根幹となる謎が一気に明らかになるお話。実質的に3巻からの続きですが、「イ短調」の面々を始めとした新キャラクターが一気に登場して、第一部クライマックスに向けて加速を始めたという印象です。

何はともあれ、爺二人の大活躍に、めちゃくちゃ震えた。なんだこの 萌え 燃えるジジーズ!「生涯の友」とか「背中を預けて良いか」とかもうね、本当に鳥肌モノ。よもや爺にこんなに萌える日が来るとは思わなんだ…。

漸く殆どのメンバーの顔見せとなった<イ短調>の面々ですが、予想以上にシャンテさんが素敵。竹岡さんのイラストがまた合っていて、「芝居がかった仕種がちゃんと絵になる」とかそういう描写が自然に思い浮かぶ素敵なお姉様でした。今回は全然出張んなかったけど、次巻では是非活躍していただきたい一人です…!

そのほか、様々な登場人物の想いが交錯する様子も非常に面白いのですが、なんといっても今回の見所はクルーエルとネイトのラブラブっぷりにあるといっても過言ではありません。物語の都合上、クルーエルの出番は本当に短いんだけど、いつのまにやらデレ全開のクルーエルと自らの非力さを自覚しながらもそんな彼女を必死に守ろうとするネイトの姿が猛烈に微笑ましい。保健室でのストロベリートークにはひたすら悶えました。

次巻でいったん1段落ということでいよいよ物語は一旦クライマックスへ。
本当に続きが楽しみなシリーズです。


“文学少女”と慟哭の巡礼者

[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂

クリスマス以来なんだか良い雰囲気のななせと初詣にやってきた心葉。二人の距離感が着実に縮まっているのを感じながら次は映画に行こうと約束をするが約束の日の直前になり、ななせは階段から落ちて入院してしまう。彼女のお見舞いに行った心葉の前に現れたのは、あの朝倉美羽だった…!ななせと芥川は「美羽が嘘をついている」と言う。でも心葉は、その言葉を信じることが出来なくて…
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これまでの話で少しずつ過去の出来事から立ち直って来ていた心葉が、幼馴染でトラウマの元凶(笑)朝倉美羽と向き合うことになる物語。読者側から見ると明らかにいろいろと魂胆ミエミエの嫌な女・美羽と、そんな明らかに怪しい彼女の言動と、ななせや芥川の言動を秤にかけ、しかも美羽の言葉を「信じられない事が出来ない」心葉の姿に前半では散々イライラ(そしてハラハラ)させられましたが、今まで積み重ねてきたストーリーが思わぬ伏線になり、思わぬ形で物凄く綺麗に落ち着きました。もうなんていうか、「お見事!」としか言いようがありません。ほんとに最高傑作っ。

自分以外の心葉に近づく人を排除しようとする美羽の行動は凄くヤンデレ的なんだけど、同じくらいに、本性を露にした美羽にあそこまでされて、親友と心を許した女の子から警告を受けてもなお美羽を疑えない心葉も違う意味合いでかなりヤンでたとおもう。お互いに歪な形で依存しあっていたからこそ、その関係が崩壊したときのショックは大きかったし、その崩壊を必死で食い止めようとする美羽の姿が無性に哀しかった。そんな中、心葉を救おうとして、どんなに傷つけられても美羽に真っ向からたち向かうななせと、3人の間で板ばさみになって壊れそうな心葉を温かく支えてくれる遠子先輩という、二人の対照的な姿が印象的でした。流人くんや竹田さんの思わぬ活躍も良かったなあ。

そして今回のキモとなるのは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と、"井上ミウ"の投稿作「青空(ソラ)に似ている」。ひそかに読んでみたいと思っていた"井上ミウ"の処女作品は、心葉がなぜ美羽と同じ新人賞に小説を投稿したかの理由、そして削られてしまった初稿のラスト部分まで含めて物凄く綺麗な話でした。普通に泣けた…。

そして最後は遠子先輩の綺麗な笑顔と、遂にこの物語の最大の謎である「文学少女」の謎を示唆して幕引き。彼女が語る"なりたい人"の姿とあまりにも重なってしまう笑顔が印象的でした。っていうか、そ、そそそそんな言葉で終わられると次が気になってしょうがないじゃないっ!!

大好きなシリーズだけに次で完結というのは本当に寂しいですが、続きが本当に楽しみです。


黄昏色の詠使い3 アマデウスの詩、謳え敗者の王

[著]細音 啓 [絵]竹岡 美穂

「孵石」を研究している研究所が灰色名詠士により襲われる事件が相次いだ。次の狙いがトレミア・アカデミーではないかと予想した教師達は、学校を一時的に閉鎖するという決定を下す。事情を知らないほとんどの生徒達は不安に思う半面、突如振って沸いた休校を暢気に喜んでいたが、既に"敵"は学園寮内に侵入していて…!?
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人を石に変える力を持つ「灰色名詠」の名詠士と対決するお話。同時にクルーエルの持つ力が徐々に明らかになってきました。突然真精を呼び出したり、2巻で自らの力に不安を覚えていたりしたのできっと凄い潜在能力を秘めているんだろうなあとは思っていましたが、その才能は想像以上のもの。なんか妙なフラグも立っているようで今後本当にどうなってしまうのか…。

1巻・2巻は良くも悪くも「綺麗で優しい」お話で面白くて確かに大絶賛だったんだけど何か1味足りない気がして、ラノベサイト杯で投票した際も他の4作品と比べると1レベル下がる印象だったのですが、この3巻で一気に面白くなってきました。どこが、と聞かれると難しいんだけど。特にただ「綺麗だな」としか思っていなかった“讃来歌”のセラフェノ音語に明らかに知っている単語が(本編中に出てくる単語とは違う意味で)入っているのに気づかされた時には思わず震えた。あとがき曰くセラフェノ音語には今後の伏線や重要な事実が隠されていたりするらしい。…だ、誰か解読してー!!(他人任せ)

新キャラのサリナルヴァさんに萌え。白衣にハイヒールで典型的な研究者気質で、でも武道派なお姉さんタイプだなんてどれだけ私を萌えさせれば気が済むんですか!彼女の活躍に密かに期待w

ラストバトルでは、強大な敵である灰色名詠の使い手に対し、絶体絶命の状態からエイダが、サリナルヴァが、ミオが、クルーエルが、ネイトが…とそれぞれがお互いを信頼して相手に戦いを託していく姿が印象的でした。まさに「黄昏色の?」シリーズならではの美しさ・優しさが伝わってくるバトル。特にクルーエルからミオ、ミオからネイトへのそれぞれの戦いのリレーは本当に素晴らしかったです。ネイトが悩みながらも初めて自らの「コトバ」で無事名詠に成功したのは皆の協力が不可欠だったわけで…ほんとこの辺りでは身悶えました。間接的ではあるけれどアーマとクルーエルのやりとりがまた良かったです。

そしてラノベサイト界隈でも話題騒然な(笑)ラストのあの台詞!
まだまだお互い「子供」同志なネイトとクルーエルの淡い恋を印象付ける、最高の殺し文句だったと思います。ああ、なんていうかほんと可愛くて微笑ましい!今後の二人の行方も注目ですね!!


…ところで今回、何か既視感を感じるなあと思っていたのですが、
Alles ist im Wandelさんの感想を見て激しく納得してしまいました。

都合二回あった奴との遭遇の場面は、なぜか脳内で甲田節になってました。

正直近頃の「グリム」よりも甲田節入ってた気がします。