伝説の勇者の遺物を追って引き続きネルファ公国で探索を続けるライナとフェリス。ところが、他でもない王のシオンの命を受けて行動しているはずなのに、『忌破り』としてローランドからも追われる羽目に!?追撃部隊の隊長・ミルクはライナの事を知っているようで……。
短編集とのリンクが気になる(情報量が、情報量が…多い!)
ライナとミルク達との邂逅、『勇者の遺物』を追う者たちとの衝突、エスタブールの内乱…と情報量が多い巻だった。シオン側の最大のイベントは間違いなくエスタブール内乱ですが、フロワードの提案した血も涙もない計画に乗ると見せかけて直前に不意打ちで計画の責任者に人情派のクラウを当てるのにはニヤリとしてしまう。良くも悪くも非情になりきれないシオンの方針を、フロワードも悪くなく思っているようではありますが。そしてエスタブール内乱、アニメでも割と印象に強いお話だったので誰が黒幕だったとかは覚えていたんですがその上で読むと問題の人が露骨に怪しい動きしててなるほどな……。忌破り追撃部隊のミルクとライナ達が遭遇する話、これよんだことあるな…?とおもったら短編集の第一話の別視点になってるんですね!?同じエピソードを描く物語なのにこちらは少しだけミルク視点より、恋い焦がれたかつての幼馴染との再会とそのライナが自分のことを覚えていないことに対する不安で少しだけシリアス寄せのエピソードになっているのが印象的でした。いやその後の展開を考えると全く本来コミカルなエピソードでもない気がするんだけど。
あとがきでもそれとなく短編集とのリンクを匂わせてきていて、短編集読めという圧を感じる。第一話だけはアニメでもやってた話なので軽く読んだのですが……そうか……。
相変わらずライナとフェリスの関係性が良い…。
せっかく見つけた遺物を扱いきれず、その場に残してきてしまったふたり。シオンからの依頼で再度遺物のもとに戻る羽目になるが、そこでは周辺住民達が皆殺しにされていた。同じ勇者の遺物を狙う二人組と戦う羽目になるが、ライナの複写眼が暴走してしまい……。暴走したライナに立ち向かうフェリスがかっこ良かった…!!!本来なら戻ることがないはずの複写眼保持者の暴走、しかもそれだけじゃなくてなんか更にヤバそうな天の声まで登場して……という絶望的な展開と、前巻からそれとなく描かれてきた「複写眼が暴走して彼女を傷つけたら」というライナの心配を見事にぶったぎってくれる、フェリスの目のさめるような身のこなしと口上が最高でした。
バトルの前に描かれた、フェリスの微妙な表情変化に気づくライナとか、衣食住だんご+昼寝に端を発したふたりの仲良さそうなやりとりとか、そういう空気感の描写が丁寧に入ってくるからこそ暴走したライナにフェリスが伝えた「茶飲み友達」という言葉が刺さるんだよね……。一見興味なさそうな彼女がライナの書いたレポートの最初の文章を心に焼き付けているという事実に、胸が熱くなる。