グレンとシスティーナとルミアがセリカを追って姿を消した後、「天の智慧研究会」と彼らが操る死者たちの侵攻が本格的に始まった。圧倒的な力に開眼したリィエルの奮闘、指揮官となったイヴの巧みな戦略もあってなんとか持ちこたえていたが、『剣の姫』エリエーテの登場によって戦況が大きく傾くことに……。
敵も味方も総登場なクライマックス前哨戦(ただし主人公不在)
これまでに登場してきた敵・味方の殆どが登場するオールキャストの最終決戦がめちゃくちゃに熱かった!!いやもう30巻近く続いてるとどこで出てきたキャラかわからない人も何人かいたりはしたんですが、特に短編のキャラクター達が重くなりがちな話を引っ張り上げてくれるのがとても楽しい。ヒューイやニーナの再登場にはじんわりしてしまったけど、ロザリーさん本編に出すのはほぼほぼ反則では!?あと本編キャラだけどハーレイ先生、本当にこういう時、普段のかませ犬キャラはなんなんだっていうくらい良い仕事しますよね……。とにかくこれぞ最終決戦!!と言わんばかりの豪華メンバーによるフェジテ防衛戦がめちゃくちゃ楽しかったんだけど、そこに集った人々の心のなかに宿る、ここにはいないグレンの存在にまた胸が熱くなってしまった。本編には一切出番がないのにこんなに主人公の存在感があるのって凄いですよね。あくまでグレンが何かをしたわけではなく、それでも彼がいたからこそ手繰り寄せられていく僅かな勝機にワクワクが止まらない。というか早く21巻が読みたい(気が早い)。
イヴ、リィエル、アルベルト、それぞれの戦い
どうかんがえても「詰み」目前な戦況をひっくり返すイヴの策がまた、めちゃくちゃに気持ちよかった。かつての彼女からは想像もできないような綱渡りをしながら奇跡を掴み取るような「奇策」には目を瞠るしかないし、実家の重圧から解き放たれて「炎の一刻半」を経て指揮官として一気に成長した彼女の姿に胸が熱くなるし、そんな彼女の頼もしい姿をかつて「フェジテ最悪の3日間」で振り回された警邏庁の人たちが目の辺りにするというのがまた……。一方、現代に蘇った英雄『剣の姫』エリエーテに苦戦を強いられるリィエルの描写はとにかく読んでいて心が痛い。前巻(追走日誌9巻)のラストであんな展開を見せておいて、しょっぱなから読者を奈落の底に突き落とすのはマジでやめてほしすぎるし、エリエーテに勝つために提示されたのは、かつてグレンが必死に掬い上げ、仲間や級友達によって少しずつ積み重ねられてきたリィエルの人間性を削ぎ落とさせるような選択で。この二人の戦いは本当に最初から最後まで光が見えなくて、読むたびに胸が苦しくなってしまった。誰一人、なにひとつ欠けることなく帰ってきてくれることを願うばかりなんですが……。
そしてパウエルとアルベルトの元師弟対決。これもほんとうに先が見えない……アルベルトの新しい力である義眼もなんか色々と不穏な雰囲気を感じるし、復讐に囚われたルナの介入もありそうだし。
三人の戦いのどれかに決着が付けば一気に状勢が傾きそうで、その反面フェジテ側にとってはどれ1つとして落とすことの出来ない戦いで。勝利の女神はどちらに微笑むのか。そしてグレン達は間に合うのか。19巻の終わり方もなかなかに鬼畜でしたがこの戦いの決着がつかないまま20巻に持ち越しなの鬼畜がすぎるんですよね早く21巻が読みたい…!!!