[著]土橋 真二郎 [絵]白身魚
“ゲーム”の説明も受けずに初戦で敗退した8組の生徒はカードの供給も受けられず、無気力な毎日を送っていた。そんな中、高橋新一は周囲を観察するうちに「内通者」達が出入りする抜け道を発見する。そこには4つの性格の異なる居住スペースとカードの配給があった。暫くの思案の末、8組の生徒達を上のフロアへと導く高橋だが、そこに待っていたのは更に過酷な“ゲーム”と鳥籠に囚われた“天使”だった…!
今期の電撃の新人作品の中で一番評価まっぷたつだったと思われる「扉の外」の第二段。続編で一気に読みやすくなった印象です。というかどうしよう、
一気にツボな作品に化けやがった!!
基本的にいつまでも「部外者」で、ヒロインとの描写も全然足りなかった前作に比べて主人公に感情移入しやすいのが一番プラス。ちょっと高校生にしては冷静(というよりも冷酷)過ぎる部分も多々ありますが、このくらいならなんでもありのライトノベルだし、許容範囲でしょう。なんだかんだいって、彼の意思は
鳥篭に囚われた蒼井を救出する(ネタバレ)という実に若者らしい1ポイントに絞られている為、そこまで不可解な行動は取らなかったですね。というか、本当に今回の主人公・高橋新一は他の女の子キャラにもいい顔はするものの、なんだかんだいって見事に
蒼井しか見てないんですよね(笑)いやあ、ほんとこいつ、冷静キャラに見せかけてめっちゃ青春してる。何よりもラストで吐露される、高橋の真摯な気持ちが胸を打ちます。
お互いの顔が見えないクラス別の対抗戦“現実感の無い戦争”だった前回に対して、今回は同じクラス内での直接対決を描く為に前回から感じていた人間同士の汚さに磨きが掛かっています。黒川を中心とした、男子達の直接的な暴力による発散行為も相当脅威を感じるに足るものでしたが、正直《レイク》に登録した女子達の陰湿さが一番ヤバイ。なんか1巻の6組女子もそんな部分ありましたが、自分達の弱点と強みを正確に把握して直接糾弾し辛い状況を作るっていうのが凄く現実的にありそうで…お、
女って怖いね…!!(お前が言うな)(つか作者さん、女性恐怖症?)
しかし、個人的に気になった点を言うなら蒼井以外の、1巻で出てきたキャラクター達を全く生かせてない印象なのがちょっと。特に正樹愛美のあの
正しすぎてどこかイカレてるとでも言うような、かなり上手く使えば電撃でも稀有な特性をもつキャラクターになりそうな感じだったのが、今回は単なる理想主義者っぽい印象になってしまったのが凄く残念…。1巻で結構いいところ持って行った氷室も見事に空気だし…。
今回は
ゲームの進行によっては確実に1人の人間が死ぬ、と約束されているのでゲームに対する現実感や緊張感も相当高かったです。ゲームが進行する毎に息を呑み、ハラハラしながら最後まで必死にゲームを見守る事になりました。というか、すいません、
こういう設定大好きなんです私。これでバッドエンドだったら紙一重で一番ダメなパターンなんだけど、ギリギリのところで結局死ななかったのでほんと嬉しかったなあ…!(ネタバレ)それにしても鳥篭に囚われてるっていうのがなんだか倒錯的なエロスを感じます(あああ、この一言で
今までの感想が台無し!!!)
まだ1、4、6、8組以外のクラスがどうなったのかも語られていませんし、もう少し続きそうな印象ですね。でもこの調子で毎回ゲームの設定がエスカレートすると、最後は本当に○トロワもびっくりの殺し合いに発展するのではないかと戦々恐々。個人的にはあと1?2巻で終らせるのがベストなんじゃないかなあとか思います。
というわけで、久しぶりにツボポイントにこれ以上ないってくらい大ヒットした「扉の外」ですが、いかんせん1巻の評判が真っ二つなんでどれだけ読む人が居るのかが最大の疑問です。前回かなり絶賛していた
hobo_kingさんが今回相当悪い評価を付けているのを踏まえて考えると、今回の話は「
1巻がつまらなかった人の方が楽しめる」という恐ろしい状況になっている予感がするんですよねぇ…。とりあえず大絶賛してみるので、1巻よんで微妙だと思った方も余裕があったら是非読んでみてください。
私が3巻読みたいから絶賛しておきます。