マフィアとか人非人とかモンスターな作品を光速で生み出すライトノベル作家でカモッラ(イタリア系マフィア)な成田悪悟は締め切りに追われていた。彼の所属する“衝撃文庫”はライトノベルレーベルとは仮の姿でその実態は悪の組織なので、締め切りを破れば消されてしまう。明日の朝の締め切りに間に合わせる為、「新本格変態系全裸作家」の有沢・汚水、「ゴスロリ系内臓作家」の藤原祐朋、本人も中年の用務員に変身する「変身系学園モノ作家」おかゆまさこ、対衝撃文庫用に生み出された筈が何かに目覚めて鞍替えしたロボット「萌えアクション作家」高橋876郎が成田の所に送り込まれるが…5人は朝までに原稿を完成させる事が出来るのか!?
いつぞやの迷作「ネコのおと」を思い出させる、電撃の人気作家5人が半楽屋ネタを展開する、ギャグ(…?)小説。富士ミスは自虐ネタを盛大に展開しましたが、その富士ミスを眼中にすら入れてない(byネコのおと)電撃は世界を裏から操る悪の組織ときました。さすが僕らの電撃はスケールが違うぜ!!!
とにかく各作者さんのキャラが濃い。成田作品は未読、有沢さんの作品は「いぬかみっ!」と「インフィニティ・ゼロ」で大分違うようなので(前者未読)なんともいえませんが、各キャラクターに当人の作風が如実に反映されていて非常に素敵。全員色々な意味で人間を超越した頭のネジのぶっ飛び具合なのですが、「あ?うん、なんかこの人ってこういう人っぽいよね」と思わせる何かががが。
特に個人的にツボポイント直撃だったのがやっぱり藤原さん。なにこの頭がおかしい舞鶴蜜(惚)。作中の“藤原祐朋”としてのキャラクターの濃さも群を抜きますが、ご本人が書かれたという「目次」は必見です。何か色々伝わってきます。あと1行目が一瞬黒桜日記に見えちゃってほんとすいません。
最初からしっちゃかめっちゃか濃ゆいキャラクターが大暴走のギャグコメディ…と思いきや、ラストの熱さが半端じゃありません。特に、成田兄妹のやりとりが凄くいいです。
「—常識的でない苦難が何度も押し寄せて」
「でも主人公は仲間達とそれをクリアしていくよ?」
「何度となく挫折を感じたりもして」
「だけど希望はなくなるようなものじゃないよ?」
「誰にも理解は得られないかもしれないけれど」
「でも、読む人は解っているよ?」
「たとえエンディングがハッピーではなく、アンハッピーエンディングだったとしても」
「読んだ人は、自分ならどうするかと思うし、続きを自ら書こうとしたり、それ以前に—」
良子が己の胸に手を当てる仕草が聞こえた。
「読めば——読めば必ず何かを思うよ?」
ライトノベルに関するやりとりなのですが、うん、確かにラノベ…というか「物語」ってそういうもんだと物凄く納得。偉く創作意欲を掻き立てるやりとりでした。
しかしなんというか、「アツさの無駄遣い」という言葉がなんとなく脳裏をよぎらなくもないです。ていうか、ラストバトルはどこの1st-G概念ですか!?ちょっと皆で「文字は力になる」を体現してみたんですよね!?
「実はこの世界の舞台は川上世界で言うEDGEとかGENESISとかその辺の出来事だったんだよ!」
「な、なんだってーー!?」
「連射王」にFORTHシリーズのクレジット入ってたのに非常にびっくりした今日この頃いかがお過ごしですか。川上さんの次回作は新シリーズでお目見えらしいです。いやあ楽しみですね。