[著]小林 来夏 [絵]由良
2回目となるイベント参加の場で七海の本を買ってくれたのは明良という儚げな美少女。しかもその兄は西南北の元師匠で、ワイルド系な商業作家・ワイルダー東条だった!西南北や高橋とともに、かなり強引に東条の原稿の手伝いをさせられることになった七海だが、彼には脱税の疑惑がかかっていて…!?
同人誌作家を目指す少女と、美形カリスマ大手が繰り広げるシンデレラストーリー(?)第二段。
あんな騒動があったタイミングでこのネタ来るとは、小林先生空気読みすぎです。密かにマダム・バタフライこと蝶子さんの元ネタはある程度この渦中の方ではないかと思っていたので(バタフライエフェクトはスルーしても、ジャンルと言い、華やかなお名前といい…)蝶子さんに脱税疑惑のネタが絡んだら個人的には完璧だったのですが(笑)
相変わらず執事がいい具合に
イカレイカしてます。今回は西南北と執事の活躍がイマイチ少なめでちょっと残念ですが…
むしろ
82Pの挿絵のためだけにも買う価値ありです。
ストーリー本編も凄く良いですが、一時話題になった「同人誌の脱税」という件に関する薀蓄がめちゃくちゃ面白かったです。利益が20万円以上上がったら納税しないといけないとか、なぜ同人誌が脱税しやすいのかなどなど。ちょっと複雑な家庭環境である東条兄妹の家庭環境や脱税の理由にも焦点があたり、前回よりもぜんぜん面白かったかな(やっぱ、「バタフライエフェクト」とテンバイヤーネタは無理を感じたし)。
ただ、正直やはり七海の「弱小サークル」としての活動描写は、どうにも本物の弱小サークルの人間からするとどうしても微妙です。ジャンルの違いはあると思うんだけど、書いてる人自身は商業で活動していてそれなりに大手なのだろうし、どうもそこだけリアリティが欠けてるって言うか…
蝶子が七海に対して
「本当にすきなのね、バス王が」って言うシーンがあるんだけど、やはり読んでいると七海は本命はオリジナルで、でもオリジナルが売れないから今はバス王で売名中、って印象を感じます。そういう話がメインじゃないのは分かるけど、どうせ「弱小サークル」であることに変わりは無いんだから最初からオリジナルサークルとして活動させても良かったんじゃないかなあとか思う。というか、大手の裏事情的なネタが満載の本編の方が断然面白いので、いっそのこと七海もとっとと大手サークルまでなりあがってしまえばいいと思うんだけど。
ところで、この本を読んでいて最大の衝撃を受けたのは実はあとがきだったりします。
ていうかね、わたしBLの方のペンネーム水戸 泉っていうんですけどね、…
な ん で す と ?
実は私、商業系のBL小説は2冊しか持っていないのですが、うち1冊が件の水戸泉さんの本だったりします。もう一冊はかの有名な「お金がないっ!」。後輩が彼女の某錬金術師漫画時代に出した同人誌のファンだったので、同人誌の方も何冊か読ませてもらったりしました。たった2冊しか持ってないBL小説作家のうちの1冊にヒットするなんて狭すぎるよこの業界。
ちなみに持っているBL小説は、不思議な力で両性具有にされてしまったショタッ子がツンデレ天然系な美形青年だの独占欲の強い弟だの、学校の不良だの、触手を呼び出せたりする不思議な少年だの相手に大変な事になると言う実にファンタジーHOMOな内容だったのですが主人公がヤられまくってる割りに本編はしっかりしていて面白く、読んだ同人誌の方もエロは多くて自分設定大爆発だけど文章が上手く、ストーリーに引き込まれる力は一品で普通に面白いと言う感じで密かに「いっそライトノベル方面に来てくれたら作家買いするのに」と思っていた作家さんでした。こんなところでめぐり合うとはなんの運命の巡り合わせでしょうか。
…いっそ小林来夏名義で電撃文庫とかMF文庫Jあたりでギリギリなバトルありなファンタジー書いてくれたら絶対買うんですけど、駄目ですか。