[著]穂邑 正裕 [絵]久坂 宗次
文化祭を直前に控えたある日、幼馴染の少女・羽田村美久が“学校を辞める”という告白を受けた晃太。その理由が「学校がつまらないから」だと聞いた彼は学校を美久が面白いと思うような楽園にするため、勝者が1つだけ学校の校則を変える事が出来るという全校生徒強制参加のサバイバルゲーム〔ガンスター〕での優勝を目指すが… | |
うーん、こういうオバカで熱くて青春なノリは大好きなのでかなり期待したのですが…妙に軽いノリで執拗に繰り返される暴力行為の数々がどうにも肌に合わなくて、ちょっと個人的に駄目な作風でした。キャラクターといい展開といい、露骨にバトルロワイヤルのオマージュっぽくしてるのは良いのですが、「人死には出ません」という言葉を免罪符にした位で一歩間違えれば死傷者が発生しかねないサバイバルゲームに1万人以上居る全校生徒のほぼ全員が乗ってしまう。「あいつ、死んだかもねー」なんて台詞が罪悪感も緊張感も無く交わされる。とにかく脇役である生徒達のどこかに倫理観を置き忘れたとしか思えない非人間的な行動・発言への薄気味悪さが最後まで拭えませんでした。
そもそもどう考えたってこのルールだと死者が出てもおかしくないのに、ソレに対して危機感を感じる生徒が誰も居ないのがおかしい。つか誓約書で「死者が出ても学校のせいじゃありません」的な文章あるんだよね。綾峰に至っては後半から完全に殺すつもりで攻撃してますし、モデルガンについても思わせぶりな煽りがありました。コメディ及び主人公達のラブコメにメインを置きたいのなら、こういう不安を煽るような描写は避けて欲しかったです。ていうか、正直こんな危ないゲームを綾峰以外の誰も止めようとしなかったっていうあたりがまずおかしいだろ。実は普段から教師陣に洗脳かなんか施されてるんじゃないか、こいつら。
でも我武者羅に銃を取って戦ってきた主人公が、ヒロインに水を刺される様な言葉を突きつけられ、自らの目指す「楽園」への過ちに気づく辺りの展開は青春してて凄く良かったです。ラストの決闘シーンも凄く素敵でした。ただ、折角主人公が新たな気持ちで「楽園」を築くために改めて戦いをする決意をしてくれたのに、ラスボスは完全に頭のネジが5本くらい外れたキチガイ少年なので、会話がちぐはぐになってしまうのがなんだかなあ。個人的にはちゃんとした優勝後のビジョンを持って動いている生徒会副会長や、『公認番長』築地銀次辺りとも戦って欲しかったかも。
ラスボスがどうみてもキ○ヤマトな件について。
「誰も傷つけたくない!」と言いながらマシンガン乱射したりとか、「
僕が本気を出したら、誰だってかなうはずないんだよ?」とか……。というかぶっちゃけあまりにも似すぎてて、作者の人があの番組で為された主張を否定したいがためにあのラストバトルを書いたんじゃないかなんて妄想まで生まれてしまいました。いやさすがにそれはないと思うんだけど…。
キャラクター的には好きな女の子の為に純情一直線で突っ走る主人公は好感をもてるんだけど、ヒロインが人間味薄くてイマイチツボに来なかったのと、前述の理由でそれ以外の生徒には嫌悪感以外もてなかったので…。個人的には「自分、不器用ですから」な川田先生と金タスキの生徒会長は、結構良い味出してたと思います。ラストの体育館での川田先生のやりとりは不覚にも笑ったw
綾峰は
あと一歩間違えれば超ドツボなヤンデレ美少年だったというのに。
後日談も、いくら校則で「期間中のことは水に流せ」って書いてあったとしてもあっさり水に流しすぎな気がして…とにかく、あまりにもドライすぎる一般生徒達の非人間的とも言える行動の数々が倫理観的に駄目でした。メインテーマは熱血で一途な青春モノだったんだから、何も命の危険があるサバゲーにしなくとも良かっただろうに…色々と面白いなあと感じる部分も多い作品だっただけに、残念でした。
あと、表紙買いしておいて言うのも毎度アレなのですが、挿絵が微妙すぎる……なんか、キャラに動きがあるのはカラーページだけで、肝心かなめの白黒挿絵が妙に手抜きくさいというか、とにかく駄目。ていうか
エロい挿絵だけ無駄に力が入っているように見えたのは私の目の錯覚だよ…ね…?(´д`)