“Tiv” の検索結果 | ページ 25 | 今日もだらだら、読書日記。

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ネクラ少女は黒魔法で恋をする4

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

高校受験を目の前に控えた空口夏樹は、彼氏と上手くいかずに悩んでいた。それなのに姉の真帆ときたら、残しておいた冷蔵庫のプリンは勝手に食べるし、挙句人の枕元でブツブツと黒魔法の呪文を唱え始めるし…。思わず夏樹は一方的に姉を無視することにしてしまうのだが…
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「ネクラ少女?」シリーズ、4作目は各キャラクターに焦点を当てた短編集。空口姉妹の仲違い、大河内&雛浦が暴漢を退治するため奔走する話、湊山先輩のちょっぴり甘酸っぱい勘違い話(笑)と、演劇部の夏合宿の話の4本を収録。

真帆のネクラ成分は順調に薄くなり気味で、それが少女の成長を描く青春ラブコメとしてひとつの魅力ではあるんだけど、それが逆にこのシリーズ最大の個性であろう「ネクラ少女」という部分を徐々に殺しつつあるのが難しいところだなあ。なんていうか、ただの青春ラブコメになってしまって、安定した面白さはあるんだけどラブコメが元々あんまり好きじゃない身としてはいまいちピンとこない作品になりつつある…。

それでも各キャラクターの個性が立っているので、それぞれの短編は非常に面白かったです。一見仲悪そうに見えるんだけどお互いがお互いを気にせずには居られない空口姉妹の関係にニヤニヤしつつ、雛浦さんのまるでマンガみたいな(…小説だけど)家庭環境と、そんな彼女を引きずり回す大河内との凸凹コンビっぷりが微笑ましくなったりとかなり楽しめました。湊山先輩は……その……ご愁傷様、です。

ただ、真帆の毒気が抜けつつある現状では、演劇部の夏合宿を描く「空口真帆と仲間たちの夏」は正直微妙だった。一之瀬先輩との仲も進展するかと思いきや一之瀬は気絶しっぱなしで肩透かし食らわされたカンジだし……ここは一つ一之瀬先輩と色々なぶっちゃけ話をするみたいな嬉し恥ずかしイベントを挿入すべきだったよ!というか、一之瀬先輩の影が薄すぎて、「本当にコイツとくっつくの???」ってカンジが否めない。今のままだとこの二人の関係は真帆の空回りにしか見えなくて、次で余程上手い事やってくれないと、くっついても「え、なんで?」って思っちゃいそうだ。

そもそも、1巻以外での一之瀬先輩の存在が物凄く空気なので、何故真帆がそこまで一之瀬に固執するのかが見えてこないのが致命的です。キャラも他の演劇部の面々が上手い事キャラを立てているのに対し、あんまりキャラが立っていないように見える。読んでいるほうとしては、真帆も神門とくっついてしまえば?という気持ちにならなくもなく……

神門は2巻で登場した時には結構好きなキャラだったんだけど、本当に一之瀬と真帆をくっつける予定になっているのなら、神門は2巻のみのゲストキャラにしておいて3巻以降は真帆と一之瀬の恋愛模様に話を絞って欲しかったかなあ。

さてさて、物語は次で最終巻ということですが、殆ど全く進展が見られない一之瀬先輩との関係や3巻で意味ありげに出てきた割に4巻では存在ごとスルーされた生徒会長、真帆の傍に潜んでいるらしい黒幕悪魔……などなど、大量にあるような気がする伏線をどうやって回収してくれるのでしょうか。大きく物語が動くであろう最終巻に期待。

個人的にはラスボスっぽい雰囲気を纏った生徒会長の活躍がとても楽しみ(あれ?)


天元突破グレンラガン3

[著]中島 かずき [絵]品川 宏樹 [原作]GAINAX

ロージェノムを倒し、地上に人間と獣人の共存する国を作り上げた大グレン団。総司令になったシモン、その補佐になったロシウを筆頭に殆どの大グレン団メンバーは樹立された政府の要職になり、そして7年間の平和を謳歌していた。ロージェノムが遺した言葉に不安を感じたロシウを除いて。そして7年後、月から謎の新たなる敵が襲来して…!?
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アニメ版の「第三部」を描いたノベライズ第三弾。いきなりシモンが大人になってるよ!?いや、以前から第三部でいきなり大人になるって話は聞いてたんですが…実際目の当たりにするとビックリでしたw

7年間の平和な生活によりすっかり平和ボケした大グレン団の前に、更に強大で絶望的な敵が襲い掛かる!という展開で、今までになく絶望的な敵と立場が大きくなりすぎてしまった所為で1つにまとまれない味方……と、後半までもどかしい展開が続きます。かつての大グレン団の面々と、ロシウ率いる“第二世代”の戦後派の対立は本当に見ていてもどかしいというか、「そんなことしてる場合じゃないでしょー!!」と叫びたくなってしまいました。正直「あの」行き当たりばったりな大グレン団に政治なんてものが勤まるとは思えなかったのですが、もろにその予想とおりだったというか…彼らを疎ましく思うロシウの気持ちも正直判る。

それでも、彼らもただのうのうと7年間を貪っただけではないんだなあと思うような描写が多く、その辺は非常に楽しめました。父親になった二人の葛藤とかも興味深かったし、それ以上にキタンの葛藤する様子は凄く感慨深かったです。自分よりもずっと若い筈のロシウが、どんな思いで感情を殺してあの判断をしたのかなんて、以前のキタンだったら気付かなかったんじゃないかなあと思いますし。2巻まではただのキレやすいバカ男としか思えなかった(酷)のがすっかりいい男になって…(正直、そのいい男っぷりが死亡フラグに思えてしょうがないのはきっと気のせい。…なんかそんな噂を聞いた気がするのもきっと気のせい。)

そしてなんといっても一番成長したのは総司令になったシモンでしょう。特に2巻でのうじうじしっぱなしのシモンの姿が印象に残っているので、ニアがああいうことになってしまっても、自分の処刑を叫ぶ市民達の姿を見ても、自分の殻に篭らず毅然として対応している姿は物凄くかっこよく感じた。ほんと大人になったんだねシモン…。ヴィラルとの凸凹関係も非常に良かったです。こういう元宿命のライバル同士がなんだかんだいいながら共闘する姿って言うのは燃えますね!!

というかあれはどうみてもシモン×ヴィラr(強制終了)

後半の、大グレン団の活躍はやはりこうでなくちゃというか、この人たちは前線で戦ってるのが似合うよなあといわざるを得ない爽快な展開。ていうか、もろに「俺達の戦いはこれからだ!!」な終わり方なんですが、まだ4巻があるんだよね!?(笑)

最終巻が楽しみです。


ネクラ少女は黒魔法で恋をする3

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

なぜか“アスガルドの特派員”として働く事になってしまった空口真帆は永音先生の部屋の掃除をさせられて悪態を付きながらも、それなりに充実した日々を送っていた。そんな彼女のクラスにやってきた転校生がやってくる。日常的に、とにかく不幸な目に遭いまくりながらも微笑を崩さない彼女を「強い」と感じる真帆だったが、実は彼女には悪魔が憑いていて…!?
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1巻の頃の「内弁慶毒舌少女」という特徴は薄れつつあるんだけど、その分オーソドックスに面白いお話になってきた感じ。それでも真帆のブラック極まりないユーモアは満載で、そんな彼女の姿を見るたびにニヤニヤさせられます。思わず黒魔法的な事を口走ってしまったり、演劇部で歌を歌わされればうっかり“ドナドナ”を歌って周囲をドン引きさせてしまったり……。「屠るぞ」はちょっと名言だと思ったw

個人的にはストーリー本線とは全く離れてしまうのですが、クラスメイトの大河内に対して徐々に遠慮が無くなっていく真帆の姿が実に素敵です。1巻の時点ではただの脇役だった大河内さんですが、ちょっとバカで小さなことは速攻忘れるという彼女の人格は内面真っ黒な真帆が遠慮なく黒い部分をさらけ出せる、良い友人になるのではないかと。

今回はとにかく不幸の星に生まれ、悪魔に取り憑かれてしまった転校生・宮脇の悪魔を祓う為、またもや真帆が奮闘します。本来その仕事を請け負うはずの永音先生はちっとも役に立たないし、悪魔に対抗するため神門と連れ立って行動しなきゃいけなくてまた誤解を生むし、それなのに他の人には事情を話せないし…でヤキモキする真帆の姿が微笑ましいです。しかし、神門との仲は地味に進展してるのに肝心の先輩との仲はちっとも進まないというのは読んでる方としてもヤキモキしますね。あと2冊でどう決着をつけるつもりなんだろう?まさかこのまま神門ルートなんてことは…(悶々)

一之瀬先輩といえば、遂に前回からちょくちょく影をちら付かせていた演劇部の敵こと生徒会長が遂に登場しました。これがまた典型的な悪役と言うカンジで……普段おっとりした一之瀬先輩が怒りを露にする姿がまた新鮮で。今後彼がどんな風に物語に絡んでくるのか実に楽しみだったりします。腐女子的にも二人の対決に期待!!(いえ、別に801萌え的な展開を期待しているわけではないですよ!?)

様々な紆余曲折はあったものの、最後には宮脇さんが目の前の不幸の中から小さな幸せをみつけて、「ラッキー」と言えるようになったことが一番嬉しかったです。読み終わって暖かい気持ちになれた1冊でした。続きも楽しみ。


ネクラ少女は黒魔法で恋をする2

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

2年生になった「ネクラ少女」空口真帆は、なけなしの勇気を振り絞ってなぜか気になる先輩が居る演劇部に入部した。ところが、演劇部は顧問の先生と部員の不足から、廃部の危機に立たされていた。自分にも出来ることはないかと“黒魔法”での人集めを思い立った真帆だが、公園で黒魔法を使うところを他人に見られてしまって!?
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予想以上にヘビーな方向で来ました。あっさり記憶を取り戻してしまったのは正直意外だったのですが、これがまた痛い展開で…

自分の中には既にある筈の記憶を誰とも共有出来ない。真帆にとっては死に物狂いで築いた筈の人間関係が、あっさりと瓦解しているというのは本当につらかっただろうと思います。先輩との関係を再び1からやり直す事をとるか、既に自分のことを好いてくれている相手で妥協するか、思わずゆれてしまう真帆の気持ちも痛いほど理解できる気がする。

個人的には悪魔に頼らず、今度こそ自分の力だけで再び関係を築いていく真帆の姿を見たかったので、記憶が戻ってしまったのはちょっと意外というか拍子抜けな部分もあったのですが、それ以上に強くなった真帆が自分と同じ間違い・同じ過ちを繰り返そうとする神門の間違いを正そうと奔走する姿が素敵だった。1巻からの成長が如実に見て取れるところが好印象。まあ、なんだかんだいって中身はネクラな毒舌少女のままなんですけど(笑)

ただ、個人的には真帆の心が「みんなの記憶を取り戻そう!」じゃなくて早く「ここはひとつ、イチから関係を作り直そう」って方向に行ってほしいかな、と思ってみたり。前者の方向に気持ちが流れるのが微妙だなあと思ったので再び関係を築く方向に話が動く事に期待をしてたんですけどね。いや、そちらの方に気持ちが傾くのは当たり前だし、それでこそネクラ少女であるとも言えるんですが。

そして最初「うぜえ!!」とばかり思っていた永音先生が最後の最後で…!!実はいい人ってパターンかよ!!と地味に噴きました。永音先生かっこいいよ永音先生。


メイド刑事6

[著]早見 裕司 [絵]はいむら きよたか

突然海堂のお屋敷に現れた男は、さくら夫人に料理対決を申し込んだ。彼は、両親が破滅したのはさくら夫人が過去に取ったとある行動が原因だと言うのだが…?そして命を狙われた堂本大臣の警護の為、保養先に“メイド刑事”として同行した葵に、木ノ上の魔の手が迫る…!?
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さくら夫人の過去が明らかになる短編と、葵の両親の敵である木ノ上との対決を描いた中編の2本を収録。相変わらず良い意味で「いつも通りの」メイド刑事、という印象で、面白かったんだけど語るべきことが見つからないのも事実だったりして。

短編の方は珍しく“メイドの一里塚……”が出てこない、ちょっと番外編的なお話。いつもお客さんの状態を見て料理を作るという「料理人」ではなくて海堂家のシェフとしてのさくら夫人の細やかな気遣い溢れる、良い話でした。本当に前しか見えてない対決相手・高橋の痛々しさに苦笑しつつ、最後に改心した後に高橋に向けられた人情にほこほこしてしまいました。

中編は遂に後がなくなった宿敵・木ノ上との最終決戦。宿敵の影を前にいつもの冷静を失いがちな葵に、“メイド刑事”としての自分を取り戻させたルカの言葉が非常にかっこいい。メイドとしても一人の人間としても少しずつ、しかし着実に成長した現在のルカの姿と、初登場の頃の向こう見ずな彼女の姿を重ねて思わず感慨を覚えたりしてました。

そして木ノ上との直接対決はベッタベタな「中ボス戦」という印象。結局葵は敵側の内紛に命を救われたという印象を拭えませんが、木ノ上との闘いを経て一つ大きな壁を乗り越えて成長した事を感じさせる終わり方にちょっと嬉しくなりました。しかしこの御時世に忍者て、発想が素敵過ぎます(笑)今後は更に大きな敵に向けて戦っていかなければいけないであろう「メイド刑事」の、今後の活躍に期待。

しかし、今回の中編を読んで、こっそりこのシリーズを実写ドラマで見てみたくなりました。水曜21時の刑事モノサスペンス枠(「はぐれ刑事」とか「相棒」とかやってる枠)でドラマ化したりしないですかね?ライトノベルのシリーズの中では最も実写に向いてるシリーズだと思うのですが…。


フルメタル・パニック! せまるニック・オブ・タイム

[著]賀東 招二 [絵]四季 童子

漸く合流を果たした宗介達<デ・ダナン>メンバーは、各地に散らばったミスリル残存勢力を救援しながら少しずつ軍備を回復させていった。一方、レモンやレイス達と協力してとある情報を探っていたテッサは宗介達僅かな護衛を連れて“ウィスパード”の秘密が眠る街ヤムスク11へと向かう。しかしそこにはレナード達<アマルガム>の勢力が待ち受けていた。ウィスパードがもたらす「ブラックテクノロジー」の秘密が今明かされる…!!
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「ウィスパード」達の秘密をはじめ、重大な事実が次々と明らかになるシリーズ最新刊。
レナードの豹変。
かなめに隠された重要性。
そして何故この世界が“フルメタの世界”となったのか…その秘密。

崩壊するはずだった国家が、崩壊しなかったかもしれない。
統一を保つはずだった国家が、分裂してしまったかもしれない。
そして、もしかしたら——米ソの冷戦が終わっていたかもしれない。

そしてそれを変えたのは、間違いなく“ウィスパード”と呼ばれる存在で。
ブラックテクノロジーという「呪い」を受けた子供達だった。

お母さん。
あと一分早く産んどいてよ……。

明かされた事実がとにかく重過ぎて、しかし同時にそして作品に仕込まれた様々な仕掛けにただただ、驚きを隠せませんでした。今の世界とフルメタ世界の歴史が違う理由やウィスパードの存在なんて、フルメタを“フルメタ世界”たらしめるための前提設定であるとしか思っていませんでした。それが一気にひっくり返された衝撃といったら…。

正直、難しい説明が続く中盤は今までの熱い展開から比べるとぜんぜんだるいし、前に出た2冊の強烈なカタルシスを考えると、説明だらけの文章は読み進めるのがちょっときつかった。個人的に中盤までで印象に残っているのは、もう最初で最後になるであろうと思われる宗介&レナードの共闘シーンくらいです。だから、中盤の読みづらさを差し引いて、評価自体は少しだけ減らしてます。

でも、何もかもが、最後の最後で一気に打ち砕かれました。

(※以下、本物語の結末に関する記述があります。未読の方はご注意ください。)




露骨な「フラグ立て」の様子に、序盤から「まさかな…」と思いました。
でもなんか、彼ならば大丈夫のような気がして。
そんなフラグへし折って、なんとか生き延びそうな気がして。
今だって、どこかからへらへら笑って、出てきてくれそうな気がする。
なんか、もう、本当に読み終わったあとは涙が止まらなかった。

正直、以後の展開は殆ど覚えてません。
涙が止まらなくて、本の文字が読めないなんて経験初めてでした。
エピローグでの各キャラクター達の行動が、また痛々しい。

自分を責めるテッサ。
感情を露にするマオ。
そして、泣けない自分を憂う宗介。
無意識に流れた、かなめの涙。

シリーズ中でも最大級に能天気だった短編が、こんなフラグにつながっているなんて…。


現実って、虚構の世界であっても残酷だ。



前に温泉に入ったのは、いつごろだっただろうか?
だれと行ったっけ?
だれが発案して、だれが大騒ぎを起こしたんだっけ?


ネクラ少女は黒魔法で恋をする

[著]熊谷 雅人 [絵]えれっと

空口真帆は自分に自信がもてない、内気でネクラな少女。『黒魔法』というあだ名の通り、黒魔法を趣味として内心周囲の人々に毒づく日々を送っていたがある日本当に悪魔召喚に成功してしまう。「なんでも望みを叶えてやる」と言う悪魔に、クラスメイトを見返してやろうと「美少女にしてください」と願う真帆は、代償として“恋をすること”を禁じられるけど…
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内気……というよりは根暗で脳内だけ毒舌な少女が黒魔法で美少女に変身(?)し、少しずつ人間関係を築いていくというラブコメ。

最初の方の、周囲に壁を作って勝手に被害妄想を繰り広げ、自分の努力を棚に上げて毒づくばかりの真帆の姿は、ヒロインとしては新しいというか面白いと思う反面、それ以上に「痛々しい」と思えてしまったんだけど、最初があまりにも痛いだけに、そんな彼女が悪魔との契約を経て“変身”したのをきっかけに自ら変わっていこうとする姿はかなり好印象でした。

物語の本筋自体はありがちと言うかかなりベタベタで、悪魔契約の当たりで結構後半のオチ付近までなんとなく内容が予想できるようなものではあるのだけど、それ以上に真帆のキャラクターと、そんな彼女が変わっていく姿が印象的で、面白かったです。特に影で自分の悪口を言っている(…と真帆が信じ込んでいる)少女から“空口さん、可愛くなったね”と褒められて、内心こっそりデレてしまう描写とかもう、最高。

というか、ここまで酷くはないにせよ自分にも結構こういう一面(被害妄想、内心で毒吐きまくり)があるので、真帆が毒付くシーンにしても被害妄想にかられるシーンにしても「いてえなオイw」と思う反面で、「あるあるww」と共感できてしまったのが運のツキでした。恋なんてしない、と悪魔の条件を呑んだのに目の前に素敵な先輩が現れて…どんどん変化していく主人公の姿が印象的。前半の内向的な姿とはうってかわった積極的な姿に、人はこんなに変わる事ができるんだとなんだか胸が暖かくなりました。主人公をとりまく周囲の人々も良い人たちばかりで和まされました。

個人的に1つだけ気になったのは、大河内さんの扱いくらいか。かませ犬状態なんだから、もうちょっとないがしろにされたことを怒ってもいいと思う…というか、もう少し物語の本線に絡ませても良かったような。あと、本文の印象だと「外見はゴツくて可愛くないけど性格のよさで人を惹きつける子」というイメージだったのに、イラストは思いっきりちっさい美少女だったのが違和感感じましたね。イラストはそれ以外の部分は大成功だと思うんですけど。個人的にもえれっとさん好きだし。

ラストは賛否両論あるみたいだけど、個人的には悪魔との契約の力ではなく自力で変わっていく「ネクラ少女」の姿が見たいので、続編があると判って大喜び。近いうちに続きも読んでしまいたいです。


MAMA

[著]紅玉 いづき [絵]カラス

生粋の魔術師の家計に生まれながら、全く魔術の才能に恵まれなかった少女・トト。<サルバドールの落ちこぼれ>と周囲から冷たい目で見られていた彼女はある日、偶然迷い込んだ神殿の書庫の奥深くで、封印された“人喰い”の魔物と出会う。魔物を封印から解き放った彼女は魔物にホーイチという名を与え、“ママになる”と宣言するが…
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「ミミズクと夜の王」の紅玉いづきさんの新作。表題作である「MAMA」と、その後日談的作品の「AND」が収録されています。前作「ミミズク」よりも本作のほうが児童文学的な印象が少しだけ薄くなって電撃(というかライトノベル)っぽいイメージが強くなったような気がしますが、やはりどこか童話というか児童文学風というかな世界観を持つ素敵な物語でした。

落ちこぼれといわれてバカにされる少女が『人食いの魔物』の母となり、どこか歪んだ依存関係を築きながらも魔物を従えたが故に、あれほど逃げ出したかったサルバドールの狭い世界に縛られる事になるという物語。「ミミズク」もそうだったのですが、この方の描く、どこか危うげなまでの純粋さを持った主人公が大人の世界の中で一人で生きていく為に凛々しく成長していく姿が密かに大好きだったりします。「わたくしを護りなさい」とホーイチに命令するトトの姿は非常にかっこよかったなあ。

物語の開始当初は確かに孤独だった主人公はしかし、後半では既に『ふたりぼっち』ではなくなっている。でもなかなかそれに気付けなくて、周囲の人たちの暖かい心が透けて見えてくるのがもどかしいかった。大人たちの中で虚勢を張る彼女に「あなたはもう独りじゃないよ」と言ってあげたい衝動に駆られた。

個人的にはトトも凄く良いキャラなんだけど、彼女を変えるきっかけとなったティーラン王女が大好き。大人たちの世界に巻き込まれて大人にならざるを得なかった子供というのは基本的に大好きなキャラ属性なのですが、そんな中でもティーランの生き様は恐ろしくかっこよかった。そんな強い彼女だけに、トトがサルバドールを出奔した際のセリフが胸に来る。「AND」での確信犯たっぷりな彼女も素敵。

そして「MAMA」の後日談となる「AND」は、ホーイチがかつて喰らった少年の耳飾を盗み出した盗賊の兄と、嘘つきなその妹が、ティーランの頼みでそれをしかるべき人物に返すために旅をするというお話。血のつながった兄妹ではない二人の、冷たいようで暖かい関係がとても見ていて楽しかったです。

「虚言だな」
「ええそうよ」

という本当に短いやり取りの中で透けてくる二人の関係が非常に好きで、もっと沢山二人の旅を見たいと思ってしまいました。

物語もキャラクターもとにかく素敵な、どこか暖かい物語でした。
ほんと名作。紅玉さんの次の作品がとても楽しみです。


人類は衰退しました

[著]田中 ロミオ [絵]山崎 透

人間が衰退して“旧人類”と呼ばれるようになった世界では、妖精さんが「人類」としてまったりと住まっていました。世界でも最後になるであろう学校教育を卒業した「わたし」は仕事の楽さと適度な張り合いを求め、おじいさんの後を継ぎ妖精さんと人間の橋渡しをする“調停官”の仕事につくのですが…
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「なごむます。うったりかったり●せいさんです」←画像が見れない人は脳内でど●いさんフォントで補完してお読みください
人間と妖精の「調停官」に就任した旧人類の少女がゆったりまったりと、現人類となった“妖精さん”たちと、ほぼ興味本位で異文化コミュニケーションを取るという物語。終末モノ?とかファンタジー??とかSF???とか思いつつ、「あんまりまったりした物語は好みじゃないからなぁ…」とか思って敬遠してたのですが、もうなんていうか読み終わった感想は一重に食わず嫌いして悪かった。いやマジで。

おじいさんと主人公のユルユルーな会話や、主人公と妖精さん達のほのぼの?とした会話にとにかく肩の力が抜ける。凄い和む。疲れたときとかに読むときっとストレスが緩和されるに違いありません。きっと文章からα波が出てます。凄まじいまでの癒し系小説でした。

ちょっぴりテンポの外れた会話の応酬も非常に魅力的なんですが、物語の展開も非常に好み。ゆったりまったりしてほのぼの和み系なのに、妙にサバサバしたやりとりとか、「妖精さんの、あけぼの」でのどこか薄ら寒いモノを感じるオチなどは新井素子の短編SFに近いものを感じて、最後の報告書で思わずニヤニヤしてしまったり。

なんかこう色々なものに疲れた時に、甘?いクッキーとミルクティー片手に読みたいという感じの1冊ですね。それこそ小学校の図書室にこっそり置いておきたいような、万人にオススメしたい一作。特に「MOTHER」シリーズで「どせいさん」に癒されてしまうような人は是非読むべき。かなり似たようなベクトルです。

既に2巻が発売されているようなので、また人生に疲れたら手を出してみる事にします。


以下余談。

本作の著者である田中ロミオ氏といえば「クロスチャンネル」などのエロゲーのシナリオライターとして有名な方らしいのですが、私の脳内では「Fate/Zero3巻のあとがきの人」というイメージだったりします。先日まで

「田中ロミオ」→「ギルガメシュ(誘い受)の人」(⇒当サイトのFate/Zero vol.3感想を参照)
…という脳内反射を行っていたのですが、本作を読んでイメージが変わりました。

次からは
「田中ロミオ」→「なごむます。」←画像が見れない人は脳内でど●いさんフォントで略
という脳内反射を行おうと思います。

※どせいさんのアイコンはSaturn Fortress様からお借りしました。


ツァラトゥストラへの階段2

[著]土橋 真二郎 [絵]白身魚

“パルス”に感染して異常な能力を得たもののそれが日常生活に生かせる訳でもなく、むしろ能力の影響で何をやっても失敗ばかり。自らの能力をもてあます福原の元にパーティへの招待状が届いた。情報収集も兼ねて舞には内緒でそのパーティに参加するが、彼を待ち受けていたのは新たな“囚人ゲーム”で…
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例によって悪趣味なゲームルールだのドロドロな信頼関係は絶好調で、良い意味で“いつも通り”のクォリティを安心して楽しめる印象になってきた気がする土橋さんの新シリーズ第二段。

今回は「キング」「クィーン」の役割を持つ男女が20組のペアとなり、周囲を探索しながらチェスゲームにも似た陣取りゲームを繰り広げるというお話。福原とペアを組んだ女性・カレンはどうみても腹にイチモツもってそうな感じでしょっぱなからギスギスフィーリング全開だし、前回で福原の手で痛い目に合わされた人物が敵「キング」として登場したり、「クィーン」にもまさかの彼女が参戦したり…と相変わらずの容赦ない展開が素敵です。精神的だけでなく、今回はプレイヤーである福原達にも直接的な暴力的な危険が迫り、また能力の使いすぎによる肉体的に痛々しい展開も目白押し。

今回のラストで必ずしも主人公側が勝利するわけではないというのが立証された訳だし、ますます続きがどうなるのかわからない展開に。続きが非常に楽しみです。あと今後のあとがきの動向も非常に楽しみです。なにこのカオスな後書き!

ただ“囚人ゲーム”を中心としたストーリー展開は非常に面白くて、物語の中に引き込む力も強いんだけど、前シリーズと比べるとどうも丸くなってしまったというか、キャラクターが薄いのはライトノベルとしては結構痛い気がするのですが。由紀・舞・飛鳥の3人がヒロイン格ということになるんだろうけど、3人が3人で存在感を食い合ってどれもインパクトに欠ける。

やはり「扉の外」好きとしては正樹愛美級の強烈なキャラが出てこないのがちょっぴり物足りなかったりするわけです。どれか一人適当に淘汰しても構わないので3巻以降でもっと強烈なキャラ付けを!マジお願いします!

あと、これ言っちゃおしまいかもしれないけどやっぱ異能バトル設定いらないとおも(ゲフンゲフンゲフン)なんか全体的に、行き詰ったらトンデモ能力が開花してなんだか僕らがよくわからないうちに片付けちゃいました!!みたいな展開が多くて、ちょっとその辺が不満だったり。