“庭” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:庭 (111 件 / 12 ページ)

ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件

 
karory

『グリンダ・ドイルを廃業する』そんな言葉を残して、“万能の天才”グリンダは、同盟国への派遣を目前に失踪した。このままでは国際問題に―というわけで身代わりとして白羽の矢が立ったのが、グリンダの双子の弟、つまりこの僕、シャールだった。いや無理、僕男だし。天才の姉と違ってニート予備軍の浪人生なのに。抵抗も虚しく女装させられ、同盟国の王様一家の家庭教師をやることに…!?ファンタジー家庭教師コメディ待望の文庫化。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 同盟国に行く予定だった天才少女の姉・グリンダが失踪。彼女の双子の弟のシャールが身代わりになることになってしまう。ドレス姿で王様の子供達の家庭教師をさせられることになったけど、子供達は一癖も二癖もある面々で……!?

 あらすじを見ると女装物っぽい感じだったけど、女装物というよりも入れ替わり物として面白かったー。天才の姉を持つ平凡な弟の苦悩とか、男だとバレそうになるハプニングが満載でとても楽しい。しかも、本人は一生懸命バレないように努力したりして気を揉んでいるというのに、殆どの人たちは“彼女”の行動を勝手に良い方に良い方にと“解釈”してしまうので、噂と誤解がどんどんあらぬほうに一人歩きしていく展開が面白かった。姉のような天才を理解できないと考える一方、「彼女が居ればなんとかなる」みたいな、どうしようもなく彼女の存在に依存しているシャールの弟ぶりも可愛かったです。

 個性豊かな王様の子供達や国の人たちに囲まれて、姉の戻りを待ちながらなんとかやっていく“彼女”なんだけど……一体何本のフラグを乱立させてるんですかこのフラグ建築士!!敵味方・性別すらも関係なくどんどんフラグが立ってしまう終盤の展開が面白すぎて!まだまだ入れ替わりは続きそうな気配ですが色々な意味でこれはどうなってしまうのか楽しみです。


銀狼王の求婚 箱庭の花嫁

 
Ciel

エレンシア姫が求婚されたのは、忌み神を宿したと恐れられている、美しく冷酷な王・フレドリクセンだった。けれど、エレンシアにとって彼は、厳しくも優しい初恋の相手。幸せな結婚を夢見るエレンシアだったが、フレドリクセンは力に翻弄され、恐ろしい銀狼王になっていた!彼の『生贄の花嫁』となったエレンシアは、元に戻って欲しいと奮闘するが…。忌み神に蝕まれた孤独で強大な王と、閉ざされた箱庭の姫の心の行方は―。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 兄達に虐められていたエレンシアを叱咤し、励ましてくれた憧れの王子様・フレドリクセン。彼の所に嫁ぐことになり長年の想いが叶った、と喜んだのも束の間フレドリクセンはその身に降ろすフェンリルの力に振り回され、すっかり人格を変貌させていた……というお話。

 北欧神話の世界観をベースにした、コメディ要素完全排除のどシリアス「死神姫」みたいな感じ。フレドリクセンにも物凄く残念夫フラグが立っているんだけど、それが1巻では全く発揮されなかったのがちょっと残念。

 5人の兄たちから酷い苛めを受け、唯一慕っていた兄は変貌し、すっかり男性恐怖性になってしまったエレンシアが、男ばかりの中でも精一杯奮闘する姿がなかなかかっこよかったです。

 面白かったんだけど、個人的にはもうちょっとコメディっぽいノリの話の方が好みだったのでどうしてもその辺期待してしまったというか…いや、もう最初から最後までシリアスならそれはそれでいいんだけど、コメディの伏線だけは見えるだけに…奥手ぶりを中二病で押し隠すフレドリクセンの迷走っぷりが見たかった。2巻あるのかなあ……


アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭

 

幼いころに両親を亡くして東京の沖合に浮かぶ神流島の親戚の元で暮らしている天海陽菜は「誰にも嫌われたくない、目立ってはならない」という不安や軍事訓練による重圧と闘いながら鬱々とした日々を過ごしていた。彼女の唯一の安らぎは森の奥に居る不思議な存在「マリア」と過ごすことだったが、彼女の元で不思議な少年と出会い…!?

個人的お気に入り度数

「天使病」と呼ばれる奇病が蔓延し、その病気から人間外の存在になった者達と人類との闘いが勃発する架空の現代日本を舞台にした現代ファンタジー。夏コミで補完本買ってしまったのに本編読んでなかったので、今さら手をつけてみました。

序盤は目立たなく大人しいけど、どこか人間関係に対して冷めた観点を持ち、どこか攻撃的で投げやりな陽菜の考えにイライラしていたのですが、そんな彼女が隣の中学に通う明るい少年・湊尚吾と出会う事によって少しずつ変わっていき、それによって今まで内に閉じこもっていた彼女が周囲に対して心を開いていく姿がとても良かったです。「どうせ親友なんて名ばかり」といって馬鹿にしていた理子・楓に悩みを打ち明けたり、「きっと好かれていない」義母と親娘らしい会話が出来るようになったり……と、徐々に前向きになっていく姿に好感が持てました。

しかし、その直後に起こったとあるアクシデントにより、それまで彼女が築き上げてきたすべての関係を打ち砕かれてしまう場面が辛い。周りの人々が陽菜につきつけてくる言葉はどれもこれも、自分が前半を読んでいたときにうすうす感じていた事だったので否定できない一方、「それでも、陽菜は変わろうとしていたのに…」という悲しさが先に立つ。

付きつける言葉は冷たいけど、なんだかんだいって陽菜のことを気遣っている(ような気がする)幼馴染・覚野のちょっとキツイ励まし(?)により陽菜が再び立ち上がった時には本当にホっとしましたが、間髪いれずにさらなる悲劇が彼女を襲うのには本当に戦慄した。持ち上げたと思ったら再びどん底に突き落とし、まさに容赦ない展開にどんどん引き込まれた。

ラストはドン底の中でも、陽菜が前を向いて「親友を救うため」目の前の現実に立ち向かっていこうとする姿が印象的でした。信じようとした人から裏切られて四面楚歌な状態からのスタートだけど、一方でかけがえのない何かを得る事が出来たはずの彼女には、くじけずに頑張ってほしいなあ。続きを読むのが楽しみです。


アカイロ/ロマンス3 薄闇さやかに、箱庭の

[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜

ある日の学校帰りの公園で、景介は繁栄派の少女・檻江と出会う。敵であるはずの景介に敵意どころか何の感情も覗かせない彼女は、行方不明の景介の姉がいつも口にしていた詩を口ずさんでいた。姉の手がかりをつかむため檻江を追っていくと、病院にたどりついて…。
   個人的お気に入り度数
なんかもう、このラノベ「今回のドッキリビックリ“つうれん”」を見るのが最大の目的になってきたような気がしてきた…そんなこんなで毎回つうれんがトバしすぎで困ります。このシリーズの真主役は間違いなく“つうれん”。次回あたりできっとまた打ちなおされて、突拍子も無い武器になってるに違いないと思います。もう枯葉お嬢様の発想力に完敗です。いやまあ、好きだけどチェーンソー+和服美人!!

今回は、繁栄派との戦いを通して鈴鹿の一族の隠蔽された暗部に迫るお話?2巻までは灰原と景介・枯葉の関係を中心に描いてきましたが、それがひと段落ついたからか二人の「姉」と「鈴鹿の一族」の方向にお話の中心が移ってきた感じ。景介の姉はとにかく、枯葉に姉が居たことなんて思いっきり忘れてた…。

景介が人間らしい小賢しさを駆使して戦う場面は面白かったけど、どうやって対抗するのかしょっぱなで判ってしまったのが残念だったかも。普通の高校生らしい発想で戦うというのがコンセプトならある程度予想されてしまうくらいで良いのでしょうが…どうせなら“つうれん”くらい度肝を抜く展開がほしかったかなぁ。

枯葉の知らない一族の裏事情もかなりあるようで、今後それがどのような形で明かされていくのか楽しみです。
というかつうれんの今後に超期待。


フルメタル・パニック! Family

 

新たな任務は……家族との平和な日常!?
「フルメタ」が帰ってくる! 衝撃の新シリーズ、開幕!! 「やはり武器が必要だ。クローゼットにあるから取ってこい」 世界の存亡を懸けた最終決戦から約20年後――相良宗介は千鳥かなめと結婚し、平穏な日々を送っている……ハズだった。 「お父さん、いつものカービンとグレネードでいいのね?」 「また隠し持ってたのね!? 毎回毎回、『武器などいらない』って言っといて!」 「母さん、敵が来るから。文句はあとあと」 女子高生ながら父親譲りの戦闘力を誇る愛娘・夏美、小学生ながら凄腕ハッカーの顔を持つ息子・安斗――規格外な子どもたちまで加わった相良家の辞書に“平和”の文字は無く……!? 宗介ファミリーの刺激的な日常を描く、衝撃の新シリーズ!

あの戦いから20年。千鳥かなめと結婚した相良宗介は2人の子供をもうけて、家族4人で平穏な毎日を送って……いるわけではなかった。妻・かなめを狙う刺客から隠れるように各地を転々とし、トラブルを起こしては次の街へ……を繰り返す相良一家。愛する家族と過ごす刺激的な毎日は、かつて望んだ「武器を持たない日常」からはほど遠く!?

四十代になった彼と彼女の、妥協と折り合いの物語

「フルメタ」の本編完結から20年、アラフォーとなった宗介・かなめと2人の子どもたちが繰り広げる連作短編。

しょっぱなから設定を見て、本編エピローグで「君さえいれば、武器などいらない」って言ったじゃないですかぁ〜〜!!と思ったものの、一度「ウィスパード」として名前が売れてしまった千鳥かなめが平穏な生活を送れるわけがない、たしかにそうなんだよなあ。2人の子どもたちを家族に加えて「フルメタ」らしく騒がしくも楽しい毎日を送りながらも、かつて思い描いた理想とは程遠い生活に時折ため息をつく相良夫妻の悲哀と葛藤が印象的でした。

あとがきでも少し触れられていましたけど、良くも悪くもフルメタをリアルタイムで読んでいて今アラフォーくらいになった当時の読者にむけられた物語というか。いやこれ私はめちゃくちゃ面白かったんですけど、同時にこれ自分が二十代の時に読んでたら二人の変化にガチギレしてた気もするんだよなあ。同作者の「甘城ブリリアントパーク」にも似たようなブラックジョークや中年の悲哀・葛藤の描写がありますけど、かつて十代だった彼らがこういう話をしてるのはなんともいえないエグみがあって。

二十代三十代を忙しい中であっという間に過ごして、気がつけば様々な衰えに直面している相良宗介と相良(千鳥)かなめ。武器を手放したいと必死に足掻きながらも社会に順応しきれない宗介の葛藤はかつて陣代高校でドタバタしていた頃よりもずっとしんどく映りますし、かつての宗介を知っていればいるほど胸に痛い。そんな彼がかつて尊敬した林水先輩と再会してその現在を知り、諦めよりも少しは前向きな形で自分の手持ちでやっていくしかないのだと妥協していく姿はなんというか妙にリアルで、良かったと思う反面かつての読者としては複雑な想いを感じました。いやでも、2話の林水とのやりとりは本編の「もう無理だと思うよ」で卒倒して倒れたオタクとしては感無量のものがありましてだね……。

そしてかなめの方は、女子会でのぎこちない様子が妙に生々しい。高校時代には気にならなかったお互いの「生きる世界」の違いがどこか引っかかってしまって。結婚はしたものの海外を飛び回る企業家となったかなめが家庭に入って平穏に生きる恭子よりもバリキャリでフットワークが軽い瑞樹のほうと深い付き合いしてるのめちゃくちゃわかる。子供を産んで、大病を患って……毎日に忙殺されているうちに中年になってしまった彼女の、「17年前は無敵だった」という独白が胸に刺さる。というか、かなめに関しては最後の最後でめちゃくちゃデカいネタバレかまされませんでした!?確かに本編最後そんな感じだった気がするし「そう」なっていても不思議ではないけど……もうそれは人知れず抱えていきていくしかないのか……。

かつての戦いでの記憶に魘される宗介、守れなかった人たちの名前を縋るように子供に付けて、その名前を呼ぶことで立ち直ろうとしていくということも含めかつて無敵だったふたりがそうではなくなってしまったというお話で(でもあれが宗介からの発案じゃなかったことには少しホッとした)、ままならない現実と闘いながら妥協と折り合いを繰り返していく姿がとても良かったと思います。いやでも本当に、こういう形で彼らの「弱さ」を見せつけられるのは結構キツイっちゃキツくて、その痛みを噛み締めながら読んだ物語でもありました。物語の中でだけでも、年老いても最期まで無敵のふたりで居てほしかったという気持ちはどこかに確かにあった。

相良夫妻イチャつきすぎなんだよなぁ!!!!!!!

それはそれとして、結婚して20年経つのに未だに新婚夫婦みたいにイチャイチャイチャイチャイチャイチャしてるのはどうなんですかねぇ!!!でも人妻になった相良かなめさんマジでエッチすぎるし結婚して自分の女になったからって独占欲と性欲をむき出しにしてる宗介さんのはしゃぎっぷりが凄くてもう大変だ!!!この情報化社会であれほどネットへの個人情報流出を気にする相良一家が年甲斐もない女子高生コスプレエッチで羽目を外して大失敗するのには思わず爆笑してしまった。

冷静に考えると加齢による衰えの話とか、病気の話とか、現実のままならなさとか色々な意味で重たい話をやってるんだけど、要所要所でそういう重さをカラッと吹き飛ばしていく展開はまさしくフルメタで、とても楽しかったです。

作中で腐れ縁として名前が上がりながらも登場のなかったクルツ・マオ夫妻やテッサをはじめとした旧ミスリルの面々、今回は最後にちょっと出番があっただけのアルなど、今後も色んな話が読めそうでとても楽しみなシリーズです。ドラマガの対談とか見てても先生が楽しくお話書かれてる様子が伝わってきたので刊行ペースとかはあんまり気にせず、気が向いたら続けていってほしい。

「甘城ブリリアントパーク」の続きも、是非よろしくおねがいします…………………………………………。
早くて来年かな?とは思ってるけども……。


組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い

 

昨日の敵は、今日の妻。夫婦として生きる異能力者達の甘々ホームコメディ!
「……大っ嫌い!」 「奇遇だな。おれもだ」  かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた二人。  《羽根狩り》の異名を持つ犀川狼士(さいがわろうし)と、《白魔》と呼ばれる最強の異能力者・柳良律花(なぎらりつか)。  血で血を洗う毎日を過ごし、まともな社会経験のない二人だったが…… 「ろうくん、大好きっ」 「俺もだよ、律花」  組織解散後はなぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!  憎さ余って可愛さ100倍? いまや、毎朝会社に行く際に玄関で「いってらっしゃい」のチューをするくらいバカップルを地で行く夫婦。  だが夫にはただひとつだけ悩みがあった。  それは、妻と一度も寝床を共にしたことがないということ……要するに彼は既婚者なのにいまだ童貞であったのだ!  これはそんな夫が数々のトラブルに巻き込まれながらも、  身持ちのお堅い妻との愛を深めるため、今日も必死にアプローチを続ける艱難辛苦の物語である。

かつて《異能狩り》と呼ばれていた少年と最強の異能力者と呼ばれていた少女。《濡れ羽の聖女》《落とし羽》を巡る血で血を洗う闘争から十年──かつて宿敵同士として命をとりあっていたふたりは結婚し、すっかりバカップルとなっていた!?かつて《異能狩り》と呼ばれた男・犀川狼士にとって目下一番の悩みは、妻・律花との性交渉が未だないことで……。

イチャイチャラブコメは異能バトルのあとで

異能バトルの主人公&ヒロインの10年後を描くラブコメ。理解のある上司(主人公の元上官)や親友(ヒロインの元戦友)、妻の兄(シスコン)、飼い猫(異能持ち)……と、そこかしこにかつての異能バトルの痕跡を残しまくりつつもそんなものは知ったこっちゃねえとばかりにイチャイチャしたり夫婦生活のアレコレに頭をなやませたりイチャイチャしたり夫の後輩に嫉妬したりイチャイチャしたり童貞を卒業するために策を巡らせたりイチャイチャしたりする展開がとても楽しかった!章間にかつての異能バトル時代のふたりの様子が描写されていくのですがそちらとの温度差で毎回風邪引きそうになる。

そんなわけで基本的には異能バトルとは名ばかりのイチャイチャ夫婦生活ラブコメなのですが、物語を読んでいくうちに少しずつ不穏な気配が2人に忍び寄ってくる。《濡れ羽の聖女》の完全消滅を持って終結したはずの異能力者と無能力者の戦い。戦いは本当に終わりを告げたのか?律花が頑なに狼士と寝床を共にする事を拒む理由とは?彼女が能力を使う際の代償とは……そしてクライマックスで満を持して現れる、過去からの刺客。狼士は愛する妻と平穏な家庭生活を取り戻すため、一度は捨てたはずの武器を再び握る。かつてのような戦いの日々を再び望む「敵」に対して「平穏な日常こそが本当の戦いだ」と訴える展開が大変良かったです。

最近流行りのラブコメ系は近年ずっと避けて通ってきててかなり腰が重くなっていたのですが、こちらは現代異能バトルが好きだからこそ刺さるタイプの戦後系ラブコメ(コメディ強め)でめちゃくちゃ楽しかったです!あとさりげなく著者の前作と世界観のつながりを感じる小ネタの数々にニヤニヤしてしまった。突然始まる懐かしの野球回に大草原不可避だし、どこかで見たことあるようなババアやコンビニ店長に笑ってしまう。いや、例のコンビニ懐かしい……そこでアルバイトするの、どう考えても異能バトルよりも過酷なので敵さんにおかれましては強く生きて欲しい。


魔術師クノンは見えている 3

 
Laruha

水魔術で空を飛び、水中で呼吸する――天才の魔術探究に常識は通じない!
魔術学園での商売を早くも軌道に乗せ、実力で三派閥同時在籍を勝ち取ったクノンは、各派閥の先輩と共同研究を開始! 特に水中での呼吸法の研究は、いつしか難破船の財宝探しへと話が広がり、ついには実地調査で海に飛び出すことに。特級の生徒なら海底だって散歩道! 巨大魚に襲われてもーー「大丈夫。水辺は僕の領域ですから」 使える魔術のレパートリーも倍に増え、ますます実力をつけた盲目の天才による、常識破りの魔術探求・第三弾

自分どころかクラスメイト達の金策まで軌道に乗せ、いよいよ本格的に魔術の研究を開始したクノン。3つの派閥に所属する先輩たちを巻き込んで共同研究を行ったり、海に眠る財宝を探しに行く羽目になったり、三級クラスの授業を受けて2つしかない魔術のレパートリーを増やそうとしたり、二級クラスの生徒達と模擬戦することになったり。そんな中で、教師のサーフからの依頼で二級クラスに赴いたクノンは魔術よりも派閥争いに興じる生徒たちを目の当たりにして……。

「オタクが好きなことしてるだけの話」が面白くないわけない

2巻は特級クラスの同級生達の話が中心となっていましたが、3巻は生活基盤を確保したクノンがいよいよ本格的に魔術研究に打ち出すお話で、下級クラスの生徒達から派閥の先輩・教師まであらゆる学園関係者を巻き込んで繰り広げられる物語が楽しかった!良くも悪くも今回は魔術研究のお話が中心で物語的には動きの少ない一冊とも言えるのですが、行動力の化身のようなオタク(クノン)が他のオタク(魔術師達)を片っ端から巻き込んでやりたいことが出来る環境で好きたい放題しているわけで、それが楽しくないわけないんだよなあ。

魔術師達が人によって様々な魔術特性・属性を持つのと同じように、クノンが出会った彼らが魔術に対していろいろなスタンスを持っているのも見えてくる。特級クラス内で話が収まっていた頃はなんだかんだいいつつ皆が同じ方向を見ていた感じがあったのですが、魔術にそこまでの興味を持たない三級クラス、貴族たちの派閥争いの縮図となっているニ級クラスの生徒達との邂逅・すれ違いがまた印象的で。大きな才能を内に秘めているのに魔術よりも将来の生活のほうが大事という彼ら彼女らに対して、家庭環境から根本的に違うクノンが説得することは難しく……という描写にはこちらまでもだもだしてしあうのですが、その裏ではクノンとの出会いを通してその生き様に影響されていく生徒たちも存在する。三級クラスの子達の話とか、なにげに今後の展開への種まきだったような気がしているので今後が楽しみだなあ。そして珍しい魔術があれば生徒たちを導く責務なんか投げ捨ててひとりの魔術師に戻って興奮してしまう教師陣達が大人気なくて好き。

その一方、学園の外では早くも学園でのクノンの活躍が話題になっており……いろいろな意味で次巻は話が動きそうで、楽しみですね。というかその話題の的になってる話、クノンが学園で一番最初にやったやつじゃないですか……ここからの活躍を知ったらどうなってしまうんだ。しかし守ろうと思ってた婚約者が予定を前倒ししまくって前に出てきてしまって慌てるミリカ殿下、まじで強く生きて欲しい。

ジオエリオンとの関係、美味しい!!!!!

これまで基本的に誤った紳士観の弊害で、女子しか眼中になかったクノンくんに男の影が…ヤッター!!ニ級クラスの派閥争いの中心にいる人物、「帝国の狂炎王子」ことジオエリオンとの出会いにめちゃくちゃテンション上がってしまった。水と炎、対称的でありながら似た者同士、出会った途端に最高の親友として、そして最高のライバルとしてお互いを認識している彼らのやりとりにニヤニヤが止まらない。出会ったばかりなのに妙にお互いへの解像度高いのも美味しいし、そしてやたらと距離が近いとか同性でよかったとか周囲からちょっとズレた心配されてるのに別の方向でもニヤニヤが止まらない。いやこれ次の巻ではバトルしてくれるんですかね?「焦がれて待とう」はズルいですって!!

いや〜これほんと絶妙に至近距離でありながら自分には関わり合いのないところでふたりのやりとりを観察してニヨニヨできるイルヒ、腐女子のベストポジションすぎてずるいな……「学園の壁になりたい」みたいな感覚で私もイルヒになりたい人生だった……。


王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔

 

無色の彼女の座を懸け、彩禍の絶対に負けられない戦いが始まる!
世界最強の魔女・久遠崎彩禍の生活にも何とか慣れ始めた玖珂無色だったが、〈庭園〉とは別の魔術師養成機関〈影の楼閣〉との交流戦代表メンバーに選ばれてしまう。 さらに魔術師専門動画サイト『MagiTube』の超人気配信者・鴇嶋喰良には彼ピとして、全世界に紹介され!?  事態の収拾を図るべく彩禍の姿で交流戦に参加しようとするも……。 「魔女様! むしピのカノジョの座を賭けて、アタシ様と勝負っす!」 〈楼閣〉側の代表メンバーだった喰良から宣戦布告を受けることに――。 自分(彩禍)で自分(無色)を争奪するという絶対に負けられない恋と魔術の戦いが始まる!

ひょんなことから世界最強の魔女・久遠崎彩禍と身体を共有する関係になってしまった玖珂無色。ドキドキが止まらない二重存在生活にも少しずつ慣れてきた頃、彩禍が学長を務める〈庭園〉と、魔術師養成機関である〈影の楼閣〉の交流戦が行われることになったのだが、なぜか魔術初心者の無色が彩禍と共に代表選手として選ばれてしまう。さらに〈影の楼閣〉の代表として来校した魔術師専門動画サイト『Magitube』の人気配信者・鴇嶋喰良から彼ピ認定されてしまって…!?

ドキッ☆美少女だらけの無色争奪戦勃発!!(※出来レース)

喰良と彩禍による無色争奪戦、というとまるで一昔前のドタバタラブコメラノベみたいな展開に聞こえるんですけど、彩禍の中の人は今は無色なわけで、つまり喰良と無色による無色争奪戦なんですよね。無茶のありすぎる交代劇や二人羽織状態のごまかし方が既におかしいし、出来レースとしかいいようのない展開の数々で腹抱えて笑ってしまった。そこに最強の魔女である彩禍が交流戦に選ばれたと知って対抗して交流戦に参加しようと乱入してくる〈影の楼閣〉の教師ども(学生コスプレ)が加わってくるもんだから本当に笑いが止まらなかった。

そしてハイテンションな無色争奪戦から、かつて彩禍が封印した「滅亡因子ウロボロス」を巡るハードな戦いの温度差が凄い。ていうか風邪引く。ていうかあのジジイ無茶すんなのコスプレが後の伏線だなんて思わないじゃないですか……どんなにかっこ良くてもその爺直前まで学生のコスプレしてたんですよって思うともうホント笑っちゃうんですよ……。

無色と融合する前の彩禍ですら倒しきれなかったウロボロスをなんとか撃退したものの、その存在の完全復活を巡って各地に封印されているウロボロスの残滓を巡る戦いが勃発することに。無色自身の魔術師としての力が少しずつ明らかになったり、彼らの正体を知っている存在がちょっとだけ増えたり瑠璃が少しだけ勘ぐったりし始めたりして、バトル的にも人間関係的にも今後がどうなっていくか楽しみな終わり方でした。次巻は渦中の瑠璃の掘り下げ巻みたいだし、喰良が今後どう動いていくのかも気になるし、続きが楽しみだな。

それにしても今回、正体バレした黒衣さんが時折見せる〇〇さんモードめちゃくちゃ良かったですね。無色が気を抜いた途端に不意打ちしてくるのズルい。イチャイチャしやがって!


Vtuberってめんどくせえ!

 

初手、大炎上から始まるVtuber生活
【第6回カクヨムWeb小説コンテスト キャラクター文芸部門特別賞受賞作!】  高校を卒業したばかりの男子、阿久津 零。  家族から家を追い出され、大学進学も勝手に辞退されてしまい路頭に迷っていた彼は、叔母である星野 薫子にスカウトされ、彼女が経営するVtuber事務所【CRE8】所属の男子Vtuberタレント『蛇道 枢』としてデビューすることとなった。  が、しかし……【CRE8】に所属するVtuberは彼を除いてすべて女性ということもあり、箱推しファンからの反感を買った蛇道枢(零)は、初配信から大炎上という事態に見舞われてしまう。  アンチコメや罵詈雑言に耐えながらも、生きるためにVtuberとしての活動を続ける零。  でも、やっぱり、本当のことを言わせてもらえるのなら――  Vtuberって、めんどくせえ!!

家庭の事情で路頭に迷いかけた阿久津零は叔母・薫子からの誘いを受け、彼女が経営するVtuber事務所【CRE8】から「蛇道枢」としてデビュー。ところが、女性Vtuberばかりが所属する【CRE8】の箱推しファンに取って初の男性Vである蛇道は邪魔者でしかなかった!?毎日のように炎上やアンチコメに晒される彼のもとに何故か同期の女性Vtuber・羊坂芽衣からコラボ依頼が舞い込んで……。

「炎上」と「ネットの闇」に切り込む男性Vtuberもの

女性だらけのVtuber事務所からデビューして百合の間に挟まる男として炎上する主人公と、そんな彼をコラボに誘った同期女性Vtuberの二人を中心とした炎上騒動とその顛末のお話。割りとコメディっぽい作品がおおい(気がする)従来のVtuber系の作品とはうってかわって真っ向から炎上というインターネットの闇に切り込んでいく展開がとにかくしんどいのですが、とても面白かったです。男性Vtuberまじでなんでそんなすぐ燃えてしまうの?どちらもVtuber黎明期をモチーフにしていると聞くので現在はそんなことないとは思うのですが……逆に言うと黎明期はそんなに燃えてたってことなのか……?

蛇道と芽衣のコラボが炎上→開催中止になって、それに関する根拠のない憶測がファン達の間で語られていくうちにすっかり既成事実として誤認されていくのが本当に誰の得にもならなくてキツすぎるし、しかもその勘違いを煽るような人物まで現れて、炎上がふたりを擁する【CRE8】にまで飛び火。ますます騒ぎが大きくなっていく。ふたりを攻撃する人々の多くがあくまで芽衣を守りたいという「善意」から行動していることに背筋が寒くなる思いでしたし、自分の事を心から応援してくれているはずのファンの言葉だからこそ傷ついて、精神的に追い詰められていく芽衣の姿に胸が痛くなった。そして彼女が炎上に巻き込まれて憔悴していく姿は、自身の炎上ではびくともしなかった蛇道の気持ちをも蝕んでいく。色々と考えさせられる展開だったし、どんどん悪い方に向かっていく炎上騒動の行方がしんどかったです。

気持ちを通わせた二人が理不尽な炎上に立ち向かう展開がアツい

肉親の悪意によって理不尽に将来を奪われた零と、肉親の心無い発言によって心に大きな傷を追った有栖。対象的な性格でありながら同じような過去を持つ二人が「蛇道枢」「羊坂芽衣」としてめぐり逢い、様々な紆余曲折を経てお互いに影響を与え合っていく。芽衣がVtuberデビューした理由とその強い意志に触れて、自らも「自分のやりたいこと」を見出していく蛇道の姿が印象的でした。そして、覚悟を決めたふたりがアウェーの地で理不尽な炎上に立ち向かっていく後半の展開がとても熱い。特に序盤からずっと陰鬱な展開が続いてきただけに、過激派と化した芽衣の厄介ファン達に蛇道が物申していく展開が気持ち良いのなんの。

そんな騒動の結果、ふたりのカップリング厨+主人公のガチ恋ファン(性別問わず)が大量に出来てしまったのはもう仕方ないですよね。ていうか女性Vに絡むだけで即炎上するような初手の状態、もう公式カップリングみたいなお相手が出来ないと動きづらいみたいなのもあるよなぁ。エピローグの念願のコラボ配信で初々しく絡むふたりの姿が本当に微笑ましくて……これがてぇてぇという感情か……。

1冊で綺麗に終わってる物語ではあるのですが、同じ事務所のVtuberとか芽衣しか出てきてないから他のメンバーも見たいし、巻末の設定資料で炎上を煽った個人勢Vtuberまで変な性癖に開眼してるのには笑ってしまったし、なによりカップリングとして成立してしまった二人のその後がもっと読みたいしので続きも書籍化してくれるといいなあと思いました。カクヨムの方でちょっとだけ続きを読んだんですが、芽衣がネットストーカーと戦う短編「インターネットセクハラってめんどくせえ!」が超面白かったです。自分の厄介ガチ恋勢と水面下でバトルしてる蛇道、笑えないけど微笑ましすぎ。


妹の好きなVtuberが実は俺だなんて言えない

 

妹の初恋の相手が俺らしいのだが、どうすればいい?
「爽坂くんは、私の一番好きな人……だから」  上目遣いで瞳をキラキラさせ、頬を染めつつ告白してくる可愛い妹、ひおり。 「……ひ、ひおり?」 「爽坂くんは、私の王子様なんです……」  あのな、ひおり。爽坂はVtuberであって、人間じゃないんだぞ。わかってるのか? しかも、お前は知らないだろうが、爽坂の中の人は俺……。あ、あれ?  ま、まじか……この流れ、やばい。 「あのな、実はな、爽坂はな……」  妹の恋心を壊さないために身バレを防ごうとするも、次々と新しい女の子たちにまとわりつかれることになる庵原玲仁。人気Vtuberと陰キャ高校生の二足のわらじは、無事に成し遂げられるのか?  憂鬱さを吹き飛ばす、一点の曇りもない抱腹絶倒のVtuberラブコメ、登場!!

個人勢の男性Vtuber「爽坂いづる」として一定の人気を得ている男子高校生・庵原玲仁。家庭の事情で一人暮らしをしている彼が久しぶりに実家に戻ったある日、妹のひおりが爽坂のファン(しかもガチ恋)であると知ってしまう。彼女の夢を壊さないように正体を隠して接するが、兄のことを爽坂の親友だと勘違いした妹はオフ会やイベント参加に同伴を求めるようになってしまい…!?

Vtuberの主人公とガチ恋勢な妹を中心にしたドタバタラブコメ

男性主役のVtuberモノが2冊連続炎上ネタで、どちらもとても面白かったんだけど「燃えない男Vtuberモノはないのか!?」と叫んで見つけたのがこちらの作品でした。

妹を巻き込んだドタバタラブコメでVtuberモノとしての要素はかなり薄めなんですけど、こういう恋愛要素が薄めの頭を軽くして読めるドタバタラブコメが大好物なので楽しかった!Vtuberらしい展開がもう少しあっても良かったなとは思うんですが、主人公のチャンネルが「いつも同じ時間帯に安定した配信をしているので作業用BGVとして需要が高く、バズも炎上もなくコンスタントに人気になった」という説明があってなるほどと思いました。たしかにそういうタイプの配信者だと配信をメインにしても特に面白くないだろうし、実際そういう需要あるよな……私もVじゃないけどリモートワーク中になんとなく流しておくための、声が耳障りじゃないタイプの喋りの部屋の片付け動画とかデザイン動画とかゲーム攻略動画をいくつかチャンネル登録してたな……。

妹が自分が演じているVtuberのファン……というだけでもえらいこっちゃなのに、妹が本人の全ツイートに長文リプ送りつけてくるタイプのガチ恋勢だったの本当に笑ってしまうし、ボイスチェンジャーを使っているわけでもない主人公がそんな彼女に対して必死に正体を隠そうとするのがコミカルで笑ってしまうし、どうみてもお粗末な隠蔽なのに兄の正体を1ミリも疑わない妹ちゃんがチョロくて可愛い。オタクだったら結構声でバレてしまいそうな気がするのですが……いやでも対面で話してる相手の声なんかそういう方向で疑って聞かないよな。

そんな複雑すぎる兄妹関係のドタバタに、小さな頃から主人公のことが好きだった妹の幼なじみ(中学デビュー系)と配信者として気心がしれた仲のVtuber(ロリ)がラブコメ要員として乱入してくるのでますます人物相関図がしっちゃかめっちゃかに。とはいえ、妹とロリは恋愛対象になってないとおもうのでこの場合恋愛的には妹の幼なじみ一択なのか。どこか背伸びした言動で主人公に迫る姿が微笑ましい反面、「(妹に対して)秘密を共有する共犯者」としての一面も兼ね揃えた関係がどこかくすぐったくて良かったです。

ところでそんなことより主人公の親友がパパという概念に無駄に興奮してしまいました。爽坂のパパ(※Vtuberが配信時にアバターとして使用する立ち絵を描いた人を指す)という意味で何も間違ってないんですが、主人公がことあるごとに親友のことをふざけて「パパ」呼びするのからしか摂れない養分がある……。