同盟国に行く予定だった天才少女の姉・グリンダが失踪。彼女の双子の弟のシャールが身代わりになることになってしまう。ドレス姿で王様の子供達の家庭教師をさせられることになったけど、子供達は一癖も二癖もある面々で……!?
あらすじを見ると女装物っぽい感じだったけど、女装物というよりも入れ替わり物として面白かったー。天才の姉を持つ平凡な弟の苦悩とか、男だとバレそうになるハプニングが満載でとても楽しい。しかも、本人は一生懸命バレないように努力したりして気を揉んでいるというのに、殆どの人たちは“彼女”の行動を勝手に良い方に良い方にと“解釈”してしまうので、噂と誤解がどんどんあらぬほうに一人歩きしていく展開が面白かった。姉のような天才を理解できないと考える一方、「彼女が居ればなんとかなる」みたいな、どうしようもなく彼女の存在に依存しているシャールの弟ぶりも可愛かったです。
個性豊かな王様の子供達や国の人たちに囲まれて、姉の戻りを待ちながらなんとかやっていく“彼女”なんだけど……一体何本のフラグを乱立させてるんですかこのフラグ建築士!!敵味方・性別すらも関係なくどんどんフラグが立ってしまう終盤の展開が面白すぎて!まだまだ入れ替わりは続きそうな気配ですが色々な意味でこれはどうなってしまうのか楽しみです。
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銀狼王の求婚 箱庭の花嫁
兄達に虐められていたエレンシアを叱咤し、励ましてくれた憧れの王子様・フレドリクセン。彼の所に嫁ぐことになり長年の想いが叶った、と喜んだのも束の間フレドリクセンはその身に降ろすフェンリルの力に振り回され、すっかり人格を変貌させていた……というお話。
北欧神話の世界観をベースにした、コメディ要素完全排除のどシリアス「死神姫」みたいな感じ。フレドリクセンにも物凄く残念夫フラグが立っているんだけど、それが1巻では全く発揮されなかったのがちょっと残念。
5人の兄たちから酷い苛めを受け、唯一慕っていた兄は変貌し、すっかり男性恐怖性になってしまったエレンシアが、男ばかりの中でも精一杯奮闘する姿がなかなかかっこよかったです。
面白かったんだけど、個人的にはもうちょっとコメディっぽいノリの話の方が好みだったのでどうしてもその辺期待してしまったというか…いや、もう最初から最後までシリアスならそれはそれでいいんだけど、コメディの伏線だけは見えるだけに…奥手ぶりを中二病で押し隠すフレドリクセンの迷走っぷりが見たかった。2巻あるのかなあ……
アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭
「天使病」と呼ばれる奇病が蔓延し、その病気から人間外の存在になった者達と人類との闘いが勃発する架空の現代日本を舞台にした現代ファンタジー。夏コミで補完本買ってしまったのに本編読んでなかったので、今さら手をつけてみました。
序盤は目立たなく大人しいけど、どこか人間関係に対して冷めた観点を持ち、どこか攻撃的で投げやりな陽菜の考えにイライラしていたのですが、そんな彼女が隣の中学に通う明るい少年・湊尚吾と出会う事によって少しずつ変わっていき、それによって今まで内に閉じこもっていた彼女が周囲に対して心を開いていく姿がとても良かったです。「どうせ親友なんて名ばかり」といって馬鹿にしていた理子・楓に悩みを打ち明けたり、「きっと好かれていない」義母と親娘らしい会話が出来るようになったり……と、徐々に前向きになっていく姿に好感が持てました。
しかし、その直後に起こったとあるアクシデントにより、それまで彼女が築き上げてきたすべての関係を打ち砕かれてしまう場面が辛い。周りの人々が陽菜につきつけてくる言葉はどれもこれも、自分が前半を読んでいたときにうすうす感じていた事だったので否定できない一方、「それでも、陽菜は変わろうとしていたのに…」という悲しさが先に立つ。
付きつける言葉は冷たいけど、なんだかんだいって陽菜のことを気遣っている(ような気がする)幼馴染・覚野のちょっとキツイ励まし(?)により陽菜が再び立ち上がった時には本当にホっとしましたが、間髪いれずにさらなる悲劇が彼女を襲うのには本当に戦慄した。持ち上げたと思ったら再びどん底に突き落とし、まさに容赦ない展開にどんどん引き込まれた。
ラストはドン底の中でも、陽菜が前を向いて「親友を救うため」目の前の現実に立ち向かっていこうとする姿が印象的でした。信じようとした人から裏切られて四面楚歌な状態からのスタートだけど、一方でかけがえのない何かを得る事が出来たはずの彼女には、くじけずに頑張ってほしいなあ。続きを読むのが楽しみです。
アカイロ/ロマンス3 薄闇さやかに、箱庭の
[著]藤原 祐 [絵]椋本 夏夜 ある日の学校帰りの公園で、景介は繁栄派の少女・檻江と出会う。敵であるはずの景介に敵意どころか何の感情も覗かせない彼女は、行方不明の景介の姉がいつも口にしていた詩を口ずさんでいた。姉の手がかりをつかむため檻江を追っていくと、病院にたどりついて…。 |
今回は、繁栄派との戦いを通して鈴鹿の一族の隠蔽された暗部に迫るお話?2巻までは灰原と景介・枯葉の関係を中心に描いてきましたが、それがひと段落ついたからか二人の「姉」と「鈴鹿の一族」の方向にお話の中心が移ってきた感じ。景介の姉はとにかく、枯葉に姉が居たことなんて思いっきり忘れてた…。
景介が人間らしい小賢しさを駆使して戦う場面は面白かったけど、どうやって対抗するのかしょっぱなで判ってしまったのが残念だったかも。普通の高校生らしい発想で戦うというのがコンセプトならある程度予想されてしまうくらいで良いのでしょうが…どうせなら“つうれん”くらい度肝を抜く展開がほしかったかなぁ。
枯葉の知らない一族の裏事情もかなりあるようで、今後それがどのような形で明かされていくのか楽しみです。
というかつうれんの今後に超期待。
このラノベの女女間の巨大/複雑感情が好きだ!
同性間のクソデカ感情の話が好きだ。普段は男男間のクソデカ感情をこよなく愛していますが性別は問わない女女もやぶさかではない!という気持ちで前から以前作ったまとめの女性バージョンをやりたいなと思っていたんですが、最近「悪役令嬢の中の人」がバズったりしてちょくちょくその手の話題を見るので今しかない!!と自分の好きな作品を簡単なジャンル分けしつつまとめました。
↓あわせてどうぞ↓
悪役令嬢・悪女
親友・ライバル・相棒
ジャンル越境(文芸より)作品
百合・恋愛関係
声優ラジオのウラオモテ #10 夕陽とやすみは認められたい?
2024年TVアニメ放送!渡辺千佳が本心に向き合う、第10弾!
――佐藤。泊めて。
母に一人暮らしを反対され、我慢ならず家出してきた千佳。母は自分が声優として独り立ちすることをどう思っているのか。怒りと不安に苛まれる彼女のもとへ、同じく母親と不和を抱える双葉ミントが現れる。
「声優なんて、俳優になれない人がやる仕事でしょう……?」
そう言い切るのは、世界的大女優であるミントの母親・双葉スミレ。
親に声優活動を否定されるミントと自分を重ねた千佳は、どうすれば声優のすごさを見せつけられるか頭を悩ませる。だが由美子は勝負では解決しない、歪な親子関係の『真実』に気づいていて――。
2024年TVアニメ化も決定の声優青春ストーリー、第10弾!!
高校卒業後の一人暮らしを母親から反対され、喧嘩して由美子の家に逃げ込んできた千佳。そこにさらに、将来の話で母親と衝突した現役女子小学生先輩声優・双葉ミントが逃げ込んでくる。ミントを迎えに来た彼女の母親である大女優・双葉スミレの「声優は俳優になれなかった人がなる職業」という言葉に激昂した千佳はスミレに声優の凄さを見せつけようするが、由美子はその行動に違和感を覚えて……。
似てないようでやっぱり似ている2つの親子関係が印象的だった
双葉ミントの家庭の事情に切り込みつつ、序盤に出てきたきりなぁなぁになってた渡辺家の母子関係にも改めて切り込むお話。前巻に引き続き由美子の活動休止中の出来事で、由美子の方の事情が色々と片付いた分今回は千佳側からの視点が多く入っているんですが……渡辺千佳というか夕暮夕陽さん、マジで「歌種やすみ」の評価がメチャクチャ高くて震えた。声優の凄い演技の代表として、そして自分の目指すべき高みとして──当たり前のように大御所声優の名前と歌種やすみの名前を並べて大絶賛してくるじゃん……。今回はなによりもミントの母である大女優・双葉スミレのキャラクターが強かったです。有名人オーラを完全にコントロールしている超絶演技力、大御所俳優として千佳達と対峙した時の威圧感についてはもう紙面を通じてこちらにまで伝わってくるようなヤバさだったし、そんな圧倒的な演技力で形成された強固な心の壁をコミュ強ギャルの佐藤由美子が少しずつ崩していくまでの駆け引き、何枚もの強固な防壁の裏に隠された「母親」としてミントを気遣う彼女の不器用な本心には圧倒されるばかりでした。いやしかし、将来への迷いを振り切って心の余裕が出てきた由美子のコミュ力・フォロー力とカリスマ性が無ければ乗り切れなかったであろう局面が多すぎて……特に初手からギクシャクしてた渡辺母と双葉母を左右に並べて真ん中で相対するのとかマジで由美子にしかできないよね……これは千佳もクソデカ評価しますわ……。
そんな双葉スミレの娘である双葉ミント──オフでは小学生としての年相応な顔を見せながらも、時に同じ業界の「先輩」として大人びた一面を覗かせるというギャップが印象的でした。ミント先輩というとどうしてもライブ前の過剰レッスンで無理して倒れかけたエピソードの印象が強かったんだけど、親の七光りが届かない場所で体力面や時間面で大きなハンデを抱えながらこの業界で生き抜いてきたのは伊達じゃなかった。半ば彼女のために用意されたイベント舞台で、桜並木乙女や夕暮夕陽といった実力派若手声優の中にあっても全く臆せず、かつて目指して挫折した俳優ではなく「声優として」圧倒的な演技力を見せつけるクライマックス、母親に認められるために演技の道を選んでスミレの言う通りそこから逃げ出して声優の道を選んだ双葉ミント……母親の存在に縛られ続けてきた彼女が自らの意志で「声優」として歩む道を改めて選ぶ……という展開がめちゃくちゃアツかったです。
そして、1巻でとりあえず決着は付いたもののギクシャクしたままだった渡辺母子の改めての話し合いも凄く良かったなあ……相変わらず声優としての仕事の不安定さを不安視しつつも同じ母親として大女優である双葉ミントにすら物怖じせずに自分の意見を言う渡辺母の株がマジで上がりすぎだった。喧嘩するたびに由美子の家に駆け込む千佳に頭を抱える姿が微笑ましいし、なんだかんだで母親のことを意識すると緊張してしまう千佳にニヨニヨしてしまう。
そんなわけでふたりの将来に関する悩みも概ね振り切ったところで次巻、いよいよ「卒業」な展開でどうなる!?
フルメタル・パニック! Family
新たな任務は……家族との平和な日常!?
「フルメタ」が帰ってくる! 衝撃の新シリーズ、開幕!!
「やはり武器が必要だ。クローゼットにあるから取ってこい」
世界の存亡を懸けた最終決戦から約20年後――相良宗介は千鳥かなめと結婚し、平穏な日々を送っている……ハズだった。
「お父さん、いつものカービンとグレネードでいいのね?」
「また隠し持ってたのね!? 毎回毎回、『武器などいらない』って言っといて!」
「母さん、敵が来るから。文句はあとあと」
女子高生ながら父親譲りの戦闘力を誇る愛娘・夏美、小学生ながら凄腕ハッカーの顔を持つ息子・安斗――規格外な子どもたちまで加わった相良家の辞書に“平和”の文字は無く……!?
宗介ファミリーの刺激的な日常を描く、衝撃の新シリーズ!
あの戦いから20年。千鳥かなめと結婚した相良宗介は2人の子供をもうけて、家族4人で平穏な毎日を送って……いるわけではなかった。妻・かなめを狙う刺客から隠れるように各地を転々とし、トラブルを起こしては次の街へ……を繰り返す相良一家。愛する家族と過ごす刺激的な毎日は、かつて望んだ「武器を持たない日常」からはほど遠く!?
四十代になった彼と彼女の、妥協と折り合いの物語
「フルメタ」の本編完結から20年、アラフォーとなった宗介・かなめと2人の子どもたちが繰り広げる連作短編。しょっぱなから設定を見て、本編エピローグで「君さえいれば、武器などいらない」って言ったじゃないですかぁ〜〜!!と思ったものの、一度「ウィスパード」として名前が売れてしまった千鳥かなめが平穏な生活を送れるわけがない、たしかにそうなんだよなあ。2人の子どもたちを家族に加えて「フルメタ」らしく騒がしくも楽しい毎日を送りながらも、かつて思い描いた理想とは程遠い生活に時折ため息をつく相良夫妻の悲哀と葛藤が印象的でした。
あとがきでも少し触れられていましたけど、良くも悪くもフルメタをリアルタイムで読んでいて今アラフォーくらいになった当時の読者にむけられた物語というか。いやこれ私はめちゃくちゃ面白かったんですけど、同時にこれ自分が二十代の時に読んでたら二人の変化にガチギレしてた気もするんだよなあ。同作者の「甘城ブリリアントパーク」にも似たようなブラックジョークや中年の悲哀・葛藤の描写がありますけど、かつて十代だった彼らがこういう話をしてるのはなんともいえないエグみがあって。
二十代三十代を忙しい中であっという間に過ごして、気がつけば様々な衰えに直面している相良宗介と相良(千鳥)かなめ。武器を手放したいと必死に足掻きながらも社会に順応しきれない宗介の葛藤はかつて陣代高校でドタバタしていた頃よりもずっとしんどく映りますし、かつての宗介を知っていればいるほど胸に痛い。そんな彼がかつて尊敬した林水先輩と再会してその現在を知り、諦めよりも少しは前向きな形で自分の手持ちでやっていくしかないのだと妥協していく姿はなんというか妙にリアルで、良かったと思う反面かつての読者としては複雑な想いを感じました。いやでも、2話の林水とのやりとりは本編の「もう無理だと思うよ」で卒倒して倒れたオタクとしては感無量のものがありましてだね……。
そしてかなめの方は、女子会でのぎこちない様子が妙に生々しい。高校時代には気にならなかったお互いの「生きる世界」の違いがどこか引っかかってしまって。結婚はしたものの海外を飛び回る企業家となったかなめが家庭に入って平穏に生きる恭子よりもバリキャリでフットワークが軽い瑞樹のほうと深い付き合いしてるのめちゃくちゃわかる。子供を産んで、大病を患って……毎日に忙殺されているうちに中年になってしまった彼女の、「17年前は無敵だった」という独白が胸に刺さる。というか、かなめに関しては最後の最後でめちゃくちゃデカいネタバレかまされませんでした!?確かに本編最後そんな感じだった気がするし「そう」なっていても不思議ではないけど……もうそれは人知れず抱えていきていくしかないのか……。
かつての戦いでの記憶に魘される宗介、守れなかった人たちの名前を縋るように子供に付けて、その名前を呼ぶことで立ち直ろうとしていくということも含めかつて無敵だったふたりがそうではなくなってしまったというお話で(でもあれが宗介からの発案じゃなかったことには少しホッとした)、ままならない現実と闘いながら妥協と折り合いを繰り返していく姿がとても良かったと思います。いやでも本当に、こういう形で彼らの「弱さ」を見せつけられるのは結構キツイっちゃキツくて、その痛みを噛み締めながら読んだ物語でもありました。物語の中でだけでも、年老いても最期まで無敵のふたりで居てほしかったという気持ちはどこかに確かにあった。
相良夫妻イチャつきすぎなんだよなぁ!!!!!!!
それはそれとして、結婚して20年経つのに未だに新婚夫婦みたいにイチャイチャイチャイチャイチャイチャしてるのはどうなんですかねぇ!!!でも人妻になった相良かなめさんマジでエッチすぎるし結婚して自分の女になったからって独占欲と性欲をむき出しにしてる宗介さんのはしゃぎっぷりが凄くてもう大変だ!!!この情報化社会であれほどネットへの個人情報流出を気にする相良一家が年甲斐もない女子高生コスプレエッチで羽目を外して大失敗するのには思わず爆笑してしまった。冷静に考えると加齢による衰えの話とか、病気の話とか、現実のままならなさとか色々な意味で重たい話をやってるんだけど、要所要所でそういう重さをカラッと吹き飛ばしていく展開はまさしくフルメタで、とても楽しかったです。
作中で腐れ縁として名前が上がりながらも登場のなかったクルツ・マオ夫妻やテッサをはじめとした旧ミスリルの面々、今回は最後にちょっと出番があっただけのアルなど、今後も色んな話が読めそうでとても楽しみなシリーズです。ドラマガの対談とか見てても先生が楽しくお話書かれてる様子が伝わってきたので刊行ペースとかはあんまり気にせず、気が向いたら続けていってほしい。
「甘城ブリリアントパーク」の続きも、是非よろしくおねがいします…………………………………………。
早くて来年かな?とは思ってるけども……。
組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い
昨日の敵は、今日の妻。夫婦として生きる異能力者達の甘々ホームコメディ!
「……大っ嫌い!」
「奇遇だな。おれもだ」
かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた二人。
《羽根狩り》の異名を持つ犀川狼士(さいがわろうし)と、《白魔》と呼ばれる最強の異能力者・柳良律花(なぎらりつか)。
血で血を洗う毎日を過ごし、まともな社会経験のない二人だったが……
「ろうくん、大好きっ」
「俺もだよ、律花」
組織解散後はなぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!
憎さ余って可愛さ100倍? いまや、毎朝会社に行く際に玄関で「いってらっしゃい」のチューをするくらいバカップルを地で行く夫婦。
だが夫にはただひとつだけ悩みがあった。
それは、妻と一度も寝床を共にしたことがないということ……要するに彼は既婚者なのにいまだ童貞であったのだ!
これはそんな夫が数々のトラブルに巻き込まれながらも、
身持ちのお堅い妻との愛を深めるため、今日も必死にアプローチを続ける艱難辛苦の物語である。
かつて《異能狩り》と呼ばれていた少年と最強の異能力者と呼ばれていた少女。《濡れ羽の聖女》《落とし羽》を巡る血で血を洗う闘争から十年──かつて宿敵同士として命をとりあっていたふたりは結婚し、すっかりバカップルとなっていた!?かつて《異能狩り》と呼ばれた男・犀川狼士にとって目下一番の悩みは、妻・律花との性交渉が未だないことで……。
イチャイチャラブコメは異能バトルのあとで
異能バトルの主人公&ヒロインの10年後を描くラブコメ。理解のある上司(主人公の元上官)や親友(ヒロインの元戦友)、妻の兄(シスコン)、飼い猫(異能持ち)……と、そこかしこにかつての異能バトルの痕跡を残しまくりつつもそんなものは知ったこっちゃねえとばかりにイチャイチャしたり夫婦生活のアレコレに頭をなやませたりイチャイチャしたり夫の後輩に嫉妬したりイチャイチャしたり童貞を卒業するために策を巡らせたりイチャイチャしたりする展開がとても楽しかった!章間にかつての異能バトル時代のふたりの様子が描写されていくのですがそちらとの温度差で毎回風邪引きそうになる。そんなわけで基本的には異能バトルとは名ばかりのイチャイチャ夫婦生活ラブコメなのですが、物語を読んでいくうちに少しずつ不穏な気配が2人に忍び寄ってくる。《濡れ羽の聖女》の完全消滅を持って終結したはずの異能力者と無能力者の戦い。戦いは本当に終わりを告げたのか?律花が頑なに狼士と寝床を共にする事を拒む理由とは?彼女が能力を使う際の代償とは……そしてクライマックスで満を持して現れる、過去からの刺客。狼士は愛する妻と平穏な家庭生活を取り戻すため、一度は捨てたはずの武器を再び握る。かつてのような戦いの日々を再び望む「敵」に対して「平穏な日常こそが本当の戦いだ」と訴える展開が大変良かったです。
最近流行りのラブコメ系は近年ずっと避けて通ってきててかなり腰が重くなっていたのですが、こちらは現代異能バトルが好きだからこそ刺さるタイプの戦後系ラブコメ(コメディ強め)でめちゃくちゃ楽しかったです!あとさりげなく著者の前作と世界観のつながりを感じる小ネタの数々にニヤニヤしてしまった。突然始まる懐かしの野球回に大草原不可避だし、どこかで見たことあるようなババアやコンビニ店長に笑ってしまう。いや、例のコンビニ懐かしい……そこでアルバイトするの、どう考えても異能バトルよりも過酷なので敵さんにおかれましては強く生きて欲しい。
魔術師クノンは見えている 3
自分どころかクラスメイト達の金策まで軌道に乗せ、いよいよ本格的に魔術の研究を開始したクノン。3つの派閥に所属する先輩たちを巻き込んで共同研究を行ったり、海に眠る財宝を探しに行く羽目になったり、三級クラスの授業を受けて2つしかない魔術のレパートリーを増やそうとしたり、二級クラスの生徒達と模擬戦することになったり。そんな中で、教師のサーフからの依頼で二級クラスに赴いたクノンは魔術よりも派閥争いに興じる生徒たちを目の当たりにして……。
「オタクが好きなことしてるだけの話」が面白くないわけない
2巻は特級クラスの同級生達の話が中心となっていましたが、3巻は生活基盤を確保したクノンがいよいよ本格的に魔術研究に打ち出すお話で、下級クラスの生徒達から派閥の先輩・教師まであらゆる学園関係者を巻き込んで繰り広げられる物語が楽しかった!良くも悪くも今回は魔術研究のお話が中心で物語的には動きの少ない一冊とも言えるのですが、行動力の化身のようなオタク(クノン)が他のオタク(魔術師達)を片っ端から巻き込んでやりたいことが出来る環境で好きたい放題しているわけで、それが楽しくないわけないんだよなあ。魔術師達が人によって様々な魔術特性・属性を持つのと同じように、クノンが出会った彼らが魔術に対していろいろなスタンスを持っているのも見えてくる。特級クラス内で話が収まっていた頃はなんだかんだいいつつ皆が同じ方向を見ていた感じがあったのですが、魔術にそこまでの興味を持たない三級クラス、貴族たちの派閥争いの縮図となっているニ級クラスの生徒達との邂逅・すれ違いがまた印象的で。大きな才能を内に秘めているのに魔術よりも将来の生活のほうが大事という彼ら彼女らに対して、家庭環境から根本的に違うクノンが説得することは難しく……という描写にはこちらまでもだもだしてしあうのですが、その裏ではクノンとの出会いを通してその生き様に影響されていく生徒たちも存在する。三級クラスの子達の話とか、なにげに今後の展開への種まきだったような気がしているので今後が楽しみだなあ。そして珍しい魔術があれば生徒たちを導く責務なんか投げ捨ててひとりの魔術師に戻って興奮してしまう教師陣達が大人気なくて好き。
その一方、学園の外では早くも学園でのクノンの活躍が話題になっており……いろいろな意味で次巻は話が動きそうで、楽しみですね。というかその話題の的になってる話、クノンが学園で一番最初にやったやつじゃないですか……ここからの活躍を知ったらどうなってしまうんだ。しかし守ろうと思ってた婚約者が予定を前倒ししまくって前に出てきてしまって慌てるミリカ殿下、まじで強く生きて欲しい。
ジオエリオンとの関係、美味しい!!!!!
これまで基本的に誤った紳士観の弊害で、女子しか眼中になかったクノンくんに男の影が…ヤッター!!ニ級クラスの派閥争いの中心にいる人物、「帝国の狂炎王子」ことジオエリオンとの出会いにめちゃくちゃテンション上がってしまった。水と炎、対称的でありながら似た者同士、出会った途端に最高の親友として、そして最高のライバルとしてお互いを認識している彼らのやりとりにニヤニヤが止まらない。出会ったばかりなのに妙にお互いへの解像度高いのも美味しいし、そしてやたらと距離が近いとか同性でよかったとか周囲からちょっとズレた心配されてるのに別の方向でもニヤニヤが止まらない。いやこれ次の巻ではバトルしてくれるんですかね?「焦がれて待とう」はズルいですって!!いや〜これほんと絶妙に至近距離でありながら自分には関わり合いのないところでふたりのやりとりを観察してニヨニヨできるイルヒ、腐女子のベストポジションすぎてずるいな……「学園の壁になりたい」みたいな感覚で私もイルヒになりたい人生だった……。
王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔
無色の彼女の座を懸け、彩禍の絶対に負けられない戦いが始まる!
世界最強の魔女・久遠崎彩禍の生活にも何とか慣れ始めた玖珂無色だったが、〈庭園〉とは別の魔術師養成機関〈影の楼閣〉との交流戦代表メンバーに選ばれてしまう。
さらに魔術師専門動画サイト『MagiTube』の超人気配信者・鴇嶋喰良には彼ピとして、全世界に紹介され!?
事態の収拾を図るべく彩禍の姿で交流戦に参加しようとするも……。
「魔女様! むしピのカノジョの座を賭けて、アタシ様と勝負っす!」
〈楼閣〉側の代表メンバーだった喰良から宣戦布告を受けることに――。
自分(彩禍)で自分(無色)を争奪するという絶対に負けられない恋と魔術の戦いが始まる!
ひょんなことから世界最強の魔女・久遠崎彩禍と身体を共有する関係になってしまった玖珂無色。ドキドキが止まらない二重存在生活にも少しずつ慣れてきた頃、彩禍が学長を務める〈庭園〉と、魔術師養成機関である〈影の楼閣〉の交流戦が行われることになったのだが、なぜか魔術初心者の無色が彩禍と共に代表選手として選ばれてしまう。さらに〈影の楼閣〉の代表として来校した魔術師専門動画サイト『Magitube』の人気配信者・鴇嶋喰良から彼ピ認定されてしまって…!?
ドキッ☆美少女だらけの無色争奪戦勃発!!(※出来レース)
喰良と彩禍による無色争奪戦、というとまるで一昔前のドタバタラブコメラノベみたいな展開に聞こえるんですけど、彩禍の中の人は今は無色なわけで、つまり喰良と無色による無色争奪戦なんですよね。無茶のありすぎる交代劇や二人羽織状態のごまかし方が既におかしいし、出来レースとしかいいようのない展開の数々で腹抱えて笑ってしまった。そこに最強の魔女である彩禍が交流戦に選ばれたと知って対抗して交流戦に参加しようと乱入してくる〈影の楼閣〉の教師ども(学生コスプレ)が加わってくるもんだから本当に笑いが止まらなかった。そしてハイテンションな無色争奪戦から、かつて彩禍が封印した「滅亡因子ウロボロス」を巡るハードな戦いの温度差が凄い。ていうか風邪引く。ていうかあのジジイ無茶すんなのコスプレが後の伏線だなんて思わないじゃないですか……どんなにかっこ良くてもその爺直前まで学生のコスプレしてたんですよって思うともうホント笑っちゃうんですよ……。
無色と融合する前の彩禍ですら倒しきれなかったウロボロスをなんとか撃退したものの、その存在の完全復活を巡って各地に封印されているウロボロスの残滓を巡る戦いが勃発することに。無色自身の魔術師としての力が少しずつ明らかになったり、彼らの正体を知っている存在がちょっとだけ増えたり瑠璃が少しだけ勘ぐったりし始めたりして、バトル的にも人間関係的にも今後がどうなっていくか楽しみな終わり方でした。次巻は渦中の瑠璃の掘り下げ巻みたいだし、喰良が今後どう動いていくのかも気になるし、続きが楽しみだな。
それにしても今回、正体バレした黒衣さんが時折見せる〇〇さんモードめちゃくちゃ良かったですね。無色が気を抜いた途端に不意打ちしてくるのズルい。イチャイチャしやがって!