「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、授業シーンあり、ラブコメあり、ドタバタありの短編集です。
どこをとっても楽しかったんだけど、やっぱりこのシリーズの講義シーンが好きだなあ。学ぶことの楽しさや授業に対する情熱が伝わってくるのがたまらなく楽しい。特に「魔術講師グレン 無謀編」で魔術に対して斜め横の態度を取りつつも、自分がかつて味わった魔術の「面白さ」を懸命に伝えようとする姿は本当にニヤニヤが止まりません。
授業参観でシスティーナの両親がやってくる「魔術講師グレン 虚栄編」も良かった。必死に模範的な教師を取り繕おうとするも、生徒たちの危機を前にしてあっさり生徒思いな“素”が出てしまうのにニヤニヤする。セリカvsシスティーナ父の親ばか対決とか微笑ましすぎてもう。
ラストの書き下ろし「空〜孤独の魔女〜」は、グレンとセリカの出会いを描くシリアスな過去編。強い自分を演出することで自らの脆さを隠して生きてきたかつてのセリカと、そんな彼女の鉄面皮をひっぺがしてしまったとある少年の、出会いと別れにホロリとする。これはセリカさん授業参観で面倒くさい親馬鹿になってしまっても仕方ないわ……子グレン(色んな意味で)天使かな……。そんなグレンが正義の魔法使いを目指して、そしてこれまでに語られたような挫折に遭ってしまったのは不幸としか言いようが無いし、やりきれない気持ちになるけど。
それにしても、セリカの不老不死性やグレンの記憶の件など、なにげに今後の展開への伏線がばらまかれたような印象。これからどうなっていくのか、とても楽しみです。しかし、この短編シリーズは短編シリーズで独立して続けていってほしいなあ……。