魔術学院の教師なら定期的に出さないといけない論文を出していなかったせいで、クビを言い渡されそうになったグレン。論文を書くために、生徒たちを動員してとある遺跡の調査を行うことにするが何故かそこにセリカがついてきて…!?
力量不足に悩むシスティーナがかねてから念願の遺跡探索を前にして盛大に空回りしたり、自分よりもグレンと親密で有能なセリカの出現に動揺したり、他の生徒達がグレンに頼られてるのを見てヤキモキするの可愛すぎました。遺跡探索に向かう前のやりとりとか本当に面倒くさい子すぎてヤバい。最後はなんだかんだでグレンの役に立てて良かったね……残念な子は残念なほど可愛いのでいいぞいいぞもっとやれ!
また、生徒たちの魔術師として人間としての成長にもニヤリとするお話でした。セリカやグレンといったプロの魔術師と比肩することは出来なくても、自らの力量を見極めた上で無茶はせず、彼らの背中を守ることを決断する展開に胸が熱くなる。セリカの名声や立場のせいで最初は腰が引け気味だった生徒たちがすぐにセリカを受け入れて仲間として扱ってくれるのにも人間としての成長を感じた。
本編はセリカの話を通して物語の謎に迫っていくハードな展開で、自身にも解らない“使命”に取り憑かれた『永遠者』であるセリカが、グレンという家族を得てもなお止まれなかった理由がとんでもなく人間くさくて愛おしい。セリカって前の巻でも描かれた通り精神的にはむしろ脆いくらいで、あくまで普通の人間でしかないんだよなあ。改めてグレンとの深い家族の絆を感じる展開が胸に熱い。
今後への伏線を思い切り張りましたという感じで、天の智慧研究会まわりは一休みなんだけど、色々なことが明らかになり、それ以上に今後への謎が増える展開でした。アレやらコレやらルミア周りの話も不穏な気配が立ち込めてるというか、ラストの記憶云々って多分彼女のことだよね……。
キーワード:羊 太郎 (34 件 / 4 ページ)
ロクでなし魔術講師と追想日誌
「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、授業シーンあり、ラブコメあり、ドタバタありの短編集です。
どこをとっても楽しかったんだけど、やっぱりこのシリーズの講義シーンが好きだなあ。学ぶことの楽しさや授業に対する情熱が伝わってくるのがたまらなく楽しい。特に「魔術講師グレン 無謀編」で魔術に対して斜め横の態度を取りつつも、自分がかつて味わった魔術の「面白さ」を懸命に伝えようとする姿は本当にニヤニヤが止まりません。
授業参観でシスティーナの両親がやってくる「魔術講師グレン 虚栄編」も良かった。必死に模範的な教師を取り繕おうとするも、生徒たちの危機を前にしてあっさり生徒思いな“素”が出てしまうのにニヤニヤする。セリカvsシスティーナ父の親ばか対決とか微笑ましすぎてもう。
ラストの書き下ろし「空〜孤独の魔女〜」は、グレンとセリカの出会いを描くシリアスな過去編。強い自分を演出することで自らの脆さを隠して生きてきたかつてのセリカと、そんな彼女の鉄面皮をひっぺがしてしまったとある少年の、出会いと別れにホロリとする。これはセリカさん授業参観で面倒くさい親馬鹿になってしまっても仕方ないわ……子グレン(色んな意味で)天使かな……。そんなグレンが正義の魔法使いを目指して、そしてこれまでに語られたような挫折に遭ってしまったのは不幸としか言いようが無いし、やりきれない気持ちになるけど。
それにしても、セリカの不老不死性やグレンの記憶の件など、なにげに今後の展開への伏線がばらまかれたような印象。これからどうなっていくのか、とても楽しみです。しかし、この短編シリーズは短編シリーズで独立して続けていってほしいなあ……。
「好きなライトノベルを投票しよう!! 2015年下期」投票します。
企画元:好きなライトノベルを投票しよう!! - 2015年下期
下半期は上半期以上に読んだ本が少なかったのですが、下半期のまとめを兼ねて投票します。
「お前にできないことは俺がやる。俺に出来ないことはお前がやる」
「そうしたら、俺たちにできないことは何も無いだろう?」
【15下期ラノベ投票/9784047302358】
「‐‐私は、この愛しい無力を捨て去ろう」
【15下期ラノベ投票/9784063814996】
MMOにおいて、もっとも強い武器は「人間」である。
【15下期ラノベ投票/9784047305854】
「正義の魔法使いに懸けた人生……無意味だったのはわかってる!
だが、無価値にだけはしたくねえんだ!」
ロクでなし魔術講師と禁忌教典
教師なのに遅刻や居眠りの常習犯で、しかも魔術を毛嫌いするような発言すらする非常勤講師グレン。当然生徒達からの評判は最悪、当人も早く辞めたいとまで思っていたのに、とある出来事をきっかけに本気を出して……というお話。
魔術師としての才能や適正が低かったグレン。既存の枠から“落ちこぼれ”て、だからこそ出来る授業シーンの楽しさが、読んでいるこちらにまで伝わってくるようでした。ただ教科書を鵜呑みに教えるのではなく、もっと深い所からの魔術講義が面白い。そして、生徒たちが危機に陥ると魔術への深い理解とそれを埋めるための努力で能力を補って強敵を打ち倒していく姿が爽快。
誰よりも魔術が好で、それ故に魔術が人殺しの道具として使われているという現実に絶望していたグレンが、ルミアの“夢”を聞かされて何を考えたのかと思うと、もう。かつて思い描いた理想を捨てることが出来ず、ルミアや生徒たちに夢を託そう、そのために彼女たちを護ろうとするグレンの素直になれない悪あがきっぷりがカッコよかった。
色々物語にも謎がありそうで、これからの展開が楽しみです。