陽炎を主人公にしたファミ通文庫版ノベライズの第2巻。今回は、陽炎が横須賀にやってくるまえ、呉鎮守府で相方的ポジションであった不知火が横須賀鎮守府にやってくる、というお話。
予想以上に不知火が陽炎大好きっ娘で、前回しっかりと絆という名のフラグを立てられた第十四駆逐隊の面々と火花(?)を散らす……ってこれなんて百合ハーレム!?完全に不知火をライバル視している曙のツンギレぶりが可愛すぎるんだけど、舞い上がる陽炎の姿を見てなんだかんだで面白くないほかのメンツの行動にもニヤリとしてしまった。
しかし、そんなピンクの匂いとは裏腹に本編は至極シリアス。イベント海域を舞台に、艦娘達は生きるか死ぬかギリギリの戦いを強いられていきます。「元は普通の少女」であることを一番強調している物語だからこそ、近代化改装や改造もまた違った意味を持ってくる。「艦娘」として強くなりたいというまっすぐな気持ちと、改造を行うことでもうふつうの「少女」には戻れなくなることへの不安・戸惑いの間で揺れる陽炎達の姿が印象的でした。そして、そんな葛藤を乗り越えた彼女たちが行方不明になった不知火の救出に向かう姿がかっこよかった。特にゲームでの彼女達の脆さを知っていると、ル級vs睦月型2人の対決がアツすぎる。
艦隊としての仲間としての絆、女の子同士の友情、そして同系艦の間で育まれる独特の関係性が濃厚に描かれていて凄くよかった!しかし、次巻からは別の鎮守府での物語と言うことで、これまでのキャラクターなど、どういう事になるのかが気になる。というか横鎮提督好きだったんだけどなー提督も変わっちゃうのかな……。
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艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆
「艦隊これくしょん」のノベライズ、富士見ファンタジア文庫版は瑞鶴を主人公にして、かつての「艦」としての記憶をはっきりと持ちながら『艦娘』としての二度目の生を送る少女達の物語です。
オリジナル設定と史実・ゲーム要素の絡ませ方が物凄く面白かった!艦これの舞台が「あの戦争」が起こった世界とは似ているようであらざる世界として位置づけられていて、過去の戦いの記憶を持ったまま新たな戦いに臨む彼女たちが、切り離すことはできない過去の因果・宿命を背負いながらも懸命に戦っていく姿がアツい。かつて“幸運の空母”と称された瑞鶴と、彼女とは対照的に“不幸艦”と呼ばれる姉の翔鶴を中心に、ゲームではきわめて不確定なステータスである幸運値を史実であった出来事と絡ませてくるのが興味深かったです。
そしてある時は軽薄に、そしてある時は冷徹に彼女達の戦いを支援しながら、幸せを願う提督がまた地味に良いキャラしてる。「勝利のため」と時には冷徹に艦娘達を戦場へ駆り立てながらも、その裏には艦娘達を護りたいという強い意志と、艦娘達を「兵器」として扱う軍上層部との間で板ばさみになっているような言動がみられるのにとてもニヤニヤする。あと、あふれ出るイケメンオーラ。
自らを憎まれ役に貶める事で苦労を背負い込んでしまう不器用さがほんとこの人、生き辛そうな性格しているなあという感じで大変妄想が膨らみました。 軍上層部に弱み握られて掘r
甘城ブリリアントパーク3
高校生なのに遊園地の支配人代行・可児江西也は悩んでいた。当面の資金難からは脱したものの、集客を伸ばさなければ待っているのはゆるやかな廃園だけ。しょぼいと評判のパークを立て直すにはゲストが夢中になる新要素が必要だ!!そう夢と音楽が詰まったド派手でブリリアントなミュージカルショーが!!「消火班!消火班!どこ行ってるぴー!?消火班―!」…リハーサルをすればボヤ騒ぎ、新入りキャストへの執拗な可愛がりによる人材不足、さらには出席日数不足に伴う支配人代行留年危機問題など、トラブルが次から次へと頻発!やっぱりダメダメな「甘ブリ」を西也は三度救うことができるか!? (「BOOK」データベースより)
パーク内外でのドタバタ騒ぎをメインにした短編集。
前巻で採用となったアルバイトの少女・中城椎菜の視点から描かれる「中城椎菜は逃げ出したい」が凄く良かった!引っ込み思案な女の子が軽い気持ちで遊園地のバイトをはじめたら、憧れていたマスコットどもがオヤジ丸出しだったり、とんでもないしごきを受ける羽目になったり、苦手な接客業で涙目になりながらなんとかパークの一員として成長していくお話で、等身大の女の子の視点から描かれる、妙な現実ぶりに夢をぶちこわされつつも、それでもやっぱりちょっと不思議な魔法の世界が凄く楽しい。これまで「甘ブリ」には変わり者しかいなかったからあんまり伝わってこなかった非日常感がビンビンに伝わってくるお話でした。
あとがきでこの話が本編第一話になる予定だったって言われてますけどそっちのほうが良かったんじゃないでしょうかまじで……本編2巻まででイマイチ伝わってこなくて違和感を感じていた部分を綺麗に拭い去ってくれたお話だったので、もっと早くに読みたかった。
同じ理由で「もっと早く読みたかった!」と思ったのが出席日数が足りない西也の変わりにパークの面々が彼の身代わりとして学校に通う「出席日数が足りない!」。先ほどの椎菜視点の話と含め、主人公である西也の学校での立ち位置や性格、そして身代わりになったパークの面々のキャラクターがよくわかるお話で、面白かった。モッフルがさりげなく椎菜に対して親バカむき出しにしてるのが凄い微笑ましい。だけどやっぱりナルシスト設定は無理あるとおもう(真顔)
魔法の国の仕組みやモッフルの過去がちょっとだけ明らかになる「魔法の国へ行ってみよう」。ファンタジーな設定盛り込んできたかとおもえばその途端に現実的なネタぶちこんで台無しにしてくるこのバランス感覚は本当に楽しい。魔法の国の人身事故に爆笑した。色々な意味で次巻以降への期待が高まるお話でした。
それにしても、妖精たちを人間バージョンで撮影できる「魔法のアプリ」の話は是非ともアニメでやってもらいたいですねっていうか個人的にマスコット3人組に無駄に豪華なボイスつけてくれるのをめっちゃ期待してるんですけど、3人ともオヤジイメージで想像してたのでティラミーとマカロンの人間バージョンで緑茶ふいた。どうしようこの見た目じゃあティラミーに代永ボイスついちゃう……!!!マカロンには小野Dとかきてもおかしくない!!!(ビクンビクン)
あとこの見た目で確信したけどモッフル受けだわ。ど受けだわ。
東京レイヴンズEX2 seasons in nest
クリスマス、節分など陰陽塾での季節の話を中心にした短編と、木暮視点から描かれる木暮・大友・早乙女涼の「三羽烏」結成秘話+αを収録した短編集。
とりあえず春虎・冬児好きとして「バトル・オブ・ビーン」に触れないわけにはいかないんですけど、普段割と落ち着いたイメージの冬児が節分の豆まきを嫌がってブチキレて大暴れする姿にニヤニヤが止まらない。そして一応心配してくれてる(に違いない)大友先生を完全スルーして悪友の春虎と真顔で対峙する姿に腹筋が攣りました。敵味方に分かれてもお互いの呼吸を理解しあっている悪友な2人の対決にニヤニヤせざるをえないんだけどそれ以上に本線のストーリーが酷すぎ(褒めてる)だよ!!あと大友先生のオヤジ術式が酷い(これも褒めてる)
三羽烏結成秘話を描く「エンカウンター・トライアングル」はまず木暮さんの荒れっぷりにびっくりしたんだけど、東京にやってきて自らの実力を持て余して孤立していた木暮が自分以上にクセモノな大友や涼と出会い、少しずつ自分の考えを改めていく姿がとてもよかった。2人との出会いによって木暮は文字通り人生ごと変えられたんだなあとおもうとじんわりする。あとがきによるとその後の彼らの短編も来る予定との事なので、そちらも楽しみにしていたいです。
EX1と同じく、本編の時間軸を思い出すと陰陽塾でドタバタしてる短編がイチイチ既に戻らない輝かしい過去という事実を定期的に思い出していちいち辛いんだけど、今回は本編の展開と三羽烏の過去編をふまえてラストの「エピローグ」で追い討ちをかけてくるのがとても酷い(褒めてる)と思いました。大友の言動から浮かんでくる物語の時間軸と、過去を重ね合わせたかのような展開が辛い。それとなく陰陽塾のその後も示唆されていて、否応無しに11巻への期待が高まる1冊でした。
ところで、BOOK★WALKERで購入すると文庫未収録の小説(7巻の店舗特典だったもの)が特別収録されているんだけど、こちらに収録されていた「なつめ日記」が物凄く意味深で、何故これを特典限定にしてしまったのか!!と問いたい。
幼い頃の春虎と夏目が京子との約束でリボンを探すお話なんだけど、まだ見ぬ京子に子供らしい独占欲と嫉妬を覗かせる夏目はともかく、春虎の行動が色々な意味で上手く言葉に出来ないけど意味深で……。子供らしい邪気の無い行動といってしまえばそこまでなんだけど、この春虎がここまであっさり夏目のいう事を優先してしまうのは些か違和感を感じて。ただの「幼馴染」や「仲の良い親戚同士」というよりもある意味「土御門家の式神」としての夏目と春虎の関係を示唆するエピソードなのではないかと思ってしまって、上手く言葉に出来ない。ほんとなんでこれ特典限定小説なんだ皆読んでもだもだすればいいのに……。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8
修学旅行の後ギクシャクしたままの奉仕部の元に持ち込まれた依頼。とある人物の生徒会選挙当選を避けるためにこれまで通り自分をもち下げることで依頼を完遂しようとする八幡に残りの2人は反対し、それぞれ違うやり方で依頼をこなそうとするのだが……。
葉山グループの瓦解を繋ぎ止めるために行動してしまったが故に壊れかけてしまった「何か」を元の形に戻そうとなんとか頑張ってみたけど、やはりどこか周囲を顧みない八幡の独善的な解決法では綺麗にまとまりはしなかったという話。
なんだかんだで色んな人に好かれているのに、その事実に気づくことができない八幡がどこか痛々しく、見ていられなく、そういう八幡の言動のたびに自らの好意と存在を否定されて傷つく彼女達のもどかしさにもだもだし、瓦解しようとしているものの大きさに気づいた彼がそれを壊すまいと動きはじめてしかしどこか空転している様が見ていられない。八幡が「自分のため」に動いたのは大きな進歩だと思うのだけど、それだけじゃどうしようもなく足りなかった。
例えば八幡が動く前に雪乃の本心を聞き出すことができていれば……とも思うのだけど、それが出来ればこの物語なんてそもそも存在すらしていないだろうし、雪乃だって八幡が本意を問いただした所で真意を見せるとは限らない。そしてその真意を見せたところで八幡が素直に信じるとも思えない。八幡のやり方を彼女達が容認できなくなった時点でこの物語は多分詰んでた。「彼」や「彼女」が居心地良いと感じた場所が、そのままであって欲しいと望む気持ちによって致命的に居心地よくない場所へと変えてしまったのがどうしようもない皮肉。
6巻くらいからずっとこういう重苦しい展開が続いていて、読むたびに角材で殴られたような衝撃を受けるシリーズではあるんだけど、今回のが一番キツかったです。9巻以降で少しでも持ち上がってくれることを期待したいんだけど、ほんとどうなるんだろうなあこれ……。
しかし、女の子と遊んでても八幡しか見てない感ばりばりの葉山はほんとどこまで八幡のこと好きなんですか。お互いのやりかたを相容れないと感じながらも、双方が意識せずにはいられないというこの複雑な関係性がとても好き。あと、材木座さん地味にかっこいい。基本ハズレクジ引かされる役どころの材木座だけど、それだけ他人を巻き込む事を嫌う八幡が巻き込んでもいいと思う程度には心を開いて貰ってる存在なんだろうなあ。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7.5
店舗特典小説などを収録した短編集。後からはまるとこの手の特典小説は追いかけようがないので各レーベルはどんどん積極的に収録していっていただきたいですね。複数の店舗で違う小説つけるのよくない!!思わず複数買いしちゃうから!!!あと、もういいから八幡は平塚先生もらってあげてよ!!
打ち上げでゲーセン行ったり、登場人物達(主に材木座や平塚先生)からのお悩み相談をメールで解決したり、ヒロイン(?)達が嫁力対決をしたりと、ちょっとした日常を描く短編が多いのですが、ある意味いつも通りだった「未だ、彼らは帰るべき場所を知らない。」が印象的。(部室に居座って要らぬちょっかいを焼きはじめたOBのせいで)減ってしまった部員を再び獲得してほしいと柔道部に頼まれた奉仕部が、季節外れの柔道部員勧誘イベントを主催するというお話なのですが、解決法がとても「いつもの八幡」というかんじで、ちょっと後味の悪い終わり方も含めてなんともいえない気持ちになる。しかし、葉山グループで3人組組むとあぶれるからって言って迷わず八幡に誘いをかける葉山さんはなんなんですか?愛なんですか?(誤解)
7巻の内容があまりにも重たかったので、その分ほっと一息つける巻であったことは確か。続きの巻でてるからこそ一息つけた感じがあるのも否めないけど。っていうか柔道部の話、雪乃や結衣の反応が割とニュートラルなことにとても複雑な気持ちになってしまった……。
「好きなライトノベルを投票しよう!!2013下期」に投票します
企画元:好きなライトノベルを投票しよう!! 2013年下期
2013下半期は本当に本読めなかったんですが年変わってから無理矢理追い上げたりして8作品選んでみました。ラストスパートした俺ガイルと東京レイヴンズが本当に面白かったので読んでください。バカテスが面白かったのは最早自明の理なのでやっぱり読んでください。ハイキューとKのロスモワ的に壁井ユカコせんせいのバレーボール小説「2.43」とかも全力でオススメしたいので読んでください。
既存部門
あとこのラスト悪友エンドってことでいいんですよね?(迫真)
「おせぇぞ、明久。誰に向かって言っていやがる」
【13下期ラノベ投票/9784047292932】
「……何度、でも……遊ん、で……あげる」
【13下期ラノベ投票/9784040660806】
悪魔大元帥ルシフェルや、魔王サタンですら凌駕する力を手に入れられるのよ」
【13下期ラノベ投票/9784048661614】
黒衣の陰陽師が、東を目指し空を行く。
また、置いていかれた。
【13下期ラノベ投票/9784047129115】
【13下期ラノベ投票/9784094514513】
新規部門
……取り返したかったのは、おれだから……」
【13下期ラノベ投票/9784087715231】
「後輩くんのおしごとは、先輩であるぼくのサポートでしょう?」
【13下期ラノベ投票/9784840154109】
没姫(@botsu_p):やってしまいました…………うわぁ…………ない…………あれはない…………。
【13下期ラノベ投票/9784797375275】
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます!
「艦隊これくしょん」のノベライズ攻勢第二段。角川スニーカー文庫版はとある1人の提督が様々な艦娘達を擁してサーモン諸島に居を構える「泊地棲姫」と戦うというお話。2013年春の期間限定イベント『敵艦隊前線泊地 殴り込み』を元にしたストーリーになっています。
「艦隊これくしょん」というゲームをそのまま肉付けしたらこういうストーリーになるんだろうなという、とても「手堅い」ノベライズ。ストーリー性の薄い原作ゲームに史実設定・ゲーム内の設定・オリジナル設定という3つの方向からの肉付けが上手く溶け合って違和感のないストーリーとなっていて、とても面白かった。特に兵器面の解説はよくわからないまま使っている物も多くあったのでなるほどと思いながら読んでいました。期間限定イベントは秋の奴しか経験ないのでなんとなくしかイメージ沸かないんだけど、ある程度このゲームを知っているとニヤニヤできるお話が多かったです。
まだまだ未熟だけど、艦娘想いでいつだって一生懸命な「提督」が艦娘達に支えられ、愛されながら司令官として成長していく姿が心地良い。また、提督の対極的な存在として「泊地棲姫」が位置づけられているのが面白かった。勿論深海棲艦側との言葉のやりとりはないんだけど、限られた資源の中、双方がギリギリのところで凌ぎを削る様子がアツかったです。
ただ、サブタイトルに「一航戦」の文字が入っている割に各キャラクターの書き込みは薄く広くという感じなので、特定キャラクターを目当てに買うと辛いかも。加賀さんのさりげないデレっぷりとか凄い可愛かったし、もうちょっと色々見たかったなぁ……。あとバトルメインのノベライズなので挿絵はもうちょっと戦闘してるところを見せてほしかったです。絵自体は可愛いのですが割と悪い意味で「顔見世」的な挿絵が多くて、しょんぼり。
キャラクター同士で絡みがあるのも「赤城・加賀」「天龍・龍田(+第六駆逐隊)」「長門・陸奥」「島風(+連装砲ちゃん)」という感じで、割と人気どころを押えておけば…的な印象を強く感じてしまいました。でも、そんな中でやたらと活躍が光っていた扶桑姉さんはきっと作者さんのお気に入りキャラだったんじゃないかと勝手に邪推したい。ゲーム作中で特に絡みとかなかったはずの島風と扶桑姉さんのやりとりが一番美味しかったのです!こういうのもっと見たかったなぁ。
リーガル・ファンタジー 1 勇者弾劾裁判
ファンタジー世界、というより「ドラクエRPGゲームの世界」を舞台にしたファンタジー法廷劇。勇者が世界を救ってから300年後、当時勇者がやらかしたさまざまな事例を巡り弾劾裁判が起きて…!?というお話。
「FF」世界で「逆転裁判」かなと思って読むと「ドラクエ(しかもSFC時代)」世界で「リーガル・ハイ!」やってる感じなのでタイトルから前者を想像するとちょっとイメージ違うかも。勇者は不法侵入し放題、家に入られたらタンスの中を漁られる!とか、仲間にしたキャラを身包み剥がして装備奪って本人のステは低いので放置プレイとか、僧侶は回復薬代わりとか、ゆうべはおたのしみでしたねとか、確かにRPGでお約束な行動の数々を現実世界でやっちゃったら普通に犯罪だし、それを「超法規的措置」として特別扱いしたら嫌がられるし叩かれるよなあ。しかも女好きで不老不死の勇者様には大量の子供がおり、お世辞にも人間が出来ているとはいえない勇者様はその子孫達にほぼ例外なく恨まれているもんだからさあ大変。雨後の筍のように「勇者の子供」が出てきては事態をひっくり返していくもんだから……楽勝だとおもっていた裁判が、逆転に逆転を繰り返した挙句、崖っぷちまで追い込まれてしまう破天荒な展開が楽しかった。
主人公のフィオナと師匠となる弁護士・スミオの関係性もただ「正義感が強い駆け出し弁護士と強欲で勝利のためなら手段を選ばない敏腕弁護士」になってないところが良かった。フィオナは世界が正義だけでも正論だけでもどうにもならないことも知っていて自分のしようとすることに対して葛藤するし、スミオにはフィオナをこっそり目にかけるだけの理由がある。そんな二人が反目しあい、喧嘩しながらも勝利を掴もうとする姿が心地よかったです。まあ個人的にスミオはもうちょっとドSに徹してくれても良かったんですけどね!!
若干1巻の中で詰め込み感あったり、露骨に拾えてない伏線があったりするのが気になったり少し読みづらい部分もあったんですが、そういう荒削りな部分を差し引いても引き込まれてしまう作品でした。2巻があるなら冒頭ででてきた女の子2人がライバルとして再登場する展開を全力でお待ちしてます(個人的にあれだけいかにもメインキャラ臭漂わせておいてあれしか登場しないのは割りと詐欺だとおもうので…おもうので!)
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7
京都の修学旅行を前に学年全体が浮き足立つ季節。奉仕部を訪れた戸部が同じグループの腐女子・海老名さんとの仲を取り持って欲しいという依頼を持ってきた。依頼を受ける事にした奉仕部だが、八幡は葉山の様子がどこかおかしい事に気づき…。
文化祭に引き続きの修学旅行編。さりげない男子組の友情が美味しかったり麻雀大会の戸塚が凄い可愛かったり平塚先生なんでこんないいオンナなのに嫁の貰い手ないのかわかんなくて八幡もらってあげてよすぎるしまさかの川崎さん三浦グループ入りで波乱ぶりにニヤニヤしたりしましたが正直今回一番によによしたのは三浦さんだった気がします。6巻から引き続き、高慢で奔放な女王様と思わせておいて意外にグループの「中」を見ててそれとなく調整してくれる役というか、彼女の立ち位置って面白いなあ。
葉山・三浦を中心にした八幡のクラスのトップカーストグループの意外な素顔が明らかになるお話。修学旅行をきっかけにして距離を縮めさせようとして、2人を上手く楽しませるように苦心したり、その横でさりげなく由比ヶ浜や雪乃との距離が進展したり……と、お約束のシチュエーションがとても楽しい……ハズなんだけど、もう序盤から不穏な雰囲気が漂ってくるのは何故なんだ。形の知れない不安が少しずつ形をなしていく展開にぞわぞわする。特に終盤の海老名さんの怖さがマジぱない。
彼らの誰もが現在の関係を好ましく思っていて、だからこそ次のステップに進みたいと思う戸部と、これまでの関係を崩したくない海老名さんや葉山。無自覚のうちにグループが瓦解寸前のところまで追いやられてしまっていて、それを理解してしまった八幡が取った行動と、それがもたらした思わぬ結果が胸に痛い。面白かったけど、吐き気がするほど抉られた。八幡ならこうするだろうと思ったしそれ以外の解決法はなかったと思うけど……なんというか。
6巻以上に後味の悪い終わり方でいろいろな意味で次の巻どうなってしまうのかが気になる。楽しみだけどなんかもうそろそろ読むのに心の準備が必要なレベルになってきたぞ!!
しかし、間逆の立場にありながら、その行動を心底許せないのにお互いの行動の結果だけを頑なに信頼している葉山と八幡の関係性がやっぱり好き。互いに本気で嫌い合ってるってもうツンデレとかそういうレベルじゃなくて本当に嫌い合ってるのに八幡は「心配ない、葉山がどうにかするっていってたからな」とか言うし、葉山は八幡がこれからやることを恐らくおぼろげに理解した上で「君にだけは、頼りたくなかった」だよなんなんだよもう萌える。