これは「ダイエット物」をもっと押し出したほうが良かったんじゃないか……
「ひめ×ぱら」の風見周+萌え萌えな表紙+最近ありがちな思わせぶり長文タイトル……で「ああまたエロコメか」とおもってたら違うらしいので買ってみたけど正直ラブコメ部分よりもダイエットものとしての部分のほうが面白い。実際にダイエット歴を持つ作者が実体験を元にそのノウハウを詰め込んだ……ということで、ダイエット物としては「なるほど」と思う部分が多く、自分がダイエットの参考にしたいので続きは出て欲しいけど、ラブコメ部分はあまり……
軽く読めてしまうから読んでるときは気にならなかったけど、読み終わって振り返るとうーんと思う部分が色々と。ヒロインの性格がアレすぎてちょっと抵抗感を覚えてしまいました。なんかこうツンデレ、では片付けられない不快感が。
あとこのラノベ、絵師選び失敗してると思う。確かに女の子はすごく可愛いんだけど、可愛いんだけど!!!主人公がピザデブ体型なのにその体型に普通の人間と同じ顔パーツがくっついててちょっとあの……その…………何故デブがちゃんと描ける絵師を選ばなかったし!!!
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イラストレーター買い…むしろ「巻頭カラーページ買い」の話
■超個人的「この作家の別シリーズは読む!」(「いつも感想中」さん)
■ライトノベルの「作家買い」詳細解説と個人的な事例とか「イラスト買い」とか(「平和の温故知新@はてな」さん)
作者買いの話を読んで、考えてみると殆ど私はライトノベルで「作者買い」をしていないことに気づきました。一応自分の好きなシリーズの作者の別シリーズが出ると、それなりに気になることは気になるんですが高確率で購入には至らないというか、なんというか。
なんでだろうと思ってたんですが、殆どの作品において作者の作品は気になるがイラストレーターが微妙だった事に思い当たってみたり。ライトノベルは個人的に文章と絵があってナンボだと思っているので、私の場合は挿絵もツボに来ないと高い割合で購入に至りません。というか、この作者ならきっと面白いに違いない!っていうのはあるのに読む気がしないのはなぜだろう。
考えてみると私が今のところ完全な「作者買い」をしてる作者って
・川上稔
・甲田学人
・岩井恭平
・中村恵理加
くらいしかいないんですよね。
あれだけプッシュしまくっているフルメタですら同作者の「ドラグネット・ミラージュ」からまず未読…というか序盤で挫折中。1巻は書いてるのは違うので致し方ないといえば仕方ないのか…い、いつか頑張って読もう…。あと新井素子もエッセイ関係は高確率でスルーしてしまっています(あちらは冊数多すぎるというのもあるけど)
というわけで私の場合は作者買いでもイラストレーター買いでもなく、作者&挿絵コンビ買いになる確立が高いです。まあ同じ作者と同じイラストレーターで安心して読めるというのもあるのでしょうが…。「川上稔&さとやすコンビ」をはじめ、「藤原祐&椋本夏夜コンビ」とか「三上延&純珪一」コンビとか来ると確実ですね。私は途中で挫折してしまいましたが「時雨沢恵一&黒星紅白コンビ」なんてのも世間的には人気かもしれません。
しかしそれ以上に「前情報全く無しで新シリーズに手を出す」という場合、私は巻頭にあるカラーページをめちゃくちゃ重視します。表紙が気に入ったら手にとって、巻頭カラーをペラペラ眺めて、それでピンと来るものがあればあらすじを読んでレジに…という寸法です。公式サイトや感想ブログで気になった作品も巻頭カラーがイマイチだとスルーしてる、というのも多かったりします。
というわけで、自分の中で巻頭カラーの果たす責任は恐ろしく重大になります。基本的には、この数ページに作品の雰囲気が全て凝縮されていると考えているからです(内容と巻頭カラーが予想以上に違って地雷を踏む事も多いのですが…)
自分的に「巻頭カラー買い」だった作品
■スカイワード1(著:マサト真希/挿絵:橘由宇) この本、作者さんの文章が非常に独特なのですが(句読点を使わないで畳み掛けるような文体を時々使う)そういう文章を巻頭カラーページに掲載していたため、思わずその文体が気になって購入。巻頭カラーイラストではなく「巻頭カラーの文章」に惹かれた一例。2巻以降はこの文体が鳴りを潜めてしまって作品の雰囲気も大幅に変わってしまって寂しかった記憶が…次シリーズの「絶世少女ディフェンソル」は未読。 | |
■ウィッチマズルカ1 魔法、使えますか?(著:水口 敬文/挿絵:すまき俊悟) とにかく見開きで描かれる未玖の願種召喚シーンが素敵。その後のバトルシーンでもその挿絵が1枚あったお陰で凄く場面が想像しやすかったです。ライトノベルの中でも有数にお気に入りな巻頭カラー絵。 | |
■レジンキャストミルク4(著:藤原祐/挿絵:椋本夏夜) もともと椋本夏夜さんのファンをしている私なので、かなり作者&挿絵コンビ買い入ってるシリーズなのですが、巻頭カラー部分が際立ってる小説なので紹介。特に3巻以降の漫画は何かが覚醒しているというか…椋本夏夜さんの脳裏でマカデミアナッツサイズの何かが弾けたとしか思えません。本編のダークを軽やかにスルーして、巻頭カラーで「プリン王国」だのなんだのやりだすセンスが最高です。 | |
■撲殺天使ドクロちゃんです(原作:おかゆまさき/アンソロジー) だから、なんでこんなところにいるんですかCLAMP先生。 一人だけ明らかに浮いてます。なんというか空気読めてません。しかもどうみても侑子さん(xxxHolic)がいらっしゃいます。 インパクト強すぎでした。うっかり買っちゃったじゃないですか。やってくれやがったな電撃編集部。完敗です。本当にありがとうございました。 | |
ロクでなし魔術講師と追想日誌 11
戦いを終え迎えた卒業の日。最後の授業がいま始まる──?
来るべき比翼の日。だがそこに堕落の果実を強奪する組織が現れ―『第惨事チョコレート大戦』。
グレンの反対を押し切り魔獣退治についてきたシスティたち。彼女らを待っていたのはサキュバス!?
『世界最強の魔獣』。あの“迷”探偵がまたまた登場。今度は怪盗と直接対決?―『魔導探偵ロザリーの事件簿・飛翔編』。
国外任務のためグレンとセラが潜入。怪しまれないよう新婚夫婦を装うことになり―『偽装夫婦のシンフォニー』。
そして――禁忌教典をめぐる戦いを終え、卒業の日を迎えたシスティたち。だが現れたグレンは最後にとんでもないことを突きつける――「要するに、”最後の卒業試験”ってやつだ」
比翼の日(バレンタィン・デー)を前に浮かれるアルザーノ学園の生徒達。ところが、『愛の片翼血盟』を名乗るモテない男子生徒たちの襲撃を受けてしまう。奪われたチョコレートを奪還しようとするシスティーナ達だが、敵は予想外に強くて……!?
最後だからかいつもよりはっちゃけ具合が凄い!
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」シリーズの短編集、システィーナ達の卒業が描かれる本編完結編。最後の最後ということもあるのかやたらハッチャけた短編が多かった気がします!というかバレンタィン(誤字ではない)を舞台にモテない男達が(某教授のドーピングで)大暴走する『大惨事チョコレート大戦』の破壊力が酷かった。バレンタィンの話、原作初期の短編だったらグレン先生はむしろカロリー欲しさに男子達に迎合する流れだったんじゃないかと思ったのですが、しっかり男子たちからモテ側の人間と認識されて全力で襲われてるの感慨深い。そして同じ方向で色々と酷かったのがシスティーナ達がグレンの魔獣退治に付き合う『世界最強の魔獣』。世界を揺るがす大戦すらも乗り越えてきたシスティーナ達がグレンの姿で誘惑してくるサキュバス達にメロメロにされる展開に笑ってしまうんですが、グレンならなんでもいいマリアはともかく、ルミアとシスティーナで出てきたグレンの方向性がほぼ真逆なのめちゃくちゃ面白いな。二人がグレンに惚れた一因を考えたらまあたしかにこうなるよな、という感じではあるんですけど……そしてもはや悲しき合成獣と化しているリィエルのグレン……。
その他、ポンコツ極まりないグレンの後輩が謎のラッキーパワーを発揮して大活躍(?)する『魔導探偵ロザリーの事件簿・飛翔編』、いつもはシリアス担当な過去の特務分室を描く『偽装夫婦のシンフォニー』すらまさかの色ボケ(押せ押せのセラ、やたらとグレンに童貞捨てさせようとする男性陣)展開でめちゃくちゃ笑った。いや、真顔で房中術の本渡してくるアルベルトも大概だけど、セラを取られたくなくてグレンに嫉妬ましましなイヴちゃん可愛いね……現在を考えると色々としんみりするところもあるけど……というかこの色ボケ話で最後の最後に泣かせてくるのズルいんだよぉ……。
彼らの前途が楽しみになってしまう、書き下ろしが良かった
書き下ろしの『最後の卒業試験』は本編完結後、システィーナ達の卒業の日を描く未来の物語。卒業式の直前にグレンが最後の授業として自分を倒せと言い始めて……というお話なんですが、これがとてもよかった。システィーナたちを信頼しながらも、いろいろな意味で「安寧な学園生活」を送れなかった教え子たちを心配して試練を与えるグレン、そんなグレンを苦笑いしながら見守る大人組……という構図がなんともエモく、彼らの期待通りにグレンの望んだ答えを掴み取るシスティーナ達が頼もしい。物語の中で見ることは叶わないかも知れないけど、彼らの前途が楽しみになってしまうお話でした。
グレンが今後どのような道を歩むかは巧みにぼかされてしまったんだけど、その辺はイヴのスピンオフで明かされるのかな?まだまだ終わらない「ロクアカ」の前途に期待しつつ、とりあえず本編完結お疲れ様でした!!
……ところでドラマガ掲載の短編、確認したところ現在連載中の「if」を除いても未収録の短編があと1冊分くらいあるんですけど、この辺はシリーズ名を微妙に変えて出すとか、今後出てくるらしいイヴのスピンオフにさりげなく挿入される形になるのなあ。ドラマガの方には店舗特典まとめ回とかもあったので、その辺含めて全部収録してほしい。さすがにこれほどの人気作で未収録短編がこれだけ発生するのはなしだとおもうので何らかの形でまとまるとおもってるんですが。
「if」もそろそろ纏める流れだと思うんですが……雑誌掲載分でメインヒロイン級のキャラクターのルートはほぼやってるんで、書き下ろしで誰が来るのか密かに楽しみなんですよね。あと来てないのはセリカとかか、個人的にはもしもの可能性でもいいからジャティスルートが見たいんですが……。
悪の令嬢と十二の瞳 〜最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録〜
やり直しの裏に隠された秘密とは――
公爵令嬢セリーナは王太子から婚約破棄され、服毒刑にて人生を終えた――はずだったが、何故か巻き戻り二度目の人生がスタート。
ちなみにあれは冤罪だ、とんだ冤罪である。
だって「ちょっと聖女の頭めがけて植木鉢を落としただけ」で「殺してはいない」のだから。
前回の敗因は有能な部下がいなかったこと。
であれば今度は拠り所のない孤児を引き取り暗殺者に育て上げ、自分をコケにしたやつら全員をぶちのめすのだ!
こうしてセリーナの従者育成計画が始まるが、過酷な訓練を経て仕上がったのはある意味(・・・・)最強の従者たちと番犬で!?
「我々はセリーナ様を愛しているか?」
「生涯忠誠! 命を懸けて! 忠誠! 忠誠! 忠誠!」
「セリーナ……、“あれ”はなんだね?」
「お父様、彼らは従者としての使命を前に、ああやって気を引き締めているのです」(すまし顔)
人生二度目の倫理観ぶっ飛びヒロインが征く、ちょっぴりおかしな逆行転生×悪党×勘違い英雄譚!
ちょっと聖女に「意地悪」をしただけなのに、「なぜか」王太子から婚約破棄されて処刑されてしまった公爵令嬢セリーナ。なぜか少女時代に戻って人生をやり直す機会を得た彼女は、こんどこそ破滅の道を歩まないよう努力することを決意する。そう、処刑の際に力付くで取り押さえられて助けてくれる部下も居なかったから死の運命を回避できなかった……それならば、自らの肉体を鍛えて対抗できるようにして、更には自分の危機となれば命を差し出しても助けてくれる忠実な部下を育成すればいいのだ!!……と。
死に戻りではなく精神年齢で変化していく価値観の描写がリアル
処刑されて人生をやり直すことになったものの色々と懲りない主人公が今度はもっと狡猾にやりたい放題やろうとするお話。作者さんの作品で読んでいるものが「誰が勇者を殺したか」しかなかったのでこちらも結構シリアスな感じの物語かなと思っていたのですが、どちらかというと懲りないセリーナの無茶苦茶な行動や、悪意を持ってやったことが微妙に斜め上の方……本人の望まぬ方面に解釈されてしまって予定が少しずつずれてしまったり一周回って本人の意図しない形で思惑通りになってしまったり……が楽しいお話でした。最後まで読んで物語の全体像を振り返ると普通にシリアスで重たい話をやっているんですが、それを重くみせない軽妙な展開が楽しかったです!一度死んだくらいでは揺らがなかったセリーナの価値観が、精神の成熟・老成とともに変化していくのがなんというか生々しくて良かった。いや確かに、死んだくらいで倫理観変わらないよなと思うし(死んだことないからしらんけど)その一方で10代の頃の価値観と40代で持ってる価値観って明確に違うんですよね。良く言えば成熟するし、悪く言えば「枯れる」。転生物でよく言われる、精神は3〜40代を迎えているはずの人間が10代の価値観を持ったまま人生をやり直していく違和感みたいなのが全然なかった。
犬嫌いにとっての犬の描写がリアルすぎて共感しました!(犬苦手)
そんなこんなで彼女の未来の従者(=処刑されそうになったとき肉盾になってくれる心無きマシーン)にするため引き取られた孤児院の鼻つまみ者の子供たち6人が、セリーナが又聞き知識で作り上げたハート◯ン軍曹もビックリの地獄の特訓に晒される。最初は不満たらたらだったけど、実力をつけていくうちにいつのまにか「何者でもなかった自分をひとかどの人間にしてくれたセリーナ」へ恩義を感じ始めて心から忠実な従者になっていく……というちょっとしたすれ違い展開も楽しかったのですが、なによりセリーヌが子供たちに育てさせた犬(※絆が生まれたところで殺して子供たちの心を殺すつもりだったが色々目算違いが起きて殺せなくなった)への反応がリアルすぎて笑ってしまった。セリーナの犬嫌いの描写がリアルすぎる。なぜか犬を苦手としてる人間にジャレつく犬の描写わかる〜〜!!!し、すっかり犬好きになった子供たちがセリーナが本当は犬好きだと誤解してこっそり彼女に犬をけしかける展開が犬好きの傲慢〜〜!!!という感じでめっちゃ好き。そうなんだよ、犬嫌い(苦手)ってみんなこうだし犬好き・猫好きのやつらは全世界の人間が犬猫好きだと思ってるんだよな。そんなことないよ。あとがきで作者さんも犬が好きではないと仰られていてなるほどな……となってしまいました。……ただ、犬が嫌いというだけの話に留まらず、嫌いだと思っていた犬のことを長く触れ合っているうちに「嫌い」とまでは言い切れない複雑な絆が芽生えていったり、なんだかんだ別にお前らに死んでほしいわけではない、どちらかというと死なないでほしい、くらいに情が芽生えていく描写まで含めて本当にわかるすぎて……。
セリーナの視点だけでなく、6人の子供たちのまなざしを加えることで全体像が見えてくる物語がとてもおもしろかったですし、セリーナが「なぜか」少女時代に巻き戻ってしまった理由をはじめ、物語に散らされた些細な違和感・伏線が最後の最後で一気に明かされていくラストはとても気持ちよかった!……と思わせておいて最後の最後で明かされるアレさあ!!いや本当にそこまで読んで全てに納得がいったという感じだったけど!!!
しかしひとつだけネタバレをすると犬が死ぬ話なのでそういうのがダメな人は読まないほうが良いという注釈は入れておきます。なんかツイッターでそこは教えろって話をよく見るのでな……。
異世界召喚されたVチューバーですが、皆様コメントで助けてください!
引きこもりの兄がやっていたVtuber「絶対正義☆聖乙女」のガワで異世界に召喚されてしまった普通のOL・百合。彼女の異世界での行動は全て現実世界に生配信され、配信への反応が「聖乙女」として戦うための力となるらしいのだが……!?
頼れる仲間はみんなクソ。ハードモードだらけの異世界召喚ロマンス!!
人の良さだけが取り柄の主人公・百合=聖乙女オトが異世界に召喚され、クセしかない周囲の人々に翻弄されながら配信で力を集めてなんとかかんとか魔物を倒しつつ現実世界でスパチャを集めて兄のこしらえた多額の借金を返済しようとするお話。いや〜面白かった!まどマギ以後の魔法少女ものでよくみる「信用できないマスコットキャラ」、異世界召喚ものでちょくちょくみる「主人公を使い潰す気満々で召喚した王族」、更には配信・掲示板モノの「便所の落書きみたいなことしか言わないクソコテ」…………各ジャンルからクソキャラを集めて悪魔融合した結果、頼れる仲間だと思ってた奴らはみんなクソみたいなハードモード異世界召喚になってる。
ただひとり傍流の王子である騎士団長ヴァーミリオンだけは親身になってくれるし、コバルト文庫なので彼との少女漫画のラブロマンス的な展開も当然あるのですが、チャンネルとしてのジャンルはむしろ底辺男性向けなので彼といい雰囲気になるたびに生配信が盛り下がるんですよね。女性向け異世界ファンタジーとしてのヴァーミリオンはめちゃくちゃ頼りになるイケメンだけど、男性向けの異世界召喚系動画配信モノとして見ると最早障害でしかなくて、この辺の女性向けと男性向けの需要の違いで話が噛み合わずにチグハグになってしまうのめちゃくちゃ面白かったしやっぱりこの作品の登場人物誰も信用できねえなってなった。ヴァーミリオンは悪くないんですが……。
そんなハードモードすぎる異世界召喚生活の中でヴァーミリオンと距離を縮めていく傍ら、持ち前の人の良さで少しずつ兄のチャンネルに常駐しているクソコテ達と仲良くなっていく百合。ネット世界でも鼻摘まみにされて同じく底辺だった兄のチャンネルにしか居場所がなかった、社会不適合者の3人が「中の人」の変化に戸惑いつつも最終的にオトの力を集めるために必死に行動してくれる展開には胸が熱くなったし、事故で弱視となった幼馴染のために朗読を磨き続けた百合が「聖乙女オト」になりきることで震える心を押さえつけて凛々しく立ち上がるクライマックスはめちゃくちゃ良かった!!
……とはいえ、今回のアレコレで集まったスパチャ額は微々たるもの。チャンネル登録者数も大して増えてない……みたいな状況なのは相変わらずで、色々な意味でこれどうオチをつけていくのか。もうチャンネルの方向性の不一致をなんとかしないとどうにもならない気がするし、そこにテコ入れしたらテコ入れしたで今回仲良くなったコテハン達には住みづらい世界になってしまうんだろうし、配信タイミングも基本的に制御できないので難しいよなあ。失踪したままの兄の行方も気になるし……ほんとうにどうなる?
この先、絆があるぞ
オンラインと現実の狭間で揺れ動く高校生のゲームライフストーリー
高校生ユウの趣味はゲームだ。自分のプレイヤースキルを試せるPvPが特に好きで、それを配信しリスナーと共有する日々を楽しんでいた。そんなある日。クラスメイトのダイが漏らしたのは、ゲーム『ELDEN RING』初心者特有の悩み。思わずアドバイスを返してしまい、ダイと一緒にプレイすることになる。この手のゲームは初心者だというダイは、驚き、喜び、ムキになったりと全身でゲームに熱中していて、ユウも気づけばダイとのゲームを楽しみにするようになっていた。しかし同じように楽しんでいたはずのゲーム配信ではリスナーと微妙な空気になってしまい――。オンラインと現実の狭間で揺れ動く高校生のゲームライフストーリー。
エルデンリングのPvPでリア充を狩るのを楽しみに、配信活動もやっている高校生のユウ。ある日、エルデンリングの序盤のボス攻略に詰まっているクラスメイト・ダイにうっかり話しかけてしまい、協力プレイで攻略のアドバイス兼見届け役をする羽目に……!?
実在のゲームを題材にした高校生ふたりの青春物語
苦手な「リア充」がフロムゲーのクソ強ボスにボコボコにされる姿を笑ってやろうという大分後ろ向きな気持ちでダイからのフレンド申請を承諾したユウが、なんでも新鮮な気持ちで楽しむスタイルのダイの姿を見ているうちにゲームを純粋に楽しむ姿を心地よく思い、少しずつ放課後の協力プレイを楽しむようになっていく。ゲーム攻略が進むにつれて自身の気持ちの変化に戸惑い、ゲームクリアによってダイとの関係が終わってしまうことへの怖れを感じ始めて……というふたりの関係性と気持ちの変化が印象的な物語でした。元のゲームは全くわからないのですが、ゲームの前提知識がなくても楽しめる高校生ふたりのゲームを題材にした青春のお話で、面白かった〜!!ユウに訪れた気持ちの変化、しかしそれがきっかけでいままで「リア充憎し」でやっていた配信活動の方がうまくいかなくなり、リスナー達の不満が溜まり始める。挙げ句にはネットストーカーらしき人物まで現れ、ユウの私生活を掻き乱し……何もかもが上手くいかないままダイとも喧嘩してしまい……ドン底の所からゲーム内で殴り合って解決、雨降って地固まるというラストが最高にアツかった!ユウみたいに一種のキャラ作ってやってるタイプの配信者のキャラ変、視聴者側として考えるとかなり複雑な気持ちになりそうだなとも思うんですけど、あえて自分の素の姿を全世界に配信してエンタメとして昇華しちゃうの小規模炎上の火消しとしては上手かったんじゃないかなと。(作中の)万人が納得できる解決方法ではなかったとおもうけど、リアルでもネットでもクラスメイトも視聴者も一緒に楽しそうにしているエンディングにほっこりしました。リア充ども末永く爆発しろ!!
主人公二人の関係性がとにかく好きなんだけど、しんどい展開の中でも変わらぬ明るさで接してくれるユウのゲーム仲間のマイケルがめちゃくちゃ良いキャラだったし、同じクラスの仲下さんが適度な距離感で付き合ってくれるのも凄く良かった。ストーカーくんのその後も含め、基本的に悪い人がいない世界観なの安心できる。
友情以上恋愛未満の関係性たまらね〜〜〜!!!
これ作者側の意図か自分の誤読かわからないんですけど、最初男子同士の友情物語だと思って読んでたんですよね。というか本当に前半の展開で性別的なアレコレを感じなくて、リア充男子と陰キャ男子の友情物だと思って読んでいたというか。それが後半で二人の距離が縮まるにつれて少しずつお互いを意識するようになっていって、それに呼応するようにお互いの内面に関する描写も増えていって……「自分の本当の姿を暴かれたくない」と独りごちる序盤から、全部さらけ出してぶつけ合う後半に進むにつれて両者の内面の描写が増えていくのが印象的でした。最終的にこの気持ちは友情なのか恋愛なのか、わからないけどどっちでもいい、今ふたりでいるのが楽しい!!という関係性に落ち着くのがめちゃくちゃ好みで、刺さった。そうなんだ私はこういうこの気持ちが恋愛なのかなんなのかわからないでもそれより大事な物があるしもっと君の隣で一緒に楽しいことしていたい系ラブコメ未満の甘酸っぺえやつ(長い)好きなんだ!!!
田口先生の現代舞台・甘酸っぱい男女の青春短編が前からすごく好みで、「3分間のボーイ・ミーツ・ガール」「僕とキミの15センチ」「きみがVTuberになるまで」とどれもめちゃくちゃ好きだったのでこの路線で一冊長編書いてくれないかなー……と密かにずっと待ってた身としては本当にありがとうエルデンリングでした。ありがとうございますこの路線でぜひもう一冊……(ガーゴイルとかミロクとか魔王城みたいなファンタジー疑似家族物路線も好きなんですが、そっちの新作もずっと待ってるんですが、それはそれとして……)。
「魔王城」だけじゃなくて「3分間のボーイ・ミーツ・ガール」も電子書籍になってないってマ!!!!?????????????????????(今気付いた)
夜勤事件 〜Chilla's Art ノベライズ集〜
大人気インディホラーゲームメーカー、チラズアート作品ついにノベライズ!
大学生の田鶴結貴乃は生活費を稼ぐため、コンビニで高額時給の深夜バイトを始めた。だが初出勤にもかかわらず先輩の船橋は早々に退勤し、いきなりワンオペの夜を過ごすことになってしまう。そこへ降りかかる奇妙な出来事の数々。謎の忠告をしてくる客。故障なのかひとりでに開閉を続ける自動扉。そして自分宛に届いた謎のビデオテープ。テープの差出人は不明で、再生してもただ暗闇が映るばかり。さらにその後も毎晩奇怪なトラブルが相次ぎ、ついには自宅にまで差出人不明のビデオテープが送られてきて――。奇妙なコンビニで起り続ける異変を追う『夜勤事件』ほか、『閉店事件』『誘拐事件』『夜間警備』『パラソーシャル』の計五編を収録!
インディホラーゲームメーカー「チラズアート」さんの人気ゲーム5作品ををノベライズした短編集。
ゲーム要素の落とし込み方が上手いし展開知ってても怖い
ゲーム実況動画でめちゃくちゃ見ているメーカーさんの作品で、絶対にプレイ出来ない(ホラー苦手&アクション苦手&確実に3D酔いする)ジャンルだし面白かったです課金で……くらいの気持ちで購入しました。すべて展開を知っている作品のノベライズなので大丈夫……と思っていたのだけど、展開知ってても普通に全然怖かった。状況に追い詰められて正気を擦り減らしていく主人公達の心象描写が描かれているのは小説媒体ならではの楽しみだな。全体的にひとこわ7割+ちょっとオカルトっぽい不可思議現象くらいの配分のホラーが多い印象の作品群なんですけど、ゲームをちゃんとプレイしていれば分かる範囲の部分はしっかり文章に入れ込みつつ、オカルト要素などの不可思議な部分は不可思議なままストーリーに落とし込まれていてゲームの持ち味である消化不良感は残りつつ展開としてはスマートに解りやすくなっていて良かったなと思います。
この辺は自分のプレイスタイル(視聴スタイル)の話になっちゃうんですけど、作業用BGVにしたり3D酔いの問題もあったりであまり画面を凝視しないんですよね。理不尽・不可思議に見えていた部分にちゃんと伏線があったり、繋がっていたり……というのが理解出来たのでそういう意味でも良かったです。特に表題作でもある『夜勤事件』のバッドエンド、割と理不尽エンドだと思ってたんだけどちゃんとそこに至る伏線貼ってあったんだなぁ……一本道の小説媒体で、グッドエンドとバッドエンドの要素両方拾ってホラーらしいオチに繋げてる手腕に惚れる。あと、突然フロアの雰囲気がガラリと変わったり脱出失敗バッドエンドがあったりする『夜間警備』、子どもの視点からで序盤ががややわかりづらい『誘拐事件』なんかも色々と新しい発見があって楽しかったです。『パラソーシャル』は誰も彼もが怪しくて、主人公が人間不信に陥っていくのが本当にわかる。
個人的に一番面白かったのは冒頭の『閉店事件』で、ストーカーの犯人によって消耗していく主人公の描写もホラーらしい展開も面白かったんですが、各作品の中でも異彩を放つ妙に難易度の高いカフェ店員業務パートの本作への落とし込み方が上手すぎて笑ってしまった。やたら長くて複雑なレシピをキッチン内に掲示しろっていう愚痴も出来上がったコーヒーをおもむろにゴミ箱に捨てに行くシーンも何度もゲーム実況で見たわ〜……更に忘れた頃に『パラソーシャル』で同じコーヒーショップ出して後日談出してしんみりさせつつ、お客さんの眼前で出来上がったコーヒーを捨てる描写でもう一度笑ってしまった。あの主人公確かにバイトを辞めた描写なかった気がするけど……!!ところで紙本の店舗特典が迷脇役・船橋先輩の話らしくて読みたすぎる……。
チラズさんの作品、他にも色々作品があるのでもう1〜2冊くらい出してもらって色んな話読みたいなと思いました。『地獄銭湯』とかどうかな。
組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い2
組織の宿敵が合コンで前の席に座ってた……イチャ甘夫婦の馴れ初めに迫る!
「な、なななな……んで、《羽根狩り》が、ここ……に」
「それはこちらのセリフだ、《白魔》。何らかの任務か?」
かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた二人。《羽根狩り》こと犀川狼士と、《白魔》こと柳良律花は……組織解散後になぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!
そんな彼らの馴れ初めは、じつは場末の合コン会場からはじまった。大学生になっても宿敵同士はいがみ合うし喧嘩もするし、しまいにはどっちが強いかの幼稚なマウンティングバトルをはじめてしまう。でも似た者同士な二人は結局息ぴったりで、居心地も妙に良くて、互いの魅力にどんどん気づいていって……
昨日の敵は、今日の合コン相手。そして、将来は……?
その宿敵こそが、やがて運命の人だと気付くまで。
再会して恋して愛に至る、これは彼らの青春と初恋の記憶(ラブコメディ)。
かつて《羽根狩り》の異名を持ち、異能者達を狩る組織の一員として戦いを繰り広げた男・犀川狼士。世界が平和になり、普通の大学生になった彼は大学の合コンで何故か宿敵だった最強の異能者・柳良律花と再会する。再会時の第一印象も最悪、だけどお互いにどちらが上か決着をつけようとしているうちに戦っている時には見えなかった意外な一面を目の当たりにして……!?
相変わらずラブコメと異能バトルの配分が超好み
かつては現代異能バトルの最大のライバル同士……だったけれどなんやかんやあって現在はイチャイチャ新婚夫婦に……な二人の「なんやかんやあって」の部分を紐解く過去編。前巻に引き続き面白かった!素直になれない二人が形ばかりの「勝負」に固執しながらもお互いを意識していく様子が大変甘酸っぱいし、新キャラとなる狼士の悪友ふたりもキャラが濃ゆくて最高だったし、過去も現在もお兄ちゃんは心配症だった。それはそれとして、過去の狼士と律花がもどかしい距離感のラブコメやってる合間に「現在の」彼らが過去の馴れ初めエピソードを回想しながらイチャコラしてるの本当に温度差ひどくて笑う。そして強力な異能者である律花の孤独に寄り添うため、無能力者の狼士が能力者を圧倒して無双するクライマックスがメチャクチャ良かった!いや確かに、無能力者である狼士が異能力者と互角以上に渡り合うにはそれしかないよねっていう感じの戦闘スタイルなんだけど、「足りないもの」を水面下での努力と情報戦と冷静な判断と頭脳プレイで圧倒しているのが最高に滾る!今回もメインであるラブコメにさらりと仕込まれたシリアス・異能バトルの配分がめちゃくちゃ好み。
それはそうと、今回も前作『サキュバスとニート』のキャラクター達がさりげなく登場してましたね。高校生時代の(まだ野球少年だった和友の女房役だった頃の)琥太郎が和友と「鐘を鳴らせたら永遠に結ばれる鐘」をふたりでつきに行こうとしてるの、微笑ましいの前に割と彼らを待ち受ける未来を思うと地獄みが深いんですが……ひきニートになった和友の唯一の親友ポジを確保したことまで考えるとむしろ汚染された聖杯的な案件なのでは……いや彼らが鐘を鳴らせたとは誰も言ってないしうん……。
美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件2
『最弱兵器』暗殺の危機!? 陰謀渦巻く学園代表選抜戦、開催!
美少女英霊たちの弟子となり、魔物の大軍を退ける大活躍をしたウィリアムは、今日も修行に打ち込んで――いなかった。
「この前一生分の修行をしたじゃんか」「お前という奴は!」
サボり癖の抜けない弟子に、英霊たちは四苦八苦続き。
そんな中、第三王女のカノン・ユークリウッドがクラスに編入され、何故かウィリアムに接触を図ってくるように。
「わたくしは、あなたのことをよく知りたいと思っています」
笑顔でそう告げ距離を近づけてくる彼女の本当の目的は、なんとウィリアムの身辺調査、もしくは暗殺!?
『最弱兵器』は、新たな危機をどう乗り越える――?
美少女英霊たちの弟子となって魔物のスタンピートを止めるという活躍を見せたウィリアムだが、学園の危機と自らの留年の危機から脱したのを良いことにサボり癖が復活してしまう。そんな中、ウィリアムの活躍を知った第三王女カノン・ユークリウッドが彼の正体を探るために接近してきて……否応なしに学園最強を決める「代表選抜戦」に参戦させられることに!?彼女から「聖人」という言葉を聞いたレインの様子もおかしくて……。
綺麗にまとまりすぎてた1巻からの方向転換が大変そう
強くなったウィリアムが世界を救う「切り札」になるため、前に進む動機づけをするための、そして「魔王の従者」を名乗っていたレインが自らの因縁を乗り越えてもう一人の師匠として正式に立ち上がるための物語でした。良くも悪くも1巻を追えて今後長編シリーズをやるための方向転換・下地作りの巻だったのかなという印象を受けて、面白かったんだけど1巻のパンチが強かった分少し今回は色々なものが弱く感じてしまったな……。1巻の「自分の実力を何も自覚していない主人公が無双するのを周囲がドン引きしながらその実力を気づかせずその気にさせて修行させる」という方向性が凄く面白かったんですよね。ただ、1巻でその辺の周囲の齟齬はほぼほぼ解消してしまい……比較対象も何も知らない一般人から変わって太古から世界を裏で操る覚醒者達へと変わってしまい、覚醒めたばかりの主人公が世界を操る強大な敵に立ち向かう──という方向性になってしまっているので若干「求めてたモノと違う」と感じてしまった部分はある。前巻めちゃくちゃおもしろかった師匠達との修行シーンも、「本気になれない」という壁が立ち塞がった点を踏まえても普通に苦労してる感じでしたし。ゼスやレオナルトといった男子の友人組の影が薄くなってしまったのもさみしくて……いや、もうあらゆる意味で1巻が1冊で綺麗にまとまりすぎてたんだよ!!
ただ今回の話は色々な意味で今後への下地づくりの回だと感じたので、3巻で本格的に覚醒者達が動き始めた時にどういう方向になっていくのか気になるし、何より覚醒したウィリアムの隣に立つために物語の裏で努力を続ける幼馴染ヒロイン・セシリーがめちゃくちゃ可愛かったので二人の関係が今後どのように変化していくのかも含めて今後が楽しみです!
私と陛下の後宮生存戦略2 ‐不幸な妃が幸せになる方法‐
【死に繋がる不幸を招く呪い】と【死ぬと時間が戻る祝福】を持つ少女・ソーニャは【他者の祝福・呪いの影響を受けにくくなる祝福】を持つ皇帝・エルクウェッドになんとかかんとか見つけ出された。知らないところで彼女の巻き起こす死に戻りに巻き込まれ続けて限界寸前だった彼から、これ以上の死に戻りを阻止するために自らの【最愛】──婚約者になれ──と申し渡されてしまう。それ以来なんやかんやあったりしたものの一度も死に戻ることもなく、お妃教育や両親との顔合わせなどが進んでいって……?
エルクウェッド、本当にどこまでおもしれえ男なんだ……
2巻も引き続きめちゃくちゃおもしろかった!!肝であった死に戻り要素が1巻でほぼ(物理的に)解決していたので続巻が出ると知ってどう続けるの??と思っていたんだけど今回はなしくずしに婚約者となった二人の心の距離を縮めていく話にシフトしていってて、1巻読んだときに少しだけ思った「これお互いに恋愛感情ないままゴールインしちゃうやつだな!?」という部分をしっかりフォローする内容になっていました。世界でただひとり同じ時間軸に生きている相手同士でありながらも全く正反対の半生を過ごしてきたふたり。片や祝福に目覚めて以来短い期間で死にまくってきたせいで(死の危険に繋がりかねない)無駄なことは一切出来ず、ただ「生きて」きたソーニャ。そして、ソーニャの死に戻りに巻き込まれ続けたせいで未来予知に近い万能の対応力を備えつつ自他ともに認める「超」趣味人となってしまった賢帝エルクウェッド。趣味特技に「死ぬこと」と書いてしまうようなソーニャを幸せにするためにエルクウェッドが自分の趣味の数々を一緒に体験させるぞ!!選ばれなかった后候補達と絡ませて女友達も作らせるぞ!!とにかく楽しいことをさせるぞ!!と張り切る姿が印象的で、そんな彼の突拍子もない行動に巻き込まれてツッコミまくりながらも彼から様々な人生の悦びを教えられてどんどん幸せになってしまっているソーニャが微笑ましかったです。
そして必死に彼女を幸せにしようとして彼女のことばかり考えているうちに……そんな彼から「幸せ」をおすそ分けしてもらって振り回されていくうちに……お互いに形だけで始まった恋愛関係に中身が伴っていく。同じ記憶を共有する同士であることを越えて互いの人柄に惹かれ合っていくのがとても良かったですし、最後にはしっかりと両思いのカップルになっていったことに心底ホっとしてしまいました。1巻のラストでは少し不穏なフラグも見え隠れしていたし、ソーニャの祝福が力を失うことによってエルクウェッドがなしくずしに獲得していた未来予知にも近い力が失われ、スーパー賢帝からただの人間になっていくことへの心配も少しあったりしたのですが、そんなものを笑って吹き飛ばして幸せになっていくような力強いエンディングが最高でした。
……それはそれとして、やっぱりエルクウェッド本当に面白え男なんだよなあ!!!事あるごとに奇声を発してソーニャをビビらせるのには笑ってしまったけどめちゃくちゃ自然にソーニャに襲い来る死の危険を防ぎまくってたり、なんならお妃教育すら誰よりも完璧にこなしてしまう経験豊富さとか、いやそれを得るまでの道のりを考えたら全然笑えないかもしれないんだけどやっぱおもしれえ男だよお前……女装の挿絵が無かったことだけが心残りです(コミカライズに期待)。そんな超趣味人の陛下にあてがわれるために集められた、全体的に一芸特化型でおもしれえ女しかいない后候補の面々が次々とソーニャに自分の得意分野をプレゼンしながら「でも陛下にはかなわないんですが」と負けを認めていくところとかもうこんなん笑わずに読めるわけ無いんですよねえ。今回は不自然にガタいが良く運動神経の良く時折陛下とともに奇声を発しながらアクションしてくれる侍女(意味深)も加わって奇声2倍増しなのも最高でしたね!!
最後に語られる結婚後のソーニャの伝説がまたいちいち面白く、そしてこのくだりだけで言葉とおりエルクウェッドがソーニャを幸せにしてしまったのわかるのがズルい。もう本当に命果てるその日まで夫婦で面白おかしく幸せな毎日を送ったということなんだろうなって。最後まで楽しく笑って読める、最高の完結編(だよね?)でした!