うららの記事一覧 | ページ 139 | 今日もだらだら、読書日記。

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戦闘城塞マスラヲ Vol.4 戦場にかかる橋

[著]林 トモアキ [絵]上田 夢人

聖魔グランプリを勝ち抜き、優勝候補としての座を磐石のものとしたヒデオ・ウィル子ペア。優勝を意識し始めたヒデオは魔殺商会を率いる少女・鈴蘭を最大の障害と考えていた。そんな中、魔殺商会と魔人組織<アルハザン>が主催するサバイバルバトル<クロスフラッグス>の存在を知った二人はアルハザンに味方し、大会中に彼女を倒す事を決意する。「未来視」とさえ噂される優勝候補・ヒデオの動きによって、クロスフラッグスは思わぬ展開を見せるが…
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うわあああ、敵も味方も熱いっ!
3巻ではちょっとテンションダウンかなと思う部分もありましたが、今回は物凄く面白かったです!

魔殺商会vsヒデオ・ウィル子達が参加するアルハザンという形で、遂に前シリーズ主人公である鈴蘭とヒデオの直接対決が実現!……というわけで、ヒデオ達の戦いも勿論熱いのですが、今回はとにかく鈴蘭達が圧倒的過ぎる!因縁の敵同士であったエリーゼ商会とアルハザンを味方につけ、大きく成長したウィル子の能力で規格外だらけの魔殺商会の面々を翻弄したところまでは良かったのですが、本気を出した鈴蘭達がここまで強いとは。

一見バラバラのように見えながら、自らに絶対的な自信を持ち、同時にそれに相応しい実力を持って立ちふさがる魔殺商会の小細工なんか必要としない圧倒的な強さ。そして自らの前に立ちふさがる圧倒的な宿命を全力でぶち壊そうとする鈴蘭の思いがかっこよすぎ。久しぶりに全開な鈴蘭節に、「お・り・が・み」ファンとしてはニヤニヤが止まらない展開でした。一方、我が強いアウター達に振り回されてワタワタする、かつての鈴蘭の燐片も覗かせて、とにかく今回は前シリーズが好きだった人にはたまらない1冊という感じでした。正直、本来の主人公であるヒデオを鈴蘭が食ってしまっている印象は3巻から引き続いて否めませんでしたが…。

そんな彼女の強さにあらゆる面で圧倒され、自らが感じていた成長は全て仮初のものであると自覚してしまったヒデオ。打ちのめされた彼に容赦なく、更に過酷な現実が襲い掛かります。今までとは段違いに絶望的な状況に陥ってしまった中でも、せめて自分が巻き込んでしまった女性だけでも死なせるわけにはいかないと絶望の淵から立ち上がる姿に胸が熱くなりました。そしてその増援は流石においしすぎますよっ!!

物語は次巻で完結。半ばフライング気味に二人のその後が軽く示唆された中、多少精神的な成長はあったとはいえどもまだまだニートで臆病な自分を脱却しきれていないヒデオがどうやってその示唆された未来にたどり着くのか。最終巻がとても楽しみです。


リトルバスターズ!SSS Vol.3

[著]糸井 健一 他  [絵]RIKI 他 [原作]VisualArt's/Key

秘密組織「リトルバスターズ」に所属する凄腕エージェント・井ノ原真人。マッスルエージェントを自称する彼は信頼できる仲間たちとともに様々な過酷なミッションに立ち向かう!?ところが、その裏で恐るべき陰謀が持ち上がっていて……
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なんか、巻を追うごとに微妙になっていくような……個人的な趣味の問題も大いにあるけど、1巻が一番面白かった気がします。

1編目の真人の話がかなり微妙。笑いを取りたいのか燃えさせたいのかシリアスをしたいのか分からない部分があって、どれをとっても中途半端に感じました。同レーベルの“華蝶仮面”みたいな熱血全開のギャグコメをやろうとしてる一方で、漢臭漂うハードボイルドエージェントモノの要素が入ってきて、なんていうか混ぜちゃいけない洗剤同士を混ぜちゃったような印象。あと挿絵があまりにも原作のイメージとかけ離れていて、違和感バリバリ…(表紙として使うだけなら、インパクトは十分なのですが/今さら気づいたけど、表紙はMGSのオマージュなのですね!!)

個人的には、2編目の小毬&鈴の友情話を表紙に持ってきた方がリトバスファン的にも幸せだったのではないかという気がします。こちらは不器用な女の子二人(+α)の関係が丁寧に描写されていて、とても可愛かったです。女装理樹フラグをあっさりと叩き折られたときには悶絶しましたが。

ていうか今回もさささ可愛いよさささ。2巻から引き続き、昇格ヒロインの佐々美がリトバスメンバー達に振り回される姿にニヤニヤが止まりません。そしてさりげなくイイヤツっぷり全開なツンデレお嬢様の姿に惚れそうになった。私EX買った暁には真っ先にさささ落とすよ!!!買うかどうかわからんけど!!

3編目は行方不明になった小毬を探して迷探偵・三枝葉留佳が立ち上がる…!というお話で、こちらは可もなく不可もなくという感じ。話を茶化してばかりの自称名探偵・葉留佳とそんな彼女にツッコミを入れたりスルーしたりする理樹たちのやりとりが楽しかったです。こちらについては8月中に「迷探偵・三枝葉留佳の事件簿」的な外伝が出るようなのでこちらの販促短編というイメージが強いのかも。ただ、8月は購入予定冊数がとにかく多いので、その中で無理して買おうと思うほど魅力的なお話ではなかったかなあ…。

なごみ文庫は先月の「はぴねす!」以降、不定期に発売予定が増減してるイメージがあって、ちょっと既に購入予定が多い月なんかは対応しきれないです。今月も2?3週間前に突然「聖なるかな」のノベライズ、「恋姫無双」の各キャラクターに焦点を宛てた短編シリーズ?、「リトバス」の葉留佳外伝の予定が出てびっくりしたり。予定が立たないからせめて1カ月前くらいにはちゃんと刊行予定を確定させてほしいです!!ていうかそれより「私が愛した魔王」を早く出せ!!!

リトバス…女装理樹かさささメインで独立外伝とか出たら、たぶん買います(…)


少年のカケラ

[著]深谷 晶子 [絵]くさなぎ 俊祈

戦争で崩壊した後の世界。とある街を統率している少年・海は娼婦の少女・椿、記憶を無くし“石”を持たない少年・シロと3人でささやかに幸せ暮らしを送っていた。二人との暮らしに満足しながらも、なぜか彼らとの決別を予感するシロ。そんな時、都から役人達があらわれて…
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終末世界に生きる少年少女たちを描いた物語。この前読んだ「恋愛前夜」より、題材的には興味を持てたんだけど、うーん……題材自体は嫌いじゃないだけに、作者に共感できない部分が浮き彫りになってしまったなあ。

シロや椿の幸せのためなら自分やその他の者を犠牲にする事を全くいとわない海、過酷な生活を送った結果として一部の感情が麻痺してしまっている椿を始めとして、終末に生きる人々の「狂気」みたいなのはとても良く伝わってくるのですが、物語の動きとしてどちらかというとそういう狂気的な美を全力肯定しているというか、心底かっこいいと思ってそういった美しさみたいなのを描こうとしている印象があって、それがなんか肌に合いませんでした。若いころ、一度はこういう退廃的で刹那的なものに美しさや憧れを感じてしまう時期があるもんだけど、作者の人はきっとそういう時期を抜け出せてないんだろうなあ。邪気眼的世界を卒業できていない人が、大真面目にやっている滑稽さというかそういうのを感じてしょうがなかった。私はやはり、「狂気」はどんなに美しくても、肯定してしまってはいけないものだと思うので。いけないものだと解って描くからこそ背徳的な美があるんじゃないのかなぁとか。

結局のところ何を言いたいかというとシロや椿の為に人を殺す海や、月華のために男と寝てる陽華が、自己犠牲の満足に浸ったまま物語が終わってしまってそんな彼らの姿を「キレイだ」「キレイだ」って両手放しで賛美してるのが嫌だったんだろうなあ。そんなのちっともキレイじゃないよ。いろいろと人間的なものが麻痺している椿は置いておくとしても、シロや月華にとってそういう優しさはいい迷惑だと思うんだよ…。

こういう作品に全く迎合できなくなってしまった私はもう若くないんだなあ、と実感。


【告知】夏コミでバカとテストと召喚獣本出します。

というわけで、またやらかします、バカとテストと召喚獣男の子キャラ中心本

2007年冬コミ・LNFと1冊ずつ出したので今回が一応第三弾な、微女の子向けなギャグ本。
(※前回複数から「もっと凄いのかと思ってました」という素敵な感想を戴いたので「女性向」の文字は外しました。でもやっぱり男子キャラメインです。含秀吉。)

なお、今年のコミケは例のワンフェス事故その他もろもろの影響で手荷物検査実施・エスカレーター使用中止など色々大変な事になっているようなので、参加する予定の方は事前の情報集めをしっかりしていきましょう。
何はともあれ、下記の公式告知は一度目を通しておいた方が良いような気がします。

 ■ コミックマーケット準備会からの緊急のお知らせ(コミックマーケット公式)

本の詳細は「続きを読む」からどうぞ?。

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戦場のエミリー 鉄球姫エミリー第四幕

[著]八薙 玉造 [絵]瀬之本 久史

ラゲーネン王国を襲った惨劇。諸侯から責められる兄・パーシーの姿や、絶望し悲しみにくれるエミリーの姿を見て自らの無力さを実感したグレンは、護衛騎士の身分を捨てて自ら戦場に赴く。少しでも兄やエミリーの役に立てれば、という強い思いからの行動だったのだが、父の護衛騎士であったライオネルはパーシーに疑いを向けて……
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悲しみにくれた登場人物たちが迷走するシリーズ第四幕。
2巻、3巻で見えた希望が何かの冗談だったかのように悪趣味全開です。やっぱこっちが作者の本性か…(違)

ラゲーネンを襲う惨劇の真犯人については、読者側からは「花園のエミリー」の時点でしっかりと明かされているわけだけどグゼンやエミリーにとっては謎のまま……というわけで。読者側からも犯人を曖昧にしておいて、ラストでどーんと落としたほうがショックが大きいのではないかという印象があるのですが、とにかくこの巻だけ見ると真犯人が「イイ人」にしか見えないというトラップがありまして。「グレン、まえまえーーーっ!!」的な何かもあるわけだけどそれ以上に、「あれ、じつはこの人じゃなかったんだっけ…?」みたいな、目撃した読者までを惑わすいい人っぷりがとても憎い。え?惑わされたの私だけ?

事件の真相を知っているだけに、グレンの行動がどんどん裏目に出て行くのが判ってしまっていたたまれない。今までの容赦ない死にっぷりを知っているといつ死亡フラグが成立してしまうのかハラハラしながら読んでました。

それだけに、終盤でエミリー姫が戦場に現れた時の爽快感、喜びといったら無かったです。様々な想いはあれども復活した、セクハラ姫様の言動を聞いただけでも思わずニヤリとしてしまう何かが!!そしてエピローグでのツンデレっぷりはもう垂涎モノですよ。エミリー姫のごとく涎じゅるりですよ。漢らしい戦いっぷりを魅せる「鉄球姫」の雄姿も、セクハラ発言しまくるご無体なセクハラ姫の姿もとっても素敵なのですが、なんだかんだいいつついざとなると素直になれないツンデレ全開なエミリー姫様、マジ可愛いっ!!

彼女の復活があったとはいえ、ラゲーネンの置かれた状況はどうしようもなく絶望的なのですが、今後どうやって彼らが再起を図り、持ち返していくかがとても楽しみです。今ラノベの中でも有数に続きが楽しみなシリーズかも。

余談ですが、絵師さんの後書きでおーいお茶噴きました。ラ イ オ ネ ル さ ん … !


恋愛前夜?キレイなキス?

[著]深谷 晶子 [絵]くさなぎ 俊祈

高校生の月夜、チハル、光太郎、俊の4人の元に「キレイナモノサガシをしませんか?」というメールが届く。適当に授業に出て、適当に遊ぶ毎日に不満はないが、どこか物足りないものを感じていた4人はそのゲームに乗ってみることにするのだが…
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ついった経由で、挿絵がくさなぎ俊祈だよーと教えてもらったので思わず手を出してみた。

「イマドキ」の高校生達がレンアイしたりちょっとキケンでアブナイことをしてみちゃったりするお話で、なんていうか、良くも悪くも雰囲気を楽しむお話というか、なんというか。若さゆえのアヤマチというやつを「キレイナモノ」という言葉でスイーツ(笑)的に美化しているようなお話で、まぁ悪くはないんだけど私の好みではなかったかな。ちょっとこの物語を素直に楽しむには若さが足りないというか。

そもそも彼氏彼女とか「レンアイ」とか、そういうのとは無縁で割と健全なオタク生活まっしぐらな学生時代を送ってきた私には、登場人物たちに1ミリたりとも共感できなかったのが致命的か。

まろんさんの感想でも言われているけど、挿絵が絶妙すぎ。正直「くさなぎ俊祈のマンガのノベライズだよ!」といわれたら素で疑わないと思う…。しかし、だとしたらくさなぎ俊祈のマンガはツボにくるのに、こちらがツボにこないのは何故だろう。あっちは割とキャラクターの魅力に引きずられて読んでるから?

それにしても、未成年と思いっきり明記されている登場人物が堂々と飲酒したりタバコしたり妊娠したり自殺したり集団リンチしたり……昔のコバルト凄すぎる。コバルトというと、学生時代に折原みととか氷室冴子とか山浦弘靖あたりを作者買いした程度で本当に人気どころしか読んだことがなかったので、こんな作品があったんだーというのが一番の衝撃だったり。


AURA 魔竜院光牙最後の闘い

[著]田中 ロミオ [絵]mebae

順調な「高校デビュー」を果たし、充実した生活を送っていた佐藤一郎。彼の「日常」は蒼いローブを羽織り、リサーチャーと名乗る神秘的な美少女・佐藤良子と出会い、崩壊した…——!ある時は共闘し、またある時は敵対するドリーム・ソルジャー達。二人に襲い来る“敵”。二人の絆が崩れそうになったその時、眠りに付いた筈の戦士・魔竜院光牙が目覚め最後の闘いが始まる——……!
   ( 評価不能 )
↑多分嘘は言ってないよ!嘘は!(でも本気にしないで下さい)

というわけで田中ロミオの新作。仮題は「流行の学園ラブコメを目指してみる」……ああうん、確かに目指してみるといってるだけで、学園ラブコメだとはいって無いですよね。一部特定の経験を持っている人々に効果覿面の、ラブコメもといトラウマ抉りコメディです。タネを明かせばイタイ設定をとくとくと語るドリームソルジャー(=妄想戦士)を一足早く中学で卒業した元戦士が、妄想戦士を卒業できてないクラスの大勢(なぜかやたらと沢山いる)に振り回されて涙目になりつつ、現実と戦っていく物語です。

なんていうか、空気読めない妄想戦士達を見て指差して笑おうとする常識的な自分が大半を占める中、主人公のように妄想戦士達の妄言を他人事とは受け止められない、かつて妄想戦士を卒業していて主人公の一郎の心労に感情移入してしまう自分と、未だどこかそんな妄想の世界に憧れ続けて、純粋にその世界に現実逃避している彼らをちょっと羨ましく思える自分まで居て、痛いような痒いような、正視出来ないような……もうなんていうか、まさに「ふ……触れるなッ!!俺の……俺の古傷に……(何故か倒置法)」って感じ。「ドージンワーク」や「辣韮の皮」のような痛いオタクネタ作品を読んだときに感じる時々「楽しんでいいのか痛がって悶え苦しむべきか判らない!」というあの感覚に近いかも。

登場人物達ほど強烈な妄想戦士だった人は稀だと思いますが、オタクなら高確率で似たような経験あると思うんですよね。自分の前世はどっかの戦士でかっこいい闘いを繰り広げ……てたらかっこいいのにな!とかちょっと思ったり、漫画の登場人物みたいな正義感溢れる美形な人格者がどこからともなく現れて何だかわかんないけど自分といい感じになってみたり…くらい、一度は妄想してみたことあるでしょう!?思うだけならタダだよ!?あといつか何かに使えるかなと漫画の主人公のかっこいいセリフを人知れず心に刻んでみたり(絶対使わないよ日常でこんなセリフみたいなのを)、日常生活で使うありきたりな言葉を“感情(きもち)”とか“時空(とき)”とか謎の当て字をして喜んでみたり、「竜破斬」の正式名称と呪文をうっかり暗記してしまって、未だ諳んじられちゃったり……きっとこの世界にはそんな同志達が一杯いるはず!!(※なお、断じてこの記事を書いた人間がそういう経験があると言っている訳ではありません。ないったら。)

……それはとにかく。なんかそういう、自らの胸の中だけに秘めておきたい恥ずかしい過去を容赦なく抉り出されるような作風です。

エンディングは少々強引というか、ご都合展開な何かを感じずにはいられませんでしたが、どちらかというとこの物語、「普通」の人間だって妄想戦士達と同じように現実と戦ってるんだよ!という風に落とすと見せかけておいてエピローグで「でもなんだかんだいって、みんな程度の違いはあれど邪気眼の素質もってるんだよねー!」って主張したかったんじゃないかという気がする。あのエピローグには、思わずニヤリとしてしまいました。

……でもなんていうか、色々評価できねえ。
「面白かった」とはとても素直にいえない。精神とかいろいろな所に痛かった。
色々な意味で凄い作品だとは思うけど。


吉永さん家のガーゴイル4

[著]田口 仙年堂 [絵]日向 悠二

“夢”として過去を疑似体験できる「記憶発掘装置」を使い、3日も眠り込んでしまったイヨ。そろそろ起きなければ死んでしまうかも…と東宮に言われてガーゴイルと双葉と和巳は同じ装置を使って彼女を内側から起こすため、彼女の意識に潜り込む。昭和2年の過去にたどりついた3人は東宮やイヨにそっくりな人物と、完成前のガーゴイルと出会うのだが…
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ガーゴイル誕生を描いた過去編。かつてのイヨと後に夫となる潤、そして天祢の祖父である雅臣という3人の物語に吉永さん家のトリオが出会って……というお話。今までよりも若干コミカルさがなりをひそめてしまったのが個人的には残念だったのですが、いつも通り家族の温かさが伝わってくる、良い話でした。

ガーゴイル誕生秘話ももちろん面白いんだけどそれ以上に自らの家業と錬金術の間で板挟みになる雅臣の奮闘がとても魅力的で、惹きこまれました。家の都合で自らのやりたいことを貫き通すことが出来ず、さまざまな想いを抱えながらも二人と離別する雅臣の姿がかっこよかったです。琴子とイヨの間で苦悩したり、自らが何もできないことを悔やんだり……とヘタレな部分も多いのですが、3人のなかで一番人間らしい魅力を詰め込んだキャラクターだったかなあと。東宮の家がイヨにとっての「ライバル」になった由縁にもニヤリとせざるをえませんでした。そしてイヨが年を取らず20代当時の姿を保ち続ける理由に、普段能天気彼女の笑顔の裏に秘められた重い過去を感じて思わずジーンとしてしまいました。

戦前の日本で考え方をはじめとして様々な部分の違いに驚く吉永家の二人も良かったですが、今までよりもコミカル要素が薄く感じてしまったのはやはり双葉の破天荒な活躍の影が薄かったからかなあ。どうにもならない時代の違いを問答無用で蹴っ飛ばそうとする双葉のパワフルな姿は健在なのですが、それ以上に前回のお話で受けたショックからまだ立ち直りきれていない姿が印象深かったです。今回はどちらかというと彼女よりもお兄ちゃんの和巳の方が目立ってた気が。

ところで、作中に登場する「先生」の正体って宮沢賢治のことでいいんでしょうか?


生徒会の三振 碧陽学園生徒会議事録3

[著]葵 せきな [絵]狗神 煌

夏休みを目前に控え、全校集会で生徒会が恒例で行っている生徒会役員による「寸劇」について話し合う生徒会メンバーたち。珍しくやる気の無い会長に知弦、まともな意見を出せない鍵と真冬……頼みの綱として残った一人・深夏は「戦隊モノ」を提案するが…!?
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鍵かっこいいよ鍵
碧陽学園生徒会のメンバーが部室を舞台にまったりとした日常を繰り広げるシリーズ第三弾。1巻から右肩上がりに軽妙な会話の面白さが増してきて、現在私の中で髄一の電車の中で読めないラノベと化しております。中目黒くんの実体化を経て、真冬の腐り具合も大幅アップの印象ですが、それ以上に会長がどんどんダメな子になってるよーーー!?

とにかく各キャラクター達のボケとツッコミの応酬が面白すぎる。それでいて時々ちょっといい話を織り交ぜてくるので手に負えません。個人的には各メンバーが全開で暴走する「取材される生徒会」と、さりげない鍵の頑張りが顔を覗かせる「働く生徒会」、そして深夏・深冬姉妹の過去と絆を描く「差し伸べる生徒会」が面白かったです。余談ですが、「取材される?」で深夏が熱血ラノベとして「ムシウタ」「禁書目録」「バカテス」を推してますけど……「ムシウタ」って熱血?私はどっちかというと泣きゲー(違)ジャンルに分類したなあ……。あと、やっぱ作者の人はバカテス読んでたんですね。ああ、深夏さんとバカテスの熱さについて熱く語りたい……彼女とは普通にラノベの趣味が合いそうです。

ラブコメパートでは、普段押せ押せな鍵が深夏に対して強く出られず、わたわたしてしまう姿にニヤニヤ。正直、正ヒロインは会長だとおもってたんだけど、実はこれって深夏が正ヒロインなんじゃね?とか思ってしまう勢い。いえ、鍵に言わせれば全員平等に愛してこそのハーレムルートなんでしょうけど。「働く生徒会」で、会長の居ないところで何気に頑張ってる一面を覗かせる鍵にもキュンとしました。

エピローグで、遂にこの本に挿入されていた「存在し得ない?」シリーズの実態が少しだけ明らかに。そういえば2巻で出てきたマギル先生とかいましたね、3巻の影が薄すぎて正直あれはいかがなもんかとおもいましたが。どうせ出すなら、しっかりギャグパートにも絡ませてほしかったかも…本編の方には本当に一瞬しか出てこないからなあ…。次回以降は新展開?でも出来れば今後も今までのようなまったり具合を貫いて欲しいです。

……というよりも、正直ラストの鍵がかっこよすぎて鼻血噴きそうです。
挿絵が、挿絵が何気に反則だーーーっ!


おと×まほ5

[著]白瀬 修 [絵]ヤス

此方が請け負ったファッションモデルの代役として、明日野丈や委員長に連れられ都心のブティックに行くことになった彼方。そのブティックに向かう途中で彼方は思いもよらぬ人物と再会を果たす。ヒラヒラの服を着せられてぐったりしていた彼方だが、そこにノイズが現れて…!?
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さりげなくアニメイト限定版買いましたよ!ミクかわいいよミク。

ここのとこ、萌えキャラかなたんの狙いまくった「男の娘」っぷりにイマイチ萌えを見いだせない日々が続いていたのですが、今回は割りとそういうあざとさを感じずに素直に楽しめました。いえ、相変わらずあざとすぎる男の娘萌え展開は健在なのですが、エフェクトの、周囲の『かなたんかわいいよかなたん』時空に流されない天然クールなキャラクターが良い緩衝材になっていたような気がします。久しぶりに魔女っ娘ステッキを武器代わりに投擲したりと、容姿とは正反対の漢らしい彼方の姿が見れたのもポイント高かったです。

とにかく、人間形態を取ったエフェクトが良いキャラなのです。「かなたんかわいいよ」な異空間を冷静に観察し、ぼそっとズレた感想(時にツッコミ)を入れる姿がとても良い。そして此方や彼方たちとの出会いを契機に少しずつ人間らしさを獲得していく彼女の姿が印象でした。……しかし、人間形態をとる前は、なんとなくしゃべり方から渋い男性のイメージを想像してたのに、天然クールな妙齢の女性形態をとるとは予想外(いえ、此方の陰謀以外の何ものでもないですが)

そんなエフェクトの処遇を巡り、過激な思考を持つその街の担当魔法少女と激突することになる彼方。かわいいかなたんも嫌いじゃないですが、他人の為に命を懸けて戦える男らしい白姫彼方がやっぱりわたし、大好きです。今回のエフェクトとのやりとりは本当に胸が熱くなった……。

“鑑賞”や暴走、モエルの正体などなど、作品に秘められた謎が少しずつ姿を現してきた感じで、その辺も面白かったです。いいんちょの魔法を復活させた人物についての謎もありますし、久しぶりに続きが楽しみになりました。6巻が楽しみです。


ちなみに限定版、作曲は「メルト」「恋は戦争」等でボカロ界隈では有名なryoさんで、この人の曲が好きなら買って公開しないのではないかと。ニコニコで曲を聴くことができるので、気になる人はチェックしてみると良いです。収録曲のひとつである「キボウノネイロ」は「ワールドイズマイン」っぽい気がする。しかし、ボカロ目当てに限定版買う人がこの作品そのものに開眼してくれるかはすごい微妙な気がするんですけど…シリーズ5巻ってそろそろ非文字読みにはつらい巻数になってくるし、いくら最近人気上がってるとはいえ、“男の娘萌え”はまだまだ日陰者であることを少しは自覚すべきだと思う…。



個人的な意見ですが、この時期に限定版でCDをつけるならイメージソングよりもドラマCDのお試し版みたいなものを収録してほしかったです。2?3分でいいんだ…とりあえずメインキャストの声を2?3言聴いてみたかったんだ…!!正直、ドラマCDは当たりはずれが大きい分よほど好きな作品(or声優)じゃない限り、声優イメージがつかめなければ買わないので…。

とくに彼方は昔好きだったアニメのヒロインやられてた方なのでなんとなく予想付くんだけど、これだと完全に女の子だよなー…という不安があったりして。いや、世間のファン的には完全に女の子な声のほうがいいの…か?