うららの記事一覧 | ページ 42 | 今日もだらだら、読書日記。

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タタの魔法使い2

 

一つの高校が突如異世界に消失した衝撃の「ハメルンの笛吹事件」から三年後、新たな学校消失事件が発生する。私立折口大学附属高校の1100名を超える生徒たちは、タタの魔法使いの妹カカにより異世界に転移させられる。地下に出現し、巨大なダンジョンと化した校舎で始まる一ヶ月間の異世界生活。「私達の夢は、ここで叶う」「私は、みんなと協力しあいたい」『将来の夢』の力でカリスマ生徒会長となった藤堂瑠奈率いる生徒会執行部と、二年三組の無敵のリーダー・夜木秋の活躍により日本への帰還を目指す生徒たち。生存者数、推定77名。壮絶な異世界サバイバルが再び幕を開ける。(「BOOK」データベースより)

タタの妹を名乗る魔法使い・カカの手によって再び学校消失事件が発生。異世界の地中に埋まる形で出現した校舎は巨大な地下迷宮と化す。「一ヶ月後に元の世界に戻れる」というカカの言葉を頼りに、千人を超す生徒たちの一ヶ月間の異世界籠城サバイバルが始まる。

ルポタージュという形式を取った群像劇のようでありながら、物語を最後まで読んで改めて考えると、全てが二年三組のリーダー格である「夜木秋」と彼女の周囲を巡る知人友人達の物語として収束していくのが面白かった。ルポタージュという形式で不用意にわざと先の展開を見せつつ、少しずつ事件の本当の輪郭が見えてくる語り口が相変わらずおもしろかったです。

弘橋高校での事件の詳細はほとんど世間に認知されず(それどころかフィクションとして虚飾された物語が広まってたりする)、教訓が見事に生かされないので、読んでる側としてはとてももどかしい気持ちになる。というか、事件後の生徒たちの行動といいその後の展開といい、あらゆる意味で1巻とは対称的な流れになってるのが印象的でした。あちらで上手くやれていた事が、こちらで上手く出来なくて致命傷になったりしてるんだよな……。そしてこれ完全に3巻に続く流れ(?)のように感じるのだけど2巻の主要人物はのきなみ抜けた後で、色んな意味でどうなるんだろう…。

1巻で感じた語り手の「身内贔屓」感は事件が変わったことで無くなったけど、今回は随所にマスコミ叩きやブラック企業disみたいな内容が混入してくるので、これが読み口なんだろうけど読むのに結構体力要る。この雑多感、NGワードやミュートなしで雑に1000人くらいフォローしたツイッターのホームTL開いたときみたいで、逆にこういう読み口を紙の物語で再現できるのはすごいなあと。

それはそうと最後の最後でダークホースな人が大活躍するのとか、超好きです。
帰還後のクラスメイトの反応もわかるすぎるわw


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい? 2

 
COMTA

相変わらず、居城に引きこもりながらも不器用な共同生活を続けているザガンとネフィ。そんな彼らのもとに、新人魔王の力を奪うべく、全身を鎧で覆った魔術師が襲撃してくる。いつものように撃退したザガンだったが、鎧の中から出てきたのは竜の少女・フォルだった。一方教会では、新たな魔王の出現に対し、竜を殺したこともあるという逸話を持つ聖騎士が赴任してきており―。果たして不器用な魔王と奴隷のエルフは、にぎやかになった周辺にめげずに距離を縮めることができるのか!?(「BOOK」データベースより)

「魔王」になってしまったザガンは魔王の地位を狙う魔術師達を蹴散らしたりネフィとイチャイチャしたりしていた。そんな二人のもとに、同じ魔王候補だった魔術師・ウォルフォレが襲撃してくる。厚い鎧に身を固めたその下から現れたのは、ドラゴンの少女だった。同じ頃、ザガンを庇って謹慎中の聖騎士・シャスティルの元には曰く付きの聖騎士がやってきて……。

まだファーストキスもまだだというのに子供が出来てしまった……。

相変わらずというかむしろ加速するザガンとネフィのイチャコラっぷりにニヤニヤがとまらないのですけど、今回は竜の子・フォルを加え、家族の情に恵まれずに育ったザガンとネフィが少しずつ『家族』として絆を築いていく姿がとても微笑ましい。

魔王カップルがすっかり家族の団らんを楽しむ中、裏切りの聖騎士となったシャスティルは……ザガンの反応、聖剣がなかったとかそういうアレコレはあるとはいえ大変に酷い。真っ直ぐな彼女が決して綺麗なだけじゃない教会の中で追い詰められていく姿にハラハラし、逃げ込んだザガンの城では聖騎士に親を殺された経験を持つフォルからすっかり敵視され……と、踏んだり蹴ったりの中、めげずに必死に自分の力で活路を開こうとしていく姿が熱かった。

……んですけど、正直今回の一番の萌えキャラ、ラー○ァエルさんじゃないですか!?ええ〜もうそんなごっつい顔で可愛いことされたらときめいてしまうよ……可愛すぎる……無理……。ちゃっかり全てが終わった後の自分の道まで確保してるのしっかり者すぎるし、ザガンを超えた「顔怖くて損してる」枠の登場があまりにも楽しすぎて。もうほんと終盤の展開ではきゅんきゅんせざるをえませんでした。

あと、出番自体は控えめだけど悪友だけどとても義理堅いバルバロス、あまりにも可愛いがすぎる。お前そういうとこだぞ!!(好き)


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 2

 

前世でプレイした、乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。未来はバッドエンドのみ―って、そんなのあんまりじゃない!?破滅フラグを折りまくり、ついに迎えた魔法学園入学。そこで出会ったヒロイン、マリアちゃんの魅力にメロメロになった私は、予想外の展開に巻き込まれることになって―!?破滅エンドを回避しようとしたら、攻略キャラたちとの恋愛フラグが立ちまくりました?悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ第2弾!!(「BOOK」データベースより)

死ぬ直前にプレイしていた乙女ゲームの世界の、ゲーム内でバッドエンドしか用意されてない悪役令嬢・カタリナに転生してしまった主人公。周到に準備を重ねてきたが、いよいよゲームの舞台となる魔法学校に入学。ゲームのヒロインであるマリアと邂逅を果たす。

それでそのゲーム本来の主人公であるマリアちゃんがカタリナにピンチを救われてゾッコンLOVE(死語)になってるの、もはや知ってたーーー!!!ってレベルなんですけどもはや予定調和のレベルで身も蓋もなくカタリナシンパと化していくマリアちゃんにニコニコしてしまう。

むしろまだだいぶあるのにマリアがオチるの早すぎない!?大丈夫!?って心配してたらまさかの人たらし力だけではどうにもならない「隠し攻略キャラ」が現れて大ピンチに。

絶体絶命のピンチを救うのが、序盤でそれとなく存在を匂わせていた転生前の親友「あっちゃん」で。今まで殆ど役に立ってなかった「乙女ゲームの世界である」ということ、親友から勧められてはじめたゲームだったという設定がここにきて生きてくるのが熱い。一件落着後の、いかにもカタリナらしい決着の付け方も良かった。

ところでなろう版はここで完結、ストーリーも性別問わずの逆ハーエンドできれいすぎるくらいに終わってるんだけど、ここからどうやって進んでいくんだろう。2巻の時点で結構、一昔前に流行った主人公総愛され同人みたいな懐かしいノリが強くなってきたので3巻以降マンネリ化の心配をしてしまう。6巻で(ゲームの)次回作の話が出てくるらしいのでそこは凄く気になるんだけど、2巻であまりにもきれいに終わってる感じあるので、悩むなあ。


ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン

 

生まれながらにして、すべてのことが出来すぎてしまうせいで空虚な日々を過ごす高校生、真神凛太朗。暇つぶしのため、あえて“最弱”と呼ばれる瑠奈=アルトゥールの陣営に加わり、来るべき世界の危機を救うため真なるアーサー王を決める“アーサー王継承戦”に参加することになるのだが…。「私のエクスカリバー…売って、お金に換えちゃったから」瑠奈は、聖剣を売り払い、召喚した“騎士”のケイ卿にはコスプレさせて利用したりするロクでなしで!?しかし絶望的な危機に瀕した時、瑠奈は凛太朗さえも認める強さを垣間見せ―。新たなるアーサー王伝説がここに始まる! (「BOOK」データベースより)

転生チートによって生まれた時からありあまる能力を与えられてしまった主人公・真神凛太朗は、ひょんなことからアーサー王の末裔たちがそれぞれが持つ『聖剣』『円卓の騎士』を駆使して行う「アーサー王継承戦」の存在を知る。興味本位で最弱の候補者・瑠奈=アルトゥールの陣営に手を貸そうとするが、彼女の起こすとんでもない騒動に振り回されるハメに…!?

凛太朗も相当「ロクでなし」な性格をしてると思うんですけど、そんな彼がボケに回る余地もなくツッコミに入らざるを得ない瑠奈の破天荒な性格と突拍子もない行動力がめちゃくちゃ面白い!凛太朗や彼女の従者である円卓の騎士・ケイ卿(主にコスプレ担当)が振り回される姿に最初から最後までニヤニヤが止まらなかった。

金にがめつい変わり者で傍若無人な瑠奈が、その一方で裏表のない性格で自然に「周囲が望む事を先頭に立って実現してくれるリーダー」になっているのが読んでいて心地よかった。自分のためと言いながらも大切な人が危機に陥れば見捨てることが出来なくて、その人格故に味方からも敵からも愛される。自然に護るものとして「民」を認識しているあたりに生まれながらの「王」を感じるというか、最弱の王候補と呼ばれながらも聖剣に刻まれた通りに「絆」を武器に戦っていく姿がかっこいい。

アーサー王の様々な側面を受け継いだ「王」達とそれぞれの思惑を持ちながら彼らに仕える「円卓の騎士」達、そしてそれに介入しようとするアーサー王伝説の関係者達…という、一筋縄ではいきそうもない関係性も楽しかった。凛太朗が誰の転生かって話はもう名前からしてサブタイからして隠す気ないな!?って感じだ。

それにしても、関係者多すぎとはいえアーサー王継承戦とは表向き関係ない学園での「普通の生活」と、主に夜に行われる異能者達が繰り広げる「アーサー王継承戦」と……なんかちょっと前に沢山あった学園異能系の血脈をビンビンに感じて、そういう意味でもワクワクしてきたぞ!!続きがとても楽しみです。


後宮天后物語 〜新たな妃にご用心!?〜

 

「明晩から、陛下がこちらにお泊まりになられます」帝位を簒奪した志紅の目的を探るべく、後宮脱出計画中の雛花に突如告げられた同衾宣言。実は、志紅が新たに迎える四妃の中の一人に、魔物が擬態しているというのだ。志紅が妃を娶るのも複雑だが、警護のために一緒に寝るのも…と心臓がもたない雛花の前に現れたのは、妃とは名ばかりの面々で!? (「BOOK」データベースより)

監禁!介護!待機児童!この後宮がヤバい2018!!(※以上あとがきより抜粋)

新しい妃を迎えると聞いて目的が魔物退治とはいえ複雑な気分になっていた雛花の前にやってきたのは、まだ年端もいかない幼子達で……!?というお話。老女の次は幼女と頭を抱え、更に親と引き離された子どもたちの世話に振り回され、夜は今は対立しているとしてもまだまだ恋心は健在の志紅と同衾することになってテンパる(むしろ実は志紅もテンパってる)雛花の姿にニヤニヤが止まらない。

老老介護(※むしろ世話されてる説)とお泊り保育でてんやわんやしながらも、持ち前の嫉妬力(観察力)で事件を解決していく展開が相変わらず楽しいのだけど、それ以上に周囲のためならと自分を投げ出してしまう雛花の危なっかしさが印象的なお話でした。それでさえ「天后」という地位の時点で身売りしてるようなもんなのに、そりゃあ志紅も珞紫も必死になって阻止しようとするよな。「雛花を大切に思っている」ことだけは信頼できるという一点のみで成立している、志紅と珞紫の共闘関係が最高に好きです。

それにしてもこんなに全体的な設定は重いのにめちゃくちゃ笑えるのずるいというか、天后関係というか女媧まわりの話はますますうさんくさくなってきたというか、ほんと3巻酷いところで切れましたよねえ!?続きが気になりすぎて早く3巻出て欲しい……。


ブレスレス・ハンター3

 

ブレスレスが最後に現れてから10日以上が経過し、事件は小康状態に入っていた。それは優毅と勇生にお互いを見直す時間を与えたが、2人が真にわかり合えることはなかった。そんな中、勇生の先輩である雨月鎮が権威ある文学賞を受賞し、世間の話題をさらう。そしてその記者会見での鎮の発言が優毅たちの運命を大きく動かすことになる…。(「BOOK」データベースより)

とある口論をきっかけに、お互いに気まずくなってしまった優毅と勇生。そんな中、勇生の先輩・雨月鎮が文学賞を受賞して、一躍有名人となる。それは最後の「ブレスレス」事件のはじまりで……ブレスレスの最初のひとりの正体、謎の美少女ベネトナーシュの秘密などすべてが明らかになる完結編。

最初のひとりの正体については2巻の時点でもう半分バレてたようなもんなんですけど、予想以上にエグい展開の連続で凄かったんですけど、この人いちいち(勇生に対して)仕草がえっちすぎませんか?監禁BLかな!?あと口絵の主人公ズが最高ですねありがとうございます!!

色恋沙汰一切抜きでひたすら主人公(男)二人の「相棒物」を読ませてくるのがもうその時点で楽しすぎて、本当に手にとることが出来てよかった。思い返せば最初から最後まで、一貫して主人公ふたりの関係性とそれぞれの「迷い」を描くための物語だったんですよね。成り果てる時に抱いた「願い」に特化する存在、迷わない存在であるブレスレスに対して、迷い続けた二人が「迷うからこそ良いのだ」と自分の迷いを肯定して、その禍根を断ち切る展開が印象的でした。特に勇生は、1巻の頃から一歩間違えたらブレスレス側になってたよなという危うさを感じていたので、自分がずっと忌憚してきた「弱さ」を受け入れて前に進む展開が熱すぎる。

一度は通じ合ったふたりがやはり同じ道は歩むことはなくて、でもかけがえのない「友人」として折り合うことはできると、確かな絆を胸に別々の道を歩んでいくことを予感させるラストが最高。3巻できれいにまとまっていたのも良かったなぁ。


ブレスレス・ハンター2

 

正体不明の怪物「ブレスレス」が引き起こす事件をきっかけに、対「ブレスレス」組織「STAB」にハンターとして配属された少年・優毅と勇生。それぞれの苦悩を抱えながら、少しずつ心を開いていく2人だが、状況が、立場が、そして敵が平穏な日々を許さない。恐るべき敵の正体、目的とは?謎に包まれた美少女ベネトナーシュの秘密とは?物語の核心に迫るハード&ダークアクションの第2巻。(「BOOK」データベースより)

普段は学園生活を送りながら、対ブレスレス組織「STAB」の一員としてブレスレスを狩る生活を送る優毅と勇生。STABの事をどこか信用できず、独自にこれまでのブレスレス事件を調べていた勇生は、そこで一人の青年と出会い……。

とつぜん男二人の同棲生活が始まっていやそこまでは普通の男子高校生ならまあそんなこともあるよなって思ったんですけど、なんか妙に甘酸っぱい生活始まっちゃってるんですけどーーー!?家族を一時に失って日常生活がおろそかになりがちな優毅と家族の愛情に恵まれなかった勇生が、久しぶりの(はじめての)家族らしい生活を営むという構図がなんというか今風に言うと「エモい」わけなんですけど、一家団欒的なやりとりとか、はじめての洗濯とか、最初はぎこちなくも少しずつ二人が心をひらいていく様子がじっくりと描かれていてジワジワと押し寄せる萌えがすごいです。私は一体何を読まされているんだ。

一方で、STAB側の思惑や「幻銃」という能力に対する副作用など、少しずつ物語の核心が明かされて、ますます不穏になっていく。幻銃という異能が与える快楽、どう考えてもヤバいやつだろって思ってたけど予想以上にヤバいシャブだったし、その上で「期間限定の能力」であるのがなんとも酷いよなと。快楽に溺れるベテルギウスやその快楽故に不安定になっている優毅のクラスメイト・岬理緒は相当引き返せないところまで行っちゃってる感あるし、それとは別に恋人であった優毅の妹・智笑美への復讐に逸り、真実に肉薄しようとする勇生も今にも自滅しそうでめちゃくちゃ危なっかしい。ほんとこの話、事件が解決してハッピーエンドになるとは到底思えないんだよな……。

そんなチームメイト達を冷静に見つめているようで、自分が行動するために、数少ない身内である「勇生を護る」ことにすがろうとしていく優毅、他のキャラクター以上に倒錯していて(良い意味で)気持ち悪いんだけど、それが独りよがりであると勇生本人から突きつけられるラストが大変に良かった。前半の家族ごっこがエモさの塊なだけに、心の距離が近づいたようでむしろ全然すれ違ったままだったと突きつけられるラストの落差が、本当に良い。

しかしこれ、あと1冊でどうまとめるんでしょうね……!?


ブレスレス・ハンター1

 

未知の怪物「ブレスレス」。触れるものは朱に染まり、血塗られたその姿を見た者に訪れるのは、即ち“死”。妹・智笑美を事件により失った櫂原優毅、そして智笑美の恋人を名乗る高出水勇生。同じ名を持つ2人は、運命に導かれるように「幻銃」を手にする。それはブレスレスを消滅させることができる唯一の武器だった。2人の“ユウキ”はブレスレスを狩る者“ブレスレス・ハンター”として、苦悩と絶望に満ちた戦場に駆り立てられる。 (「BOOK」データベースより)

事故で妹を亡くした櫂原優毅はその事件の『被害者』の手で両親を喪い、妹の恋人を名乗る少年・高出水勇生と共に異能の力を手にする。妹を殺した異形の怪物・ブレスレスを消滅させる唯一の手段であるそれを手に入れた同じ名前を持つ二人は、ブレスレスに対抗する機関から勧誘され、人間が転じた異形の化物との戦いに身を投じていく。

HJ文庫の1巻無料キャンペーンで手に取りました。すごい昔懐かしい学園異能ラノベだ!と思ったらHJ文庫の創刊ラインナップで、そりゃあ昔懐かしいわ……。

「他者を傷つける」という事に快楽を感じたことのある優毅は異形の怪物を倒すための力を得て、手に入れた能力を本当に使って良いのか迷い、その葛藤故に手に入れた能力を発揮することが出来ない。自分の弱さにコンプレックスを持ち、死んだ彼女から聞かされた優毅の強さに憧れていた勇生は、その力を妹を殺した敵を倒すために使ってほしいと願う。表面上は同じ目的を持っているように見えて完全にすれ違っている主人公二人の関係性が印象的でした。実際優毅は他者を傷つけることを怖れているのではなくて、他者を傷つけることによって自分が快楽に溺れるのを怖れているんだけど、そのへんがどうしても伝わらないんだよなあ。

異能の力が与える快楽の熱に浮かされたようなチームメイト達、そして真実を教えてくれない機関の大人たち。1巻の時点だと誰も本当のことを語ってない感というかいろいろな意味でさわりで終わってしまった感が強いんだけど、この投げっぱなし感というか色々と血生臭く薄暗い感じがいかにもゼロ年代の学園異能という感じで楽しかったです。


魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

 
COMTA

悪の魔術師として人々に恐れられているザガン。不器用で口の悪い彼は、今日も魔術の研究をしながら領内の賊をぶちのめしていた。そんな彼が闇オークションで見つけたのは、絶世の美しさを持った白い奴隷エルフの少女・ネフィ。彼女に一目惚れしたザガンは財産をはたいてネフィを購入するが、口下手な彼はネフィにどう接していいかわからない。かくして、愛の伝え方がわからない魔術師と、主人を慕いながらも訴え方がわからない奴隷、不器用なふたりの共同生活が始まる。(「BOOK」データベースより)

年若くして最強の魔術師「魔王」の候補にまで上り詰めた青年ザガンが、闇オークションに出品されていたエルフの少女・ネフィに一目惚れし、全財産をはたいて彼女を購入してしまう。自分の城に連れて帰ってきたまでは良かったが、正直彼女とどう接したらよいかまるで解らなくて!?

内面ではネフィのことが可愛くて仕方ないのに、話しかけるとついつい尊大な態度を取ってしまうザガンのスベりっぷりにニヤニヤが止まらない。特に、買ってきた直後のうろたえぶりと、とりあえず適当な部屋を与えようとしたらその部屋が前の持ち主の拷問道具で埋まってたりしてますます誤解されてしまう最初の1日のすれ違いっぷりで笑いすぎて腹筋が痛いレベル。

最初は誤解していたネフィにも段々とその不器用な好意が伝わっていくんだけど、なにかすれ違ったままどんどんとオープンいちゃいちゃになっていくのがまた楽しくて仕方がなかった。お互いに「あ〜ん」し合ったり、膝枕をしてもらったり……と、後半ではすでに完全にただのバカップルと化しているのがもう可愛すぎて早く結婚しろ!!!!(実質してる)

ネフィの持つ「魔術」とは違う力「魔法」のことや、ただの称号とは言い難い「魔王」という地位のことなど、今後が楽しみな伏線も色々あるのですがとりあえずもう主人公カップルのイチャイチャぶりが楽しくて仕方ないのでそういうの好きな人は読んでほしい感じ。タイトルからもっとこう今風のちょっとエッチなハーレム物みたいなのを想像してたんですけど、読んでみたらまるで少女マンガみたいなカップルで、本当に可愛かったです。

あと、ザガンの悪友である魔術師・バルバロスとの関係がとてもとても良かったです……完全に信頼してるわけでもないし裏切られても悲しくないしこちらとしても自分の障害となるなら遠慮なく倒しに行くけどでも「お前がいないと美味い酒が飲めなくなる」っていうのズルくないですか!?ああいうちょっと殺伐とした仲良し関係はとても好きです…。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典12

 

待ちにまった学院の前学期休み。早速、家に引きこもろうとするグレンだったが、セリカの強引な誘いによって、極寒のスノリア地方へ旅行にいくことに。「ねぇ、アルフォネア教授…私達と勝負しませんか?」旅行中、グレンを独り占めするセリカに見かね、グレンデート権を賭けて、雪合戦大会が勃発!?偶然居わせた女学院の生徒たちも巻き込み、伝統行事・銀竜祭へ参加するのだが…。「やらかしたもんは仕方ねえ、お前の償いを手伝ってやるよ」銀竜祭にまつわる逸話と、セリカの失われた過去。二つが交わる時、滅びゆくスノリアの運命に、グレンは立ち上がる! (「BOOK」データベースより)

セリカに誘われて、スノリア地方に観光にやってきたグレンたち。いつも以上に強引で暴虐無人なセリカにいつも以上に振り回されるグレンだが、その反面、彼女は何かに焦っているような、不安げな表情を覗かせて……。

不自然にテンションの高いセリカが騒動を巻き起こす序盤が楽しいんだけど、その合間に垣間見せる不安定な姿がフラグ過ぎて、楽しい話の筈なのにうすら寒い感じが止まらない。そんな中で女性陣の雪合戦の話と、グレンとセリカ二人きりの夜のやりとりと、いつも以上にグレンにベタベタしてくるセリカに対してそれぞれ違った反応を見せるシスティーナたちが大変に可愛かった。

自らの過去に脅かされて精神的に不安定なセリカを、グレンが絶対的な信頼を持って支える展開が熱い。セリカに救われたグレンにとっては、彼女の正体が何であろうとも憧れの『正義の魔法使い』でしかなくて。学院を離れたグレンの「教師ではない」一面と、セリカとの家族としての絆が強調されたお話でした。

戦闘的には全体的に「セリカ無双」というかRPGで言う強キャラNPCが一時加入するゲストイベントバトル(ただしゲームオーバーはあり)感。セリカの精神的に不安定な部分をグレンが支え、戦場との相性が絶望的に悪くて本来の力を発揮できないグレンを教え子達が支えるという、普段とは対称的な構図が印象的でした。色々な事件を乗り越えて精神的にも成長したシスティーナ達の安心感が高くてヤバいというか、特にシスティが本当に少しずつメンタル面で成長していくの良いよね……。あと、教えを受けた時間は短くても聖リリィ魔術女学院の彼女達もまぎれもなく「グレンの教え子」なんだなあ。以前とは少しだけ変わった彼女達の人間関係が印象的でした。

セリカの正体や童話の謎など、様々な事実が明かされてきて物語が盛り上がる一方、明確に向かうべき所に向かって収束を始めているのを感じる。続きが楽しみです。