[著]有沢 まみず [絵]笛 街を歩いていた安住春道は雑踏の中、銀色の髪を持つ美しい少女と出会う。酷く驚いたような彼女の様子を少しだけ不思議に思いつつもあまり気には止めなかったのだが、実は彼女はデジタルツールを介さなければ知覚する事が出来ない、“黄昏の子供たち”と呼ばれる子供の一人だった。それを知覚することが出来る春道は大人たちの頼みで、暫く彼女を預かる事になり…。 |
生きている物を何も知覚出来ない銀花が初めて自らの肉眼で認識できる春道に出会って頑なに閉ざしていた心を開いていく姿も素敵なのですが、過去に深い傷を持ち今もなお悪夢に悩まされ、人生に対して流されるばかりの日々を送っていた主人公・春道が銀花の為に少しずつ前向きに変わっていく姿が印象的でした。
“黄昏の子供たち”には発祥すれば逃れる事が出来ないいわば『死に至る病』のようなものがあって…というあたりから、物語はただ優しいだけの物語から切ない物語へと変化します。彼らの前に提示された、やがて至るであろう未来は酷く哀しく、絶望的で。でもそれを半ば予想しながら、それでも銀花の傍にいると決めた春道の強い覚悟に胸が熱くなりました。そして出番は少ないけど春道とは対照的な性格の明るいクラスメイト・戸荻とのやりとりが凄く良かったです。最初「正直要らない子じゃね?」なんて思ってて悪かった!
表紙やタイトルにも現されるとおり「白銀」のイメージがぴったりの、ちょっと優しく暖かく、切なくて儚い物語。
…余談ですが、この作品がツボに来た人は、是非「インフィニティ・ゼロ」も読めばいいと思う。
なんか感想漁ってたら「いぬかみっ!」以降の有沢まみずしか知らない人多くてびっくりした!
インフィニティ・ゼロ—冬‐white snow (電撃文庫)有沢 まみず メディアワークス 2002-02 by G-Tools |