ページ 25 | 今日もだらだら、読書日記。

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ロクでなし魔術講師と追想日誌 8

 

初めて会ったその人は震える程に恐ろしく、本当に優しい人だった
フェジテのみんなが不在のなかで、グレンの家にルミアが住み込み!? まるで新婚夫婦な2人きりの生活に、ドキドキが止まらないルミア。そして思い出す。初めてグレンと出会った、3年前のあの日のことをーー

特務分室の栄光を描く前巻の短編集の直後にこの「狩られる側から見た特務分室時代の冷酷な魔術師殺し・グレンの話」入れるのマジで温度差がすごい。ラブコメからちょっといい話まで、今回もバラエティに飛んでいて楽しい短編集でした。

グレンとハーレイ先輩をもっとセット売りしろ

どの話もすごく良かったんですけど、グレンが馴染みの店からの依頼で幻のキノコ「ゴルデンピルツ」を探すハーレイの案内人をする『キノコ狩りの黙示録』が最高に良かった。システィーナ達を巻き込んで、醜いキノコ争奪戦と化していくのが最高にカオスだし、一触即発どころか最初から最後まで喧嘩しっぱなしのふたりの様子がめちゃくちゃに面白かった。仲悪すぎ通り越して仲良すぎか!?

そして、そんな犬猿の仲のふたりが共通の目的を理由に手を組んだら最強の相方に……って普通に大好きな奴なんですが!!???いやほんと、このふたりにここまでのポテンシャルが秘められているとは思いもしませんでしたよね……ハーレイ先輩、バトルの時は割と後方で生徒たちを護りつつ戦ってること多いから、最前線で問題の解決に勤しむグレンと手を組むこと、殆どないもんな。もっとこのふたりセット売りして欲しい(グレンにはアルベルトという最強の相方がいるし本編で組ませるのには限界があるかもしれないけど)

システィーナの「趣味・小説」の設定、本編ではこれが初出か〜!

趣味で小説を書いているシスティーナがひょんなことから自作の主人公と同じ名前の女性・ミスティナと出会い、彼女に小説の続きを見せることになってしまう短編『貴方に捧ぐ物語』も良かった。はじめてのファンに舞い上がり、読者の意見を意識しすぎて本来書く予定だった結末を捻じ曲げてしまうシスティーナがミスティナの本当の気持ちと家の事情を知り、彼女に自分のような後悔をさせたくないと奔走する姿が印象的でした。

ここで今回の件とは全く関係ないのにミスティナを救うために手を貸してくれるグレン先生がめちゃくちゃ教師してるし、どこまでもシスティーナの思い描いた「ヒーロー」そのものなんですけど、それだけにシスティーナの書いてる小説の内容がほぼグレン×自分の事実をベースにした妄想恋愛小説だったり、その小説の「取材」と称してグレンに催眠術を掛けてイチャイチャしようとするシスティーナのやらかしぶりが輝いちゃってますよね。いやあ恋する乙女はバカだなぁ〜〜!!(褒めてる)

グレンとルミア、初めての出逢い

書き下ろしの過去編『再び出会うその日まで』は3年前、まだフィーベル家になじめていなかったルミアが特務分室時代のグレンに助けられたときのお話。このエピソード、原作初期から開示されてはいましたが……思った以上に血なまぐさい話だ!!というか前の短編集であれだけ特務分室時代の光のようなエピソードをやっておいて、今回は打って変わって外道魔術師達の視点から特務分室の冷酷無比な魔術師殺し、《愚者》グレン=レーダスが任務で敵を殺しまくるエピソード出してくるの温度差がすごくて風邪引く。それにしてもどう考えても助かる余地のない状況から帰還してくる特務分室時代のグレン、異能生存体系の異能持ってそうだよなあ……。

母アリシアの真意を知らぬまま親子の縁を切られてフィーベル家に居候することになり、なかば自暴自棄になっていたルミア。システィーナと間違えられて誘拐されてしまった彼女が「どういう訳か」子供の誘拐事件なんかに駆り出された特務分室時代のグレンと出会い、冷酷な殺し屋という前情報とは違いすぎるグレンの優しすぎる本心と葛藤に触れて本来の優しさを取り戻し、母子の縁を切られる原因となった自らの異能とも折り合いを付ける…という展開がとても良かったです。ラストシーンで改めて第一巻のいちばん最初、ルミアがグレンと“再会”するエピソードがルミア視点で描かれるという構成がまた実にニクくて、ホロリとしてしまう。

ただ、彼女が本来の自分を取り戻すきっかけはグレンの言葉であったけれど、ルミアが再び人間を信じることが出来るようになったのは自分を本当の「家族」として受け入れてくれたフィーベル親子の存在が物凄く大きいんですよね。ルミア→グレンへの思いの強さを改めて感じるのと同時に、彼女がシスティーナやフィーベル家の人々をどれだけ大切に思っているか、その一端が覗けるエピソードでありました。しかしわがまま放題でシスティーナのことが大嫌いだったルミア、何度言われても全く想像できないな……。

ところで、この話を読んだ上で改めてこの巻の最初に収録されているセリカ&システィーナ&リィエル不在の隙にグレンの家で押しかけ女房するルミアが描かれるエピソード『もしもいつかの結婚生活』を読むと、別の意味でニヤニヤできてしまいますね。女王としての権限を利用して軽率に娘の恋路をゴリ押ししようとするルミア母・アリシアに振り回されるルミアの姿を見ていると本当に和解出来てよかったね、という気持ちに……。

いつもとは違う環境に舞い上がってやたらと大胆になってしまうルミアも微笑ましかったですが、合間に襲来してテンプレすぎる安いツンデレとメシマズを振りまくイヴ=サンも最高でした。システィーナさんマジでグレン×自分の妄想恋愛小説書いてる場合ではない。

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魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原

 

伝説の魔王――奇怪なる進化を極めた“秋葉原”に君臨する!
秋葉原市。革新的な発展を続ける“電気街”と古き伝統を重んじる“魔法街”が対立構造を呈する未来都市に、魔王・ベルトールは降臨した……超名門学園への留学生として。新たな舞台を駆ける、未来の魔王譚第二幕!

裏切り者・マルキュスの脅威を排除した魔王ベルトールは、いまだ消息不明の六魔侯を探すため、彼らの居場所を示す財宝『魔侯録』を探すことに。秋葉原市の魔法学園地下にある宝物庫にそれが保管されていると知り、高橋・マキナと共に留学生として学園に潜り込むが、宝物庫の封印を解くためには秋葉原市を統べる御三家が持つ秘宝・王徴(レガリア)が必要で……?

「魔法」と「科学」が対立する街・秋葉原

相変わらず近未来SFとファンタジーが融合したような世界観が面白い。新宿は文字通り魔法と科学が融合した混沌の街であったけど、今回は魔法学園を中心にしてファンタジー世界の古き伝統を重んじる“魔法街”、現代日本の秋葉原の趣きを色濃く残す革新的な“電気街”という正反対の特徴を持つエリアが対立を続ける街。描写としてはあまり多くないですが、昼の魔法学園パートと放課後の電気街での散策パートのギャップがとても楽しかった。

そんな中で焦点が当たるのが秋葉原の「御三家」の一角・レイナード家の当主の少女山田・レイナード=緋月。様々な事情から学園内で孤立し、自分自身も周囲の人間に対して壁を作っていた彼女がいろいろな意味で破天荒で内部の慣習にとらわれないベルトール達に少しずつ心を許していく姿が可愛かったです。また、そんな彼女を受け止める魔王のカリスマ性がまた凄く良いんだよな。緋月の一件もそうですが、生徒たちが人質に取られた一件を収めたときの手口が実に最高。緋月への発言を巡って一度は決闘までした男・アルバートとのやりとりが個人的に好きすぎるんですが、一度は完璧に自分を負かした相手に絶対に失敗できない場面であんな形で声をかけられたらそりゃアルバートだって惚れちゃうよなあ(惚れたとはいってない)

物語の最後に緋月が選んだ道は自らが預かった街からの逃避、両親や大切な人たちを手に掛けた者達への「復讐」という、決して前向きとはいい難いなにかであったけど、そんな彼女の選択をも受け入れ、見守ろうとする魔王の姿が印象的でした。

相変わらず魔王と勇者の関係性が最高

勇者グラムに「不老」を授けた恋多き女神・メルディアとの対決!ということで、そして序盤からめちゃくちゃ勇者さんの存在が匂わされていてこれは終盤でまた絡んでくるな!?と思っていたのですが、いやスルーするんか〜〜〜い!!!あれだけお膳立てされておいて「あっちに行ったらなんか面倒なことに巻き込まれそう」っていって全スルーしていく勇者さん御一行がマグナムドライすぎて最高か!!??テンションめちゃくちゃ上がってきた。

そんな感じで勇者さんとニアミスしてるとはつゆ知らず、勇者のいないところで女神メルディアに対して「勇者グラムのこと一番わかってる余」アピールするベルトールさん、グラムのこと大好き過ぎてヤバイ。割としたり顔で根拠のないグラムの内心とか語っちゃってるけど、なんか最終的にしっかり核心を付いたこと語ってるのが実にズルいんですよね。ていうかひょっとして勇者と魔王、この調子で暫くすれ違い続けるつもりなのか〜〜〜最高では〜〜〜!?

続きが楽しみ(魔王が配信してるだけの短編読みたい)

物語本線としては秋葉原を2つに割る全面戦争を阻止し、緋月という新たな仲間を得て、『魔侯録』をも手にした魔王達。しかしその反面、マルキュスすら下っ端でしかなかったという大きな敵対組織《新生教会》の姿が明らかになり……という、今後への種蒔きとしての一面も強かった巻。果たして残った六魔侯のふたりは仲間となってくれるのか、《新生教会》の目的とは何なのか、魔王のチャンネル登録数はどこまで増えるのか。色々な意味で続きが気になる終わり方で、続きが楽しみです。

ところでこの話、配信のチャンネル登録数が魔王の力の源になってる割に配信関係の描写があまりにもおざなりというか、短編集に定評のある富士見だしそろそろドラマガあたりで魔王ベルトールがただ配信するだけの短編とかやってくれてもいいとおもうんですがその辺どうなんですか??作者さんが配信モノの描写苦手とかそういう感じなら他の作家にスピンオフ書かせてもいいと思うんですが(無茶振り)。

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ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

 

『雛宮』――それは次代の妃を育成するため、五つの名家から姫君を集めた宮。 次期皇后と呼び声も高く、蝶々のように美しい虚弱な雛女、玲琳は、それを妬んだ雛女、慧月に精神と身体を入れ替えられてしまう! 突如、周囲から忌み嫌われ、鼠姫と呼ばれるそばかすだらけの慧月の姿になってしまった玲琳。 誰も信じてくれず、今まで優しくしてくれていた人達からは蔑まれ、劣悪な環境におかれるのだが……。 「息切れしない、失神もしない……。なんて健康な体でしょう! う、うらやましい……っ」 誰もが羨む玲琳は、隣り合わせの"死"とずっと戦ってきた鋼メンタルの持ち主だったーー!? 大逆転後宮とりかえ伝、堂々開幕! コミカライズも同時発売!

病弱であること以外全てが完璧な雛女・玲琳が落ち目の雛女・慧月の呪術によって体と精神を入れ替えられてしまう。蝶よ花よと周囲から守られる生活から一転して自分(玲琳)を害した罪で処刑の危機、それを脱しても周囲の誰からも完全に見捨てられた粗末な生活を送ることに──なるのだが、当の玲琳は健康な肉体を得たことに大喜びで…!?

儚げ美少女、メンタルは超合金

楽しかった…!儚い見た目、病弱という言葉から感じるイメージからは正反対に、どこまでもへこたれない主人公が自分に向かってくる逆境の数々を「体力がもったいのうございます」と言ってものともせず、健康な肉体に歓喜しながら畑を耕して自給自足の生活を送り、唯一残された慧月付きの侍女を構い倒しながらも没落生活をエンジョイするのがあまりにも楽しい。

それもそのはず、「病弱」なんて言葉では済まされないほどの虚弱な肉体を持って生まれた彼女は、肉体が入れ替わる前から常に明日をも知れぬ生活を送っていたのだった。常に死と隣り合わせで生きてきた彼女にとって処刑による生命の危機だってただの「日常」と何ら変わりがなかったし、病弱すぎる故に常に周囲の人間たちから体調を気遣われ、自分ひとりで出来ることなど殆どなかった彼女にとってむしろほぼ自分ひとりでなんでもやっていける没落生活は長年夢見た「自由に満ちた生活」ですらあり。異常なまでの前向きさの合間に覗く“玲琳”時代の過酷な生にホロリとしてしまう。

「努力」と「根性」は全てを解決する

一方、そんな玲琳に成り代わるため呪術で肉体を入れ替えて全てを手に入れたはずの慧月の方も当然ただでは済まないのだった。周囲の目を引くための仮病では?と疑っていた玲琳の「病弱」が実は普通の人間ではまともに立っていることもままならないような重いものであると知り、普段の“玲琳”のたおやかな姿はそんなポンコツな身体に限界を超えた無理と努力を重ねさせてなんとか成り立っていたことをも知ってしまう。周囲の女官や医者にちやほやしてもらえる…と思っていたら、女官達が元気よく手習いの道具を持ってきて腰を抜かし、体調を崩せば自分で薬を調合しろといわれて呪術で本物の玲琳に泣きつく羽目になったり……玲琳はなにもしていないのにいい感じに自業自得、ざまあ展開になってしまっている展開がぶっちゃけ面白い。

すべての才能を持って生まれてきた運の良い女、病弱も併せ持ち周囲からチヤホヤされていて羨ましい……と思っていたら文字通り血の滲むような努力でその人となりが形成されていたというのがなんとも皮肉なんだけど、華やかな後宮モノでこんなにも「努力」と「根性」をゴリ押ししてくる話があっただろうか。発想が体育会系すぎる!!

しかし、努力と根性でギリギリ生きてるみたいな玲琳の過酷な生に触れ、涙目になりながらそれでもなお「誰も見てくれない慧月より皆に気にかけてもらえる玲琳が良い」とその座にすがりつこうとする慧月には生き汚さというよりもある種の「努力」と「根性」の文脈を感じてしまう。この入れ替え劇だって前向きなものではないとはいえ慧月の必死な努力の成果なわけだし、よくも悪くも努力の方向性を間違えなければ再起できそうと思ってしまう。そしてそんな彼女を、「努力や根性を愛する」血族の玲琳はまんざら悪くないと感じていそうな気がするんだけどどうだろう。

どうにも事件の黒幕がいそうな雰囲気だし、慧月も玲琳も幸せになれる終わり方になるといいなあ。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4.5

 

豪華客船での波乱含みの夏休みスタート! 
様々な出来事を乗り越え無人島試験も終了。待望の豪華客船での夏休みが始まった。だが試験は多くの爪痕を残し、龍園が小宮を襲撃した犯人探しを開始、他の生徒達も今までとは違う動きを見せ始めていた。そんな中、綾小路の前に3年の桐山が現れる。「おまえの存在は邪魔でしかないんだ綾小路」告げられたのは南雲の変貌。奇怪な行動を取り始め、綾小路1人に対して、3年生全体による『監視』という奇妙な指令が下される。 一方で告白に対しての答えを返すため、綾小路は一之瀬との約束の場所に向かい――!? 大人気学園黙示録、2年目の夏休みは波乱含み!?

不穏な展開が目立つ中で1学期までの因縁に一旦の決着を付けて二学期に進むための展開が目白押しの夏休み編。他学年が敵に回る展開がおおかったせいか、無人島サバイバル試験から引き続き、クラス内だけでなくクラスを超える関係性が生まれ始めているのが印象的な話だった。とはいえ次の巻は久しぶりに学年内での潰し合いみたいな展開になりそうで、追加された新キャラたちも含め、ここで生まれた関係性がどうなっていくのか気になる。

余談ですが今回の試験の結果でまたクラスが入れ替わって、遂にクラス名称が基本的にABCDではなく「板柳クラス」「一之瀬クラス」「龍園クラス」「堀北クラス」という名称になってたの凄いわかりやすくなってよかったですね。いやほんと最近はABCDで言われちゃうとどこの話してるのかわからなかったからね……正しい判断だよね……。

試験をやってないだけで紛れもなく「本編」な夏休み編

よう実、恒例の夏休み編。一年生編のときは一応「.5」のタイトルはガワだけでも「番外編短編集」の体をとっていた気がしますが、今回は普通に「試験がないだけの本編」でしたね。いや、「.5」が番外編短編集だなんていうのがそもそも他の作品によって培われた思い込みでしかなかったのかもしれないけど……。

前巻で綾小路によって邪険にあしらわれ、一気に小物感が出てきてしまった南雲生徒会長が三年生全員に「綾小路の監視」という司令を出し、綾小路にプレッシャーを掛ける。南雲生徒会長、4巻の時点ではかませだと思ったけどそもそも彼の本領発揮は団体戦にあるのだなと改めて思わされる展開でした。堀北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプと個人でやりあったら敵わないけど、大勢の人間を使う絡め手が強いタイプ。まあそんなタイプの人間が掘北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプの人間への個人での勝敗に拘ってしまうところが彼が小物に見えてしまう元凶でもあるんだと思いますが…。

かませといえば、櫛田ちゃんがいろいろな意味で心配なんですけど、次の試験が次の試験っぽいし本当にこの娘そろそろ退学フラグ建てられてる気がする。無人島サバイバルでのかませ具合がひどかったし、今回の慢心ぶりもヤバイ。仲間になるにせよ退学オチにせよ、次あたりで決着突きそうだよなあ。

これまでにない、“にぎやかな”夏休み

それにしても、無人島サバイバル試験を通して新たに生まれた関係、復活した旧知の関係なども含めてすごく賑やかなお話でしたね。なんだかんだで休暇中は休暇中で色々な手回しで忙しい印象を受ける休暇期間の綾小路ですが、普通に遊びに行ったり大勢でワイワイするような展開が続くのは初めてだったのでは。一度は途切れかけていた池・須藤との関係が復活したのもそうだし、石崎にじゃれつかれてたり、一之瀬クラスの女子達に囲まれたり、軽井沢との件を通して普通の友人関係となった佐藤と宝探しに挑んだり、綾小路グループの面々でプールに行ったり。今後のことを思うといろいろな意味で薄氷の上で築かれた関係という印象もありますが、そんな休暇を綾小路自身がまんざらでもないと思っているような雰囲気ににやりとしてしまう。

一方で綾小路とは関係ないところでも伊吹と堀北が無人島試験の所からじわじわと距離を縮めていたり、クラス内で弱いところを見せづらい一之瀬が板柳に相談をしていたり…とクラスの枠を超えた関係性が印象的な巻でした。また、ここにきて追加された2年生の新キャラも気になる所。個人的には姫野が一之瀬になんでも言い合えるブレーンとして彼女の下についてくれたりしたら面白そうなんだけど、どうなるかな。

とはいえ、次巻での話はまた学年内での話に戻りそう、というかこれまでにない過酷な試験が待っていそうな雰囲気なので今回登場した新キャラも踏まえて、今後の関係性がどうなっていくのかとても気になるところではあります。っていうか「2年の退学者少ないからキツイ試験ぶちこんで減らさない?」みたいなノリで担任組のトラウマ試験(?)持ってくる学園側って実は綾小路をホワイトルームに連れ戻すために悪巧みしてた月城よりも邪悪じゃない?あのへんのって南雲の意向だとおもってたんだけど普通に学園の上層部から出てるっぽいの衝撃だった。1年次のときのクラス投票試験といい、マジであのへんの鬼畜な試験を考案してるのは誰なんだ(理事長があの穏やかそうな笑顔でこういう事考えてるんだとしたらホラーすぎる)。

恋愛方面でも色々動きが

そしていよいよ軽井沢が綾小路との関係を表に出すことを決めて、恋愛方面も色々動きそうな予感。個人的に綾小路が恋愛感情を利用して複数の女子を自分の策略のために動かすようなタイプじゃなく、一之瀬や愛里のことをなんだかんだでちゃんとフろうとしてることには本当にホっとしたんですけど(綾小路ならやってもおかしくないと思っていたのは内緒だ)、愛里の気持ちを知っているのに軽井沢との関係を公言させる方向で間接的にフろうとしてるところとか、南雲の横槍で一之瀬との話し合いが有耶無耶にされてしまったのとか、なんかこう全体的にやはり恋愛面での駆け引きはうまくないなって印象が残りますよね。この辺、よくないフラグにしか見えないんだよなあ。

軽井沢としっかりやることやっておきながら既に終わったあとのこと考えてるのマジそういうところだぞ!!って感じだけど、綾小路は高校卒業したらホワイトルームに戻るつもりなのは明白なのでまあそうなるのか。ホワイトルーム生といえば4巻では消化不良だったもうひとりのホワイトルーム生の正体がいよいよ明かされて、そっちの動きも気になるしますます櫛田ちゃんの前途がヤバイ。結果的に「もうひとりのホワイトルーム生」の足取りを知らないうちに追わされてしまっている堀北・龍園の動向も気になるところ。

本当に、骨休めの休暇編とは思えないほどの情報量が詰まった1冊で言及したいことが……言及したいことが多い!!二学期がいろいろな意味で楽しみだな〜!!(ぐるぐるお目々)

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オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。
同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

金銭面に余裕のあるオタク男女が偽装結婚をして、広い家でシェアハウス的な共同生活を送る話。適度な距離感の保たれた楽しそうな「上質な暮らし」が、読んでて心地よかった。オタク要素はあらすじから想像したものと比較してやや薄めという印象を受けましたが、旦那のハマっている「地下アイドル」話が奇抜な設定で面白かったです。ただ、ちょっと起承転結の転のまっただなかで切れちゃってる感じなのが少し残念で、出来ればもう少し先まで読みたかったなあ。

隠れオタクの男女が織りなす、“上質な暮らし”。

会社には内緒で同人作家をやっているOL・相沢咲月。イベント会場で「結婚しろ」と口うるさい母親の愚痴を言っていたら、なぜかその場に居合わせた会社の同僚・滝本(※隠れアイドルオタク)から「それなら僕と偽装結婚しませんか?」とプロポーズをされてしまい!? 話を聞いてみると向こうにも結婚を急ぎたい家庭の事情があるようで……お互いの利害が一致して偽装夫婦になったふたりが“夫婦生活”と言う名のシェアハウス生活を送るお話。

親戚から管理を任されている一軒家の2階に滝本を住まわせ、基本的には別個の生活を送りつつも時折なにかあれば「同居人」としてお付き合いをする。社会の中でそれなりにうまくやっているふたりが首都圏郊外にある広い家の一階と二階で一定の距離感を保ちながら趣味や生活にお金をかけていくという生活、なんというかすごく生活に潤いがあって読んでいて心地良い。そしてお互いの趣味に没頭しながらも「ふたりぐらし」という新しい生活をエンジョイしている様子がとにかく楽しそう。一時期BLで「上質な暮らし」という概念が流行ったけど、まさにこういう話のようなもののことをいうんだろうなあと思った。もうとにかく暮らしの質が高いんですよね……。

滝本のハマってる「地下アイドル」の話が濃い

出会いの場が同人イベントの会場ということもあってどうしてもあらすじを読んだ時点ではオタク男女のラブコメ的な要素を想像してしまっていたんですが、同人オタク的な要素はかなり薄くてどちらかというと滝本がハマっている地下アイドル・デザートローズの話の比重が多め。宇宙からやってきたアイドルユニットという設定に対してアイドルもプロデューサーもファンもその世界観に即した活動をしている…というのがかなり奇抜で面白いし、メジャーなアイドルではないからこそのファンと公式の距離の近さが印象的。書籍版書き下ろしで描かれる、「デザートローズ」の結成秘話も濃厚な女の子同士の巨大感情案件で楽しかったです。

滝本側の趣味の話がめちゃくちゃおもしろい分相沢の同人活動の話が薄めなのが若干気になってしまうんだけど、正直同人オタクの話は今かなりメジャーな題材になってきているので無理に深堀りしなくてもいいのかもとも。それにしても毎日定時で仕事を済ませて原稿をコツコツ仕上げるて二次創作では壁サー+一次創作では商業を少々…いう姿勢がデキるオタクにもほどがあって、締切前にまとめて原稿するタイプのオタクは震えた。こんなところまで生活の質が高い。

ラブコメとしてはまだ、はじまったばかり

実は結婚を申し入れる前から相沢に好意を持っていた滝本。営業マンとして、そして地下アイドルのオタク活動で磨いたリサーチ力を駆使して彼女の好きなことや嫌いなことをリサーチし、着実に相沢の好感度を上げていくのが良かった。下心があるにはあるんですけどどちらかというと純粋に「好かれたい」という感情が主な感じで、いやらしさが感じられないというか彼の行動が純粋に二人の生活の暮らしやすさに繋がっている感じなのが良かった。相沢の一挙挙動に内心で「かわいい!」と転がっている姿も微笑ましい。

ただ、恋愛ものとしては始まったばかりというかまだ滝本の独り相撲感が拭えない。特に相沢の方には毒親問題が立ちふさがっているのでそっちを解決させないと恋愛的なアレコレは考えられないんだろうな。逆に相沢の実家問題さえどうにかなればあっさり両思いになってしまいそうな雰囲気を感じるんだけど……1巻そこで切るのか〜!!原作のカクヨムの方を見ると今回くらいの分量×3巻でピッタリ終わるくらいの内容っぽいので、たしかにこれはここで切って残りは2巻回しになるのかな〜って感じなんですけど、正直ちょっと本が厚めになってもいいから相沢の実家の件が解決するところまでは入れてほしかったな。良くも悪くもなろう小説の書籍化1冊目にありがちな、中途半端な終わり方してるのが残念。

相沢とのふたりぐらしの暮らしやすさを支えていたのは滝本の営業マンとしてのリサーチ力だったと思うので、今度はそれが相沢の実家に対してどう働くのか、母親の攻略には自信ありそうだけど相沢の話を聞いてると癌は兄貴っぽいけどそのへんもどうなのか。いろいろな意味で2巻が楽しみです。

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「ラノベの定義」について14年ぶりに考えたよ

昨晩Twitterで「ラノベの定議論スペース」というものがあり、そこでラノベの定義論について色々話されているのを聞いているうちに自分の考えをまとめたくなったのでつらつらと書きます。議論の内容はこちらの動画から聞くことができますので興味のある方は聞いてみると良いと思います。あくまで個人の認識の話をしているので、異論反論あると思いますがスルーしてほしいです。

最初に前置きしておくのですがラノベ定議論スペース自体は楽しく聞いておりましたし人の話を聞いて自分の考えをまとめ直すという意味ですごく有意義な時間だったと思います。私のラノベ定義論スペースに対する感想の総括は一言でいうとコレですよろしくお願いします。


私が考える「ラノベの定義」はこれです

個人的には定義って万人がぱっとみて共通の認識を共有出来るものじゃないと行けないと思っているので私はずっと基本的に「ライトノベルの定義はレーベル毎でやるべき」っていう考えです。こういう話をするとおおむねレーベル論者は思考停止している!!とかいわれるんですけど思考停止した状態でもラノベかそうじゃないか判断できるのが究極のゴールだと思っているので……フィーリングで十人十色の回答が出てきちゃうような定義は論外だと思っているので……。

まあそういう意味では究極的には「BOOK☆WALKERのラノベ・新文芸ジャンル基準でいいんじゃないの?」と思ってますし、今回この図を作る上でもめちゃくちゃ参考にしました。電子書籍サイトの区分はおそらく概ね出版社側の意向が強めに反映されてるであろうという目算もあります。



※便宜上「少年向け」「少女向け」というラベルを採用していますが、これは読者の性別を示すものではありません。ラベルだと思ってください。

少年向けラノベ

おそらく「ライトノベル」と言われて万人がまっさきに浮かべるの、電撃や富士見ファンタジア文庫、スニーカー文庫あたりの少年向けレーベルだとおもうので赤枠で囲いました。TRPGリプレイが大半を占めるの富士見ドラゴンブックのみ赤枠からは外しました。

黄緑色の所

ビズログ文庫アリスとオーバーラップはWEB小説に力を入れてるみたいなことを創刊時にいってませんでしたっけと思ったけどオーバーラップはソースが見当たらなかったから勘違いかもしれない。ビズログアリスは確か言ってたけどそのうちビズログ本家の方にWEB小説原作モノが大量に流れ込んでしまった。

定議論スペースでも言及されてたけど、やっぱ一番狭い「ライトノベル」の定義は文庫サイズじゃないかなと個人的に思っているので新文芸とラノベの間に分けました。

新文芸

ラノベを読んでる人からすると「ラノベの判型でかいやつ」、ラノベという枠に特にとらわれてない人だと「特にラノベだとは思ってない」みたいな印象。私事なんですが去年ラノベの二次創作系WEBオンリーを主催した時に転スラや盾の勇者はラノベですか?みたいな質問が結構多かったの興味深かった。私の中ではラノベだったので言うまでもないと思ってた……。

ひょっとして新文芸をめちゃくちゃ遡ると「ケータイ小説」文明にたどり着くのだろうか…と考えるのですがケータイ小説文化には無知なので詳しくはわからない。

少女小説・少女向けラノベ

私は少なくてもビーンズとビズログとアイリスはラノベだと思うんですけどコバルトとホワイトハートは人によって判定が違うなって印象。あとスペースでも言われてたけど「少女小説」という単語でのラノベとの差別化も若干感じますよね。うちのブログの感想記事のカテゴリは、できるだけ広めの言葉を使いたいという意味で「少女小説」を採用しています。感覚的には「少年漫画」「少女漫画」に近い。

よく話題にされるコバルト文庫はなんか良くも悪くもかつての「ヤングアダルト」って言われてた頃の生き方のまま存在しているみたいな……ホワイトハートは現在概ねBLレーベルって感じなんですけど昔はティーンズハートの少し大人向けの内容みたいな感じの少女小説も出ていたので完全なBLレーベルとは言えなくてこういう感じ。

ジャンルは初出レーベルに依存するよ派なので「赤川次郎・氷室冴子・新井素子・小野不由美あたりがラノベっぽくないからコバルトとホワイトハートはラノベじゃないみたい」なのは個人的には支持してないです。ただ、「昔のコバルト文庫」がラノベかどうかっていわれるとラノベではないかもなあ……って思う。昔のスニーカー文庫はだいたいラノベだと思ってる。

ライト文芸

殆ど読まないので言及できないんだけど多分こんな感じかなと思っている。表紙がイラスト主体で文庫サイズで挿絵がほぼないラノベと一般小説の間くらいにいそうなジャンル。

余談ですが定議論スペースで「ミミズクと夜の王」が売れなくてこっち(メディアワークス文庫)に切り離されたみたいな話に対して「ミミズク〜」は普通に売れてたと思うって話はスペース内で指摘されてましたが、なんなら直接の続編である「毒吐姫と星の石」、キャラは繋がってないけど流れを同じくする「MAMA」「雪蟷螂」という実質的な続編もありますって言う話も言及しておきたいです。

ノベルズ

西尾維新とか私は個人的にめちゃくちゃラノベだとおもってるんですが「講談社ノベルス」がラノベかといわれるとそれは絶対に違うよねと思うのでレーベル論の限界を感じた。

BL・TL・男性向けエロノベル(ジュブナイルポルノ)

BLはラノベじゃないと思うんだけどX文庫・コバルト文庫がBLを出してる関係でレーベル論者としては判定が悩ましくなる。TLはTLだとおもうんですがたまにマカロン文庫とか電子書籍ショップによってはラノベの所に並んでるときがあるような記憶。(eロマンスは記憶違いでした)

エロラノベ、オシリス文庫は一応自称は「官能小説」なんですけどレーベル公認のカレー沢薫先生のレビュー連載ではアダルトライトノベルって言ってるのでちょっとラノベにまざりたいみたいな色目を感じており。余談ですが私は「ちょっとエッチなライトノベル」っていいながら二次元ドリームノベルズばりの濃厚なエロ小説を出してたキルタイムさんの「あとみっく文庫」さんのこといまだに忘れられません。

美少女文庫さんはなんていうか「ジャンル:美少女文庫」さんだと思うんですが、最近はめちゃくちゃラノベ読者を引っ張りたいという強い意思を感じる。近辺のラインナップを見ると「さかきいちろう」先生をはじめ見たことあるお名前がいっぱいならんでるけど、どのくらいラノベ読みが手を出したのかは正直きになりなる。

ノベライズについて

ラノベスペースの中でノベライズの定義論がありましたが私はレーベル帰属派なので各作品自体は各レーベルの居住地で判断したい。ただ、コミケジャンルコードに魂を惹かれた人間でもあるので作品そのものは原作本体に依存するとも思っています。たとえば「閃光のハサウェイ」だと、「宇宙世紀ガンダムの1作品としての閃光のハサウェイはアニメジャンル」「それはそれとして閃光のハサウェイ単体はスニーカー文庫だからライトノベル」みたいな……。

あと、コミケジャンルコード論でいくと「京アニエスマ文庫のアニメ化作品」なんかはアニメと認識してる人が多い印象。エスマ文庫割と特殊な立ち位置だと思うので詳しい人の見解をいつかきいてみたい。

ノベライズ主体のレーベル、集英社少女漫画作品のノベライズをやってた「コバルト文庫ピンキー」とか乙女ゲーム・女子受けの良いボカロ曲のノベライズが多めの「ビーズログ文庫アリス」とかオリジナル作品と並行してなのはさんのノベライズとかをやってた「メガミ文庫」とか全年齢向け美少女ゲームノベライズをやってた「なごみ文庫」とかいろいろありましたが概ね今息してないので難しいんだろうなあと思っている。

14年前に書いた定議論の記事↓
https://urara.tank.jp/log/2007/08/240141650

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死んでも推します!! 〜人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします〜

 

「私は、お飾りになりたいわけではありません」 「ならば、何になる」 「あなたの剣に」
公爵令嬢・セレーナの婚約者は、帝国が誇る『黒狼騎士団』の団長であり、近く皇帝となるフィニス。幼い頃に肖像画を見て以来彼の美貌の虜となり、全力で萌え、全霊をかけて推してきたフィニスといよいよ結婚――という時に、ふたりは何者かに謀殺されてしまう。一度目の人生は、これで終了。気づけば、前世の記憶を持ったまま『二度目』がスタートしていた。 今度の人生では、絶対にフィニスを殺させない! 推しには健康で長生きしてほしいから――そう考えたセレーナが選んだのは、フィニス率いる『黒狼騎士団』に入り騎士として彼を守ること。 無事入団を果たしたセレーナだが、一度目の人生では見ることがなかったフィニスの素顔や振る舞い、すべてが尊すぎて死にそう! だが、ふたりの周りにまたもや不穏な影が――!?

語彙を溶かしながら豊富な語彙で「推し」のことを語るひとを見るのはとにかく健康になるものですが、この作品は主要人物がのきなみ、隙あらば推し語りを入れてくるので本当に健康になる。そんな健康過ぎる推し活の合間に、それとなく不穏な気配が見え隠れしてくるのも良かった。面白かった!!

他人の「推し活」を見るのは健康に良い

肖像画を見て一目惚れしていた騎士団長・フィニスと婚約することになった公爵令嬢・セレーナ。間近で推しを見られる幸せを噛み締めていたのもつかの間、二人は何者かの襲撃に遭って命を落としてしまう。──という『前世の記憶』を持ったまま、セレーナとしての人生を赤ん坊からやり直すことに。婚約者としての立場を放棄したセレーナは男装してひたすら身体を鍛え、フィニスの騎士団に入隊することに……!?

「推し」について楽しそうに語るひと(キャラ)を見るのは本当に健康に良い。なんかもうマイナスイオンとか出てる。特に語彙力が豊富な人が語彙力を半ば溶かしながら言葉を尽くして推しについて語っているところは本当に最高。

本作はヒロインのセレーナをはじめ、作中の主要人物の殆どが濃ゆい推し語りを展開してくれるので本当に読むだけで健康になれます。一度目の生では自分の気持を胸のうちに秘め、ただ一人でフィニス様に萌えていたセレーナが、騎士団に入って同僚やらライバルやらフィニス様大大大大好きな面々と友誼を結んでいくのにニヤニヤし、本人が目の前にいるのもお構いなしにフィニス様語りで盛り上がってしまう姿にニヤニヤしてしまう。そして、真面目なカタブツかと思っていたフィニス様も、幕間で一人称視点になるととたんに「かわいい×かわいい=大大大大大宇宙。」とかいいだしてしまうので360度隙がなかった。もはやフィニス様の副官であるトラバントが最後の聖域みたいなとこあるんですけど、彼まで萌えを語りはじめたらツッコミが全滅してしまうので頑張ってそのままで居てほしい。

時折顔を覗かせる、不穏な空気がまた良い

登場人物の半数以上が声高らかに推しへの愛を叫ぶコミカルな展開がひたすら楽しい半面、時折どうしようもなく不穏な空気が顔を覗かせるのがまたすごい好き。一度目の生でセレーナとフィニスが命を落とした事件についてはまだ全く真相にたどり着けていない状態だし、フィニスにはそれだけではないなにか重い事情がありそうだしで暗くなる素養はいくらでもあるんですよね。明るい展開の合間にさりげなく挟まれる不穏な雰囲気って興奮しませんか???私はします。

過酷な最前線において、死の恐怖を一時忘れさせるための萌え。そして、ともすれば危険ですらある「盲目的な愛」すらも無害なもの変えてしまう萌え。フィニス様が語る「萌え」のもうひとつの姿はちょっと危うい気配を感じさせて。今回は色々ない意味で萌えが世界を救う的な展開だったのですが、今後これがどっちの方向に転がっていくのかはとても気になるなあ。

萌えを語る一方で、セレーナの中で少しずつ一人の人間としてのフィニスへの恋心が育っていくのも印象的でした。この手のやつ紙一重で夢女子になってしまいがちなんだけどなんか絶妙に「推し対象」と「恋愛」が両立してる感じなのがポイント高かったです。それとなく示されたフィニスの今生での婚約者の話もひともんちゃくありそうな気配で気になる。次巻どうなっていくのか楽しみです。

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ティアムーン帝国物語II〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「――来てますわ、波が!」
処刑台から12歳に逆転転生【タイムリープ】した元わがまま姫ミーアは、調子に乗っていた。 かつての記憶と周囲の深読みで、飢饉時の小麦確保や内戦回避に成功し、ついに前世の日記帳ごと「処刑」の二文字が消えたからだ。だが、呪縛から解き放たれて小躍りする彼女の下に、凶報が舞い込む。想い人である王子アベルの国で革命が勃発したというのだ。危険を冒して救助に向かうべきか、我が身の保身か……?変わり始める未来を前に、彼女が下す「最初の選択」とは?ポンコツ姫よ行け、 ギロチン回避のその先へ!運命に抗う一世一代の歴史改変ファンタジー第2巻!

ポンコツだけど失敗を指摘された時に自分の行いを改善しようと頑張れるミーア姫と、いつも完璧であるがゆえに自分の失点も他人の失点も許せないシオン王子との対比が良かった。怒涛の「さすミア」展開にやや食傷気味になる部分もあるけど、大きな敵の存在が示唆されて良い意味で先が読めなくなってきたな。

日記が消えて、良い意味で先が読めなくなってきた

わがままな性格と周囲を省みられない性格が祟って一度は断頭台の露と消えたはずのティアムーン帝国の姫・ミーアが少女時代からやり直し、1回目の人生での経験を元にギロチン回避を目指…していくうちに、なぜか周囲から思慮深い女と勘違いされて「帝国の叡智」とまで呼ばれるようになってしまうシリーズ第2巻。

1周目の人生でミーアをギロチンにかけた復讐者・ディオンが色々あって(復讐される原因となった事件を事前に解決して)仲間に。とはいえ、前世での印象が悪すぎて彼の前だけでは完全に借りてきた猫になるミーアが可愛かった。ミーアの思惑(※特に何も考えていない)を深読みして株を上げてしまうあたりは概ね他のキャラと同じなんだけど、彼のそれはなんというか圧が強すぎるので、自分を殺した相手からそんな圧を掛けられたらそりゃミーアも涙目になるわ。ところでミーアの参謀・ルードヴィッヒと彼の間に悪友的な相棒的なアレが生まれそうな気配でわたし、とても気になります。

1巻の時点で概ねの破滅フラグは潰している気がしたので2巻どうするんだろうと思っていたのですが、思った以上にフラグが複雑だったというか解除しないといけない爆弾の数が多かったというか。ミーアの破滅をきっかけに連鎖的に周辺国を衰退していく未来と、そんな未来を望む「黒幕」の存在が明らかに。更に、ギロチン回避した流れでこれまで未来を指し示していたミーアの日記が消滅して…。ミーア自身の1周目での経験や、2周目の人生での成長を加味しても、その『叡智』の一端を担っていたのはあの日記だったと思うので今後がどうなるのかいろいろな意味で気になるところ。

ミーアとシオン、正反対な二人の対比が良い(ただしすれ違ってる)

今回はひょんなことから二人で行動することになったミーアとシオンの対比が印象的でした。一周目のミーアは確かにポンコツで考えなしで無能な姫だったと思うんだけど、自分の失敗を指摘されればそれを受け止め、改善するために努力することができた。逆に、完璧であるがゆえに他人に同じだけの完璧さを求め、他人の失敗も自分の失敗も許すことも出来ず、ミーアのほんの少しの側面を見た途端に彼女を切り捨ててしまったシオンは正反対の意味で「不完全な」人間だったと思うんですよね。その欠点があるがゆえに1周目のルードヴィッヒも失敗を知るミーアを支持し、自分と同じような考えを持っているはずのシオンにはついていかなかったわけだし。

優秀すぎるゆえにそうでない人間の心がわからなかったシオンが、ミーアの「失敗を知れ」という言葉で自らの弱点を自覚し、真の意味で公平であろうと変わっていく姿がとても良かった──これ、何が一番面白いかって、このミーアの言葉がそういう深い意図があって出てきた言葉では全くないってことなんですが……事実を並べてみると一瞬すごい深イイ話みたいになっちゃうんですが、これもいわゆる「さすミア案件」なんだよな……。

ともあれ無事にギロチンの運命も回避し、以前の生で敵対した人々とは手を取り合うことができ……完璧ではないもののとりあえず幸せな未来を勝ち取ったミーア。とはいえ、今回示された黒幕みたいな存在も不穏ですし、今回は第一部完扱いでまだまだ波乱が待ち受けてそうな気配。これからどうなっていくのか、とても楽しみです。

ところでエピローグで一瞬だけ示唆された「現在の状況での」未来予想図、100%のベストエンドとはいえないけれどこれまでの殺伐とした展開からは打って変わったイチャコラぶりで笑ってしまう。子供出来すぎでは!?

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ティアムーン帝国物語 〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

崩壊したティアムーン帝国で、わがまま姫と蔑まれた皇女ミーアは処刑された――はずが、目覚めた彼女は12歳に逆戻り??第二の人生でギロチンを回避するため、帝政の建て直しを決意する。手始めに忠義に厚い下っ端メイドと、左遷されたが優秀な文官を味方につけ、失敗した過去をやり直す日々が始まった。けれど、ミーアの本音は「我が身の安全第一」。仇敵を遠ざけ、人脈作りに励むうちに、なぜか周囲の忖度で次々と奇跡が実現!やがて、身勝手なはずの行動は大陸全土の未来を大きく変えていくのだった……。 「こ、これぐらいわたくしにかかれば簡単ですわ!」 保身上等!自己中最強!小心者の元(?)ポンコツ姫が前世の記憶を使って運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!

コミカライズが可愛かった+BWで1巻無料だったので手に取りました。飢饉・疫病・革命という多方面からの国難によって亡国となった母国ティアムーンの運命を、人脈を作り直していくことで変えていこうとする展開が面白い。決して高い志を持つわけではない、小心者で保身最優先の駄目王女ミーアが誤解がきっかけとはいえ自分に期待を寄せてくれる人々に(へっぽこながらも)少しずつ応えようとしていく姿が印象的でした。

お調子者で小心者な王女が繰り広げる、「やり直し」の物語

わがままし放題で周囲から反感を買いっていたティアムーン帝国の王女・ミーア。革命が起きて数年間地下牢に幽閉された後、処刑されることになってしまった。断頭台の露と消えたはずの彼女が次に目を覚ますと、まだ帝国が健在だった頃の少女時代に戻っていて……!?自らの記憶と処刑までの日々を描いた日記帳の記述を頼りに、一度は処刑されたはずの王女が過去に戻って処刑を回避するため奮闘するお話。

決して頭が良いとは言えないミーアがやることなすこと良い方に誤解され、前世で親身になってくれた人達だけでなく、前世では見向きもされなかった人たちからすらも誤解され、「帝国の叡智」とまで言われて高い評価を受けていく……という展開がコミカルで楽しかった!どちらかというと本人は短絡的で何も難しいことは考えていないんですが、誤解が誤解を重ねて信者状態になっていく周囲の人々と、その誤解を受けて「よくわかんないけどとりあえずノッておこう!!!」ってノリでとりあえず便乗していく軽率さに笑ってしまう。また、やり直しモノとしてはミーアが処刑台まで持っていった日記が二度目の生での彼女の行動を受けてリアルタイムに書き換わっていくという設定が面白かったです。

身の丈に合わない過大評価が続いて主人公が持ち上げられていく系の展開、個人的には座りの悪いものを感じてしまいがちであまり得意ではないのですが、この作品はミーア自身がとりあえず周囲のヨイショにノッていく一方でそれを過大評価だと認識してしまってもいるので割とその手のストレスを感じることなく読めました。好転していく状況を喜ぶ一方で周囲からの過剰すぎる期待に内心頭を悩ませている姿が微笑ましかった。

一番大事なのはあくまで自分だと言いながらも1周目の人生で味わったしんどい思いを他人にさせたくもないし、自分のことを大切に思ってくれた相手には幸せになってほしい。そんな思いが根底にあるからこそ以前の生では届かなかったはずのミーアの行動が周囲の人々の心を打ち、動かしていくんですよね。「未来に起こることを既に知っている」というのはたしかに大きなアドバンテージであるんだけど、それ以上に前回の生を経て相手の気持ちを推し量ることができるようになったのが2周目ミーアの最大の武器なんだろうな。

それは中盤から始まる学園生活編でも同じで、かつての生では周囲の状況を考えずわがまま放題で過ごしてしまったせいで様々な失敗をし、最終的に革命の火種を自ら作ってしまったという経緯があるわけですが、その失敗を糧にしたミーアがなんだかんだで周囲の状況や思惑を推し量りながら行動していくことで、少しずつ前世では実現できなかった様々な人脈を築いて行く姿が印象的でした。というか前世でのミーアの「勘違いムーブで失敗して少しずつ孤立していく」の流れ、個々の失敗で見ていくとコミカルでめちゃくちゃ面白いんだけど改めて考えると孤立の仕方がリアルできっついな…!!

ちょくちょく挟まれる一周目の生での孤立エピソードがリアルなだけに、処刑の未来やかつて敵となった人々からの心象に内心で怯えまくりつつも今度こそ様々な友人を得て楽しく過ごしているミーアの姿には思わずほっこりしてしまう。また、隣国との戦争を回避するために近づいたはずの近隣国の第二王子・アベルとの勘違いラブコメが大変可愛く、最初は利権で近づいたはずなのにミーア自身がすっかりアベルにときめいていってしまう流れにはによによしてしまいました。

個人的には剣術大会に出場するアベルのためにお弁当を作ろうとする流れがメッチャ好き。自分でお弁当を完成させられる自信がないから友人たちを頼ろうとするも誰も彼もが明らかに不穏な事言いだして……からのブレーキのない暴走列車みたいな展開がすごいし、シオンの従者・キースウッドの心労がマッハで強く生きてほしすぎる。ていうかこの流れで事故らないの逆にすごくない!?絶対事故ると思った。

もう1巻ラストの時点で前世で革命が起きた際に彼女が作り上げた火種はほぼ回収し終わってる感じで今後どうなっていくのかが気になるけど一番の原因はやはり飢饉と疫病だと思うのでそう簡単に処刑ルート回避はできないのか。終盤でそれとなく示唆された貴族達の農耕民族への差別的な風土を見ると最大の敵は革命よりも疫病よりも飢饉なのか。続きがどうなっていくのか、楽しみです。

余談ですがコミカライズの姫の表情変化がめちゃくちゃ可愛いくて楽しいので原作気になった人、原作読んで面白かった人は読んだほうが良い。

杜乃ミズ(著), 餅月望(著), Gilse(著) 「ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜@COMIC1 (コロナ・コミックス)」
杜乃ミズ(著), 餅月望(著), Gilse(著) (著)
TOブックス
発行:2020-01-20T00:00:00.000Z

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた

 

配信事故から人気Vに!? どうして清楚Vはこうもヤバイやつが多いのか。
Web発、衝撃の問題作が遂に書籍化! 大人気VTuberコメディ! 数々の華やかなVTuberが所属する大手運営会社ライブオン。その三期生で『清楚』VTuberの心音淡雪が、不注意から配信を切り忘れた結果――「やっぱロング缶の鳴る音は最高だぜ!」「は? どちゃしこなんだが?」「わたしがママになるんだよ!」素の性格(酒カス・女好き・清楚(VTuber))がバレてしまい!? そして翌日「めちゃくちゃ切り抜かれてる!? トレンド世界1位!? なにこの同接数!!!!」大炎上するかと思ったら、ギャップがウケて大バズ! その結果「おっしゃー配信始めるどー!」開き直った彼女は、大人気VTuberへ駆け上がっていく!!

テンションの高い会話劇とコメントの掛け合いが軽妙でとても楽しかった!昔の2chの面白スレまとめを読んだような読後感。今読まないと楽しみきれないであろう、イマドキのオタク作品ネタを大量に含んだ掛け合いの数々をそのまま書籍化してくるの、さすが生徒○の一存を生んだ富士見ファンタジア文庫だな強い。

おまえは今までに飲んだストゼロの本数を覚えているか?

ブラック企業を退職して清楚系Vtuberとしてデビューしたものの、配信数はイマイチ、収益化も出来ない状況で鳴かず飛ばずの毎日を送っていた心音淡雪こと田中雪。ある日、配信を切断し忘れて独りでストゼロで酒盛りして寝落ちする所までをあますことなく配信してしまい……!?清楚あらため「ストゼロ系」Vtuber・心音淡雪の快進撃がここからはじまる!

ストーリー的な要素はタイトル部分以上のものはあまり無くて、「清楚系」の皮を脱ぎ捨てて思うがままにテンションの高い配信を繰り返す淡雪と、色々な意味でフリーダムすぎる彼女の配信にツッコミを入れるリスナーたちの掛け合いがとにかく楽しいお話でした。とにかく会話のテンポが良くて何度も笑ってしまった。Vtuber配信の面白いところと優秀なコメントだけまとめてテキスト化したみたいな、ラノベというよりも2chの面白スレまとめを読んだような読後感で懐かしかったです。

個人的にはもう少し波風があっても良かった気が気がしなくもないけど、女ライバー同士の確執とか炎上みたいな展開も特になく、アンチに攻撃されるみたいな話もなく、ひたすらライバー達の仲良しのところを見せてもらえるので安心して読めるのも強み。百合の下ネタにはちょっと引く部分もありましたが、同時に主人公の淡雪がとにかくVtuberという存在が大好きなんだなということが丁寧に描写されていくので憎めない。色々な意味でストゼロの消費量が凄すぎて主人公の肝臓が心配になりますが、途中で休肝日が儲けられて安心したし、周囲もそこまで無理やり飲ませようとするわけじゃない(煽るくらいはする)のでその辺も安心して読めました。

コメント欄はネットスラング全開、既存作品やエロゲーネタもバンバン入ってくるような会話が色々な意味で今じゃないと完全には楽しめない系の作品であって、これをそのまま書籍にしてくるの強いなあ……と思ったけどよく考えたら富士見ファンタジア文庫的には「生徒会の一存」あたりですでに通過した所って気もしました。大筋のストーリーが殆どないところも生存を思い出す。その割に最後はしっかり2巻に続くみたいな終わり方だったけど次巻はどうなってしまうのか。楽しみです。

用語関係はこれまでにいくつかVtuber物を読んでいたおかげでほぼ戸惑わずに読めたんですけど、唯一、カステラの意味が解らなくてしばらく困惑した。思わずtwitterで聞いた。ああそうかマシュマロかぁ…というか原文読みに行ったら普通にマシュマロだったわ。あとがきまで「カステラ」になってたから一瞬なんかそういうサービスが有るのかと思ったわ…。

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