うららの記事一覧 | ページ 18 | 今日もだらだら、読書日記。

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大伝説の勇者の伝説11 ニンゲン総代

 

魅かれあうのは、『悪魔』と『勇者』ゆえか――待望の第11巻!
化物に囚われたライナ・リュートを救出すべく、動き出したシオン。『悪魔』『勇者』『女神』、そして『ニンゲン』。すべての役者が呪われた塔に集った時、ついにこの世界の、すべての謎が明らかになる!?

レムルスはライナの前でこの世界の成り立ちを話し始める。その間にライナを救うため塔の中に足を踏み入れるシオン、レムルスの作り上げた結界の外で成り行きを見守る円命の女神。塔の外壁ではルークが状況を伺う。一方、離れた土地に居たレファルの元にもグロウヴィルの声が届き……。

因縁が集結する中盤戦クライマックス

ライナとレムルスの会話。『司祭』『女神』『勇者』『悪魔』とは……そして『ニンゲン』とは一体何なのか。『精霊』とはなにか、魔法はどうやって生まれるのか、複写眼が存在する意味、どうしてシオンはライナを殺そうとしたのか。物語を巡る様々な謎が明かされる……というかこの辺の謎はおおむねこれまでのシリーズ内でも遠回しに言及されてきた部分で、なんとなくふわっとした認識してた部分を改めて整理するためのやりとりだった気がする。レムルスの説明を聞いたライナが世界を魔法に例えて整理するのがとてもわかりやすかったですね。更に別の場所で「司祭」の思惑の外にいるレファルとグロウヴィルの存在意義も再定義され、現在明らかになっている人の枠を外れた存在達の出自が改めて明らかに。……まあなんだかんだでレムルスにとって都合の良い部分しか語られていなかったりしそうな気はするのですが。公式あらすじの後ろに「?」ってついてるし全て明らかになってはいないんだろうなあ。

無印11巻以来久しぶりに邂逅するライナとシオン。「勇者」の宿命も「悪魔」の運命も乗り越えて今度こそひとりで何もかもを抱え込もうとするシオンに手を伸ばそうとするライナ……という大変に熱い展開なんですけど、ここまでお膳立てをしておいて最後の最後にこれは人の枠組みを外れた化物達ではなく、サブタイ通りの「ニンゲン」達の物語なんだよとばかりにルークをはじめとした人間達に御鉢を回すレムルスめちゃくちゃ人の心がない。いや人じゃなかったわ。お互いに納得しあっての流れではないとはいえ、あと一歩でなんとなくシオン連れて帰れそうな流れだったのに!!!

そしてこれは「ニンゲン」達の物語

というわけで、これはレムルスが己の存在全てを賭して作り上げた「悪魔」と「英雄」の……ライナとシオンを救うための物語──と思わせておいて、彼等を目当てに集まってきたニンゲン達に全てを託すための物語なのでした。いやレムルスの思惑イマイチわからないままだったけど。そんなことってあるかよ……(そんな気もしてた。サブタイトルがこんなだし)

感情など持たぬ神という存在が、ローランドの人体実験の影響で感情の大部分を欠損させていて他人の強い感情に惹かれてしまうルークを決定権を委ねるひとりに選ぶというのが皮肉というか面白いというか。そのルークが更に、その場に居るニンゲンの中で誰よりも自分の感情・直感を優先するクラウに事態の決定権を委ねるのがまた象徴的で。サブタイトルと表紙イラストと物語の展開をそのまま素直に受け取るならばルークこそが「ニンゲン総代」として描かれていた気がするんですけど、そのルークの(自分には持てない他者の人間性に惹かれる)ありかたがヒトでありながらヒトの枠を踏み外した面々の誰よりも人間外っぽくて。円命の女神がルークと全く同じ理由でミルクに惹かれていくのも印象深い。

レムルスの策略によって、世界は他の上位存在達の思惑を1年間だけ跳ね除けることに成功する。これからの1年間で何が起きるのか、再び引き離されたライナとシオンの関係はどうなっていくのか。いよいよ終盤戦に突入していく物語がどうなっていくのかとても楽しみです。

それにしてもゾーラとペリアの掛け合い好きだなあ。ほんとこの2人が中心の短編読みたい。堕ち伝最終巻頼む…!!!


歴史に残る悪女になるぞ 3 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!

 

やったわ、念願の国外追放よ――!! ちょっとズレた令嬢の悪役転生記★
デュークから突然アリシアの記憶だけが消えた。 今まであんなに情熱的な目を向けていたのに……。 記憶を奪った犯人の疑いをかけられたアリシアは、さらに聖女リズへのこれまでの振る舞いを糾弾され、とうとう国外追放されてしまう!  しかし当の本人は“悪女として最高の展開”と大興奮!!  令嬢だとバレないよう男装してラヴァール国へ向かうが!? 【電子特典は、レベッカ目線でアリシアの悪女ぶり(?)を語る、大木戸いずみ先生書き下ろしショートストーリーを収録!】

デューク王子が突然アリシアの記憶だけを失ってしまった。デュークへの記憶操作の疑いと、これまでのリズへの振る舞いを糾弾されたアリシアは隣国ラヴァールに追放処分にされてしまう。学園での狼騒ぎ以来ラヴァールに興味のあったアリシアは、汚い少年に姿を変えてノリノリで隣国に向かうが……!?

デュークはもう少し粘っても良かったと思う

悪役令嬢の末路の定番・国外追放になってしまったアリシアがウキウキすぎて追放処分とは一体。デューク王子はもうちょっとギリギリまでアリシアに気を揉ませたほうが良かったと思うんですよ。真実を知らせぬまま送り込むのはさすがに不安かもしれないが!!

しかし2巻までが良い意味でも悪い意味でもモブ信者からの理不尽な虐めと対話が成立しない聖女との不毛な争いみたいな展開が多かっただけに、アリシアがこれまでに鍛えた身体能力を使って隣国でのし上がっていく展開が大変に楽しかったです。隣国の王子・ヴィクターとの身分にとらわれない丁々発止のやりとりも良かった。デュークと両思いという前提がなければこのままヴィクターとの相棒から始まる恋物語が始まりそうな勢いで、こりゃデュークも自国で気をもむわけですよ……。

今明かされる、「聖女」の能力

アリシアがラヴァール国に追放されている間に、残ったデュークはロアナ村に追放されていた叔父・ウィルを連れ戻して国内の建て直しを図る。リズの持つ聖女の異能「誘惑」の話ややウィルが追放された経緯が明かされていくのですが……もう父世代の話聞くと、そして彼らの追放された原因がデュークの推測している通りならばもうリズといわず「聖女」という概念そのものが邪悪じゃないです?ここまでくると聖女が王子と結ばれなければいけないみたいなしきたりも何らかの思惑を感じてしまうな。先代聖女はご健在みたいな話も出てきたし、今後ぶつかるような展開もあるのかもしれない。これほどアリシアが彼女と並び立つための努力をしてるわけだからやっぱりラスボスはリズであってほしい気がするんですが……今回は特に、ウィルや追放された重鎮3人の貫禄が凄くて存在感かすみがちだったけど……もっとがんばれ……結局リズに悪意があるのかないのかイマイチよくわからないままなの、もどかしいな(100%純粋なお花畑ヒロインではないように思えるんだけど、今回のことで能力の使用は無自覚みたいな話に行ってしまったし……)

リズの存在感も含めてこのままだと結局アリシアが真の聖女だよ!!ってオチになりそうで心配で、そこはやっぱりちゃんと(どうかんがえても悪女じゃなくても)自称・悪女ポジを貫かせてあげてほしい気がしてならない。が、色々な意味で今後どうなるんだろうなあこれ。


大伝説の勇者の伝説10 英雄と悪魔

 

<英雄>と<悪魔>。ふたりの王の道の果てには……。
黒き勇者の力を手にして、己の覇道を突き進むシオン・アスタール――英雄王。抗えない己の宿命に弄ばれながら、儚き未来を希望するライナ・リュート――悪魔王。かつて、共に手を取り合ったふたりが、いま再び……。

レムルス帝国に連れ去られたライナを取り戻すため、シオンはレムルス帝国へ向かう。様々な因縁がレムルスの中心に集結しつつある中で、ライナは「這い神」を名乗る存在と対峙して……。

あらすじも表紙も全力で煽るじゃん

そんな都合のいい展開ある?って思いながらこの表紙とこのあらすじ見たらシオンとライナのピンポイント共闘期待するじゃん……前巻のキファとフェリスの会話の流れも明らかにその流れだったじゃん……なんならもう大伝3巻くらいの時からこの巻の表紙みてずっと期待してましたよ私は……あらすじの物凄く無難なこと言ってる感じといい、完全にそういうミスリード狙ってるんですよね……おのれぇ……。いやまあなんか次巻くらいで共闘というかまあ久しぶりにふたりの対面くらいはなんとか叶いそうだけど……いやもうどうなんですこれ……。

改めて思い返すと囚われのライナとそれを取り戻そうとするシオンのふたりが中心にいるのは確かなんだけどむしろ這い神・レムルスが『勇者』やら『悪魔』やら『女神』を相手に事態をひっくり返そうと必死で抗う大舞台の前座みたいなお話でしたね。そして彼とライナの会話や女神の独白によって少しずつ彼らの勢力図や力関係が少しずつ明らかになっていく。次巻でいよいよこの世界の謎が明かされそうみたいな……また切り方がひどい……改めて考えると色々な意味で次巻への伏線ばらまき巻だったな……。

さすがにここまで来ると一時的でもライナとシオンの共闘みたいな展開はないんだろうなあと期待せずに待つ感が凄いのですが、スフェルイエット民国というかヴォイスとの協力関係はどうなるのかとか忌破り追撃隊の面々は大丈夫かとかむしろこれ終わった後どうなるのかがめちゃくちゃに気になる。次巻楽しみだけど色々と後が怖いよなあこれ!!

キファ・フェリス・ピアの女子3人入り乱れ一触即発展開には思わずニヤニヤしてしまった。どちらかというとライナたちはヴォイスじゃなくてこっちと共闘すればいいとおもうんですよええ。


歴史に残る悪女になるぞ 2 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!

 

『恋愛』も悪役らしく、嫌われてこそ――のはずなのに!? 悪役転生記続編
聖女の力を持つヒロインと対等な悪役となるべく、魔法のレベルアップに挑んだアリシアは15歳に。 久しぶりに学園に行ってみると、王子をたぶらかしたとして注目の的に――私今、めちゃくちゃ悪女じゃない!?  と喜んだのも束の間、その王子のデュークに「今度こそ我慢しない」と宣言され、距離を詰められ……悪女ってこういう時どうしたらいいの!?

ヒロインと対等な「最強の悪女」になるため日々努力を続けるアリシア。ところが学園内で起きた事件をきっかけに、父親であるアーノルドから2年間の自宅謹慎して魔法のレベルを90まで上げるように言い渡される。それから2年……15歳になったアリシアは久しぶりに学園に向かうが、彼女を待っていたのはこれまで以上に冷たい目線を向ける学生達と、デューク王子からの思いもよらぬラブコールで!?

2年間の沈黙を経て、「悪女」にますます磨きがかかってしまった

リズの取り巻き達によるアリシアへの攻撃は加速するものの、それ以上に2年間の精神修行によってアリシアのあしらいかたも上手くなってしまったので全く苦境に見えないのがすごい。更に、彼女に釣り合うためと努力し続けたジルが2年間でめちゃくちゃデキる従者になってしまったし、優秀な兄やリズの取り巻きと化していた一部メンバーも寝返る気配を見せていていよいよ死角がない。ゲームヒロインであるリズの黒い本音も透けて見えてきたなあという印象があるんだけど、その悪意が全くアリシアに伝わらなくてリズが独り相撲取ってる感じが凄くてこれもう一周回って可哀想になってくるなぁ。今回は調子を崩されて口汚くアリシアを罵るシーンも多くて、ほんと良いところなかった。これじゃあリズの取り巻き達の目を盗む形でジワジワとアリシア信者が増えていくのさもありなんだし、アリシアがイケメンすぎるので彼女に助けてもらった女子生徒たちが恋にオチても仕方ない。

それにしてもリズのことを「いいこちゃんヒロイン」だと言って嫌っているはずのアリシアこそが一番彼女のことを「掛け値なしの善人」だと信じきってて、彼女の純粋さに夢をみてるのちょっと面白いですよね。良くも悪くも彼女のリズに対する期待値が高すぎるので、最終的にはアリシアの望み通りにリズとアリシアの真っ向勝負がちゃんと実現すると良いねって思うんですが……。

2年間の接触禁止を経て、ふっきれた王子が甘甘すぎる

1巻では正直色々な意味でアリシアへの好意を我慢している感じでなんかイマイチ真意が見えなかったデューク王子、2年間の接触禁止期間を経て吹っ切れてしまった。確かにこれはタイトル通りの「溺愛」ですわ……。そして他人の悪意は物ともしないアリシアが、デュークからの溺愛にはまったく耐性なくてただただオロオロしちゃうのが大変に可愛い。

ただ、貧民街に住む謎の老人・ウィルの正体が明らかになったり、アリシア休学中に起こった事件の捜査をきっかけに色々と不穏なフラグが見え隠れしたり……で物語はこのままただの学園ラブコメでは収まらない気配。リズのカリスマ能力は何なのか、彼女の本意はどこにあるのか、アリシアは無事「歴史に残る悪女」になれるのか(というかこのままだとリズが悪役でアリシアが聖女になっちゃいそうなんですが!?)、次巻どうなっていくのかとても楽しみです。


真伝勇伝・革命編 堕ちた黒い勇者の伝説7

 

戦火のローランドで、シオンはついに父王と対峙する!
戦場と化した街の中で、革命の象徴として戦うクラウ。その陰で、舞台を整えるべく暗躍するルークたち。一方、シオンは、玉座の間の扉を開く。この国の王であり、憎むべき父と対峙した時、シオンは何を想う――!?

革命の旗頭として最前線で踏ん張り続けるクラウ。ところが期待していたミラーからの援軍は見込めない状態。ルークは次善の策を走らせつつ、仲間とともにクラウの元に急ぐが……。一方、シオンは「王と対面した」という実績によって周囲を動かすため、独りで父王の元に向かい……。

変わり果てた父の末路がなんとも悲しい

狂った現政権の象徴である父王との対峙。母の仇を討つため、それ以上に狂ったローランドを変える為にずっと追いかけてきた男に「殺してくれ」って言われるのって本当にどういう感情なんでしょうね……彼の王がとうに狂ってしまったことはルシルから知らされていたし、知ってたんですが……しかし、ここでこんな姿を見ないといけないのあまりにも……特に大伝を読んだ後だとどうしても未来のシオンが辿るかもしれない姿としてその姿にオーバーラップさせてしまう。

もうなんか狂っていると言っても何言ってるかわかんないというか、最後まで話の通じないラスボスというか、最後までシオンにとって「超えなければいけない障害」であってほしかった。なんともやるせない……(しかもこんな醜態を晒しつつもシオンより強いの反則では??)。

今巻はもう一つ、ミルクが隊長に就任する前のルーク小隊、俗に言うところの忌破り追撃隊の面々の姿が印象的でした。ミルクと出会う前の彼らがこうだったことはこれまでの物語でも何度か言及がありましたが、どうしても未だに「とり伝」での彼らのイメージが強すぎるんですよね。

何気ない日常描写で涙を搾取しに来るのやめろォ!!(発狂)

雑誌掲載の短編はもうだいぶ前から「大伝」を読んでるの前提としか思えない、ライナとシオンとフェリスの穏やかな、もう戻らない日常の話をやってて時折ライナやらシオンやらフェリスやらがこの日常をどれだけ愛していたかを覗かせて感傷に浸らせるみたいな、読むと楽しいのに冷静に考えるとなぜか胸が苦しくて発狂しそうな展開をやってるわけなんですが、今回一番最後に収録されている「いえすたでぃ・わんす・もあ」があまりにもひどい。もうほんと、ひどい。いやめちゃくちゃ良いんだけど、ひどい。

珍しく仕事のないシオンがライナを誘って、途中でフェリスが着いてきて、3人で酒場に行く。3人で酒をのんだり団子食べたり他愛の無い会話に興じる。ライナが最後にちょっとだけシオンのことを心配して、シオンがなんでもないよと笑って、それで別れる。

……という一連の本当になんでもないかつての穏やかな日常の一幕を、最後にライナがいつもの冗談で「また2年後に」なんていったまさに2年後の、「大伝」のライナが、今まさに英雄王の率いるローランド帝国と戦っている悪魔王が、回想するという、いや、なんでそういうことするんですか!? いやなんでそういう事するんですか!!?????

あと、このへんは深読みしすぎかもしれないんですけどローランドの法律で未成年になる彼らが飲酒することをフェリスが指摘して、シオンの返事が「じゃあ法律変えるよ」なんですよね。成人するまで待つよじゃなくて法律の方を変えちゃうんですよね。意識してか無意識かはわからないけど、フェリスが成人する時までこのモラトリアムが続かないって知ってたからこそ「法律変えるよ」になったんじゃないかなぁというかと思ってしまうと……無限にしんどい…………。


俺の召喚獣、死んでる

楽山
 
深遊

俺の召喚獣は神をも殺す伝説の大魔獣──の死体!?
召喚術師養成学校に通うフェイルが喚び出した召喚獣は、神話の時代に数多の神々を殺したとされる伝説の大魔獣パンドラ──の死体だった!? 超巨大で最強、だけどまったく動かない召喚獣を相棒に学年トップを目指せ!

この世界の召喚術師は最初に呼び出した召喚獣を自らの『魂の片割れ』と呼んで重用する。裕福ではない身でなんとか入学金を集めて召喚術師の養成学校に入学したフェイルは数多もの伝説で語られる「終界の大魔獣」パンドラを召喚するが、その召喚獣はすでに死体となっていて……!?

ハンデだらけの中で試行錯誤する展開が楽しい!

死んでいるので意思の疎通も出来ないしそもそも動かない召喚獣「パンドラ」をどうバトルで活かせば良いのか、学園内で3人1組のチーム戦で行われる召喚獣バトルに召喚獣が居ないというハンデをどう克服するのか。チームメイトである悪友達とのチームワークやルール抵触スレスレの奇抜な戦略、努力を積み重ねた上にある魔法の技術を駆使して学園内のトップクラスの面々とも互角に渡り合っていく姿がまず楽しいし、パンドラをバトルでどう使えば良いのか試行錯誤を重ねていく姿が更に楽しい。他の生徒たちと比較して二重三重にハンデを持っている主人公がそのハンデを埋めるために試行錯誤を繰り返していくのがめちゃくちゃ楽しいお話でした!

そしてパンドラの持つ因縁に導かれるようにして巻き起こる、世界の存亡すらも揺るがす不気味な事件。絶望的な戦いの中で満を持していよいよ大地に立つ召喚獣・パンドラの姿にニヤリとしてしまいましたし、彼が呼び出したのがどうして「パンドラの死体」だったのか──その一端が垣間見えるクライマックスが最高に良かったです。

主人公チーム3人のわちゃわちゃ、推せる!!

アツいバトル展開も大変に楽しかったですがやっぱりちょっぴり偏屈で面倒くさい主人公・フェイルを中心に巻き起こる学園内外での人間模様がめちゃくちゃ良かった!!特に一見優等生のようでフェイルの奇抜な策略にもしっかりノってくれる親友・シリルと見た目は可愛いけどキレ者な死霊術師の少女ミフィーラ、そこにフェイルを加えた3人が時には協力しあい、ときにはわちゃわちゃとじゃれ合い、時には軽口をたたきあいながら抜群のコンビネーションを発揮していくのが楽しい。特にフェイルのやろうとすることにちょくちょくお説教するけど他人がフェイルを理不尽な理由でバカにするのは許せないシリル、めちゃくちゃフェイルのこと好きじゃないですか!?苦学生であるからこそ周囲に金銭関係の「借り」は作りたくないフェイルとその偏屈さが故にチャンスを逃そうとしているのが自分のためにもフェイルのためにも許せないシリルの激突美味しかった良い男子の友情でしたありがとうございました。ミフィールとフェイルのやりとりも良い意味で性別の垣根を感じさせない気安さで良いなあ。

そして彼らが学園トップを目指す上での最大のライバルにしてメインヒロインのサーシャ姫。圧倒的な強さを見せつけた後にじわじわと私生活でのポンコツぶり──もとい年相応の女の子らしい一面を見せてくるのがなんとも甘酸っぱいし、身分の違いや学園のライバルという関係性から近くなりすぎない距離感が凄く好み。さらに、そんな彼女が直面する最大のピンチに生命を掛けて立ち上がるフェイルの姿に胸が熱くなってしまいました。

バトルも青春もラブコメもめちゃくちゃに楽しかった…!!1巻でも綺麗にまとまっているけど、2巻が出るのを楽しみにしてます。


大伝説の勇者の伝説9 落ちこぼれの悪あがき

 

誘拐されたライナの行方は!?
正体不明の化け物の幻術によって、連れ去られたライナ。突然の出来事に動揺するフェリスとキファは、必死にライナを探しはじめる。さらに、<悪魔王>ライナ・リュートが消えたことによって、世界中の情勢が一変し…

シオンの姿に見せかけた何かの手によって誘拐されてしまったライナ。フェリスとキファはその消息を掴むためにヴォイスではなくシオンを頼って中央大陸近くまで北上していたローランド軍に向かう。一方、ライナという抑止力を失ったヴォイスとスフェルイエット民国は強力な忘却破片を携えたローランドからの刺客・フロワードの襲撃を受けており……。

キファとフェリスのヒロインコンビがいい味出してるなぁ

有事に際してキファが有能すぎてやばい。ライナの不在によって冷静さを失い判断力が低下しているフェリスを抑えつつ、複数の選択肢の中から私情抜きでどこに相談するのが一番信頼が置けるのか秤にかける。いまだ真意の見えないヴォイスに対しては幾重にも予防線を張りつつ、協力が見込めそうなら連絡を取れる手段を残しておく……と、異常な状況下においての判断力がハンパじゃない。特に実力はあるけど計画性がなく、強いからこそ不慮の事態に正しい判断ができなくなりがちなフェリスとはかなり良いコンビだなぁ。

その一方でしっかりキファに予防線を張られて逃げ出されたヴォイス達は泣きっ面に蜂のようにローランドの刺客もとい使者・フロワードからの襲撃もとい訪問を受ける。必死の頑張りで手に入れたはずの街を犠牲にしてでも「ライナの不在」という情報を握ったフロワードの存在を揉み消そうとするヴォイスきゅん、いやだからマジでそういうとこがさぁ!!ライナが悪魔王として覚醒して以後、幾度となくライナ側・ヴォイス側のどちらもお互いを「味方」だとは思っていないというくだりが何度も何度もありましたがマジで手のひらの返し方が早い。このくらいのふてぶてしさがないとこの世界では生き抜いていけないと言ったらおそらくそうなんだろうけど……。

舞台はレムルス帝国へ

レムルス帝国との戦いを続けていたシオン達は、敵軍の兵達が異様な変貌を遂げる所を目の当たりにする。レムルス帝国で消息を断ったカルネを救出するため動いていたルークもまた、異様な状態になった国民達からの襲撃を受ける。拉致されたライナを追うゾーラ&ペリアはレムルス帝国に向かい、シオンに協力を頼みに行ったキファとフェリスもまた、ローランドとレムルスが戦争を繰り広げる最前線へ。ライナの拉致を切っ掛けにして前々から不気味な動きを見せていたレムルス帝国にすべての伏線が集まっていくのが印象的でした。ところでひたすら重苦しい展開の中で仲良くど付き合いしてるゾーラとペリアがめっちゃ好きというか雑誌連載分終わる前にゾーラとペリアのどつきあいだけで1編ください(強欲)。

レムルス王が撒き散らす「洗脳」という異能を前にして、改めてミルクとルーク達忌破り追撃隊のありかたを考えてしまう展開だったなあ。ルークのような頭の回転と感情がほぼ死滅しているが故の非情さで裏の世界を生き抜いてきたルークのような人間が、その自分の武器を濁らすかもしれないミルクからの洗脳を自覚した上で「解かない」というの、そこにどれほど巨大な感情があったのか。「とり伝」時代の彼らとか思い出すと洗脳とかはおいておいて守りたい居場所になってるとか、そういうことだと……信じたいですが……洗脳を解かないという判断自体が女神によって狂わされてる可能性とかは正直あまり考えたくないですが……。「女神」の思惑がイマイチわからないので今回のルークのとった判断が良いことなのか悪いことなのか未知数すぎるんですよね(絶妙に挿絵のミルクさんが不気味すぎるのでいくらやってることがカップリングくっつけ女神だとしても支配権をミルクに返すよ発言とかも信用してはいけないような気がしてならない)。

フェリス&キファと共にレグルスに向かうシオンを待ち受けるのはレグルス王ではなくて何故か拉致されたライナで──とまためちゃくちゃ続きが気になる所で終わった……!!!本当に「大伝」になってから切り方がえげつないんですよぉ!!


歴史に残る悪女になるぞ 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!

 

綺麗事だらけの世界なんて絶対イヤ。 ヒロインの正論に真っ向勝負! ちょっとズレた令嬢の異世界悪役転生記!!
正統派ヒロインにありがちな“いい子ちゃん発言”。 それが大ッ嫌いな私が、念願かなって悪役令嬢に転生!! 誰にも文句を言わせない悪女になるためには、体を鍛えて猛勉強し、魔法の腕も磨かないとね! ──と頑張っただけなのに、悪役になろうとすればするほど周囲の好感度が上がるようで!?  いいわ、悪女としてその期待、全力で裏切ってみせます!

転生して密かに憧れていた乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったアリシア。幼少期に全前世の記憶を取り戻した彼女はいい子ちゃん発言ばかり繰り返す偽善者ヒロインを悪役らしくぶった切れる「歴史に残る悪女」になるために、まずは身体を鍛えて魔法の腕も磨かなきゃ!と努力の毎日を送るように…!?

最強の「悪役」になるために

悪役令嬢になりたかった主人公が本当に悪役令嬢に転生し、「理想の悪役令嬢」になろうと研鑽を重ねるお話。とにかくヒロインをいじめ抜くためには彼女を超える力と知識を身に付けないと!!とめちゃくちゃまっとうな方向で力を付けていくのがちょっとズレてて趣深いし、悪女という概念を突き詰めた結果めちゃくちゃスペックが高く現実主義で懐に抱きこんだ相手には慈悲深い、高潔で意識の高い「悪役」が爆誕してるの面白かった。悪女に対する認識がズレてる以外はめちゃくちゃカッコいいヒロインなんですが、これ悪かなぁ!?(悪じゃない気がする)

彼女の言ってるの良くも悪くもゲームヒロインと相対する者という方向性の「悪」な気がするので、ゲームヒロインのキャリー・リズが登場するまでは本当に独り相撲を取ってる感が凄いのですが、世間知らず温室育ちのお嬢様らしい一面を見せながらも自らの目で社会が持つ歪みや国家の現状を知り、彼女が言うところの『悪女らしい』方法で自分の身の回りの問題から国内の問題まで、自分ならばどうするのかと考えを育てていく課程がとてもよかった。ちょっとズレたこと言っては「これは悪女ポイントが高いんじゃないかしら……!!」とテンション上げていく彼女に「それは悪なのか!?」「ツッコミが足りない!!」と頭を抱えることも多かったですが!

重いけれど重くなりすぎない展開が良かった

キャリー・リズが登場してからが物語の本番で、アリシアは年若い身でありながら特例としてゲームの舞台となる学園に入学してこれまで培った「悪女」ムーブを思う存分に発揮し始める。ところが、ゲームヒロインの持つ強制力なのか巧妙な扇動なのか洗脳能力なのか学園内はリズのシンパだらけになっていて、これまで親しくしていた兄や兄の友人達(※乙女ゲームの攻略対象達)から敵意を向られたり、知らない学生達がリズを守るためといってアリシアに攻撃を加えたりするように。

学園に入学してからの展開、彼女が貧民街から才能を見出して連れてきた従者のジルやリズの影響を受けなかった限られた一部メンバー以外はロクに味方もおらず、明らかにアリシアが被害者であるような事件も巧妙に彼女の過失になるよう仕向けられたりしてかなり重苦しいお話であるんだけど、8割位の展開は「これは悪女ポイント高かったわね!」で躱されてしまうので物語が重くなりすぎないの良かった。序盤はツッコミ不在でうっとおしく感じるほどだったこの言葉でこんなに心が軽くなってしまうとは思わなかったな。

夢見がちで現実を見てなくてフワっとした耳障りの良い言葉で周囲を扇動するヒロイン・リズとは、まあアリシアと合うわけがないよなあ。人類皆善良的な概念に基づいたリズの非戦主義と人間は別に善良じゃないし出来るだけみんながWin-Winになるようにはするけど自分が良くなるためなら蹴落とすのも辞さないアリシアの現実主義の対決、割りと普通におもしろい議題だとおもうんだけどリズが割りと聞く耳持たない上に取り巻きがいちいちリズの肩持ってくるのでまともな議論にならないんですよね……。

コミカライズの方では微妙に一種の洗脳能力を使ってるっぽいことを匂わせる発言があるので故意的にそういう発言をしてる雰囲気もあるんだけど、その辺は今巻では明かされなかったので次巻に期待かな。しかしこの終わり方、本当に洗脳系の能力だったら2年間接触断ってる間に更にアリシアがアウェーになってる可能性もありそうだけど、そのへんどうなんだろう……。


声優ラジオのウラオモテ #06 夕陽とやすみは大きくなりたい?

 

問題児だらけの声優プロジェクト始動! 夕陽とやすみはリーダーできる!?
 アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』始動! アニメ・ゲームにラジオと展開盛りだくさんな企画の幕開けは、選抜ユニット同士の対抗ライブ。先輩声優も参加する中、リーダーはなんと――夕陽とやすみ!? 「なぜ、あなたがリーダーなんですかね」  やすみ率いるユニット“ミラク”に、芸歴8年目の先輩(?)小学生声優・双葉ミントは不満たらたら。 「勝ち負け、って考えは変じゃない??」  さらに年上の新人声優・飾莉とも心がすれ違って空気は最悪。夕陽率いる“アルタイル”との差も開くばかり。でも――。 「勝負しましょう、歌種やすみ」  傍にいなくても、夕陽への闘争心が力をくれる! 問題児揃いのチームをまとめ、やすみは一回り大きくなれるのか!?  新ウラオモテ声優も続々登場の、熱すぎる青春声優ストーリー・第6弾!

大型アイドル声優プロジェクト『ティアラ☆スターズ』に参加することになった夕陽とやすみ。このプロジェクトではライブ毎にユニットを組み換えてバトル形式でライブを行うということで、初回のライブではやすみは“ミラク”、夕陽は“アルタイル”というユニットに別れて対決することに。しかもコーコーセーラジオを聞いていたプロデューサーの采配で、ふたりは各ユニットのリーダーとして抜擢され……!?

年上の「後輩」と年下の「先輩」と

前巻は才能ある後輩に圧倒されてしまう二人と、そんな二人がそれでも「先輩」として彼女を支えるお話だったけど、今回は先輩後輩含めた問題児──というか扱いの難しいメンバーだらけの中でふたりが「リーダー」としてどう立ち回るか、というお話でした。今回の話、5巻の限界アニメ現場と同時に発生してたの普通にやることが多くないですか……やすみの崖っぷち声優描写が印象強かったので「お仕事増えてよかったねえ」という気持ちも結構あるんですが……。

やすみが率いるグループのメンバーになったのが先輩の柚日咲めくると、元子役で声優としても大先輩になる小学生の双葉ミントと上京してきて実家からの支援もなく生活が不安定な年上の新人声優・御花飾利。ライブに向けて自主練を組もうとしたやすみは、ミントと飾利が練習量について対立するのを上手く抑えることが出来ず、早速苦しむ羽目に。社会に出て10年もしたら年下の部下や年上の上司なんて腐るほど出てきますけど、業界ではよくあることとはいえまだ年功序列感の強い学生の立場で「年下の先輩」や「年上の後輩」って普通に付き合い方が難しいですよね……しかもそのふたりが正反対の方向で自分の立ち位置や今後について拗らせていたから余計に。

これまでの物語で様々な経験をしたやすみがかつての自分と同じような、不安定な立場の新人声優である飾利の口からかつて自分の行動と「夕暮夕陽との対決」に執着している現在の自分について非難され、夕暮夕陽裏営業疑惑の時の自分の行動について改めて向き合うという展開がとても良かった。これ事件の直後だったらこんなに冷静にかつての自分の行動を振り返ることは出来なかったと思うし、狭い視野のまま自らの行動を正当化していたかもしれないし、相談できずに抱え込んでいたかもしれないし、なんなら飾利からの強い言葉を受けて立ち直ることができなくなっていたかもしれない……と思うんですよね。厳しい言葉にショックを受けながらもそれを抱え込む事なく、あの時の行動が決して正しかったとは言えない、それでもかつての失敗を経たからこそ今の自分が居るのだと答える姿に「声優・歌種やすみ」の成長を感じて胸が熱くなりました。また、敢えて敵味方に別れて対決することで改めて夕暮夕陽という「相棒」のありがたさを感じてしまう展開が、とても良かったです。

ただ、今回は良くも悪くも「アイドルコンテンツ声優ライブ」の話なのにアイドル声優としての話に終始していて、序盤でこの手のコンテンツの「キャラクターと声優が融合するライブの特殊性」について語られたのにもかかわらず完全に元になっている作品側の設定が見えなかったのが少し残念だな……やっぱアイドルコンテンツの声優ライブって歌やダンスの良さも勿論なんですけど、どれだけ声優さんがコンテンツを理解してそこに寄せてくれるかが楽しみの一つだと思うんですよ。ただ声優の歌とダンスがうまけりゃ良いってもんじゃないんだよなあ…………次巻もこのコンテンツの話になるっぽいし、アニメも始まるのでそうするとまた少し掘り下げられるのかもしれないけど。

あいかわらずめくる先輩(改め一般女性の藤井杏奈ちゃん)が可愛い

もう本当に今回はユニット唯一の先輩枠であっためくる先輩の存在が頼もしくてたまらなかったんですが、そんな話の中でめくるがやすみに協力する見返りとして「ただの1ファンとして“歌種やすみ”に接したい」と願うエピソードがめちゃくちゃ好きでした。柚日咲めくる改め一般ファンの藤井杏奈ちゃんが憧れの歌種やすみを目の前に完全に早口オタクになってしまうの可愛いがすぎる。今回は素の彼女を知らない後輩声優が多かった関係もあり、クールでデキる先輩としての「柚日咲めくる先輩」としての印象が大きかっただけにそのギャップにニヤニヤしてしまいました。いやほんとめくる先輩可愛いよな!!!!

そして次回のライブはまさかの桜並木乙女を筆頭にした先輩コンビvs夕陽・やすみと後輩達のチーム対決。作劇としては面白いんだけど、ライブという声優自身の技量が問われるイベントでそこまでの力の差が出るユニットくんじゃうのって控えめに言ってヤバヤバでは!?アニメがある分キャラクター人気である程度その差を埋めることも可能かもしれないけど、新人チームの中でも随一の力量を持つ高橋まで相手チームに居るのマジで容赦ない。ライブバトルという設定なのに勝てそうな見込みがなさすぎる。

今回の時点でも危惧されていた、対戦形式にすることで「各ユニットの力量差がはっきり出てしまって片方が霞んでしまう」問題が現実のモノとして迫ってくることになるの必須の展開で、色々な意味で次巻がどうなるのか。楽しみだけど心配でたまらない。



真伝勇伝・革命編 堕ちた黒い勇者の伝説6

 

革命の幕開け。それは、ローランドを未来へ導く戦い
シオンは、亡くした仲間たちを思う、囚われのライナを想う。もう二度と決して、誰も哀しませない、何も失わせない。そのためだけに、彼は、ローランド帝国の権力と暴力の頂点……父が座る、血塗られた玉座を目指す!

雌伏の時を経て、シオンはミラーが主導する革命に便乗する形で行動を開始する。人外の存在に堕ちた兄王子を倒し、「味方」を増やしながらも父王の元を目指すが、そこには多くの困難が待ち受けていて……。

終わりの始まり

冒頭の、エリス姉妹とお茶──もとい「だんご会」しているシオンがふたりに一部脚色したライナの「物語」を語って聞かせるエピソードが、大伝までたどり着いた今となっては帰らぬ過去を見ている感じがすごくあって胸が熱くなってしまいました。シオンはライナの物語の殆どを知っているはずなのに、わざと幸せな子供の話、心躍る冒険譚として彼の人生を描いていくの尊いししんどい。それにしてもフェリスが事ある毎にライナを変態呼ばわりすること、イリスの「野獣くん」呼びの原点はここだったんですね。

いよいよ革命が始まって長く続いてきた「堕ち伝」も終わりがおぼろげながら見えてきたなという感じの、クライマックス前哨戦という感じのシリーズ6巻目。しかし全8巻のシリーズなので冊数的にはクライマックス突入と言ってもおかしくないくらいの状況のはずなのに、今のところ勝てそうな雰囲気全然ないのはどういうことなのか。なんとか兄王子を倒すのには成功したけど、そもそもルシルがまだ父王の方に憑いてて、ミラー達の革命もうまく行っているとはいい難くて、どっちの意味でも現状勝てそうな気配がないんだよなあ。気づいたらシオンが王になって大勝利してた無印1巻ラストまで、どこからどう繋がっていったのか気になる。あとこのシリーズでは初となるライナ視点のお話が印象的でした。ライナも別に牢屋の中で自分の直面している状況について「何もしてなかった」わけじゃないんだよな……。

もうこれが最終回で良かったんじゃないかなあ!(現実逃避)

雑誌連載分についてはもうとにかくラストの「あさしんず・ぷらいど」で仕事に向かおうとするシオンをライナとフェリスが襲撃して拉致して、温泉に連れ去ってでも休ませようとするといラストが良すぎて、もうこれが「伝勇伝」全体の最終回でよかったんじゃないかなぁ!!??みたいな気持ちになる。もう大伝のほうが絶対にこんなエンディングはありえないという状況になっている状態で、彼らが戻りたいと望んでやまない時間軸でこんな最終回みたいな話をやるの、一周回って鬼畜だと思うんですよ。でも、だからこそ、あえて「良い最終回だった」という感想を贈りたい。

あと、フェリスの家が謎の道場破りに襲撃される「ドージョー・ぶれいかー」のオチも良かったなあ。ルシルとシオンが取り逃がして弱体化した忘却破片が最後の抵抗で力を取り戻そうとして、何も知らないライナとフェリスのペースに巻き込まれてしまうお話。いつもの調子で騒いでいるライナ・フェリスのところにシオンが戻ってくるラストが印象的で、たとえ偽りの平穏だとしてもこの時、彼の「帰る場所」はたしかにここにあったんだよなあと。本編序章も含めてほんとなんか……しんみりさせられる展開だったな……。

ところであとがきでここのところずっとアニメDVD特典小説が本編でやってない本編の重要エピソードだよみたいな告知をされて心を傷めてるんですが、この辺の書籍化のご予定はないんでしょうかね……。