うららの記事一覧 | ページ 27 | 今日もだらだら、読書日記。

うらら一覧

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

 

強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!
デスクワークだから超安全、公務だから超安定! 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……! でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――?? 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

残業は嫌だとキレ散らかしながら超絶スキルでボスを討つ主人公の姿が爽快。そんな彼女が頑なに「平穏」を望む理由に胸が熱くなったし、コミカルな展開も楽しいけど終盤のシリアスで熱い展開が最高に良かったです。それにしても帯の「魔王アノス様応援コメント」が色々な意味で的確で、読み終わってから唸ってしまうな。

圧倒的なスキルを持つ主人公が残業を駆逐する社畜讃歌

安定した生活を望むギルドの受付嬢・アリナが残業を減らすため、業務終了後に正体を隠してダンジョンに潜り、一線級の冒険者たちをも圧倒する超絶スキルでボスモンスターを討つ!!!というお話。

とにかく残業したくない、定時で上がって安定した生活を送りたいという主人公の嘆きがGW進行中で残業続きだった私の心に深く深く突き刺さりました。超絶スキルを持った主人公の私TUEEモノであるにもかかわらずその無双状態が彼女本来のお仕事には一切関知せず──むしろギルドの受付嬢としての書類仕事はちょっぴりポンコツ気味ですらあって─社畜讃歌として共感できてしまうのが面白かったです。そしてそんな彼女がキレ散らかしながら圧倒的な火力を持ってボスモンスターをワンパンで倒していく姿がとにかく爽快。ところでちょうど最近ソシャゲの方に追加されたこともあってこれ読んでると脳内でめちゃくちゃ独歩くん(ヒプマイ)のキャラソンが流れる。

アリナがギルドの最強パーティをも凌駕するスキルを持つに至った理由にも笑ってしまいました。願いが叶うと言われる夜に神から授かった超絶スキル──確かに願いは叶ったけどそうじゃねえ!!感が凄い。いや、ほんと、そっちじゃなくて、仕事の効率上げてくれればよかったのにね……。

後半の熱い展開も良かった…!!

前半は残業にキレて超絶スキルで無双しつつ「副業禁止」に引っかからないよう必死に正体を隠そうとするアリナとそんな彼女につきまとう最強ギルド《白銀の剣》のリーダー・ジェイドのやりとりでテンポ良くコミカルに進みますが、中盤以降の展開は割合シリアス。突如として現れた「隠しダンジョン」をめぐるジェイド達の戦いと、アリナの過去、彼女が「ギルドの受付嬢」を目指すようになったきっかけが明かされていきます。

職場の待遇改善のために《白銀の剣》の前衛として仕方なく踏み込むことになった隠しダンジョンで、誰かの「死」に誰よりも動揺するアリナのどこにでもいる少女としての姿が印象的でした。そんな彼女が平穏を──知っている人の誰もが喪われることのない「自分の世界の平穏」を守るために必死になって槌を振るう姿が最高に良かった。ただ「楽して安定した生活を送りたい」だけじゃなくて、その裏に秘められた「自分の周囲にいる人々の誰にも死んでほしくない」という強い心に胸を打たれました。

続巻への余地を残しつつも1冊で綺麗に終わる新人賞受賞作品らしい物語で、そういう意味でも本当に楽しかった。割とギルドの偉い人たち的には公然の秘密になってしまったのでは?みたいな部分はあれど、押しの強いジェイドとそれをあしらうアリナのやりとりが最高に楽しかったので、二人の関係がどういうふうに進展していくのかも楽しみです。

それにしてもこの作品、帯の裏側に魔王アノス様(魔王学院の不適合者)の推薦コメントがあるんですけどこれが大変に作品にしっくりきていて、読み終わってから改めて唸ってしまった。『お前ほど冒険している者は他におらぬ』本当にこれに尽きるんだよな……。


悪役令嬢レベル99 その4 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

裏ボス令嬢、家出ついでに世界を滅亡の危機に追いやる……!?
邪神を倒しレベル上限を突破した私、ユミエラ。準備中のパトリックとの結婚式が大仰になってきて軽くマリッジブルーの真っ最中だ。しかも彼の兄が出席を拒んでいるという。 つい勢いで家出して、うっかり隣国にたどり着いてしまったが……何かこの国、私をナマハゲみたいに恐れているんですけど? 騒ぎになっても困るので、訳ありらしき謎の人に匿われて潜伏していたら、隣国の権力争いが絡む陰謀に巻き込まれて戦場に出かけることになり――え、標的は実は私!?

世界が色々と大変なのに理由も発端もアレすぎてシリアスになればシリアスになるほど面白くなっちゃうのずるいな。未来の義兄・ギルバートとのツッコミ不在なやりとりも大概に面白かったけど、若干微妙なキャラ立ちのままドロップアウトしたゲームヒロインのアリシアが色々な意味でキャラ立ちして帰ってきたのが大変良かった。

(レベルカウンターと)ユミエラ、ついに壊れる

3巻の騒動を経て、ついにレベル99の限界突破を果たしたユミエラ。いそいそと現在のレベルを確認してみたが、そこには予想外の数字が表示されていた。最初は大したこと無いと思っていたその事態が、世界の危機を呼び込むとはその時は誰も思っていなかったのであった…。

「レベルカウンターで3桁目以上の数字が表示されない」というところからはじまるユミエラの大暴走。確かにレベル100以上が実質ありえない設定の世界でレベルカウンターがあったとしたらそりゃ3桁目の表示とかないですよね。当たり前といえば当たり前なんだけど、それにともなうユミエラ(及び周囲)の動揺ぶりが半端じゃない。さらにこの後、このレベルカウンターの不具合のせいで大変な大事故が発生するんだけど、めちゃくちゃ世界が大変なことになっても原因がソレなのでシリアスになればなるほどなんか面白いという状況になってしまうの、笑うしか無かった。そしてこんな時でもあくまで事態を解決するのはパトリックなのが最高なんですけど、もう今回のはやっぱりどんなにパトリックがシリアスにやってくれても原因がソレな時点で面白いのでずるい……。

ユミエラってどこまでも強い自分が好きなんじゃなくて「レベル上げをすることとその課程で得たものが好き」という感じなんですよね。だからレベル99になってしまうと限界突破する道を探し始めるし、自分のレベル上げが無になるような状況・自分のレベルが低いという煽りに耐えられない。色々解決した後、久しぶりにレベル上げをして増えていくレベルカウンターの数字にご満悦な彼女を見て微笑ましくなってしまいました。いや、引き起こされた事態は全然微笑ましくないんだけど、レベルが上がっているということさえわかれば究極的に3桁以上の数字は見れなくても別に困らないというのがユミエラらしいなと。

義理の兄との舅嫁対決(当人無自覚)

パトリックとの痴話喧嘩が原因で単身での月旅行(家出)に挑むユミエラ。流石に大気圏を脱出することは叶わなかったがいわくつきの隣国・レムレスト王国に不時着し、そこで知り合ったギルバートなる人物の家で数日過ごす羽目に。最初は気難しそうだったギルバートと少しずつ打ち解けていくユミエラなのだが、レムレスト王国が再びバルシャイン王国を攻めようと水面下で動きはじめ……。

ギルバートの正体はもうしょっぱなからわざとらしいくらいに匂わされているしユミエラも家出前の状態では「この人とあったら注意しなきゃ…」とか思っているわけですが、全く気づかない(本能で何かを感じ取ってはいる)の、色々な意味でパトリックと両思いになって以来パトリック以外への興味が雑になりすぎでは!?パトリック本人も言ってましたが1巻の頃のユミエラはもう少し色々なことに注意深かった気がするんですが。3巻くらいから着実にアホの子化が進んでいるような気がする。

一方のギルバートも「黒髪で表情筋が死んでてちょっと(いやかなり)変わっていて結婚を前提にお付き合いしている男性とその結婚に良い顔をしない未来の義兄がいる」という情報まで掴んでいるのにどうしてユミエラの正体が見抜けないのか。ふたりがうちとけるたびに会話がシュールになっていくのがたまらなく面白い。似た者同士にもほどがあるというか完全に同族嫌悪なんですよねぇ…。そしてこのツッコミがいない空間にひとりで放り出されたライナスには同情しかできない。厳格な人物と思わせておいて実はただのブラコンだったギルバートさん、ユミエラと永遠にパトリックがいかに魅力的な人物か語り合ってマウント取り合っててほしい。

再登場したアリシアがとても良かった

1巻ラストで表舞台から姿を消した本来のゲームヒロイン・アリシアがここにきて再登場。自分の保身のためなら母国も裏切るし状況が悪いと見るやユミエラに取り入ろうとするわ逆にそのユミエラがピンチとなればすかさずユミエラの敵として立ちはだかるわ……という最高にクズなムーブとってくれたのがめちゃくちゃ良かった。1巻の時点だとまだちょっと「ものすごく臆病な女の子が追い詰められてやらかしてしまった」可能性が残っていたような……いや今1巻よんだら1巻の時点で普通にクズだったわ彼女……でもなんか、あの終わり方ちょっと消化不良感あったんですよね。アリシアの場合なんか色々な意味でユミエラの強烈なキャラに割りを食った被害者みたいな部分がないわけじゃないし、作風的にもこのくらい開き直ったクズのほうがしっくりくる。いやぁ良かった。

ちなみにアリシアってなろう版だと1巻で死んでるので、なろう版どういう展開になってるんだろうと思ったら普通に他のキャラに煽られてた。アリシア、いい感じにクズ女で今後ともへっぽこライバルキャラとして活躍してほしい感じがしたのですが、原作で死んでるとなると難しいのかな。

4巻も結構綺麗におわったけど、ユミエラが月の表面で一瞬見たものとか絶対次巻へのフラグだよね?という感じだし、なろうで確認したらまだまだ続くとのことだったので安心して続きを待ちたいと思います。というかここまできたらユミエラとパトリックが結婚するまではなんとしても続いてほしい。5巻も楽しみにしてます。


ロクでなし魔術講師と追想日誌5

 

正義の品格――。
惚れ薬により学院中から追い回されるルミア。猫の姿から戻れなくなったシスティーナ。虫歯治療から逃げ出すリィエルと学院はいつでも大騒動! 書き下ろしは、グレンとジャティス、それぞれの正義を争う因縁の秘話!

「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、ラブコメあり、ドタバタありの短編集第5弾。4巻と続けて読んで改めて思ったんですけど良い意味で安定しているというか、お約束な展開をしっかり面白く書いてくれるので読んでて安心感があるなぁ。あと5巻はとにかく表紙だけで白飯10杯食べれる。最高。

イヴ絶望!ツッコミが絶望的に足りてない特務分室

書き下ろしの過去話以外ではかなり珍しい特務分室がメインの短編「室長サマの憂鬱」が最高に面白かった。グレンが抜けた後の特務分室で補充のメンバーを募集する話なんだけど、美女以外はどうでもいいバーナード、天才である自分を判断基準にしてしまうアルベルト、なぜかイヴにお見合いをさせようとするクリストフ、そもそも何をしているのかよくわかっていないリィエル──というボケしか居ないメンバーにひたすらツッコんで疲弊していくイヴが最高に強く生きてほしかったっていうかなんでこいつらに手伝わせようと思った??? 良くも悪くも「凡人」であり教師としての適性も持っているグレンがいたら輝いていただろう状況で肝心のグレンがいないので、これはイヴも自棄になってグレン取り返しに行くわ……って感じでした。ツッコミが致命的に足りてない。

モテ薬を飲んだルミアが性別不問で全教師全生徒から取り合われる「勃発、愛の天使戦争」やリィエルが虫歯の治療を嫌がって校内で大暴れする「リィエル捕獲大作戦」、タイトル通りの内容の「猫になった白猫」も面白かった。なんというかどれもこういう短編にありがちというか良くも悪くも「お約束」なお話なんですけど、そういう題材を凄く面白く書いてくるシリーズですよね、と改めて。惚れ薬の話でモテるのが主人公であるグレンではなくルミアな所とか絶妙で好き。ていうかグレンが自ら率先して惚れ薬に手を出そうとするところ本当にそういうとこだぞ。

ひと(狂人)がこい(執着)におちるところをみてしまった

書き下ろしの過去編「THE JUSTICE」は特務分室時代のグレンがジャティスと初めての共同任務に挑むお話。絶対に相容れない者同士、いつか道を違える事を互いに予感しながらも今は決定的な破局を迎えていないし同じ組織の同僚なので共にいるという関係性は大変に良いものだ。表紙のふたりで白飯10杯行ける(2回め)。

世界を数式で捉え、先の展開を読むことが出来る、自らの独自の“正義”に殉じるジャティスが『正義の魔法使い』を目指し甘っちょろい正義を捨てられないグレンを最初は見下し、少しだけ興味を持ち、戯れに試し、そして目の前で自分の予想の上を行かれて更に興味を惹かれる──という展開、本当に人が恋に落ちるところを見てしまったという感想しか出てこない。あとがきでも言われてたけど本当にこのジャティスに執着されてるグレンは強く生きてほしい。しかし、自分が正義の魔法使いになれないと知りながら、それでも擦り切れるまでその思想を貫こうとする当時のグレンの姿には熱い気持ちと同時にジャティスと別の方向の狂気を感じるのでそれはジャティスも惚れてしまうわね……。

ジャティスの狂気を改めて感じることが出来る短編であると同時に、特務分室時代のグレンの危うさと一端の狂気を感じることが出来る良い短編でした。いやしかし本当に表紙が良いな……表紙が良い……。


やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中

 

人生2周目は、10歳の竜妃サマ!? しかも敵だった陛下に求婚してました
婚約者の王太子から処刑を言い渡された令嬢・ジル。だけど死ぬ間際に、6年前婚約が決まったパーティーに時間が戻る。 破滅ルートを避けるべく、とっさに後ろにいた人に求婚すると最大の敵だった皇帝・ハディス!? 彼が闇落ちする未来を知っている……慌てて撤回するも、喜んだハディスはジルを城へ連れ帰り、ごはんを作る始末。胃袋をつかまれたジルは決めた。 「あなたを必ず更生――いえ、しあわせにします」 いざ、人生やり直し! 累計550万PV突破! WEBの超・話題作!  強すぎた少女×孤独だった陛下の、年の差ラブ・ファンタジー!

「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」の永瀬さらささんの新作(といっても既に3巻まで発行されてますが……!)シリアスでかっこいいバトル要素とは裏腹な二人の恋模様が可愛かった!互いの事情やら意地やらで「相手を先に惚れさせる!!」といってお互いがお互いの掘った穴にずぶずぶハマっていく姿にニヤニヤする。

敵国皇帝×時間を逆行した元「軍神令嬢」のワケアリ恋愛攻防戦

婚約者であった王太子の黒い秘密を知ってしまい口封じに殺されたはずの令嬢・ジル。気がつくとそこは6年前の、王太子に婚約を申し込まれる直前のパーティ会場だった!?時間を逆行した彼女は王太子と婚約する未来を回避するため、未来の敵国の皇帝・ハディスと婚約を結ぶことに……。。

片や少女らしい事もろくにできずに軍人としての腕を磨いた元「軍神令嬢」、片や竜神の生まれ変わりとして国内でも特殊な立ち位置にあった「竜帝」。恋愛スキルもあったもんじゃないワケアリな二人がそれぞれの目的のために「自分は相手に惚れたくないが相手を自分に惚れさせたい」と思ってしまい、拙すぎる恋愛攻防戦が繰り広げられるのがめちゃくちゃおもしろかった!胃袋を掴まれたり、イケメンすぎるジルのかっこいい行動に惚れ直したり……と、それぞれどんどん墓穴を掘っていくのが可愛くて仕方がない。胃袋を握られる展開は良いものですね。

ジルが自分の見た未来を話せないのと同じように、ハディス側にも「竜神ラーヴェ」と「女神クレイトス」の伝説を巡って色々と話せない事情があるらしい。しかもその事情は、ジルの元婚約者であった王太子ジェラルドやその妹スフィアにも関係のある話のようで……。ジルが未来の展開を知っているとはいえ、なかなか安易に先を見通せなさそうな展開が良かったです。お互いに話せない事情がありながら(そして若干ハディス側の事情に不穏なものを感じつつも)少しずつ距離を縮めていくジルとハディスの姿にニヤニヤしました。

とにかくヒロインがかっこよかった!!

恋愛はポンコツだけど、元々は軍人として戦場を駆け抜けた「軍神令嬢」であるジルがとにかくめちゃくちゃかっこいいんですよね。「悪ラス」のアイリーンも最高にかっこいいヒロインでしたがジルはまた別の方向のかっこよさがある。戦闘力だけではなく作戦立案能力もあり、軍人としても指揮官としてもパーフェクトな彼女の姿がかっこよすぎる(でも恋愛はポンコツだ)し、異郷の地で偶然巡り合った彼女の未来の元部下(というのも変な表現ですが…)達を指揮する姿に惚れてしまう。

ハディスの身内に潜んでいる内通者の存在、そして婚約を回避しただけでは終わらなさそうな王太子ジェラルドとの因縁。色々な意味で問題は山積していますが今後どうやってそれらを乗り越えていくのか、とても楽しみです。


ロクでなし魔術講師と追想日誌4

 

グレンに隠し子発覚!?
ホームレス学院生・リィエルの冒険、グレンの隠し子騒動、学院法医師セシリアの登場など、学院の平穏で波乱な日常を描く短編集! 書き下ろしは伝説となって残る復讐鬼・アルベルト。その時代を超えた物語――。

「ロクでなし魔術講師と禁忌経典」シリーズの日常主体、授業シーンあり、ラブコメあり、ドタバタありの短編集第4弾。しばらく読めてなかったのと次巻がイヴの過去編前提の話っぽいので本編の続きを読む前に短編集ちゃんと読もう…と思ったら…数字が余裕で倍…どころかもうすぐ3倍になることにびっくりしましたよね…(※現在最新8巻)

セリカちゃんマジ面倒くさい女

短編4つのうち2つが概ね仕事が忙しくてかまってくれないグレンにかまってほしいセリカちゃんなの、最近の本編の危なげな影を背負った謎の女からのギャップがありすぎる。いやセリカちゃんが親ばかなのは知ってましたがこれ加速してませんかというか、保護者というよりも扱いが難しい面倒くさい彼女に見えてきた。

そんなわけでグレンにかまってほしいセリカが幼女になってグレンに密着する『嵐の幼天使』と仕事が忙しいグレンに構ってもらおうとしたセリカがグレン達のクラスが実習で訪れる迷宮にちょっとした細工をする『狂王の試練』のはしゃぎっぷりがすごかった。最初はセリカ案件とわからず、グレンの行動に怒ったりヤキモチを焼いたりしていたシスティーナすら、犯人がセリカだとわかると「なんで先生構ってあげなかったんですか」みたいなことを真顔でいいだすのに笑ってしまう。

短編はあとはリィエルの日常生活に迫る『とある少女の素行調査』と病弱保険医・セシリアの体調を心配した母親がアルザーノにやってくる『病弱天使セシリアさん』だけどどちらも良かった。リィエルは確かにああいう下町とかちょっと治安の悪い裏路地とかで人気者になるタイプだよねわかる……。セシリアさんの話は冷静に考えると全然笑い事じゃないんだけど、体調の悪いセシリアを気遣って必死に授業で怪我人を出さないように奔走するグレンの姿に笑ってしまうし、予想通りはりきって仕事して吐血するセシリアさんに笑ってしまった(いや笑えない)。いい話っぽく終わったけどそれでいいのか感はありますね。

今明かされる、「偽りの英雄」の伝説

最後の書き下ろし『偽りの英雄』はなんか色々な意味でネタバレなしで感想書こうとすると難しいですね…とある人物の過去とかつて実在した英雄「アルベルト=フレイザー」にまつわる物語でした。だいたいこの人物の名前が出たあたりで誰の過去かは明白という感じなのですが、序盤は一見誰の話なのかわからないようになっていて、物語を読みすすめる毎に徐々に誰の過去かおぼろげに浮き上がってくる物語がとても良かったです。

幼いアベル少年が嫌っていたかつての英雄の名前を背負うに至るまで何が起こったのか、もうなんか序盤からどういう展開になるのかうすうす読めてくる話ではあるんだけど、それだからこそ何も知らなかった頃の彼がひとときの幸せを享受しながら暮らしている描写がとてもしんどい。

でもそんな過酷な展開だからこそ、最後に描かれたグレンとのやりとりには救いを感じるんだよなあ。かつての思想を捨て、「9を救うために1を切る」覚悟をしたアルベルトと、自分が捨てたかつての理想を捨てられずに別の道を歩んだグレン。独りで茨の道を歩むアルベルトの業を「一緒に背負ってやる」といってくれるグレンの姿に胸が熱くなりました。いやしかし最後の1ページ不穏すぎない!?その書き方、死別とかガチ目に殺し合いする未来しか想像できないんですけど!?

ところで直前がセリカちゃん大暴れの『狂王の試練』だったので温度差がひどい。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4

 

全学年、全生徒、総力戦のサバイバル試験、超絶怒濤の壮絶決着!
2週間のサバイバル試験も後半戦。1年生、2年生、3年生、月城理事長代理、様々な人の意志が常夏の無人島で交錯する。 「私は退学を恐れません。綾小路先輩を守るためであれば、何でもするつもりです」 「だから、あたしの許可なく勝手に潰されてないで下さいね」 「もしもの時はそうだな……力づくで乗り切ることにしよう」 「高円寺を封じ込める指揮は俺が取る」 「やれやれ、騒がしいねぇ。それじゃあ、少しだけペースを上げさせてもらおうかな」 「わ、私、どうしても綾小路くんに伝えなきゃいけないことがあって!」 全学年、全生徒、総力戦の無人島サバイバル試験、ついに決着!

波乱だらけの全学年対抗無人島サバイバル、完結編。めちゃくちゃ面白かった!ホワイトルーム生の正体も発覚して月城学園長代理との対決は一段落…という流れなんだけど、ただ1年生組に関してはよくも悪くもますます謎が深まったと言うか、最高にアツい展開ではあるんだけども若干スッキリしない終わり方だったな。2年生編になってから敵が強くなってきてて、綾小路ひとりの力だけでは無双しづらくなってきてるのを改めて感じた1冊だった。

いつもと違う人間関係が印象的だった無人島サバイバル完結編

七瀬との対決・和解、そしてホワイトルーム生との遭遇を経て再び単独行動に戻ることを決意した綾小路。ところが、雨による特別試験の一時中断やそれによる補填など綾小路にとって予想外の事態が次々と発生していく。更に、綾小路の首にかかる賞金を狙った一年生の混成軍が動き始めて……。

ホワイトルーム生の正体が速攻でバラされて「アレだけ引っ張ってたのはなんだったの!?」状態だったんですけど、一年生周りの話はホワイトルーム生の正体が明かされてもなお謎のままというか、正体が明らかになったことでますます謎が深まったと言っても良いまである。なにより、以前出てきた“ホワイトルーム生の独白”の主が、どう考えても今回正体が明かされた人とは別人な気がするんだよなあ。今回のやりとりを見るとちょっと現在明かされてる情報をそのまま素直に受け取ってはいけないような気もしてきて結局の所一年生に関する真相はほとんど闇の中に。果たして今回明かされた人とは別のホワイトルーム生が別口でいるのか、それとも今回正体を出してきた生徒自体がフェイクなのか、もしくは月城以外の別口なのかそれとも(でも月城が把握してないホワイトルームからの刺客が出てきちゃうともう同学年ですら信用できなくなるな……)。綾小路先輩と和解して番犬みたいなムーブする七瀬ちゃんかわいい(現実逃避)。

一年生の誰も彼もが胡散臭い状況の中、これまでの試験で敵対しあってきた2学年の生徒たちと手を取り合い完全に協力することはできないけどお互いを信頼して戦う姿が新鮮で楽しかった。特に「いつか綾小路と本気の勝負をしたい」板柳&「あいつを倒すのは俺だ」龍園との共闘には本当にニヤニヤしちゃう。こういった運動関係の種目がハンデとなる板柳が動けないのを逆手に取って司令塔として活躍する姿はめちゃくちゃ心強かったし、龍園がかつて綾小路と対峙した際に語った自らの“勝負への価値観”がふんだんに発揮される宝泉との戦いなんかもう本当にめちゃくちゃおもしろかったですね。龍園のやってることめちゃくちゃ卑怯なのに、バトルがこんなにアツくなるのはズルいよな。あと最後の最後で詰め込まれた伊吹&堀北の仲悪コンビがめちゃくちゃ好きなんですが、この二人の薄い本はいつ出ますか???(気が早い)

今回は綾小路が結果的に一本取った形になったけど南雲生徒会長との因縁はむしろここから始まった感じがあるし、ヒロインレース的な意味で見せ場をかっさらっていく一之瀬など、今後につながるであろう新しい人間関係の構築が面白い巻でもありました。というか本格的な一之瀬参戦でヒロインレースどうなる?綾小路は鬼龍先輩やひよりとの絆も深めてる感でマジ軽井沢さん無人島サバイバルしてる場合じゃない。

最高に面白かったけど謎はますます深まってしまった…!!

長く続いた無人島サバイバル編の決着巻ということで、熱い展開で最高に面白かった!!……んですけど、その一方でむしろ一年生周りの謎はますます深まってしまったし、なかなか全貌が見えてこないのが若干もどかしい。3冊(一年生との対決という意味では4冊)も引っ張ったにしては、すっきりしない終わり方だったなぁ。また、敵がホワイトルーム生になったことで1年生編のように綾小路が水面下で無双してサクッと裏から勝つみたいな展開がなくなってしまったのは若干寂しさを感じる……学園の生徒側の支配者として描かれる南雲会長を眼力で押し返す場面には挿絵含めてたいへんに興奮したけど。

ただ、1年生編と比べて綾小路一人で対処しきれない事態が増えてくる=周囲の同級生たちを巻き込まざるをえなくなっている現在の展開は1年生編にはなかった要素で本当に楽しいし、並み居る強敵相手に今後どういうふうに綾小路が「成長」していくのか(というかある意味でホワイトルーム製の「完成品」である彼が果たして成長することができるのか?)はすごく楽しみ。あと色んな意味でどうなる一之瀬。最後はスッキリと気持ちよく勝ってくれるといいなあ。


貴サークルは“救世主”に配置されました

 

100部売れなきゃ世界が滅ぶ!? 同人誌に懸ける青春ファンタジー
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」 自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。 ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが…… 「えっ、二年間で六部だけ……?」 「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」 「一日三枚イラストを描いて下さい」 「生きた線が引けていません」 即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!? 「自信を持って下さい。きっと売れます」 同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

斜陽ジャンルマイナーカプ頒布1桁の弱小サークルがめちゃくちゃな努力したとしたって数ヶ月で100部は無理があるだろという一見トンデモな展開から、本人の努力だけでなく原作側の展開やサークルの配置などが加わり「運が良ければ行ける」と思わせるリアリティ具合がすごかった。「同人誌100冊出さないと世界が滅ぶ」が納得できる設定に収まるのも好感度高い。

「弱小同人サークル」描写のリアリティが凄い

落ち目のアニメジャンルのマイナーカップリングをやっている同人漫画描きの主人公。本は四捨五入でも一桁売れたら良い方、の彼がなぜかタイムリーパーを名乗る女子高生から「救世主」として祭り上げられ、同人誌で100部完売を目指すハメに。100部完売しなければ魔王が復活して世界が滅ぶ!?というお話。

この手のサークル描写って割と同人経験者でもリアリティがない作品が多いように感じるんですけど(同人経験あり商業誌作家の描く「弱小サークル」の描写、全体的に部数が2倍くらい多い、下手すると桁が1つ多い…)これはほんとうに弱小サークルあるある感がすごかったです。

絵が下手なわけではないがランキングに乗るほど上手くもない、ツイッターにイラスト投下しても行ってもRT10程度、漫画を描けば背景がなく全体的に白い、更にサークル名とHNが絶妙に古い、SNS使いこなせてないとかなんか…なんかわかる……(微妙に他人事には思えない!!!)

弱小同人サークル、100部完売を目指す

そんな主人公がヒロイン・ヒメの強烈なダメ出しと入念なスケジュール管理とそして本人の努力によって、次のイベントまでという短い期間でありながらも成長していく。真っ先にSNSでの活動での露出増をアドバイスしてくるヒメ(※オタク歴数ヶ月)のリサーチが完璧すぎる。イラストを投下させることで名前を売り、同時に枚数を描かせることで画力も成長させていくという完璧な計画なんですよね。SNSでのイラスト投稿が活発な絵描きは成長も早いし伸び代もでかいわかる。まあ普通はわかってるけど実践できないから困るんですが!!!(ヒメにスケジュール管理してもらいてぇ〜!!!)

もともと頒布数1桁の主人公が現状のジャンル・カップリングのままで100部完売するのはどう考えても無理があるんですが、配置が良かったり公式側に動きがあったりみたいな微妙に運の後押しを受ける具合がまた本当に絶妙だった。たしかにそれだけの努力にラッキーが重なれば100部完売行けなくもないかもしれない。いやぁ夢のある話だなあ!!!(吐血)

世界の命運が文字とおり自分の両腕にかかったコミケ本番……なんて状況には関わりなく同人誌が売れていくことに素直に感動できる主人公の姿にもまた胸が熱くなりました。自分に自信がなく、同人をしていても内にこもりがちだった彼がヒメのスパルタ教育の成果もあって少しずつ自らの足で前に踏み出していく姿がとてもよかったです。

ファンタジーとしても面白かった

「同人誌100部売らないと世界が滅ぶ!」というあらすじだけ聞くとかなりトンデモなお話に感じるのですが、最終的にはすごく筋が通った展開で「主人公の同人誌が100部売れないといけない理由」にちゃんとオチがついて、同人サークル物としてもファンタジーとしても楽しかったです。読後感が爽快すぎるし、それでいて次巻への種まきもしっかりなされているところがまた隙がなかった。個人的には修羅場のエピソードはもう少しじっくり読みたかったけど、ファンタジー部分との兼ね合いを考えるとこんな感じになるのか。公式燃料投下でコピー本!!!の流れ、わかる。

どうしても同人サークル描写の方に言及が偏りがちなんですが、ファンタジーの方の設定がまたすごく良かったんですよね!!ヒロインがタイムリープしてきていることで少しずつ見えてくる未来の人間関係が面白いし、それでいて解決の糸口が同人方向に寄っているのでいちいち笑ってしまう。魔王が復活する理由があんまりすぎるんですけど理解できてしまうので困るし私ならまず真っ先に元凶を消し炭にするので仕方ないと思う。むしろ元凶を消し炭にするのだけはやっても良かったのでは??ところで、カップリングの解釈違いでガチ喧嘩する主人公ヒロイン可愛いすぎない???

1巻でも綺麗にまとまってるけど続きが出るならまた読みたいなあ。


「好きラノ 2020年下期」投票します。

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2020年下期の人気ライトノベルはこれだ!!
今回も参加させていただきます〜!!
下半期は少し読んだ本の数も控えめだったので投票も少なめで……
紹介文の一部は「2020年読んで面白かったラノベ10選」の記事からそのままコピペしている部分もあるんですがちょっと時期が近かったんで見逃してほしい。

石川 博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
【20下ラノベ投票/9784047363847】
巨大なVR空間でネトゲー廃人な男女ふたりが繰り広げる、血と殺戮の配信ショー。凄くリアルなVR空間を舞台に繰り広げられるインモラルな物語が、現実ではないがゆえに軽薄に進んでいくのが面白かった。どこか滑稽で物悲しくてロマンチックなラストが大好き。
水瀬 葉月「ダークエルフの森となれ -現代転生戦争-」→感想
【20下ラノベ投票/9784049132748】
薄暗い雰囲気を漂わせつつ、好きな人と思うままに生きるため前向きに頑張る近未来学園異能。「ぼくと魔女式アポカリプス」が好きだった15年前のラノベオタクは是非読もう!!!
夕鷺 かのう「竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事」→感想
【20下ラノベ投票/9784047364349】
初恋をこじらせた聖女と初恋(?)をこじらせた竜神の織りなすドタバタラブコメ具合が楽しい!あと夕鷺作品の戦うヒロインはやっぱりかっこいんです!!って声を大にして言いたい。
翅田 大介「悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。」→感想
【20下ラノベ投票/9784049133813】
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した極道の女が乙女ゲーム世界を斬る。気っ風が良くて裏表がない、あくまでも自分のものさしでしか動かないキリハのキャラクターがどこまでも魅力的で、読んでいて楽しかったです。
佐伯 庸介「グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む」→感想
【20下ラノベ投票/9784049130751】
学園の図書館地下に広がる「迷宮」を舞台に、一度は人生に挫折した少年が死なない迷宮を舞台に他人を救い・導くために迷宮探索に挑む。他人を助ける、と謳いながらその実全く自分の欲望を満たすためという主人公の行動原理・精神性にすごく惹き込まれました。
二月 公「声優ラジオのウラオモテ #03 夕陽とやすみは突き抜けたい?」→感想
【20下ラノベ投票/9784049134919】
アイドル声優の「アイドル」としての部分がメインだった2巻までとはうってかわって、やすみが声優としての壁にぶつかり成長する、王道の成長物語が楽しかった〜!!今季一番おもしろかった一冊は間違いなくこれ。


ダークエルフの森となれ -現代転生戦争-

 

褐色ギャル風ダークエルフとの同棲。そして種の生存をかけた戦争が始まる!
 輝獣と呼ばれる自然脅威から日本を守る騎士候補生として学園生活を過ごす朝倉練介は、誰よりも駆動鉄騎の扱いに長け、優等生の仮面を被り、だがしかし温度のない日常に倦んでいた。  そんなある日、木の上から突如彼に飛びかかってきたのは、一人の黒ギャル女子高生……もとい異世界から転生してきたというダークエルフ、シーナだった。  挑発的な態度、嗜虐にみちた言葉、それでいて明るい、日だまりのような笑顔。そんなシーナに眷属として見初められた練介は、彼女とマンションで同棲を始め、やがて異世界から転生してきた魔術種たちの生き残りをかけたバトルロイヤルに巻き込まれていく。  これは世界から零れ落ちた二人の、大それた神話で――黙示録だ。

思った以上に直球で『ぼくと魔女式アポカリプス』だ〜!!あの薄暗い世界観でありながら、世界がどうなっても好きな女の子とともに生きていくみたいな薄明るさが感じられることに時代の流れを感じる。ロボ要素が1巻時点だとちょっと浮いてる感じだったけど今後どう絡むんだろうな。

現在に向けてアップデートされた懐かしの「学園異能バトル」

「魔術種」達が自らの種の復活を掛けてお互いの「根源魔力」を奪い合う、近未来日本で行われるバトルロイヤル。彼らの戦いに望んで、望まないままに巻き込まれていく人間の「眷属」達。普段は変わらぬ学園生活を送りながら、水面下で行われる異能者達の宴。これが私の読みたかった学園異能だ!!!という感じが凄い。最高。

設定はかつての『ぼくと魔女式アポカリプス』を思い起こさせるものでありながら、あの薄暗い世界観の中にどこか薄明るさがみえるというか、薄暗い中で輝く前向きで熱い展開が印象的でした。あとがきでも触れられている通り、15年前の作品と同じ題材を用いながらも時の流れにあわせて物語の方がアップデートされてるんだなあと(っていうか魔女カリ2006年って…15年前ってマジかよ……)。

魔術種達の生存競争と、それに巻き込まれた少年少女たちのサバイバル。

明るい優等生の仮面をかぶりながら、実は猟奇・スプラッター系の創作や悪役、ダークファンタジーが好き、特にダークエルフが大好きという主人公の練介。自分を圧し殺して生きる毎日に疲れ果てて街を彷徨っていたある日、異世界から転生してきた「本物のダークエルフ」シーナに出会う。彼女の「眷属」になった練介は、魔術種達の生存競争に巻き込まれていく。

自分を圧し殺す日常から異形達が争う非日常へ、練介を連れ出してくれたシーナ。ダークエルフだということで排斥され、孤独に生きてきたシーナを救った、練介のまっすぐな好意。お互いの存在に救われたふたりがお互いの常識をすり合わせしつつ送る非日常な「日常」がとにかく楽しい!ラッキースケベな展開も交えつつも、お互い恋愛ではない別の所から発生した好意だからこその初々しさがあるというか。同棲生活を送るふたりが改めてお互いの「個」に惹かれ合っていく姿が良かった。

そんな中でシーナと同じく異世界から転生してきたスライム種のアグヤヌバとの生存競争が進行していく。アグヤヌバの眷属となった人間と対峙し、人間ではなく「ダークエルフの眷属」として生きる覚悟を今一度突きつけられた練介が「シーナとさえ共に生きることが出来れば世界がどうなろうと構わない」、というどこか破滅的な願望を持ちながら、その一方で「シーナと楽しく生きるために、今までどうでも良いと思っていたこの生活を護りたい」という答えを得ていくのが──日常から外れたところに生きる目的を見出したことで、いつ捨てても構わなかった「退屈な日常」に価値が生まれていくのに、胸が熱くなりました。

メカ要素が今後どう絡んでいくのかが気になる

今回は割とがっつり魔術バトルが中心と言う感じだったんですが、世界観的には人形サイズの装甲メカ「RV式駆動鉄騎」が活躍する近未来でもあるんですよね。今回はあまり目立たない活躍ではああったのですが、エネルギー流体(EF)が魔術側の戦争にとっても重要な役割を果たしそうな気配だったり、どうしてこの世界で魔術種達の戦争が行われているのかなど、色々と謎は多そう。

2巻はメカの活躍が多いということなのでそういう意味でも今後どういう活躍をしていくのか、楽しみです!



それはそれとして「魔女カリ」は良いですよ……短編を含めても4冊なので読みやすいのもいいね……。
救いがない感じの15年前の現代学園異能らしい「ダークエルフ」が読みたかったらよもうな……
水瀬 葉月(著), 藤原 々々(イラスト) 「ぼくと魔女式アポカリプス (電撃文庫)」
水瀬 葉月(著), 藤原 々々(イラスト) (著)
KADOKAWA
発行:2013-09-26T00:00:00.000Z


竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事

 

押しかけ聖女(嫁)と不器用青年(竜)の勘違い異類婚姻譚(ラブコメ)!
「竜神さまは生贄を受け取るつもりがない?」 聖女見習いのルーチェは、目の前の青年――オルフェンにそう告げられ大混乱。 人の姿を持つ彼は、間違いなくこの地を守る竜神さまなのに。 「俺は絶対に喰わん」「召しあがっていただけるまで、絶対おそばを離れません!!」 かくして食べてほしい生贄の聖女VS意地でも食べたくない竜神の謎の同棲生活が始まり!?

初恋を拗らせた竜神と生贄の聖女!!!恋敵はかつての自分!!!最初から実質両想いなのに拗らせた初恋の体験が邪魔をする展開が最高にもどかしく可愛かった。悪いやつではないけど外道でクズな悪友(竜)と義妹想いの姉巫女の今後も見守りたい。

初恋をこじらせた竜神と聖女の異類婚姻系ドタバタラブコメ

かつて黒い鱗の竜神に生命を救われたという体験から今度こそ竜神様に自分を食べてもらいたい!!と初恋をあらぬ方向にこじらせた聖女見習いの少女・ルーチェと、実はかつて彼女を救った竜神だが6年ぶりに再開したルーチェが「黒い鱗の竜神さま」のことばかりを口にするのですっかりこちらも初恋をこじらせてしまった竜神・オルフェンが繰り広げるすれ違いラブコメ。

とにかく生贄の押し売りをするルーチェとなんとしても生贄を拒否したいオルフェンの押し問答が楽しい!!嫁入り道具みたいなノリで調味料を装備してたり、少しでも美味しく食べてもらうために自分を磨こうと努力しはじめたり…と、斜め上の努力を重ねるルーチェの姿に何度も笑ってしまった。

初恋体験を乗り越えて両想いになっていく二人が良い

「自分を救ってくれた竜神に生命をお返ししたい」という恋心やら使命感やら義務感やらでがんじがらめになってしまっているルーチェと、そんな彼女を見て「かつての“黒い鱗の竜神”ではない、今の自分自身を見てほしい」と願うオルフェン。お互いが初恋(?)体験を拗らせているせいでどこまでもすれ違い続けるふたりのもどかしい恋模様が最高に楽しかった。ルーチェの拗らせぶりも相当ですが、終盤で明かされるオルフェンの行動もだいぶ初恋(?)をこじらせちゃってますよね。素直になれないふたり!!恋敵はかつての自分!!!という展開に、ニヤニヤが止まらない。

なかなか自分の気持ちを素直に伝えられない(というかルーチェは自覚も出来ていない)ふたりがなしくずしに同棲生活を送ることによって少しずつお互いの気持に正直になっていくところがまた良かった。竜神に生命を救われたことへのひとかどの罪悪感というか、聖女としての使命感に囚われていたルーチェがふとした瞬間にオルフェンへの恋心を自覚してしまうところに思わずほっこりしてしまった。

個人的には脇役たちの恋路も見守りたい

ルーチェが自分の生贄になったと知った義姉・イリスはこの地の竜の加護を受けていると語る青年・トゥレラと共に神殿に向かう。ところがそれは、トゥレラが仕組んだ罠だった。最大の窮地に陥ったオルフェンを救うため、ルーチェはその身を掛けて闘おうとする──。

炎に包まれる神殿、力を失いかけていたオルフェンを前にして自分の恋心をはっきりと自覚し、トゥレラに立ち向かうルーチェがかっこよくて最高。いやほんと夕鷺作品の闘うヒロインは最高!!なんですよ!!!あわせてクライマックスの挿絵がめちゃくちゃいい仕事してるので最高の高の高。

トゥレラの正体はこれまでの物語を読めばさっくり分かる感じだし予想以上に彼がオルフェンを狙う理由がクズでヒドいんですが(トゥレラが守護を投げ出した理由の一端がオルフェンにあったとしても、お前オルフェンに自分の仕事押し付けておいてそれはないだろ…!!という)、彼が惚れ込んだルーチェの義姉・イリスがしっかり彼の手綱を握っているのである意味完全に「お似合いのカップル」なんですよね。ルーチェとは別の方向に強い女であるイリスの活躍もうちょっと見たいし続編があるならこの二人の関係をもっと掘り下げていってほしい気持ちが凄い。

性格がクズい人こそ若干名いるものの、本当に性根が悪い人はいない世界観でそういうところも安心して読めました。楽しかった!!