あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
2020年から職場がリモートワークになり、本を読む時間が上手く作れない!!と嘆いていたのも記憶に新しいですがリモートワークも2年目に突入し、それなりに自分の時間の作り方もわかってきたかな…と思わなくもない今日このごろ。今年もリモート生活が続くようなのでもう少しペースを作って本を読んでいきたいです。これは別で書くかもしれませんが今年の後半は諸事情から旧作読むのがメインになってしまって新作が追いかけられてないのがやや悩ましい所(面白い旧作って時間持っていかれるよね!!)。今年はマジで2巻や3巻が読めてない〜という作品が多いんですが、好きラノの投票までには少し崩していきたいですね!締め切りはいつだ。
今年もこちらの記事で紹介した作品をそのまま「マニアック・ライトノベル・オブ・ザ・イヤー2021」に投稿しています。
「うらら」一覧
とりあえず伝説の勇者の伝説9 全力のドロップアウト
ローランド帝国で徹夜でシオンの仕事を手伝わされたり、フェリスに脅されながらシオンの仕事を手伝わされたり……と寝る暇もなく忙しい毎日を送るライナ。そんなある日、王城からの帰り道にかつての師・ジュルメに遭遇するが、彼女はおかしなことを言い始めて……。
ふかい ふかい ローランド の やみ
本編10巻でスキップされた平和な1年を描くローランド編……とおもいきや、本編11巻で描かれたローランドの闇的な部分を補完する「えくすとら・すてーじ」を冠する3編が全体の半分以上を占めており、実質10.5巻みたいな内容。ていうかこれ普通に本編にナンバリングしたほうが良いやつでは???1がジュルメとの再会話、2は任務を外されたミルクが自分の意志でローランドの闇に踏み込むお話、3は『隠成師』時代の同僚・ゾーラと再会する話。さらに書き下ろしの「天才の証明」がえくすとら3の話をゾーラ側から補完する話。私ひそかにローランド編でゾーラとライナが悪友する短編をめちゃくちゃ心待ちにしてたんですけど!まさかのシリアス要員とか聞いてない!!殺伐とした物語の中ピアが最高に可愛かったのですがこれは大伝で登場するフラグだと思っていいんですかね……(あまりにも可愛い……)ライナ、本編11巻でシオンが裏でやってきた事を聞かされたのは完全な不意打ち、青天の霹靂だと思ってたんですけど、その前に何度もその件について信頼できる相手からの警告を受けてて、その上であの展開なんですか……なんでそのまま読んでも普通にしんどい話にさらにしんどい話乗せてきちゃったのか……しんどい……何も知らないまま突然知らされるより、何度も警告されてて、それを否定してたのにライナの方の認識が間違ってた流れだったとかもっとしんどいじゃん……更に書き下ろしを読むと本来のシオンの意思ですらなさそうなのが逆にしんどい……。
最初の「かーす・おぶ・ふぃあ」と「ふろーらる・わんぴーす」が普通に明るい短編だったので本当にえくすとらの不意打ちがひどかったと言うかふろーらる・わんぴーすがまさかの女装ライナにメイドフェリスに執事シオンの3本立てで展開も挿絵も最高でした!!!メイドフェリスが可愛い!!女装ライナは以前に出たときもそうでしたが一貫して背中側しか描かれないのが逆に無理やり顔面を見たすぎて興奮しますね。娼館への潜入捜査ときいてもっとえっちなピンチが襲い来る感じかと内心ワクワクしていたのですがさすがにそんなものはなかったです。しかしここからえくすとらに突き落とすの完全に温度差で風邪引くやつだからやめてほしい。
しんみりと良い話だった(※当社比)フェリス過去編
書き下ろしの後ろに掲載されている幻の短編(だったらしい)「しょっぱいだんご」はフェリスの少女時代を描くお話。なぜ彼女がここまでだんごに固執するようになったのか。例によってオチがエリス家さすが闇が深いという感じの話ではあるんですが、人間性を擦り減らすような過酷な修行の日々の中でも忘れられなかったフェリスのだんごへの執着を思うと、その短い出会いによって救われた何かがあったんだよな……とおもうとしんみりと良いお話でありました。「寂しい」がわからなかったフェリスがはじめての友達を得てそれを失うことで「寂しい」という感情を得て、ずっと先の本編でライナにその「寂しい」という言葉を使ってそれでライナが救われるというのがとても……とても良いと思います……。
伝説の勇者の伝説11 君子豹変の王様
ライナ達がローランドに戻ってきてから1年。いつものようにシオンが大量に抱え込んでいる仕事の手伝いをしていたライナは突然シオンから、全ての仕事が片付いたと報告を受ける。どう考えても違和感のある発言を訝しみながらもフェリスと共に穏やかな時間を過ごしたライナだが、その帰り道、異様な様子のシオンに遭遇して……。
そして平穏な日常が終わる
平穏な日常があっさりと幕を閉じ、その前後から舞台の外で淡々と行われてきた様々な出来事が少しずつ明かされていく…という展開に衝撃を受けました。えっ、とり伝の平穏で楽しい日常の裏で……非道な人体実験やらなにやらをやってたと……?シオンの中が一種の二重人格的な描かれ方をしているのでライナ達と一緒に日常をしていたシオンにはある意味制御出来ない部分だったかもしれないけど……そうであって欲しい……そうじゃなさそう……。イエット共和国編ではコメディ要員だったミルクがすっかりシリアス要員に……あとルシルのラスボス感がすごい……。親友であるシオンに裏切られて一度は生きることを諦めようとしたライナが、フェリスの言葉と「約束」を思い出してシオンに立ち向かうのに胸が熱くなるし、その上でシオンのことだって諦めない、手を差し伸べるために前に進むと決意する姿がめちゃくちゃ良かったです。あの怠惰でやる気がなくて自己否定的で他人に関わることを怖れていたライナがこんなに成長して……あと、ラストの展開で取り乱すフェリスがめちゃくちゃ良い……可愛い……。
「序章の終わり、本当の物語の幕開け」
ってあらすじに書いてあって衝撃を受けたんですが短編含めて20冊以上読んでるのにまだ序章だと!?一応無印の「伝説の勇者の伝説」シリーズはこの巻で完結という形だけど全然終わってないし、あとがきでCM無しで次の番組行くバラエティ番組みたいなノリで「大伝はこのラストの5分後からスタートです」とかいわれるの全然終わってない。確かに序章が終わりましたくらいのノリだし本編は全然終わってない!!(大事なことなので3回言いました)あと、あとがきで「このペースだと46冊とかになっちゃいますね」とか書いてあって今本当に既刊40冊超えているの感慨深いですね。それだけちゃんと予定通りに巻数を重ねてくれたのは良いことだ…(私が大伝追いつく頃までに新刊の予定が立ってくれるといいなという顔で)。最後の最後で「3人目の王」とかいう新情報もぶちこまれて本当にどうなってしまうんですか!?楽しみですね!!(も、もうコミケ終わるまで読まねーぞ…)
伝説の勇者の伝説10 孤軍奮闘の王様
シオンの仕事を手伝った帰りに何者かに襲われたライナ。胸を刺され、死んだと思ったのもつかの間、一面が真っ赤な、おかしな空間に導かれていた。一方、いつものようにだんご屋巡りをしていたフェリスは、どこか雰囲気がライナに似たおかしな男と遭遇する。その男は「ライナは死んだ」と言い……。
ライナとフェリスとシオン、最後の平穏な日常
ライナが死にかけたりフェリスが謎の記憶欠損を起こしたりシオンが知らない所でナニカに蝕まれていたり……と全く不穏要素が消えないまま突然始まる、なにもない、ただ平穏な「空白の1年」。とり伝のローランド編はここに繋がるのか。本当に本編の半分以上は重たい話なんだけど、短編を読んでると本当にちょっとだけ描かれた「平穏な1年間」が絶大な重みを持ってくる。そしてその話の直後に「一番最後の平穏」とかいって短編11巻分の重みでぶん殴ってくるのズルくない!?富士見ファンタジアの短編シリーズって割とちょくちょくこういうことするよな!!(フルメタのOMOとか、東レ2部後に突然重みと尊みを持って来る日常短編とか)本編とは全く関係ないけど、前から思ってたシオンの異常な徹夜仕事について医者が健康面からマジレスしてくれる展開めちゃくちゃスカっとした。やはり徹夜はよろしくない。あと、クラウがライナと拳で解り合いに行くエピソードが好きです。それにしてもあの二人も孤児出身→軍の異常な教育施設の出なんですね……過去のローランドにはいったいいくつ狂った教育施設があったんだ。
無印は泣いても笑っても次巻が最後。突然姿を表したライナの父親・リューラの存在や、なによりシオンの様子が不穏な件とか。どう決着がつくのか楽しみです。いやアニメで見たので概ね知ってるけど……いやでも……。
伝説の勇者の伝説9 完全無欠の王様
やりたいことを見つけて、フェリスとともに一ヶ月ぶりにローランドに帰還したライナを待っていたのは笑顔のシオンと地獄のような量の書類仕事だった!?忙しいなりに楽しい毎日を送るふたりだが、その裏では様々な思惑が動き出していた……。
久しぶりの明るい展開が楽しい……と思ったら……
戻った途端に大量の仕事を押し付けられる展開でめちゃくちゃ笑った。手紙の破壊力が高すぎるし扉越しにだんごでフェリスの買収合戦行われるの微笑ましすぎるし、ライナ失踪からの前巻のクライマックスでのライナとフェリスのやりとりであれだけ感動したのに、その数日後に本人たちが自らお互いの良い台詞をネタにしあって傷つけあってる(互いのメンタルを)ってそんなことある〜!!?一方、フロワードの手によって昏睡させられたミルクは改めて自分が「忌破り追撃隊」の隊長として抜擢された意味を改めて考えることに。あくまでミルクの想像でしかないからシオンの真意こそわからないけど、お節介なおばちゃんみたいなノリでミルクをけしかけたのかと思ったら普通にクソデカ感情の延長線というか、いやもっと更に重たい話だった……でも確かに、そう言われるとルークにライナの監視の命令が別口で出てた話とかさもありなんだし、なによりライナの記憶が無いのって5歳よりも前って前巻で断言されちゃってるので(ミルクと出会ったのは短編の情報から推測する限り最低でも十代の頃)何らかの事情でミルクのことを知らないふりしてたのは確実なんだよなあ……。
しかし、ミルクが追いかけてきた時点でライナがシオンの意図を薄々察してたんだとしたらそれはそれで相当しんどさがあるし、シオンが自分の抹殺命令出してるのを全然気にしてないと言ってるのもなんともしんどいし、一方のシオンがライナに困ったことがあったらなんでも相談しろみたいなこといいながらなんだかんだで自分の悩みは自分で抱え込んでたりするのがまたこう……ままならないし不穏……。
国際情勢はもうギリギリのところまで来てるし、ライナに思い入れのあるジュルメを関わらせないように動こうとするミラーとか(っていうかやっぱり結婚してた!!!)、執拗にライナを始末しようとするフロワードとか、そのフロワードに別人のように冷たい態度を取るシオンとか、もう明るい話の裏で不穏な話しかない。故ステアリード公爵の後ろに居たはずの黒幕、そんなのもありましたね!!そこまだ解決してなかったんかい!!
とかいってたら最後が衝撃の展開すぎて!!!休む暇がない!!!
伝説の勇者の伝説8 行方知れずの恩知らず
エスタブールを震撼させた魔眼の持ち主・ティーアと共にシオン達の前から姿を消したライナ。ティーアに連れて行かれた隠れ家には、自分達と同じ「魔眼」を持った子どもたちが保護されており……一方、ライナを連れ戻すためにその行方を追うフェリスとシオンの命を果たすために動き出すルーク。勇者の遺物や魔眼を収拾するガスタークの刺客も行動を開始し……。
様々な思惑が動き出す、物語の転換点
失踪したライナを巡って、様々な思惑が動き出すお話。あそこで都合よく突然出てきたシオンの命令書どこから……と思ってたらそこだったか〜〜!(いい感じにアニメの内容が頭から抜けてる顔)前巻での活躍もどこへやら、一緒に旅しているのにライナの長考に突き合わされてけんもほろろに扱われるティーアさんは強く生きて欲しいけど、自分以外の魔眼保持者と出会い、これまで目を背けるだけだった「魔眼」について改めて向き合うことになるライナの姿が印象的でした。ガスタークからの刺客の言葉によってますます疑問点が増えた部分は多いけど、自分の持つ力に付いてある程度の理解と折り合いを付け、自分自身のやりたいことを見出していく展開がとても良かった。あれほど化物と言われることを怖れていたライナが自分のことを「化物」だと言ってしまうの、良いことなのか悪いことなのかはまだわからないけど、少なくても自分の在り方を少しだけでも受け入れられたのかなと思ってほっとした部分がある。
それにしても、6巻のルシル、7巻のリーレvsカルネ、今回のフロワード・ルークと頂上決戦みたいなバトル展開が多すぎて、たしかにティーアvsクラウみたいな番外編もあったんですけど、ローランドどんだけの魔境だよって思ってしまう。ルークを前にして「最強とは……」ってなってるライナ(ローランド最強の魔術師)にめちゃくちゃ笑ってしまった。
フェリスの感情の動きがめちゃくちゃよかった……
だんご屋の前での「一人はつまらない」から、クライマックスの「お前が死んだら寂しい」に繋がってくフェリスの心情の動きがめちゃくちゃ良かった……あれだけ本編でも短編でもだんごに執着していたフェリスが、「こんなに重い荷物を持っていたらライナを追いかけられない」とだんごの詰まったリュックを置いてライナを追いかけていくのがあまりにもエモいし、それはそれとしてだんごを完全には諦めきれずに2本だけ持っていくのが微笑ましい。あと「お前が死んだら〜」のところで、一貫して無表情で描かれてきた挿絵のフェリスがちょっとだけ微笑んでいてうあーー!!!!となる。時間の長さで言えばライナよりもずっと長い時間、エリス家での過酷な仕打ちに耐えてきたフェリスって実際旅の開始の時点で相当感情が死滅していたんじゃないかと思うんですよね。ライナは「フェリスの感情の機微が感じ取れるようになった」と言ってて、実際そういう部分もあるとおもうんだけど、それ以上にライナとの旅が彼女に感情を取り戻させてくれてたんじゃないかな、と思うと込み上げてくるものがありました。否定されるのが怖くてずっと言えなかった言葉をはじめて吐露するライナと、そこで初めて誰の目に見える形で感情を露にするフェリスのやりとり、良すぎる。
それにしてもプロローグとエピローグのシオンがめちゃくちゃ不穏。
伝説の勇者の伝説7 失踪の真相
数カ月ぶりに勇者の遺物探索の旅からローランドに帰還した(というか事故で戻ってきてしまった)ライナとフェリス。だが帰国した数日後、ライナが失踪してしまう。フェリスはシオンから貸し出されたローランドのメンバーと共に捜索隊を組織してその行方を追うが、意外な所からその情報がもたらされることに。
同じころ、併合したエスタブールの兵達をまとめ上げるためにエスタブールに向かったクラウは『複写眼』保持者が暴れているという話を聞き、その鎮圧に向かう。相手は、かつて自分の腕を食い千切った因縁の『複写眼』保持者で……。
一度持ち上げてから落とす展開がとてもしんどい
6巻は概ねフェリスの実家・エリス家とその当主ルシルの話。そして今回はルシルとの会話、シオンが裏で出していた命令を知り失踪したライナとそれを追うフェリスのお話。6巻のサブタイ「シオン暗殺計画」とそのあらすじ読み直してそういう話だったっけ?と思ったけどたしかに暗殺計画あったし実際襲撃もされてましたね意味に気づいて笑った。7巻。紆余曲折あって、やっとの思いでフェリスがライナに追いついて、いつものノリになってきて色々引っかかりは残ったけど元サヤに戻れるのか……と一度持ち上げてからティーアの襲撃・シオンの到着で再び突き落とす展開がしんどい。ルシルに刺激された「自分が化物である」というトラウマを、ティーアが的確に(しかも、その言葉をシオンに言わせる形で)抉ってきて。色々と仕方ない部分があったんだけど、シオンはここに来ないほうが良かったと思うんですよね……ローランドの英雄王としての立場に邪魔されて傷ついている親友に望んだ言葉を掛けることも出来ず、フェリスとも隔たれてしまって……傷ついて消えていくライナもしんどかったけど、それ以上に取り残されたシオンの情緒が目に見えて歪んでいくのがしんどかった。「しんどい」しか言ってないなこの文章。
1巻でローランドを離れたキファの視点から敵対する国家ガスタークの情勢やライナ達の持つ「複写眼」の秘密が少しだけ明らかになったり…と、物語の中で謎とされていた部分が少しずつ見えてきて、いよいよ物語が動き出した感じ。レファルとキファの関係、というか敵国の王とそれに一人で立ち向かおうとする女、二人の駆け引きが地味にめちゃくちゃ好きでこの二人の関係もどうなっていくのか楽しみです。
それにしても短編集との温度差が……
6巻読んだ時にどう見ても間が抜けてる!と短編8冊読んで戻ってきましたが結局ミルクの葛藤とかは本編そのまま読まないと駄目だったみたいで(※この感想を書いてる時点で10巻中盤まで読んでる)でも短編普通に面白かったし、本編終盤を読むのにあたって理解を深められる話も多かったので良かった。短編の忌破り追撃隊の皆さんのおこちゃまミルクと後方保護者面の皆様の印象が強すぎて、今回のカルネvsリーレのシリアスなバトル展開で違和感しか感じないという弊害は残った。とりあえず伝説の勇者の伝説8 権力のワンダーランド
イエット崩壊時に起きた洪水で海に投げ出されてしまったライナたち。見知らぬ無人島に漂着した……と思ったら、そこはなんとローランド帝国にあるフェリスの家の領地だった。数カ月ぶりに帰国したふたりが真っ先に思い出したのは、自分たちをこんな境遇に落としたシオンに復讐することで……!?
舞台はローランド帝国へ!#シオン寝ろ
長かったイエット共和国編が終わり、舞台はローランド帝国へ。ライナとフェリスがこれまで以上にシオンの巧みな動きで仕事を与えられて右往左往したり、逆にシオンがライナ達に振り回されたりというお話が中心。なんだかんだで内政の手伝いしてるライナは結構楽しそうにやってる気がするんですけど、なにはともあれシオンの仕事の仕方が睡眠時間度外視のブラック労働で、頭おかしいんだよなあ……ていうかこういう判断力を求められるような頭脳労働の人が睡眠時間取らないのどう考えても駄目だと思うし、これだけ徹夜が常態化してたらそりゃあ思い詰めて極端なこと考えたりするわけだよ……シオンは本当に寝ろ。シオンの仕事を手伝わされることになったライナがシオンのベッドに居着いてしまい(シオンはそもそもベッドにほとんど戻ってこないので別に同衾はしていない)シオンの男色疑惑が発生するの味わい深さが凄いんですけど、本編であれだけ冷酷で危険な人物として描かれ続けてきたフロワードがほぼ、娘(シオン)の行き遅れを心配する面倒くさい母親みたいになってるの面白さが凄い。彼の本質自体は変わってなくてただ単純に視点を変えただけなんだけど、視点を変えただけでこれだけ変わるの面白いな……。
それにしても素朴な疑問なんですけど、二人がローランドに戻ってきてシオンに会いに行く話、今回の「きる・ざ・きんぐ」と本編6巻の両方に全く別のシチュエーションで載ってる気がするんですけど微妙にシチュエーションが違うんですよね。あと本編6巻だと戻ってきてすぐにライナが○○してる気がするんですけどこれどういう時系列……?一回戻ってきてまた出ていってたりする……?読み進めていけばわかるかな……。
ゾーラとライナの悪友っぷりが良かった…!!!
書き下ろしの過去編「天才の流儀」は前巻に引き続きライナが『隠成師』に所属していた頃。彼が『ローランド最高の魔術師』と呼ばれるようになった由縁や、前巻でメインになったゾーラとの出会いのお話。前巻でピア達と出会って改心(?)したゾーラがなんか逆の方向に面倒くさい男になっててめちゃくちゃ笑ったし、そのノリでそのままライナにウザ絡みしていくのめちゃくちゃ楽しい。一方、暗殺者の少女・ビオとの一件やらなにやらを経て心を閉ざし気味のライナがゾーラのあまりのウザさに辟易しながらもだんだん心を許していくのがとても美味しかった。いや、なんかこの二人ものすごく「悪友」なんですよね……フェリスのような異性の相棒ともシオンのような相互クソデカ感情な親友ともピア達のような苦楽を共にした良きライバルとも微妙にちがって、いい感じにお互いに執着がないと言うか、カラっと遠慮がないのがとても良い。それにしてもゾーラは自分が懸想してる人物の名前をそっとライナに教えてあげて欲しい。ぜったいよろこぶから。いやローランド帝国側に万が一にでも伝わるの避けたくてわざと伏せてるのかもしれないけど。
ゾーラ、前巻のあとがきで「そのうちドラマガ掲載分にも出てくる」と言ってたし、ライナのようにただ上からの命令を拒絶して割を食うだけではなく、自分の譲れないポイントは死守しつつ組織の中でうまく切り抜けるような器用さも持っているようだから死んではいない気がするんですよね。ドラマガ掲載分=おそらく現在軸の短編でライナと絡むの、めちゃくちゃ楽しみになってきたなぁ。
とりあえず伝説の勇者の伝説7 努力のタイムリミット
勇者の遺物探しでやってきたはずのイエット共和国で惰眠を貪っていたライナ。ところがある日の夜、寝込みを異形の化け物に襲われる。それはイエットの地を5年ごとに襲う「呪い」であった。対処魔術が開発されたため現在はほぼ無害化しているそれだが、調べていくととんでもないことが発覚して…!?
最後までシリアスになりきれない、イエット共和国編クライマックス
雑誌掲載分5編のうち4編が続き物という、実質長編スタイルのイエット共和国「崩壊編」がめちゃくちゃ面白かった。いつになくシリアスな雰囲気で始まり、ライナもフェリスも苦戦するような敵が現れ、イエットどころか世界の危機が示唆されていく……という緊迫した展開からフューレル姉弟やシルが登場したあたりで風向きがおかしくなってきて、世界の危機に反してなぜかどんどん下がっていくシリアス度……という展開が最高に頭おかしかった。目前に世界の危機があるのに誰もライナの言うこと聞かないし、話の腰折るし、説明しても脳に届かないし……で、戦いが始まる前から全力で疲弊してるライナさんほんと強く生きて欲しい。そして最後にほとんど何もしてないのにしっかり美味しいところをかっさらっていくヴォイスくんに笑った。それにしても本編を読んでいたのでふたりが何らかの事情でローランドに帰還することは知ってましたが、イエット共和国とライナ・フェリスの相性が良すぎて一向に出ていく気配なかったし遺跡の調査もまともにしてなかったし彼らどうやってこの国の外に出るんだろうな?と思っていたらまさか国の方を崩壊させて強引に帰還させるとは思いもしなかったですその発想はなかった。天才かな??
小悪魔美少女に成長したピアが可愛すぎる
書き下ろしの過去編「天才の限界」は2巻に収録された短編と同じ時間軸、『隠成師』の少年ゾーラがローランド帝国からの指示で中央大陸に居る『忌破り』の少年少女を暗殺しに行く、というお話。忌破りの少年少女、というかジュルメ訓練所でライナの同期だったふたり・ペリアとピアなわけですが、二人を殺しに来たはずのゾーラが軽くあしらわれて追い返されてしまう姿が爽快だし、ワガママな少女としての一面は以前よりおとなしめになって小悪魔系美少女になったピアに手のひらの上で踊らされてしっかり惚れさせられて帰ってきちゃうゾーラの姿にニヤニヤが止まらない。国に都合の良い暗殺者になるために自尊心を歪まされたゾーラが、報われない恋に身を焦がしてすっかり改心してしまうのめちゃくちゃ微笑ましくて楽しいお話だった。最後がいい感じに死亡フラグっぽいんですけどあとがきで「ドラマガ短編でも出る」っていわれてるってことはまあ死なないだろうし、次巻書き下ろしのライナとの絡みが普通に楽しみだな。
とりあえず伝説の勇者の伝説6 死力のダンスパーティ
槍(ブタのぬいぐるみらしき何かにフォークとナイフを刺した物体の事を刺す)が動き出して勝手に修行したり、伝説の勇者の遺物らしき何かを追いかけたり、ライナが下着泥棒の濡れ衣を被せられたり…「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの番外編を収録した短編集第6巻。
ライナ→フェリスの名称不明のクソデカ感情、良いよね……。
ともかく一番最初の「ブーちゃんず・とらいある」がカオスすぎてともかくカオスだったということしか突っ込めない。ブーちゃんというのはブタのぬいぐるみらしき形状のものにフォークとナイフが刺さった槍です。今回の話では喋るし動くし目からビーム出るし主人から離れて勝手に修行します。何をいっているかわからねえとおもうが俺も略。今巻は割と与太話から勇者の遺物もどきや何らかの魔術遺産的な物体につながっていく話が多くて、これまでのイエット共和国でのエピソードの中だと一番くらいにライナとフェリスが仕事しているのでは?なんですけど、入り口が割としょうもないところからなのでどうしてもシリアスになりきれない感じが相変わらず楽しい。全然関係ないんですけど、何故か占いアプリに偽装した会員制の出会い系アプリみたいなクリスタルがイエット共和国中に出回る「でぃてくてぃんぐ・くりすたる」のクリスタルで昔流行った通信機能付き占いゲーム付き電子手帳を連想して懐かしくなりました。年齢がバレる話をするのはよせ。
これまで以上にカオスな短編が多い中、「ぐれいてすと・まじしゃん」がめちゃくちゃ面白かったです。手品師の行う手品を“魔法”だと勘違いするフェリスに魔法と手品の違いを説明しようとするライナだが、何かフェリスのやりとりに違和感を感じて……というところから、気がつけば「勇者の遺物」と思しきアイテムを巡るシリアス展開につながっていくんですけど、傷ついたフェリスの姿を見た時のライナの豹変ぶりがめちゃくちゃ好き。普段はフェリスが強すぎてなかなか出てこないんだけど、時折ライナが見せる、フェリスが傷つくことへの過剰反応から溢れ出る「化物である自分と対等な存在になりうる強者」への執着というか、愛とも恋とも友情とも違いそうなクソデカ感情の気配というか……。
書き下ろしの破壊力が高すぎる
今回の書き下ろし「禁断の書」は久しぶりに現在軸の話。ローランドにいるシオンの元に『真実の勇者の伝説』というタイトルの呪われた本が送られてきて……という、導入だけはめちゃくちゃシリアスなんですが実はフェリスとライナが自分たちの書いた本をシオンに出版させて印税を得ようと送りつけてきていた、というお話。本の内容がもう、物語とは名ばかりの「童話を作る」というお題でフェリスとライナが夫婦漫才してるだけみたいなナニカで、ローランドで地獄のブラック労働に身をやつしながらライナの見せた理想と血なまぐさい現実の間で葛藤している時期のシオンにこれを送りつけてくるのマジでふたりの心が強すぎて震えるしシオンはもっと怒った方が良い。いつも通り我道を突き進むフェリス(主人公)とその主人公にいいように弄ばれるライナ(多分ヒロイン。全裸)の掛け合いが面白すぎて腹筋が辛かった。もうこういう、作中で素人がトンチンカンなリレー小説するだけみたいな話好きすぎる!!!!一方、その原稿を受け取ったシオンも泣き寝入りするはずがなく……なぜか本当に二人の名前で出版された本がイエット共和国に届くほどの大ブームになってしまう。困惑する二人がふたりがその本を開くとそこにはとんでもない内容が…!?という展開で二重三重に畳み掛けてくるの本当に笑いすぎて過呼吸になるのでやめてほしい(もっとやってください)。フェリスパートもライナパートも基本の流れが完全に一致してる所とか微妙な投げやり感を感じてポイント高いですし、絵本の内容、その後の展開を(アニメで)知ってるとライナの方とか素直に笑ってよいのか不安になるんですがこれ大丈夫ですよね!?本当に最初から最後まで(腹筋の)破壊力が高くて凄かったです。
次巻はいよいよイエット共和国編の終盤戦とのことで、あとがきによるとイエット共和国だけどちょっぴりシリアスな展開もあるよとのこ…………シリアス????(困惑)