ページ 42 | 今日もだらだら、読書日記。

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学園交渉人 法条真誠の華麗なる逆転劇

 

七千人が通い、生徒の自治によって運営される白楊中央学園には華々しい実績の裏に、ある掟が存在した。それは「校則を破らない」こと。一見当然のこのルールは学園の特殊性から、法律のような実効力を持っている。そんな学園において唯一、法条真誠という男だけが法外な報酬と引き換えに、校則すらもねじ曲げて依頼人の問題を解決していた。とある事情で法条に借金をしてしまった少女、花咲華織は彼の助手を務めるうちに、法条の真意と学園の不自然な構造に気づいていく。ひねくれ者だが有能な主人公と、猪突猛進なヒロインによる、驚愕の学園逆転劇、ここにスタート!(「BOOK」データベースより)

 校内の揉め事を解決しているという先輩・法条に助けてもらった新入生・華織は、彼から高額な依頼料を請求され、借金を返すため法条の下僕…もとい助手をする羽目に。法条とともに様々な依頼に触れていくうち、平和だと思っていた学園の様々な暗部が見えてきて……というお話。

 タイトルからもっと俺TUEE系頭脳バトル的なものを想像していたんだけど、探偵役である法条が予想以上に人間らしいキャラクターで、傍若無人を装っているけれど、読み進めるにつれて相手への情が滲み出てるのがなんとなく察せてしまうのがズルい。学園の現体制に不満を抱きながらも最終的にその歯車のひとつとなってしまっていて、そういう自分の立ち位置を受け入れながらも、華織が自分では打ち破れない壁を破ってくれる存在となることに期待している構図が大変美味しかったです。

 そして、お人好しで他人の意見に左右されやすい助手の華織が、自らの「正義」に思い悩みながら人間的に成長していく姿も良かった。最初は嫌々だったのに、法条の不器用な本心が見えてくるうちに彼と離れがたくなっていく姿にニヤニヤしてしまう。

 そんな華織が自ら考えて周囲の力を借り、法条とは別口で事件を解決しようとする最後の事件がとても好き。どこか敷かれたレールを走って解決した部分がないわけじゃないんだけど、それまでの依頼を積み重ねて彼女なりに築き上げた繋がりを必死に活かして事件を解決に導いていく姿が印象的でした。思い切り次巻に続く形で終わったのだけど、わりとエピローグ前までで綺麗にまとまってる印象なので続きがどうなるのかちょっと気になる…。

 個人的には法条が眼鏡のオンオフで性格がよそ行きになる?みたいなのがちょっとわかりづらくて、そこだけちょっと残念。眼鏡関係なく華織への態度は一貫しているので、単に敬語使うか使わないかくらいの違いに見えるんだよな。ギャップ萌え的には華織に対してもよそよそしい態度とるようになるくらいの劇的さが欲しかった……。

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腐男子先生!!!!!

 

ごく普段の腐女子・早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たのは、ごく普通の腐男子・桐生和人。ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は高校の教え子と教師だったのです―。イケメン生物教師の真の姿がもっさり残念メガネ男子かつ同じ沼の狢…だと…!?そう、これは―教え子を神(絵師)と讃えるイケメン腐男子先生と、とある腐女子の物語。こんな先生に教えられたい!?共感しすぎるオタクラブコメ登場!!!!!(「BOOK」データベースより)

 朱葉の同人誌を買いに来た一見冴えない腐男子は、イケメンと評判の生物教師だった!?それ以来、自分のファンだという桐生先生との交流が始まって……?というお話。「小説家になろう」を原作とした書籍化作品。(→原作はこちら

 面白かった…!!同人の修羅場でテンパる話とかオタクものの定番のお話も盛り込みつつ、SNSやソシャゲや応援上映など最新のトレンドネタをぶっこみつつ、大人のオタクと未成年オタクの資金力の差とかでガヤガヤしたり、ワイワイ盛り上がっていくのがすごく楽しい。特にオタネタの鮮度の速さは原作Web小説ならではですね。「好きなものには末永く課金したい」は金言。

 ふたりの距離感が重くなく軽くもなりすぎず、ラブコメ以上ラブコメ未満という感じでとても好き。学校という空間でいつも一緒にいられる反面、生徒と教師という体面を保つためには色々と関係を取り繕う必要があり、そこにひとかけらの禁断感と、素直に近寄れないもどかしさが生まれていくのが良かった。そしてラブコメっぽい展開になっても先生の面倒くさいオタクぶりが障害になっていくのにニヤニヤする。

 特に個人的に大好きなのが、ライブのチケットを譲渡するのに主人公がわざと本人の目の前でツイッターでの募集をかけ、そこに先生の取引垢(プライベート垢ではない)が初対面を装いチケットの譲渡を持ちかけるというシーン。あくまで先生が個人垢を晒さないこと、目の前で喋っているのにわざと一回SNSを介するところとか平安時代の恋文のやりとりのような軽妙さ、様式美を感じて。桐生が一オタクとしての自分(本音)と教師としての自分(建前)を使い分けてくる感じ、最高に良かったです。

 それでこの後この関係のままゆる〜く続くのかラブコメ方向に行くのか大変気になってて書籍化してない部分を読むか悩んでるんですけど書籍化されてからじっくり読みたい気もして大変悩みます。書籍化部分も未収録のネタとかあるみたいなのでそのうち読みたい。なおpixivコミックではじまってるコミカライズも大変良かったので気になる方はそちらからでもどうぞ。

「けどその代わり、今度から原稿は手伝わせないように」
 返す刀のその言葉に、朱葉はちょっと気まずい顔で笑って。
「や、やっぱ、だめでした……?」
 勝手に一方的に仲間だと思って、やりすぎたかな、と顔色をうかがうように聞いてみれば。桐生は自分の顔を覆うようにして。
「新刊は本の形で読みたいの……」

 ところでこれがわかりすぎて困る……(面倒くさいオタク全開)

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自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?

 

学業、運動、家柄、あらゆる分野のエリートだけを集めた日本最高峰の名門校・獅子王学園。だがその実態は、ゲームの結果ですべてが評価される弱肉強食の学園。絶対的な強者―獅子のみが生き残れる修羅の世界だった。裏世界のゲームで常勝無敗の伝説を残しながらも、面倒のない普通の人生を歩みたい主人公・砕城紅蓮は、入学試験で手を抜き、目論見通り最低位のFランクに認定される。しかし兄を心から愛する血の繋がった妹・砕城可憐と再会し、事態は急変。そして学園の『悪意』が可憐を襲ったとき、紅蓮は真の実力を発揮する―!(自称)Fランクの紅蓮が並み居る強敵を屈服させる、学園ゲーム系頭脳バトル開幕!(「BOOK」データベースより)

 物事が何事も勝負で決まり、勝負の結果によりランク付けされる学園を舞台に、かつて裏社会で5年間常勝無敗だった最強のお兄様が自らの能力を隠して平穏に暮らしたいけど奴隷堕ちしたクラスメイトを助けたり妹とイチャイチャ(?)したりする頭脳バトルラノベ。

 勝負によって得た「ポイント」によって生徒たちが格付けされる学園。基本からして露骨な学園カーストでエグいんだけど、ポイントをすべて失うと「隷徒」として俗に言う「奴隷堕ち」状態になるシステムが猛烈にエグかった。弱みを見せた生徒は誰かのカモにされ、隷徒になれば主人となった生徒に学園内での人権全てを握られてしまう。全寮制?の学園という閉じた世界の中での仄暗い悪意がエグかった。

 チート能力を持った主人公がわざと学園ランク最下位に収まってでも「日常」に拘る理由、それでも特に仲が良いわけでもないクラスメイトが苦難に陥いると立ち上がってしまうための理由付けがしっかりと描かれているのがポイント高い。あくまで求めるのは、5年間体験することができなかったクラスメイト達との平穏な日常と年頃の高校生らしい青春。人間社会の闇を見続けたからこそ人並みの日常を送りたいのに、彼を引き戻そうとする様々な人々の思惑と戦い続けなければいけないのは業を感じる。

 そして、5年間を経て変わってしまった妹との距離感が良かった。どこかストーカーチックだったり、平穏な日常を送りたい兄を勝負の世界に引きずり戻そうとするような得体のしれなさがあるんだけど、それはそれとしてただ彼女が「妹」である時点で深い愛情を注ぐという関係性が好きでした。

 しかしこの状態だと苦難に陥ったクラスメイト救いまくってハーレムが出来てしまいそうだけど大丈夫なのか。あとBL力高すぎる生徒会長と彼の弟であるクラスメイトとの関係はどうなってしまうのか。続きがとても気になります。

 生徒会長兄弟のBL力高すぎて興奮する。(大事なことなので2回言った)

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最近(?)読んで面白かったWeb小説まとめ

書籍化情報とか読みかけなのにURL行方不明になったりよくするので
感想いれつつお気に入りのWeb小説をまとめました。
しかし8割書籍化してるし書籍化してないやつは商業誌作家の番外編なので
目新しいやつはないかとおもいます…。

カクヨムをさらに盛り上げるたったひとつの冴えたやり方 / みかみてれん

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880592134
 単話/完結済。カクヨムにテコ入れをすることになり、ソシャゲっぽいシステムを導入したら〜というお話。風刺の効いた展開と「ですよねー!」って感じの終わり方が想像の斜め上に面白かった。現代のソーシャルメディアの評価システムにくたびれたらさくっと読んで欲しい一作。

何回ガチャを引いてもレアが出ないから腹いせに書いたファンタジー / 槻影

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880848824
 完結済。完全ランダムのはずの召喚魔法で最低ランクのスライムしかなぜか召喚できない主人公が召喚の魅力にハマり、お高い召喚をするためにあらゆる知略を凝らして召喚に必要な触媒を集めようとする。ソシャゲのガチャでどうしても最高レアを引けない現象が割と壮大なファンタジーとして成立してるの最高にズルいし、大冒険を繰り広げた挙句にクリティカルに刺さる感じのオチがめっちゃ好きです。

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う / 昼熊

 https://ncode.syosetu.com/n7583de/ | 書籍版感想
 角川スニーカー文庫から書籍化済。「自動販売機」として異世界に転生した自動販売機マニアが豊富な自動販売機知識と自販機アイテムを駆使して異世界で商売したり、強敵と戦ったりする。なろうでは完結済なんですが4巻以降の予定が立たないのでそろそろこちらで読むべきかなって思ってる。

自分が異世界に転移するなら / 昼熊

 https://ncode.syosetu.com/n5645ci/
 宝島社から書籍化済。自販機〜の人の別の作品。転移後のスキル・ステータスを予め設定した上で異世界に転移出来ることになった主人公だが、それは割り振り次第では地面に立つこともできなくなるという罠だった……というお話。割とハードな世界観で転移者同士が殺し合ったり島のオークに苦戦したりするのですが、ステータスの割り振り周りの話の面白さは自販機転生に通じる物を感じました。なろうでは完結済。「贄の島編」の最後まで読んだんですが、クライマックスの盛り上がり凄く良かった…。

異世界取材記 〜ライトノベルができるまで〜 / 田口仙年堂

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880280060 / 書籍版感想
 富士見ファンタジア文庫から書籍化済。新作ラノベの取材旅行で異世界に向かったラノベ作家が異世界救ったり某バカと試験で召喚魔法を使う後輩作家と殴り愛(違)したりします。最近やっと文庫未収録部分の第二章を読んだのですが、安定して面白かったのでこちらも是非書籍化してほしい……割と主人公である先生の周囲にいる作家はどんどん作中で売れていくのに先生だけ日の目をみないの辛いので先生の本がバカ売れする第三章が読みたいです。

回復術士のやり直し〜即死魔法とスキルコピーの超越ヒール〜 / 月夜涙

 https://ncode.syosetu.com/n3512ds/
 角川スニーカー文庫から書籍化済。勇者としての力を使うことを拒否したばかりにひどい扱いを受けた勇者が、自らの「回復魔法」を使って時を遡り、自らを虐げた仲間の勇者たちへの復讐を決意するお話。3章途中まで読んだんだけど、徐々に自分が能力を使い相手を傷つけるための言い分として敵に「復讐」出来る状況を待ち望むようになっていくのが最高にトチ狂っていて良かったです。個人的にはお姫様の逆襲エンドを期待してる。
 大幅加筆らしいので書籍版気になるんですけど調べた感じ加筆箇所がエロ主体っぽいのでちょっと悩んでおり……?(個人的にはエロ描写はこのくらいのほうがあっさりしてて好き)

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典8

 

成績不振による退学を回避するため、聖リリィ魔術女学院に短期留学することになったリィエル。システィーナとルミアも同行し、さらには男子禁制の楽園でお嬢様を手玉に取ろうと、グレンも女に変身し、臨時講師として赴任することに!?…しかし、そこで見たのは、お嬢様グループ同士の抗争で!?「あっれー??ボクが想像してたのと全ッ然ちっがーう!!」女学院という名の鳥籠。先の見えた人生にくすぶる彼女たちは破天荒なロクでなしの姿に触れて―「断言してやる。俺ならお前達を『魔術師』にしてやれる」グレンの講義が、箱庭の少女達の運命の鎖を引きちぎる! (「BOOK」データベースより)

公式が薄い本(挨拶)

 落第を回避するため、とある女子校に留学しなければならなくなったリィエル。システィーナとルミアがついてきてくれることになったが、アルベルトの提案でグレンも(女体化して)学園の教師として出向くことに!?というお話。正直主犯・アルベルトという時点で発酵系ラノベ読みは盛り上がらざるを得ないわけですが、アルベルトにあっさりノセられて実行犯になっちゃうセリカのチョロインぶり可愛すぎない!?あと、第一章のタイトルがアラサー直撃すぎて笑う。

 女だけの楽園でハーレム生活……という言葉につられて行ってみたら、留学先の学校は生徒たちが勝手な派閥争いを繰り広げていてほぼ学級崩壊状態。全く授業にならないところから、派閥トップの問題児2人をたきつけ、お嬢様としての鬱屈を抱える生徒たちをまとめ上げて成長させていくグレンの「教師」としての姿が楽しかった。留学先の生徒たちとのやりとりも楽しいのですが、一番弟子とも言えるシスティーナの成長を誇らしげに見守ってるグレンが可愛いんですよね……。

 グレンに教えを受けた生徒たちが、今度は他の生徒達に更に影響を与えていく姿が爽快でした。講義シーンこそ控えめだけど、「教師」としてのグレンの力量の高さが存分に描かれていて、これぞロクアカという感じの展開で楽しかった。最近はわりとバトル偏重傾向だったもんな……。

 また、年頃の少女としてはまだ未成熟なリィエルの「人間」としての成長に胸が熱くなる。システィやルミアとはまた違う、はじめての「友達」に一喜一憂する姿がかわいくて仕方がない。まぁ、その初めての友であるエリザのほうは明らかに何か違う感情に目覚めてる感じすごかったんですけどそれに気づきながらも微笑ましく見守ってる女子生徒達が可愛かった……同性愛に優しい世界だった。

 個人的には女体化要素はあれだけ大きく謳ったわりにはいまいち薄めに感じて、女体化してもグレンは割とおおっぴらに男言葉使うし(それでこそグレンという感じではある)、途中でわりとあっさり男子に戻ってしまうのでもうちょっと女体化ならではのギリギリでスリリングな展開があってもよかったのに!と思うんですけどまあそういう話じゃないので仕方ないのか……。

 三嶋くろね先生が描く女体化グレンがめちゃくちゃかわいかったのと、巻末オマケイラストにはニヤニヤしましたというか控えめに言ってアルベルトの女体化まで(妄想らくがきとはいえ)見れるとは思わなくてニヤニヤが止まりませんありがとうございます!!

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Chaos;Child -Children’s Revive-

   
原作
MAGES./Chiyo st.inc 

2015年秋。東京・渋谷を震撼させていた連続猟奇殺人事件「ニュージェネレーションの狂気の再来」は、宮代拓留という少年の逮捕をもって収束したが、様々な後遺症を孕みつつ渋谷の街と人々に色濃い影を落とすこととなった。山添うき。香月華。有村雛絵。久野里澪。南沢泉理。尾上世莉架。事件の最中を拓留と共に過ごした彼女たちは、事件から半年が過ぎた今、何を思い、そして何を見出したのか―。衝撃の展開と結末で話題をよんだ名作ゲーム『Chaos;Child』の「その後」を、原作シナリオライター・梅原英司が描きだす完全新作がここに登場! (「BOOK」データベースより)

 夏に公開される劇場版アニメ「SILENT SKY」で明かされる真実を踏まえた物語となっているため、アニメ版のみを視聴したかたはご注意ください(いくつか重大なネタバレを踏みます)

 シナリオライター本人が描く「カオスチャイルド」の後日談。ゲーム版の最終エンディングである「SILENT SKY」は宮代拓留と尾上世莉架ふたりの物語として描かれていて、他の事に関しては簡潔にしか語られないのですが、これは取り残された彼女たちが新しい一歩を踏み出すまでの物語です。

 これまで在った日常は過去のものとなり、彼女たちは事件の真相を胸の内に秘めたまま、世間との軋轢や、様々なことに直面していかなくてはならない。周囲に理解してもらえなかったり、ひとりあるきする事件や犯人に関する誤解、真相を伝えられないもどかしさが時にしんどくもあるんだけど、それでも自分で一生懸命考えて、自分の足で歩き出そうとする姿が胸に熱い。

 特に有村雛絵の立ち位置がめちゃくちゃ好きだったんですが、今まで否応なしに相手の本心を読んでしまっていた彼女がその能力を失い、戸惑いながらも体当たりで少しずつ人間関係を再構築していく姿や、拓留へ感じていた名前のつけられない感情に戸惑う場面とか、何もかもの憂さを吹き飛ばすような最後の演説とか、本当に可愛かった。親友の華が新聞部以外の友達を作る事にヤキモチを焼きながらも影に日向に応援したり、自らが思考の迷路にはまり込んだその時に、自分が助けた華を通して自分自身の言葉に助けられるの、本当に良い。

 というか、その際に雛絵が“偉人の言葉”として呟いた自分自身の言葉こそが、この物語の全てを貫くテーマだったのかなあと。これまで以上にお互いを大切に想い合いながら、だからこそ離れていく彼女たちの姿が印象的でした。

「良かったに決まってるじゃん。かの偉人は言いました」
 切り出したのは雛絵だった。いつもの飄々とした口調だった。
「『大切だからこそ、しかし我々は離れなければならない。大切なものに甘えて、その大切さをまさに自分たちの手で貶めてしまう前に』。私たちを誰だと思っていやがる。私たちが共有している経験の強さを舐めるなよ」

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最強喰いのダークヒーロー 3

 

学内トーナメントを制し、宣言通り無敗のままで関東大会出場権を得た双士郎たち。来るべき大会を一月後にひかえ「チームアギト」は日夜トレーニングに励む。しかし、学園最悪の問題児である双士郎に平穏な日々は訪れない!学内の人間関係にはじまり、芸能界、闇社会、果てはテロリストまでもが彼らの未来を破壊すべく襲いかかる。さらに聖海学園が総力をあげて阿木双士郎を潰そうと動きはじめ…そして、遂に明らかになる檸檬子との秘められた過去。いびつな共犯関係の裏にある、二人の真実とは?勝利を貪欲に求める悪党が突きつける、究極カタルシス第3弾!!(「BOOK」データベースより)

 「祓魔祭」の学内予選を勝ち抜き、本戦出場前の息抜き回。「チームアギト」の面々の問題を双士郎がそれとなく解決していったり、逆にチームメイト達の視点からわかりづらい彼らの本音が透けて見えたり。

 これまでが割とバトルと学校内外での陰謀中心にサクサク進んできたので、結構ざっくりとしか説明されていなかった各キャラのバックグラウンドや性格が掘り下げられるようなエピソードが多くて楽しかった。枕営業させられそうになってエロコスチュームを強制されるかみゅーんめっちゃ可愛いし正直興奮しますね!!

 どの話も良かったけど、これまでずっと双士郎と対立してきた理事長・聖乱華の顛末を描く「牙腔教育」が特に好き。現実に居たら絶対嫌なやつだけど二次元だから憎めないというか、最後に言いたいこと散々言って舞台を自ら降りる姿には好感すら持てる。そして彼女を隠れ蓑にして行われていた水面下の陰謀を結果的に敵も味方もお構いなしでぶち壊していくんだから、たまらない。

 学内やチーム内の構図も変わっていくにつれ、これまで通りに双士郎の描いた絵の上で面々が踊っているように見えて、彼にとっても「読み切れない」事態が多かった印象。乱華の件はもちろんだけど、リザに過去の件を話してしまった件だってかなり想定外の事態だったんじゃないだろうか。それに加えてラストの檸檬子ちゃんの件で、これまでのように全てが盤上の出来事とはいかないであろうことが垣間見えて……次巻どうなってしまうのか、とても気になります。

 それにしてもルイ君周りは今回もトバしていたなあというかルイの双士郎への評価おかしい(大事なことのあまり本文中に3回も書かれた)。ルイがメインとなる短編「成功有毒」はそんな完璧王子の彼がチームメイトと距離を縮めたくて四苦八苦するという大変微笑ましいお話なのですが最終的に双士郎とキャバクラに行きます(?)。全てを語ったわけじゃないけど間違ったことはいってない。

 世界が綺麗事だけじゃ動かないと知ってる正統派ヒーロー属性のルイが、自分の想像もできない暗い道を歩いてきたダークヒーロー属性の双士郎の人間性に惹かれるのはもうどうしようもないことではないかとおもうんですけど、なにしろルイくん行動がアレなのと発言がアレすぎるのでというかほんと腐女子は双士郎への最後の一言でもうそっちの想像しかできないのでなんとかしてほしい。素直に言えばもっとやってほしい。

 今回もまたアニメイトの特典SSがこの二人の話だったんですがヒロイン2人が風邪を引いた双士郎の家にお見舞いに行くという本編中の出来事が何故かルイくんになっているという話でありルイくんがソツなくおかゆを作ってふーふーしてあーんしてするというなんだこのスーパーダーリンみたいな内容の話になっており、2巻は色んな特典SSの中のひとつがこれだったわけですが今回はもはやアニメイトしか特典ない。どういうことなんですかねありがとうございます眼福でした。

 新刊が出るたびに男二人がイチャイチャしてるSSが読めるのは「最強喰いのダークヒーロー」だけ!
 (4巻も楽しみにしてます) (特典SSがあるとは誰も言ってない)

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オタクガール、悪役令嬢に転生する。

 

オタク暦15年、BL一筋に生きてきた腐女子が『脱!悪役令嬢』を目指して大奮闘!?最後の記憶はイベントのアフター―なのに、目の前の鏡に映っている縦ロール女は誰っ!?戸川芭琉が転生したのは、超人気乙女ゲーム「私立学園花乱舞」の悪役令嬢。高校3年間の破滅フラグを回避せよ!…って言われても、このゲーム全然知らないよ!?だって私、腐女子だったんだから―!!攻略キャラの知識は無いけど、兄と幼なじみのCVが生前の推しカプと同じっぽいので妄想だけは捗ります!!!(「BOOK」データベースより)

 腐女子OLが、とある乙女ゲームの世界の「悪役令嬢」として転生してしまった。高校時代3年間の生活で「破滅エンド」を回避しなければいけないが、元になった乙女ゲームの知識などまるでなく、ヒロインも攻略対象すら知らない手探りの状態で…!?というお話。

 俗世から隔絶されたセレブ校、その身は箱入り娘のお嬢様。行動に縛りの多く一人になり辛い状態で転生先の世界観設定の把握すらおぼつかない。そんな中で自分にとっての「バッドエンド」を回避しようと右往左往する展開が楽しかった。その合間にオタク女子としてなんとかマンガとかアニメとかに触れようとするけど、どこまでも邪魔が入って阻止されるのがジワジワ来る。いやしかしオタクにとってこの「断食」はつらいですよねわかるわ……。

 ヒロインが誰だか解らないと、どういう行動が「悪役令嬢」として受け取られてしまうのか未知数で。序盤から「この娘がヒロインでは?」というキャラが何人か提示されているけど、あれだけ露骨にヒロイン扱いされていると引っ掛けのような気もしてくる。実は今主人公に弄られてるこの娘こそがヒロインなのでは……!?と想像しながら読むと、予想外の所で悪役令嬢フラグ立ててしまってそうで、勝手にハラハラしてしまったw

 しかし、世界観とか配役とか気になる部分が沢山あるのに、世界観の全体像すら見えずに終わってしまったのが残念です。原作が「なろう」らしいので続巻前提なんだとおもうけど、この巻だけだと面白いかどうかの判断すらできない。

 「悪役令嬢」の概念をラノベで見たから知ってる!!って言われるのも若干違和感あったのですがこれはラノベ発の概念なの?意味としてはなんとなく伝わるんだけど属性として直接単語にしてるのは初めて触れました「悪役令嬢」……最近少女小説系のなろうではやってるみたいなので、そっちを想定した発言なのかなあ。「兄と幼馴染みのcvが前世で好きだった二次カプの中の人と同じ」という腐女子設定も、今後生きてくるのかもしれないけどちょっと本編に上手く絡んでないというか、浮いてた気がする。

 読み終わった後に軽く「なろう」の原作の方も見たのですが、番外編で元の世界の主人公の友人が勢い余って主人公の追悼本?出す!!!みたいな流れになってるのおもしろかったです。元の世界の情報があまりにも少なすぎるので、あれ最後の方に入ってたら良かった気がする。

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俺様にゃんこ、極道のもふもふになる

 

新米ノラ猫のチビは、発泡スチロールで川に流されていたところをヤクザの神名木に救われた。怪我を負ってまで助けてくれた神名木に恩返しがしたいと神社でお祈りしてみたら、なんと人間の姿に大変身!実はそこは猫の守り神がおわす神社で、猫の恩返しに力を貸してくれるらしい。だが、相手に正体がバレて忌み嫌われると、毛玉になって消えてしまうという。短い生涯になっても俺様は恩返しをする!と、チビは神名木のもとに乗り込むが―!?(「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 世間知らずの捨て猫チビが、ひょんなことから人間のヤクザの男・神名木に命を助けられる。自分を助けるために怪我をしてしまった男になんとか恩返しをしたくて神社で祈ったら、人間の姿になってしまった!?人間に正体を知られたら毛玉になって消えてしまうと言われるが、それでも恩返しに行くことを決意して……!?

 タイトルからもっとトンデモなお話を想像していたけど、飼い主に捨てられたことを受け入れられない猫と女に裏切られて人間不信気味の極道が新たな居場所を見つけて寄り添っていくというちょっとほっこりできるお話でした。そのうち神名木だけじゃなくて組員たちまでが少しずつ絆されていって、家族っぽくなっていくのが楽しかった。

 チビ改めアザミの常識知らずな言動から来る勘違いやら正体を隠そうとして引き起こす騒動が微笑ましいんだけど、何気に神名木の勘違いの仕方も大概じゃない!?アザミの言い様でカラダを売ってたと勘違いするのはともかく、突っ込んだら反応とかで察してあげてほしい。猫であるがゆえにヤクザにも色眼鏡を掛けず、そして本能の赴くままに気持ちいいことを素直に受け入れてしまう。いろんな意味で「正体が猫」という設定がいろんなところに上手くつながっているなあと思いました。

 あと、猫側のバックアップ体制が微笑まし過ぎて。ラストの神名木にお説教するアザミの親友猫・キンメのシーンが個人的にお気に入りです。可愛すぎ……。

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異世界取材記 〜ライトノベルができるまで〜

 
東西

中堅ラノベ作家の俺は、編集からのオーダーである「無双とハーレム」を体験するため、KADOKAWAが用意したルートを使って異世界へ取材にやってきた。ガイドの獣人アミューさん、そして、「魔法理論」を勉強するため、わざわざ異世界転移してきたらしいラノベ作家志望のJKと、いざ取材旅行へ出発!だが、孤高無双の勇者は中二病こじらせた二刀流の少年だし、ハーレム三昧の魔王の正体は後輩の売れっ子ラノベ作家!?この取材、どう転ぶかわから…(編集)先生、宣伝足りねーよ!!こうだろ→しがないラノベ作家が取材がてら異世界を救う!?創作と現実が交錯するサクセスファンタジー開幕だ!!(「BOOK」データベースより)

 「異世界ラノベを書くためにライトノベル作家が取材で異世界に行く」のが普通の世界。コワモテの編集者に勧められて『無双』と『ハーレム』の取材をしに異世界にやってきたラノベ作家。現地のガイド・アミューさんや異世界で助けたラノベ作家志望のJKを連れ、“勇者”や“魔王”の取材に向かうが!?というお話。

 カクヨムで途中まで読んでいた連載なんですけど色んな意味でしょっぱなから破壊力が高いので気になるひとはとりあえず読むといいとおもいます。序章のラスト2行ズルいとおもうんですよほんとズルいんですよ設定の勝利だよね……!!

 世界観設定だけでも割と大勝利なのに、異世界転移モノのお約束を弄ったネタだけでなく、そこかしこから顔をだすラノベキャラ・ラノベ作家・編集のパロネタ/メタネタが全開でめちゃくちゃ楽しい。先輩作家のあの人やらこの人やら割と隠れてないし、勇者はキ○トさんだし魔王はどうみてもどっかの美少女作家だし!

 取材だけのつもりがだんだん異世界の事情に巻き込まれていく一行が、だんだんシリアスな展開になりつつもしっかりと取材魂だけは忘れてないのにニヤリとする。良い意味で「やりたい放題」な物語でありながら、最後はしっかり熱いバトルで〆てくるのが最高にずるかったです。

 それにしても元ネタの作家の人が浮かんでしまう時点で、最終決戦が仲良し作家同士がお互いをベタ褒めしながらペンで殴り合っているようにしか見えないのでなんだこの……なんだ……私はどんな顔してこれ読めばよかったんだ……。キノシタのあの絶妙なクズっぷりと絶妙に屈折したせんせーへの愛憎感が私物凄く好きなんですけど……なんなんですかね……困りますね……。最終決戦のシリアスなバトルシーンでそこかしこで「召喚(サモン)」が飛び交ってるの絶対意趣返しだと思いました(某ラジオ参照)。


 キノシタのCvは下野紘を希望します(気が早い)

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