ページ 43 | 今日もだらだら、読書日記。

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ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団

 

「わたしも、あなたを夫として受け入れるわ」これより二年の後、古の魔王再臨し、人類は滅ぶ。絶望の未来を塗り替えるため、“アレンヘムの聖女”セシリアと婚約し、最強の傭兵団“狂嗤の団”の団長となる道を選んだカレル。“アレンヘムの聖女”が持つ『自分の死を夢見る』という悪夢に希望の力を見いだしたカレルは、死の運命を回避する力を持った英雄として五芒国平定のため動き出す。一方その頃、幼くして女王の座を引き継いだ妹のため、暗愚を演じ続けていた王子ヴェッセルも権謀術数に長けた英雄として歴史の表舞台に姿を現す。玉座の頂を目指す英雄たちの叙事詩が今、幕を開ける! (「BOOK」データベースより)

アレンヘム公国の聖女・セシリアは2年後に魔王が復活し、自分が殺されるという予知夢を見てしまう。本来ならば人類が一致団結して臨まなければいけない事態だが、アインヘルム公国は隣国フライスランドと緊張状態にある。絶望的な事態を打開し、全ての国を一つにまとめるために提案されたのは、セシリアと最強の傭兵団“狂嗤の団”の団長の息子・カレルを婚約させることで……。

セシリアが見せる『自分が死ぬ時の夢』を鍵に、事態を打開していく展開が面白い。彼女の見せる未来は普遍的な未来ではなく行動の結果回避することが出来るので、夢を見ることでその死因を考察し対策を立てていく……という展開が楽しかった。

そしてカレルとセシリアの政略結婚でありながらも初々しいカップル具合がめちゃくちゃ好き。少しずつ段階を踏むように二人の心の距離が近づいていくのにきゅんきゅんするんだけど、その一方で初めてが同衾だったり、膝枕だったりとどこかアンバランスな距離感にときめいてしまう。政略結婚だったがゆえになかなか恋仲という感じになれないのが、もどかしくて可愛かった。

ふたりの他にも登場するキャラクターがいちいち魅力的で、彼らが動いているだけでも惹き込まれてしまう。特にカラー口絵からして裏主人公感をビンビンに出してる王子・ヴェッセルの食わせ者感は相当で、もっとがっつり絡んできて…!!と思わざるをえません。あと個人的には屈強な傭兵団の中で異彩を放つ歴代最強の切り込み隊長・コルネリウスとか是非掘り下げていただきたいです。男子の話ばかりしてますが女の子も可愛いのでホント新しいキャラが出るたびにニヤニヤしてしまいました。

物語自体は長い冒険譚のさわりという感じで、彼らが絶望的な未来と大きな敵にどうやって立ち向かっていくのか、とても楽しみです。

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後宮天后物語 〜簒奪帝の寵愛はご勘弁!〜

 

武将軍・志紅に淡い恋心を抱く公主の雛花は、幼馴染の彼のため、特別な神の力を授かることができる“天后”になろうと勉強に励む日々。ところがその志紅が、雛花の兄である皇帝・黒煉を殺して帝位を纂奪!しかも「今日から君は俺の妻だ」と告げ、雛花を後宮に拘束してしまう。大好きだった人の豹変に、雛花はあの手この手で脱走を図り、目的を探ろうとするが!? (「BOOK」データベースより)

小さな頃から恋心を抱いてきた幼馴染・志紅のため、空位になったままの"天后"を目指している雛花。ついにその能力に目覚めた…と思ったら、志紅が異母兄を殺して帝位を簒奪してしまった!?しかも、自分を皇妃として指命してきて…。

兄を殺され、憧れの人と腹心の部下には裏切られ、『天后になる』という夢も閉ざされかけて…失意のドン底に落とされた主人公が、自虐と嫉妬癖が生んだ観察眼の高さを武器に、簒奪事件の真相を知るために立ち上がる姿が印象的でした。安定安心の男前すぎる夕鷺ヒロイン。王家に脈々と受け継がれる神降ろしとそれを巡る物語はとても重たいもののはずなのに、雛花の自虐と嫉妬が一周回った前向きさと、どこかシリアスになりきれない展開でぷっと笑えるものになっているのが本当に楽しかったです。

幼い頃から想い合っているにもかかわらず、なぜかお互いの事となると勘の良さも観察眼も働かない志紅と雛花がお互いを想うが故にすれ違い続けるのがもどかしいんだけど同時に微笑ましくて仕方がない。これだけわかりやすく横でヤンデレムーブされてるのに気づかない雛花のニブさはいかにもという感じなんですが、あれだけガッツリ告白されておいてまだ誤解してる志紅お前もさーー!!雛花からわかりやすい好意を向けられると途端にヘタレになるのずるいと思います!

そしてあとがきのヤンデレ連呼と『旦那にしたくないことに定評のある夕鷺ヒーロー』が言い得て妙すぎて爆笑してしまった。確かにクロウ好きだけどリアルの旦那にはしたくない!!

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「好きラノ 2018年上期」投票します。

企画元:ラノベ人気投票『好きラノ』 - 2018年上期

 安定の滑り込みですいません……Twitterからの投票も受け付けられてますのでお気に入りの作品があるかたは是非ご参加ください!

amazon.co.jp:ロクでなし魔術講師と禁忌教典11
羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典11」
【18上期ラノベ投票/9784040724201】
第一部クライマックス感のあった10巻、新展開の11巻とどっちも文句なしに面白かった!!新展開になってどうなるかなとおもっていたけど、先生物としても学園ファンタジーとしても新展開で畳み掛けてきて、本当に楽しかった……あとイヴが地味に好きなので11巻たまらなかったです。
amazon.co.jp:引きこもり勇者VS学級委員長まおう
春日山 せいじ「引きこもり勇者VS学級委員長まおう」
【18上期ラノベ投票/9784047349698】
引きこもりになってしまった勇者を登校させようとやってきたのは、なぜか勇者の学校の学級委員長になった魔王だったというお話。名ばかりの強者ではない、世界最強の力を持つ少年少女が妙にスケールの大きいバトルをしながら揉めてるのは「学校に行くかいかないか」っていうのがおそろしく楽しかった。クライマックスの展開とか最高に好き。あと勇者と魔王の「友情以上恋人未満」って感じの関係性好きなんだよな〜。
amazon.co.jp:タタの魔法使い
うーぱー「タタの魔法使い」
【18上期ラノベ投票/9784048936118】
大量の死者を出したクラス単位の異世界転移という事件を、事件の当事者の身内がドキュメンタリー形式でまとめた作品。事件そのものもさることながら、「事件の当事者」「当事者の身内」という複数の人間のフィルタを通して明らかに恣意的に歪められていることを感じさせる文面になんともゾワゾワと座りの悪い感触が拭えない。一周回ってなんかいい話っぽくまとまってるのがまた物凄く座り悪いんだよな…いろいろな意味で他にはない読み口の作品でした。
amazon.co.jp:後宮天后物語 〜簒奪帝の寵愛はご勘弁!〜
夕鷺かのう「後宮天后物語 〜簒奪帝の寵愛はご勘弁!〜」
【18上期ラノベ投票/9784047349407】
失意のドン底に落とされたヒロインが、自虐と嫉妬を撒き散らしながら図太く立ち上がって事件の真実を追い求めていく展開が熱い。ストーリー的にはかなりシリアス分しかないはずなのに、要所要所でプっと笑えてしまうの本当にずるいなあと。安定の男前すぎる夕鷺ヒロインだったのでもう安心感しかなかった。
amazon.co.jp:ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団
師走トオル「ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団」
【18上期ラノベ投票/9784040726991】
自らの死期を見せる夢を鍵にして難曲を打開していく展開と、政略結婚でありながらもどこか初々しい主人公カップルがかわいい。物語はまだ長い冒険譚の序章といった感じでありながら、魅力的な登場人物が沢山登場して、彼らが動くだけでワクワクが止まらなくなっていく。特に第二の主人公的なムーブをしてたヴェッセルさんに期待が止まりません。早く主人公と絡むんだ!!
amazon.co.jp:脱サラした元勇者は手加減をやめてチート能力で金儲けすることにしました
年中麦茶太郎「脱サラした元勇者は手加減をやめてチート能力で金儲けすることにしました」
確認したら2017年発売だったので投票コードだけ抜いて残しておきます。
最強の勇者が会社を作って圧倒的なチート力とビジネスマンならではの駆け引きで世界を裏から牛耳る帝国に立ち向かう!!という話で主人公がとにかくソツなくスマートに物事を解決していくのが楽しかった。水戸黄門的というか、かつての夕方の日テレアニメ(シティハンターとかルパン三世とか)を見てるような楽しさある。2巻打ち切りなのが残念です。

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父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ

 

デスゲームは誰もが参加を渇望する一大エンタテインメントとなっていた。これは革新的で刺激的なデスゲームを次々と発表し、卓越した運営手腕と恐るべき強運で数々の危機を乗り切る中間管理職・黒崎鋭司の物語だ。上司の無茶ぶり、部下の期待、市場のニーズには応え続けなければならない。時には同業他社や参加者から恨みを買い、巨乳の美人部下から尊敬以上の愛情を向けられても、決して動じてはならない。なぜなら、愛する妻子の生活がかかっているから。そう―父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ。(「BOOK」データベースより)

デスゲームがエンタテインメントとして市民権を得た時代。デスゲーム会社の敏腕運営として名高い黒崎の裏の顔は子煩悩な父親だった。愛する妻と子には仕事を隠し、扱いにくい部下達に振り回され、美人で有能な部下ヒロインにちょっと惑わされたりしつつ、お父さんは今日も行く……というお話。

「デスゲーム」と「働くお父さん」という混ぜちゃいけない洗剤混ぜちゃった感満載のストーリーが、思った以上にコミカルで楽しい。物語の要所要所に挿入される妻とのイチャイチャと、親ばか全開のコメントが楽しくてニヤニヤしてしまう。特に娘に好きな男の子が〜と聞かされて我を忘れて社会科見学にやってきた娘の同級生を追い回す話は最初から最後まで爆笑してしまった。

あと、なんと言っても楽しかったのはデスゲーム荒らし「大正義」との対決。参加者が全員協力してゲームをクリアする、のが確かに最善の流れではあるけど、運営してる側としては確かにそんなことされたら困っちゃうよな。一致団結してしまった参加者達を前に、胃をキリキリさせながらあの手この手で団結を崩そうとする姿に笑い転げる一方、部下のミスの責任!担当者の唐突な休暇!仕事のミスで単身赴任の危機!とかいう流れには思わず世知辛さと中間管理職の悲哀を感じてしまい、大変趣深い。

同意の上でゲームが行われてるという世界観自体も、運営側の視点というのもあると思うけど、ゲームに参加している側の描写も薄いので「デスゲーム」という単語から想像される殺伐さはまったくなく、どちらかというと中間管理職の悲哀のほうがジワジワ来る感じ。冷酷無比なデスゲーム運営と思わせておいて、ハッタリと勢いで周囲を騙しつつ「敏腕運営」として綱渡りしていく、あまりにも普通のサラリーマンなお父さんの姿が印象的でした。大正義がただの愉快犯とか、良くも悪くも敵も味方も純粋な「善人」がいない感じもバランス良いのかもしれない。

ただぶっちゃけ、作中で一切わかりやすい死者が出てないので、デスゲーム要素を期待していると若干薄さを感じる気はする。題材が題材なのにほんとびっくりするほど死なない。面白かったですが。

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脱サラした元勇者は手加減をやめてチート能力で金儲けすることにしました2

 
六時

凱旋計劃社長・天堂雷輝は元勇者である。全ての島々が空に浮く魔導と科学の世界を股にかけ、彼とその部下たちは今日も巨額ビジネスを成していた。そして次なる商談は―「天災を鎮めればいいのですね。俺になら不可能ではありません」かつて雷輝に勇者としての力を授けてくれた亡き師匠“炎の勇者”エリザベート・アクスバリ。その故郷の島を襲う地震を止め、ハンター学園を再建させ、神へと挑め!ビジネスに立ち向かう雷輝社長は天変地異ですら止められない!!「代表取締役社長、推して参る!」男の中の男が征く手加減無用の超爽快ファンタジー傑作、第2弾!! (「BOOK」データベースより)

セオドーラから自分に戦い方を教えた勇者エリザベートと似たマガツの話を聞き、彼女の故郷の島に赴いた雷輝。その島には、シズルのかつての友人であった少女が理事を務めるハンター養成校があり、不審な地震の頻発によって経営難に陥っていた。天堂兄妹にとって「師」と呼べる存在であった夫婦との因縁と、シズルの友人である二人の少女達を巡るお話。

世界を裏から支配する「帝国」とビジネスで渡り合っていく1巻と違い、「勇者」としての雷輝の一面が強調されたお話でした。成長途中の少女たちを次代のために育成する姿や、妻の幻影を追い道を踏み外してしまった男が得た紛い物の力を、圧倒的な「本物」の力で打ち負かす展開は正統派に熱く、面白いんだけど、1巻の無法すぎるチート能力とビジネスマンならではの駆け引きでなんでもかんでもスマートにサクサク片付けていくノリは薄くなってしまっていて、少し残念。ビジネス要素も地震で安くなってる土地を買い占めて自分で解決してウハウハみたいな話だけだったので、ちょっとキレがなかったなあ。

むしろ、かつての師匠との対決や友人達とのやりとりもあり、「妹」シズルのマッド具合が輝いてた気がします。妹としての一面、マッドサイエンティストとの一面、そして年頃の少女としての一面の全てを併せ持つ彼女の姿が印象的。っていうか1巻でも彼女がなぜ雷輝の「武器」に変身するのかはふせられたままでしたけど、自分で改造しちゃったという設定には度肝を抜かされました。

個人的にはもうちょっと1巻のときのような短編何本かの詰め合わせみたいな話のほうが好みだったので3巻はまたそういうノリを期待したい……とおもったら打ち切りなのか。そうか……。

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典11

 

“フェジテ最悪の三日間”から始まった富国強兵の流れによって、アルザーノ帝国魔術学院に新学院長が就任する。武一辺倒の教育改革にグレンは反発するのだが…。そんな折、先の戦いの失態から、イヴが学院に左遷されてきて!?「いいわ。私も貴方に力を貸してあげる」―戸惑うグレンをよそに、改革の是非を懸けた『模範クラス』との決闘に向け、強化合宿を敢行。道を失ったイヴは、生徒たちとの交流を通じて、自分が本当は何を為したいのか気づきはじめ…。改革に伴う裏学院の開放。学院創世の闇に触れた時、代償とするのは、誰がための命―。 (「BOOK」データベースより)

 シリーズ新展開の11巻。前巻が第一部クライマックスのノリだったので息抜き的な話が入るかなと思ったんですが、前巻で色々と個人回フラグを立てまくってたイヴの話を中心に、しょっぱなからアツかったです。

 唯一信じて進んできた道を閉ざされ、彷徨うイヴが生徒達の指導を通してふたたび立ち上がる、再起の回。初登場のときから、嫌な役回りでありながらもどこか憎めないキャラで好きだったんだけど、今回は魔術師としての彼女の"強さ"を見せつけた上に物語も彼女自身もクローズアップされていて、凄く楽しかった!生徒達にツンデレ通じなくなってくあたりとか普通にニヤニヤするんだよなあ。

 同時に、教師モノとしてのロクアカもイヴの登場を機に次のステップに進んだ感じ。"邪道"の魔術使いであるがゆえにグレンでは指導できない部分を"正統派"の魔術使いであるイヴが実践的な指導をおこなうことで補うという、教師物としても新展開で楽しい巻だった。前巻から引き続き生徒たちが人間的にも魔術師的にも成長している姿が見て取れるのもとても良い。グレンの指導能力の限界が示された以上、今後はイヴとの二人体制で教えていくのかな、と思うんだけど実際どうなんだろうその辺。

 正直 恋の鞘当てに 追加入った 感じが すごく するぞ!!

 自分の目的というか「家」の事だけど最優先にして他のものを切り捨ててきた彼女が、家から切り離されて生徒たちと触れ合う事で自分が本当は何をしたいのか見つめ直していく姿が印象的で……だからこそ最後に見せた彼女の決意が重く、グっときた。なんかもう、最初憎まれ役で出てきた彼女がそういう覚悟を見せてくるのは、ズルいよね……。

 禁忌教典を巡る謎も深まって、新キャラもつかみは上々で、本当に続巻への期待がぐんぐん高まる1冊でした。楽しかった…!

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改装しました

 以前からブログのテンプレートをずっと更新しないで使っていたのが気になっていたのですが、先日まとめてWPのバージョンアップを行った際に割と大量にプラグインが死んだ&テンプレートの一部コードでエラーが出たのでこの機会に新しく作り直すことにしました。以前使ってたSandboxの本当に最低限のテンプレ感好きだったんですが4年間更新なし状態だったので、こちらのテンプレートに変更しました。

 Simplicity | 内部SEO施策済みのシンプルな無料Wordpressテーマ

 これの「2」のほう。まだ少し弄ってますが、とりあえずスマホでもサイト崩れはしなくなったはずです。何かエラーが出るようならこっそり教えていただけると幸いです。

 ついでにパーマリンクも変更したんですけど(リビジョンやらなにやらで番号が飛ぶのがどうしても気になってしまう)、これ、既に投稿した記事のURLも一緒に変わるんですな。リンク自体はリダイレクトで飛ばすプラグインがあったので助かったのですが、はてなスターだけは引き継げなかった。結構いろいろ押してもらってた時期があったので消えてしまうの残念だったのですが…。

↓以下、プラグイン関係のおぼえがき 続きを読む

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戦うパン屋と機械じかけの看板娘

SOW
 
ザザ

人型強襲兵器を駆り「白銀の狼」と呼ばれた英雄ルート・ランガートの夢はパン屋を開くこと。戦争が終わり、無事パン屋を営むルートだったが、その怖い顔のせいか、さっぱり売れない。そこで窮余の策で募集したウェイトレスとしてやってきたのは、ルートの軍人時代の愛機「アーヴェイ」のAIから生まれたという白銀の髪と赤い瞳を持つ美少女だった。(「BOOK」データベースより)

 顔が怖いのとお国の事情が絡んで閑古鳥を鳴らしていた元スゴ腕戦闘機乗りのパン屋が、「看板娘」の登場をきっかけに少しずつパン屋の売上を伸ばしていく。

 戦後の不安定な情勢下で様々な陰謀が蠢く中、武器をパンに持ち替えた男と様々な謎を秘めた機械仕掛けの少女が戦う!!という話がメインではある気がするんだけど、パンが売れたり売れなかったりで一喜一憂したりする日常パートが微笑ましくて楽しいので難しい話は抜きにパンが売れる話ずっと読んでいたいまである。序盤のワクワク感がすごい。

 あらすじだけ読んで機械仕掛けのヒロインが感情を得ていくような物語かと思っていたんだけどその課程は終わっていて、感情を得た機械がヒトの形を与えられ、自分の感情に振り回されながらも心優しき元相棒を振り回していくお話でした。儚げ美少女な外見とは裏腹に、不器用で物理攻撃力の高く主さま一直線な看板娘・スヴェンさんの行動が実に「元兵器」というかんじで、色々と融通が利かないのが大変良い。不器用に力任せに頑張る姿が可愛かったです。

 そしてコワモテでイカツい元軍人なのに主人公のルート(男)がヒロインに見える……。パンが売れなくて凹んだり色々と気遣いの人なのすごいヒロインだと思う。そして、スヴェンの男前ぶりもそうなんですけど全体的に主人公以外みんな肉食系というか攻気質ですよね。ジェコブとか久しぶりにショタ攻好きの血が騒ぎますよね……。

 スヴェンさんの可愛さ(とルートさんのヒロインぶり)については挿絵のザザさんが描かれた販促漫画の破壊力が凄いのでとりあえずこれ見てください。というかRTで回ってきたこれ見て買った。

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タタの魔法使い

 

2015年7月22日12時20分。弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」魔法使いの宣言により、中学校の卒業文集に書かれた全校生徒の「将来の夢」が全て実現。あらゆる願いが叶った世界―しかしそれは、やがて犠牲者200名超を出すことになるサバイバルの幕開けだった。第24回電撃小説大賞にて“大賞”を受賞した、迫真の異世界ドキュメント。(「BOOK」データベースより)

弘橋高校に現れた「タタの魔法使い」は、学園の人間全ての中学時代の卒業文集に書かれた「将来の夢」を実現させてしまう。生徒のうちの誰かの夢によって学校はまるごと異世界転移させられ、ある者は異能に目覚め、ある者は別の者の夢により姿を消し、ある者は異世界から戻らなかった。集団異世界転移事件の一部始終を当事者の肉親が聞き取りをしてドキュメントとしてまとめたという体の物語。

半数近い死者・行方不明者を出した異世界転移サバイバルが、エグい場面も多いながらなんとかかんとか人の絆と青春と友情と願いの物語に収まっているのが面白かった。恐ろしいばかりではない異世界の住民達との邂逅は熱かったし、「魔法使い」の居所に向かう道中なんかは結構普通に青春しててニヤニヤしてしまう。

でもなんというか、同時に、ものすごくイビツなものを感じるというか、「誰かにとって都合の良い物語」を読まされてる感じがするんですよね。外見は綺麗な話になってるんだけどツギハギ感というか、どす黒いものがはみ出してる感じがする。

首謀者である「タタの魔法使い」によって悪意的に整えられている部分と、ドキュメントを作成した「当事者の肉親」が善意的に歪めたであろう部分。そして「生還者」達が見なかったかもしれない、見ても口をつぐんでいるかもしれない部分。実際聞き取りの中心となった1-Aは一番被害がマシだったというので、他のクラスに目を向けたらもっと残酷な話がいくらでも転がっていたんだろうなあ。

あらすじを読んで想像したような人間関係がエグい話ではなかったのですが、なんというかこう、まったく別の意味で言葉にできない悪意とも言えないエグみを感じる物語で、そこが凄く面白かったです。しかし、最後の最後で2巻フラグ立ててたけどこれどう続くんだろう……。

ところで、これ本編とは関係ないんですけどメインとなる1-Aだけでも生徒名簿みたいなのほしかったです……いや最後の1P読んだら、とりあえず全員の設定洗い直したくなるでしょ……できれば卒業アルバム風で全員の顔写真つき一覧とか欲しさあったけど、やはり連載持ってる忙しい漫画家さんだとそういうの作画コスト高いんだろうか。

やっぱ文字だけでいいから生徒名簿ほしいです。次巻あるならぜひお願いします。

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引きこもり勇者VS学級委員長まおう

 

魔王の和平申し出により、勇者はいらない子になった?。そして引きこもりになってしまった彼の前に現れた少女は、学級委員長に就任した魔王!?毎日何かと訪ねてくる魔王は勇者の部屋にあるゲームに興味津々。一緒に遊んで打ち解けていく二人だったが、ある日魔王が再び学校へ来るよう言い出し、勇者はそれを断固拒否!やがて事態は勇者パーティと魔王軍を巻き込む一大事に!!引きこもりか登校か!?勇者と魔王のファンタジック・コメディ、開演!(「BOOK」データベースより)

 魔王に対抗できる「勇者」として育てられたにもかかわらず、魔王が和平を申し出てしまったせいで出番がなかった勇者。学校にも行かず、引きこもりとなった彼のもとにプリントを届けに来た同じクラスの学級委員長は、なんと当の「魔王」本人で…!?

 幼い頃から「勇者」として育てられたことや身に着けた能力のせいで平和になっても日常生活に馴染めない勇者、周囲の反対を押し切って人間との和平を実現した魔王。設定だけを羅列してみると二人とも結構大変な人生を歩んできているのにもかかわらずそういう重さは一切感じさせず、ただただ笑いに転嫁して「学校に行きたくない勇者」vs「学校に行かせたい魔王」の馴れ合いに終始してるのがとても楽しい。特に最終決戦には腹を抱えて笑ってしまった。

 ある時は冷たく追い返し、またある時は懐柔して……とやっているうちにすっかり仲良くなってしまった二人が、平和を乱そうとする勢力相手に協力したり、全力で遊んだり、本気の殴り合いをしたり。友情以上恋愛未満くらいの所で絆を築いていくのが良かった。そして、お互い全く「名ばかりの強者」ではないんだよなあ。敵対勢力を本気パワーで撃退する展開なんか俺TUEE的な爽快感すらある。しっかり設定に裏打ちされた安定感のある土台の上で、世界最強のバカどもがその本気の力でバカをやる、という構図が最高に楽しかった。

 ただ、個人的にどうしても気になってしまったんですが主人公、なんで「高尾山」に住んでるって設定なんでしょうね……地元市民としては「東京ディズニーランドトゥモローランドにある勇者の家」くらい無理があってどうしても気になってしまった。いやそれとも「高尾山東部」という表現が多発するので高尾山の周囲を含めた八王子市の西側が「高尾山」って地域になってるとおもっているのか(多分舞浜市東部、くらいのノリで『TDR東部』って言ってる雰囲気)。こういうのって作者さんはともかくとして編集からツッコミはいらないんですかね……ファミ通文庫の編集部って都内でしょ……。

 続巻があるなら「勇者母の魔法で人払いの結界を張ってる」とか「高尾山の所から入れる鏡面世界」とか「実はめちゃくちゃ勇者の家も観光地扱いされてる」とか……なんでもいいからなんかとにかく“現実の高尾山とは違う”みたいなフォロー欲しいなぁ。

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