セオドーラから自分に戦い方を教えた勇者エリザベートと似たマガツの話を聞き、彼女の故郷の島に赴いた雷輝。その島には、シズルのかつての友人であった少女が理事を務めるハンター養成校があり、不審な地震の頻発によって経営難に陥っていた。天堂兄妹にとって「師」と呼べる存在であった夫婦との因縁と、シズルの友人である二人の少女達を巡るお話。
世界を裏から支配する「帝国」とビジネスで渡り合っていく1巻と違い、「勇者」としての雷輝の一面が強調されたお話でした。成長途中の少女たちを次代のために育成する姿や、妻の幻影を追い道を踏み外してしまった男が得た紛い物の力を、圧倒的な「本物」の力で打ち負かす展開は正統派に熱く、面白いんだけど、1巻の無法すぎるチート能力とビジネスマンならではの駆け引きでなんでもかんでもスマートにサクサク片付けていくノリは薄くなってしまっていて、少し残念。ビジネス要素も地震で安くなってる土地を買い占めて自分で解決してウハウハみたいな話だけだったので、ちょっとキレがなかったなあ。
むしろ、かつての師匠との対決や友人達とのやりとりもあり、「妹」シズルのマッド具合が輝いてた気がします。妹としての一面、マッドサイエンティストとの一面、そして年頃の少女としての一面の全てを併せ持つ彼女の姿が印象的。っていうか1巻でも彼女がなぜ雷輝の「武器」に変身するのかはふせられたままでしたけど、自分で改造しちゃったという設定には度肝を抜かされました。
個人的にはもうちょっと1巻のときのような短編何本かの詰め合わせみたいな話のほうが好みだったので3巻はまたそういうノリを期待したい……とおもったら打ち切りなのか。そうか……。
▼ 最近の記事
ロクでなし魔術講師と禁忌教典11
シリーズ新展開の11巻。前巻が第一部クライマックスのノリだったので息抜き的な話が入るかなと思ったんですが、前巻で色々と個人回フラグを立てまくってたイヴの話を中心に、しょっぱなからアツかったです。
唯一信じて進んできた道を閉ざされ、彷徨うイヴが生徒達の指導を通してふたたび立ち上がる、再起の回。初登場のときから、嫌な役回りでありながらもどこか憎めないキャラで好きだったんだけど、今回は魔術師としての彼女の"強さ"を見せつけた上に物語も彼女自身もクローズアップされていて、凄く楽しかった!生徒達にツンデレ通じなくなってくあたりとか普通にニヤニヤするんだよなあ。
同時に、教師モノとしてのロクアカもイヴの登場を機に次のステップに進んだ感じ。"邪道"の魔術使いであるがゆえにグレンでは指導できない部分を"正統派"の魔術使いであるイヴが実践的な指導をおこなうことで補うという、教師物としても新展開で楽しい巻だった。前巻から引き続き生徒たちが人間的にも魔術師的にも成長している姿が見て取れるのもとても良い。グレンの指導能力の限界が示された以上、今後はイヴとの二人体制で教えていくのかな、と思うんだけど実際どうなんだろうその辺。
正直 恋の鞘当てに 追加入った 感じが すごく するぞ!!
自分の目的というか「家」の事だけど最優先にして他のものを切り捨ててきた彼女が、家から切り離されて生徒たちと触れ合う事で自分が本当は何をしたいのか見つめ直していく姿が印象的で……だからこそ最後に見せた彼女の決意が重く、グっときた。なんかもう、最初憎まれ役で出てきた彼女がそういう覚悟を見せてくるのは、ズルいよね……。
禁忌教典を巡る謎も深まって、新キャラもつかみは上々で、本当に続巻への期待がぐんぐん高まる1冊でした。楽しかった…!
改装しました
以前からブログのテンプレートをずっと更新しないで使っていたのが気になっていたのですが、先日まとめてWPのバージョンアップを行った際に割と大量にプラグインが死んだ&テンプレートの一部コードでエラーが出たのでこの機会に新しく作り直すことにしました。以前使ってたSandboxの本当に最低限のテンプレ感好きだったんですが4年間更新なし状態だったので、こちらのテンプレートに変更しました。
これの「2」のほう。まだ少し弄ってますが、とりあえずスマホでもサイト崩れはしなくなったはずです。何かエラーが出るようならこっそり教えていただけると幸いです。
ついでにパーマリンクも変更したんですけど(リビジョンやらなにやらで番号が飛ぶのがどうしても気になってしまう)、これ、既に投稿した記事のURLも一緒に変わるんですな。リンク自体はリダイレクトで飛ばすプラグインがあったので助かったのですが、はてなスターだけは引き継げなかった。結構いろいろ押してもらってた時期があったので消えてしまうの残念だったのですが…。
↓以下、プラグイン関係のおぼえがき 続きを読む
戦うパン屋と機械じかけの看板娘
顔が怖いのとお国の事情が絡んで閑古鳥を鳴らしていた元スゴ腕戦闘機乗りのパン屋が、「看板娘」の登場をきっかけに少しずつパン屋の売上を伸ばしていく。
戦後の不安定な情勢下で様々な陰謀が蠢く中、武器をパンに持ち替えた男と様々な謎を秘めた機械仕掛けの少女が戦う!!という話がメインではある気がするんだけど、パンが売れたり売れなかったりで一喜一憂したりする日常パートが微笑ましくて楽しいので難しい話は抜きにパンが売れる話ずっと読んでいたいまである。序盤のワクワク感がすごい。
あらすじだけ読んで機械仕掛けのヒロインが感情を得ていくような物語かと思っていたんだけどその課程は終わっていて、感情を得た機械がヒトの形を与えられ、自分の感情に振り回されながらも心優しき元相棒を振り回していくお話でした。儚げ美少女な外見とは裏腹に、不器用で物理攻撃力の高く主さま一直線な看板娘・スヴェンさんの行動が実に「元兵器」というかんじで、色々と融通が利かないのが大変良い。不器用に力任せに頑張る姿が可愛かったです。
そしてコワモテでイカツい元軍人なのに主人公のルート(男)がヒロインに見える……。パンが売れなくて凹んだり色々と気遣いの人なのすごいヒロインだと思う。そして、スヴェンの男前ぶりもそうなんですけど全体的に主人公以外みんな肉食系というか攻気質ですよね。ジェコブとか久しぶりにショタ攻好きの血が騒ぎますよね……。
スヴェンさんの可愛さ(とルートさんのヒロインぶり)については挿絵のザザさんが描かれた販促漫画の破壊力が凄いのでとりあえずこれ見てください。というかRTで回ってきたこれ見て買った。
タタの魔法使い
弘橋高校に現れた「タタの魔法使い」は、学園の人間全ての中学時代の卒業文集に書かれた「将来の夢」を実現させてしまう。生徒のうちの誰かの夢によって学校はまるごと異世界転移させられ、ある者は異能に目覚め、ある者は別の者の夢により姿を消し、ある者は異世界から戻らなかった。集団異世界転移事件の一部始終を当事者の肉親が聞き取りをしてドキュメントとしてまとめたという体の物語。
半数近い死者・行方不明者を出した異世界転移サバイバルが、エグい場面も多いながらなんとかかんとか人の絆と青春と友情と願いの物語に収まっているのが面白かった。恐ろしいばかりではない異世界の住民達との邂逅は熱かったし、「魔法使い」の居所に向かう道中なんかは結構普通に青春しててニヤニヤしてしまう。
でもなんというか、同時に、ものすごくイビツなものを感じるというか、「誰かにとって都合の良い物語」を読まされてる感じがするんですよね。外見は綺麗な話になってるんだけどツギハギ感というか、どす黒いものがはみ出してる感じがする。
首謀者である「タタの魔法使い」によって悪意的に整えられている部分と、ドキュメントを作成した「当事者の肉親」が善意的に歪めたであろう部分。そして「生還者」達が見なかったかもしれない、見ても口をつぐんでいるかもしれない部分。実際聞き取りの中心となった1-Aは一番被害がマシだったというので、他のクラスに目を向けたらもっと残酷な話がいくらでも転がっていたんだろうなあ。
あらすじを読んで想像したような人間関係がエグい話ではなかったのですが、なんというかこう、まったく別の意味で言葉にできない悪意とも言えないエグみを感じる物語で、そこが凄く面白かったです。しかし、最後の最後で2巻フラグ立ててたけどこれどう続くんだろう……。
ところで、これ本編とは関係ないんですけどメインとなる1-Aだけでも生徒名簿みたいなのほしかったです……いや最後の1P読んだら、とりあえず全員の設定洗い直したくなるでしょ……できれば卒業アルバム風で全員の顔写真つき一覧とか欲しさあったけど、やはり連載持ってる忙しい漫画家さんだとそういうの作画コスト高いんだろうか。
やっぱ文字だけでいいから生徒名簿ほしいです。次巻あるならぜひお願いします。
引きこもり勇者VS学級委員長まおう
魔王に対抗できる「勇者」として育てられたにもかかわらず、魔王が和平を申し出てしまったせいで出番がなかった勇者。学校にも行かず、引きこもりとなった彼のもとにプリントを届けに来た同じクラスの学級委員長は、なんと当の「魔王」本人で…!?
幼い頃から「勇者」として育てられたことや身に着けた能力のせいで平和になっても日常生活に馴染めない勇者、周囲の反対を押し切って人間との和平を実現した魔王。設定だけを羅列してみると二人とも結構大変な人生を歩んできているのにもかかわらずそういう重さは一切感じさせず、ただただ笑いに転嫁して「学校に行きたくない勇者」vs「学校に行かせたい魔王」の馴れ合いに終始してるのがとても楽しい。特に最終決戦には腹を抱えて笑ってしまった。
ある時は冷たく追い返し、またある時は懐柔して……とやっているうちにすっかり仲良くなってしまった二人が、平和を乱そうとする勢力相手に協力したり、全力で遊んだり、本気の殴り合いをしたり。友情以上恋愛未満くらいの所で絆を築いていくのが良かった。そして、お互い全く「名ばかりの強者」ではないんだよなあ。敵対勢力を本気パワーで撃退する展開なんか俺TUEE的な爽快感すらある。しっかり設定に裏打ちされた安定感のある土台の上で、世界最強のバカどもがその本気の力でバカをやる、という構図が最高に楽しかった。
ただ、個人的にどうしても気になってしまったんですが主人公、なんで「高尾山」に住んでるって設定なんでしょうね……地元市民としては「東京ディズニーランドトゥモローランドにある勇者の家」くらい無理があってどうしても気になってしまった。いやそれとも「高尾山東部」という表現が多発するので高尾山の周囲を含めた八王子市の西側が「高尾山」って地域になってるとおもっているのか(多分舞浜市東部、くらいのノリで『TDR東部』って言ってる雰囲気)。こういうのって作者さんはともかくとして編集からツッコミはいらないんですかね……ファミ通文庫の編集部って都内でしょ……。
続巻があるなら「勇者母の魔法で人払いの結界を張ってる」とか「高尾山の所から入れる鏡面世界」とか「実はめちゃくちゃ勇者の家も観光地扱いされてる」とか……なんでもいいからなんかとにかく“現実の高尾山とは違う”みたいなフォロー欲しいなぁ。
自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?3
裏世界最強の男である事実を隠し、ゲーム至上主義の学び舎―私立獅子王学園に通う砕城紅蓮は、全校を巻き込んだ『生徒会選賭』に参加させられた。だが、最終選の“フェイクポーカー”で、妹の可憐が御嶽原水葉と生徒会長・白王子透夜の奸計により敗北。兄妹の接触が禁じられ、最愛の妹を傷つけられた紅蓮は、生徒会全員に対して宣戦布告した。「徹底的に潰して、わからせてやるよ。お前が捨てたもの、お前が傷つけたもの、それがどれほど俺にとって尊く、かけがえのないものだったのかを」―学園を支配する獅子たちはこの日、『不敗の伝説』の悪魔じみた策謀に翻弄されることになる。今、最も熱い学園ゲーム系頭脳バトル、神話再誕の第三弾!(「BOOK」データベースより)
御嶽原水葉との勝負に敗北し、兄との接触を禁止されてしまった可憐。徹底して勝負を避けて来た紅蓮は、その命令を撤回させるため、生徒会との全面対決に打って出る。そこで提示されたのは5vs5の団体戦で……。
生徒会役員との団体戦がメインで、脱出ゲームや人狼ゲームとかその手のやつが好きな人にも勧めたい巻。特に終盤のメインとなる、人狼亜種ゲーム面白かった。
今までずっと砕城兄妹の関係性が中心だったけど、兄との接触ができないことに苦しみ、紅蓮と共闘することになった仲間たちに文句つけつつも裏からトリックスター的な役割を担う可憐の姿が新鮮。利害関係の一致的な部分があるとしても兄関係以外で友人がいたことにほっとしました……。
紅蓮とチームを組むことになった楓・桃香・朝人のキャラクターがぐっと掘り下げられて、そういう意味でも楽しいお話だった。楓の葛藤と成長を通して、紅蓮の主観からでも信奉者である可憐からの視点からでもない「遊戯者」としての紅蓮の姿が見えてくるのが面白い。あと、桃香は良い意味でワイルドカード的な存在になりましたね……単体では弱いけど、団体戦の中に混ぜてみると気負いなくナチュラルに場をひっかきまわしてくれる姿が楽しい。
行動目的が明らかになった朝人は2巻までのどこか得体のしれない雰囲気から一転して、予想以上に人間らしいキャラになったなあ。“信頼できる人間”ではなく、“利害の一致を見て結託している”という相互認識を元にして生まれた紅蓮との共闘関係が大変美味しかった。
それはそれとして「イイネ稼ぎゲーム」が最高にご褒美です本当にありがとうございました。
ロクでなし魔術講師と禁忌教典10
“メギドの火”という術式を使ってフェジテの壊滅を目論む魔人。魔人を倒す秘策はグレンが持っているというが、当のグレンはどこか浮かない顔。また、ルミアの素性が生徒達の間に知れ渡ってしまうこととなり……あとがきで「折り返し」と触れられているとおり、まさに第一部クライマックスという感じの巻。
今まで出会った全ての味方や好敵手たちが力を合わせてフェジテを滅ぼさんとする巨大な魔に立ち向かうという、最高に燃える展開。いやもう、グレンたちや特務分室の面々やグレンの教え子達(特にギィブル)がかっこいいのはともかくとして、ハーレイ先生があんなかっこいいのずるいでしょ……ハーレイ先生、いつもグレンに食って掛かるいけすかない頭でっかち教師というイメージが強かっただけに、この窮地に打って変わって教え子たちを守るために率先して命を張る姿がかっこよすぎました。
そして、グレンの教え子達がそれぞれ人間的にも「魔術師」としても成長した所を見せる一方で、その教えを受けなかった生徒たちの葛藤が良かった。一度は恐怖に負けてルミアや周囲の状況に責任転嫁して逃げ出して、それでもなんとか震えながらも立ち上がる展開が熱い。自分を顧みずに戦うルミアの姿が生徒達に勇気を与え、その生徒達の声が、今までルミアが押し隠してきた自分の気持ちに素直になるための勇気を与えるという流れが、本当に最高でした。
ルミアにとってもグレンにとってもこれまで向き合えなかった「過去」と向き合うための話で、システィーナや生徒達にとっては多分ひとつ成長して「前」に踏み出すための話で、だからこそそんな中でただ一人、立ち上がる勇気を持てずに彷徨うイヴの姿が印象的。なんか個人的には本当に憎めない人なんだよな……終盤の出会いが再起の礎となるのを信じて、そのお話は改めてじっくりやってほしい。これまでの因縁を精算しつつ今後への伏線も忘れない第一部クライマックスで、これから始まる後半戦の物語が楽しみでなりません。
それにしても色々見どころはあったけど空の上と地上という離れた場所に居ながら連携しちゃうアルベルトとグレンのツーカーっぷりが個人的に最高のご褒美です本当にありがとうございました!!!あとジャティスがほんとうにジャティスすぎて好き。
博多豚骨ラーメンズ
アニメが面白かったので手を出しました。殺し屋が市民の3%を占めると言われている街・福岡を舞台に、様々な『殺し屋』たちがそれぞれの獲物を求めて暴れまわるお話。
「これは好きそうな気配がするぞ」とおもって思わず原作読み始めたら予想以上に馬場と林の関係性が大好きなやつだったのでとても満足しました色々な意味で。林が女装している理由とか、予想以上に過去の自分へのコンプレックスやらなにやらを拗らせてる感じで大変好きです。幼い頃から与えられることを知らないで育った林が、はじめて見返りなしに何かを与えてくれた馬場に対して段々懐いていくのが大変ニヤニヤするし、それを踏まえてのクライマックス後のやりとりは反則じゃないですかね……エピローグで完全にただのケンカップルになってるのなんなんだ……ファンサービスかなんかかな(誤解)。
普段は普通の人間でありながら仕事を請け負えば淡々とそれをこなしていく『殺し屋』たちの裏表のある世界。ひょんなことから殺人請負会社に就職してしまった一般人・斉藤が自分の過去を思い悩みながらも慣れない福岡の街と彼等が裏の世界で巻き起こす事件に翻弄されていく姿が楽しかったです。アニメでは今の所(確かまだ3話)軽くしか触れられていない、登場人物それぞれの事情がわりとしっかり描かれているのでアニメから入っても楽しめんじゃないかと。(というか斉藤の過去の話はわりあい1巻のキモだと思うんだけど触れないままでどう落とすんだろう…)
それぞれが追いかけていた別々の事件が、最終的に一つの大きな事件へと流れ着いていくという流れがとても好きで。色々な所でニアミスしていた彼等が少しずつ同じ目的の為に集まっていくのに、とてもわくわくする。そして、一件落着とおもいきや、一気にこれまでの展開を疑い返す羽目になるような終わり方。「どこまで」が「誰」の手のひらの上だったのか?最後の最後で煙に撒くようなおわりかたがとても良かったです。
受賞作ということもありわりかし綺麗に1冊で終わってる感じなので2巻はどう続けるのかな。続きも楽しみ。
幸運なバカたちが学園を回す1 〜豪運ザコとカワイイ幼馴染〜
矢内総流はかなり特異な運の持ち主だ。たとえば、ソシャゲでお気に入りのキャラが欲しくてガチャを回せば、まったく興味の欠片もないSSRを引いてしまうような、いわゆる“要らない幸運を引く”体質だった。そんな、人とは違う妙ちくりんな幸運を持った総流が―すべてが“運”で決まる学園に入学してしまった!時間割、食堂のメニュー、席替え、試験…学生生活に欠かせない、ありとあらゆるものが運試しによって決まるというとんでもない学園。そんな学園で総流は、小学校以来の幼馴染と再会する。…が、総流にとっては、それすらも“要らない幸運”だった!?これは、全然嬉しくない幸運を持つ少年と、愉快な仲間の物語。 (「BOOK」データベースより)
ガチャ運が全ての学園で、「要らない幸運」ばかりを引き寄せてしまう主人公とちょっと運の偏ったクラスメイトたちが運に振り回されつつも楽しい(?)学園生活を送るお話。
後述する時間割等の問題は置いておいて、ガチャを回すための「ポイント」がランダムで現金だけでなくいろんなもので消費されたり(カロリーガチャを死ぬほど回したい)、集団での意見統一ができればガチャの内容を変更できたり…と、割合様々な抜け穴のある学園のガチャシステムが面白い。「要らない幸運」を引き寄せる主人公を筆頭に各キャラクターたちにガチャ運の偏りがあり、それを戦略的に利用していく展開も楽しかったです。
主人公・総流とその悪友である和光、幼馴染ヒロインであるレナとの関係性はまあ悪友萌え幼馴染ヒロイン好きとしては普通に美味しいやつなんですけど、しっかりものの義妹・みらいとの兄妹関係がなにげに好きでした。しかしガチャ産の義妹とは一体何なのか…。あと、徳光をめぐる学食ガチャのやりとりが楽しい。本人にとっちゃ笑い事じゃないだろうけど。
ガチャをめぐるあれやこれやでバタバタしつつ、中心ではわりと真面目に「幼馴染との関係改善」を軸にラブコメしてるんだよなあ。軽口を叩き合いつつもわりと真面目に相談に乗ってくれる仲間たちが印象的でした。問題の「告白」に関しては流石にどうしてそれで「告白」だと思ってもらえると思った……なんですけど……。前後の文章の意味が理解できなくて三度見した。バカにありがちな思考の飛躍にしたって流石にもうちょっと言い様があるでしょうよ……。
あと、これ作中でも申し訳程度に突っ込まれてるけど、時間割までガチャ運に左右させてしまう(6時間ぶっとおし腹筋とか、まだ習ってない単元の科目を受講させられるとか、毎日自習を引きまくるとか)のは流石に教育機関として破綻してない?いくら架空の学校とはいえ、これがまかり通る世界観はちょっと嫌だなあ。特に物語の序盤は割と主人公やヒロインの「引きの悪さ」を笑うような展開が連続するため、ちょっと笑いのツボが合わなくてしんどかったです。
最後のオチが、何が何でも目当てのSSRを引かなければいけない状況で、「一番良いところで珍しく運が味方してくれる」みたいなご都合展開じゃなかったのは良かったなあと。主人公の「本人にとって要らない高レアを引いてしまう」という設定が完璧にハマっていて、挙句に「もう要らないと思った途端に来る」というガチャあるあるも踏まえていて大変趣深かった。
物欲センサーって、あるよね……。