序盤は「腐男子」と「腐女子」がお互いの趣味や関係を周囲に隠しながら「オタク楽しい!!」する話で、それがだんだん「描き手」と「読み手」の話になり、「教師」と「教え子」の恋のお話、初めて担任になった先生と未来に向けて悩む高校生がお互いの道に迷いながら共に歩もうとする恋愛と青春の話になっていく。タイトル通りにオタクネタをふんだんに盛り込みながら、二人の関係の変化に従って物語も色とりどりに変化していくのがとても楽しかった。
朱葉が同人を一時引退してからは恋愛と青春へのふり幅が大きくなったけど、お互いに一定の線を引きつつ「好きなもの」にどこまでも真摯な二人の姿が印象的でした。あと、書籍版感想でも書いたけどとにかくリアルタイムに流行った作品のネタを詰め込んでいく姿勢がどこまでもWeb小説という今を生きるメディアならではでめちゃくちゃ楽しい。旬を過ぎても一般的なオタクの話として楽しくはあるんだけど、リアルタイムで読むのはテレビアニメのリアルタイムTwitter実況みたいな中毒性あるよね。SideMの2ndライブの話がライブの翌日にアップされてた話をまたする。
それにしてもメイン2人の関係も良かったし、両想い度が上がっていくにつれ残念なオタクでありつつもいちいち良い所を攫って行くふだせんに「そういうとこだぞ!!!!!」するの最高に楽しかったけど、個人的には最初は当て馬的な感じででてきた幼なじみの太一とクラスの軽薄な男子・都築が気になって仕方なかったです。特に太一は都築と同部という繋がりで再登場してからが本当に好きで。もうカップリングになっちゃいなよ!!!と思うがマリカさんと都築くんの組み合わせも好きなので僕は私は。
▼書籍版感想
ごく普段の腐女子・早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来た...
【Web版】腐男子先生!!!!!
作者: 瀧ことはごく普通の腐女子と、ごく普通の腐男子が出会った。イベント会場で。
ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は高校の教え子と教師だったの……でした。
2018年3月、高校卒業とともに、完結。
卒業おめでとう。
そして、ありがとう!!!!!
ジャンル:現実世界〔恋愛〕腐男子先生!!!!!|今日もだらだら、読書日記。[著]瀧 ことは [絵]結城 あみの
▼Amazon
腐男子先生!!!!! (ビーズログ文庫アリス)|Amazon瀧 ことは,結城 あみの (著)
KADOKAWA
発行:2017-06-15
【Web版】アビス・コーリング〜元廃課金ゲーマーが最低最悪のソシャゲ異世界に召喚されたら〜
作者: 槻影――君はその闇に立ち向かえるか!?
気がつくと僕は、ランダムで召喚される『眷族』を使って冒険するソーシャル・ゲーム『アビス・コーリング』に酷似した世界にいた。
まことしやかにささやかれる運営による確率操作、搭載された類稀な物欲センサーに課金必須のゲームバランス! 開き直って自ら奈落(アビス)を名乗る豪胆さ! 最強の集金システムと呼ばれ、数百万のユーザー達をどん底に叩き落とした末、法整備によりサービス終了した最低最悪のゲームに似た世界で、僕はかつてプレイヤーだった頃にやり残した事を成し遂げるため、再び召喚士(コーラー)として立ち上がった。
これは――闇に挑む勇敢なる召喚士達の物語。序盤(というかファミ通文庫版1巻分)では最初に引いた眷属一人でほぼ無双出来てしまっていてぱっと読み俺TUEE感すらあるんだけど、なろう版では読み進めるごとに「課金前提ゲーなのに課金できない」「なかなか石が溜まらない」「ピックアップが一切ない」「主人公の引きが明らかに悪い」がジワジワと効いてくる。ガチャが引けない、戦力がなかなか強化できない、協力ゲーなのに主人公がソロ思考、死にプレイが出来ないという難点を最初に引いた眷属と気持ち悪いくらいのゲーム知識でなんとか補う感じ。そういう意味で、主人公が攻略動画投稿やブログをやってた設定は先に出した方が解りやすかった気がする。
青葉以外の人間をNPCとして雑に扱う主人公の性格にもんやりすることもあったけど、その分青葉の意を上手くくみ取れずに戸惑う姿が面白かったし、なんだかんだでこの世界が「現実」であることをどこかで受け入れられなかった姿が印象的でした。コミュ能力が低く最初の引きはそこそこだったがガチャ運が悪くゲーム知識だけは豊富なブロガーとコミュ能力が高くガチャ運あるが最初の引きとゲーム知識のない青葉という対比が面白かったです。
ゲーム知識で俺つえーしたいのではなく、あくまで「ガチャを回したい」「もう一度このゲームを楽しみたい」という方向にオチが付くのも良かったなあ。
文庫5〜6巻分くらいの分量で綺麗にまとまってたのでファミ通文庫は頑張って最後まで書籍化してほし………かったんですが…。良くも悪くも「面白くなる前の部分しか書籍化できなかった」という印象なのがかなしい。
▼書籍版の感想
アビス・コーリング 元廃課金ゲーマーが最低最悪のソシャゲ異世界に召喚されたら|今日もだらだら、読書日記。[著]槻影 [絵]桜木 蓮
気がつくと僕は、ランダムで召喚される『眷族』を使って冒険するソーシャル...
▼amazon
アビス・コーリング 元廃課金ゲーマーが最低最悪のソシャゲ異世界に召喚されたら (ファミ通文庫)|Amazon槻影,桜木 蓮 (著)
KADOKAWA
発行:2017-12-29
幼なじみが絶対に負けないラブコメ
著二丸 修一絵しぐれうい幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。…でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる!普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺だけに笑顔で会話してくれるんだぜ!これもう完全に脈アリでしょ!ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!?俺の初恋だったのに…。失意に沈む俺に黒羽が囁く―そんなに辛いなら、復讐しよう?最高の復讐をしてあげようよ―と。(「BOOK」データベースより)
幼なじみ・黒羽の告白を袖に振って、現役美少女高校生作家・白草に片思いをしていた丸末晴。結構いい感じに距離を縮めていると思っていたのに、白草に付き合っている相手が居ると知ってしまう。意気消沈する末晴の前に現れた黒羽は、「白草に復讐しよう」と提案して……?
これは面白かったー!!恋愛感情をこじらせた主人公とヒロインたちが、本当は相思相愛の筈なのに空回りしてお互いに足を引っ張り合って両思いになるタイミングを逃し続ける姿がめちゃくちゃ楽しい。とにかくどのキャラクターたちも魅力的で、彼ら彼女らが繰り広げるテンポの良い会話を追っているだけでも楽しかった。
「初恋」というたった一度のトクベツな感情を持て余し、それ故にあらぬ方向に向かって暴走していく三人の様子が楽しく、同時に甘酸っぱい。好きだからこそ許せない、許せないけれどやっぱり嫌いになれない!と、お互いにお互いを牽制しあっては後悔で身を焦がす、もどかしいやりとりがたまらなく滑稽であり、たまらなく愛しかった。すれ違ってるだけで黒羽とも白草とも最初からお互いの好感度がMAXみたいなところあるのでわりと読んでる方としてはもどかしく、特に幼なじみの黒羽とのやりとりには何度「もう早くくっついちゃえよ!!!」状態ではあったのですが、同時にタイトルがこんななのにもかかわらずかなりギリギリまでどっちに転ぶかわからないデッドヒートを繰り広げているので気が抜けないし、三角関係モノだけどどっちのヒロインもおざなりにならず同時に主人公の心の動きにも優柔不断さを一切感じさせず(むしろ主人公の対応は最初から最後まで誠実ですらある)、なおかつどっちともくっつかないというさじ加減が絶妙でした。っていうかこれ、経緯を考えるとどっちに転んでもタイトル間違ってはいないのかな……!?
ヒロインふたりも可愛いけど、周囲を彩る男キャラクターたちが魅力的なのも更にポイント高い。悪友・哲彦との気のおけない軽妙なやりとりには思わず男のケンカップル好きとしてニヤニヤしてしまうし、そんな哲彦が末晴の事を手のひらで転がしつつも重すぎない期待を向けてくるのがたまらなく良い。あと白草を巡る恋のライバルである阿部先輩がまた良いキャラなんですよね……末晴が封印してしまったとある「才能」に対して阿部が抱く嫉妬とも憧憬とも言える複雑な感情が、大変に好きだし、最後に哲彦とふたりで末晴の話をする場面とか性癖に刺さりすぎてもうね。
なにより、彼ら彼女らからの期待を一身に受けて、時には逃げて、それでも最後はしっかりとキメてくれる主人公・末晴がかっこいい!過去に大きな挫折を経験していて、まだそこから立ち直れていなくて、それでもそれが「好きな女の子のため」であれば周囲の力を借りつつもそれを乗り越えることが出来る。普段はどんなにかっこ悪くても情けなくても大事なところで道を誤りはしない。王道ど直球で一生懸命な主人公像が清々しく、アツかったです。
ヒロイン2人の水面下でのやりとりは剣呑すぎてちょっと怖いところもあったけど、素直にキャラクターたちの会話劇を楽しめるお話で楽しかった。次があるならヒロインが増えそうな気配だけど、どうなるんでしょうか。あんまりヒロイン増えるとしっちゃかめっちゃかしそうだけど、続きがあるなら読んでみたい。
ロクでなし魔術講師と追想日誌3
魔術学院時代の後輩に振り回されたり、生徒会が主催する、学院の体験学習会を任されたり……そして特務分室時代のグレンのエピソードも描かれる「ロクでなし魔術講師〜」シリーズの番外編シリーズ第3巻。
グレンの学生時代の後輩・ロザリーが受けた『依頼』につきあわされる『魔導探偵ロザリーの事件簿』、本編に出てこないお茶目キャラに主人公振り回されるシリアス度0%な頭の悪い短編ということでTHE・富士見ファンタジアの短編集という感じがすごい。努力家だが魔法はからきしでナチュラル不遜で考えが浅いポンコツ後輩・ロザリーが巻き起こす騒動にどんどん周囲が巻き込まれていくのが楽しくてたまらない。ラストでしっかりフラグ立ててきたけど、これは今後も短編集の方でシリーズ化してほしい。
そして、生徒会からの頼みでグレンが学院外の参加者達に魔術のなんたるかを説く『魔術学院わくわく体験学習会』がグレンの教師としての本領発揮感あって超楽しかった。学院内でも特に無茶苦茶な講師達を集めて暴れさせた後、最後にしっかりグレンが綺麗にまとめておいしいところを持っていくのが大変ズルい。最低限の労力で魔術の「怖さ」も「楽しさ」もしっかり刻み付けてしまうところが流石でした。
グレンの特務分室時代のエピソードを描く過去編『White Dog』は、理想と現実のギャップに悩むグレンのお話。グレンを立ち直らせようとするセラや、まだお互いに相容れない感をぷんぷん漂わせているアルベルトとのやり取りもよかったけど、イヴの不器用な上司っぷりが大変可愛かったです。いや本当に不器用可愛いなこの人……。
ようこそ実力至上主義の教室へ11
著衣笠 彰梧絵トモセシュンサク初めて出た退学者の衝撃冷めやらぬ中、1年最後の特別試験『選抜種目試験』がついに告知された。内容は総合力が問われるもので各クラスは筆記試験、将棋、トランプ、野球等、勝てると思う種目を10種選抜。本番では1クラスを相手に、ランダムに選択された7種の種目で争うというものだ。また各クラスには1名司令塔が存在し、勝てば特別な報酬が得られるが負ければ退学となるらしい。綾小路は自ら司令塔に立候補。そして坂柳が望んだ通り、AクラスとCクラスとの試験対決が決定する。「だが私は楽しみになったぞ綾小路。これでやっと、おまえの実力を見られるんだからな」綾小路VS坂柳の激戦必至の一騎打ち始まる! (「BOOK」データベースより)
一年の最後を飾るのは、お互いにフェイクを含んだ10種目ずつ勝負の方法を出し合い、その中から選ばれた7種目で対決するクラス同士のタイマン対決。その勝負の鍵を握る「司令塔」に自ら立候補した綾小路は、クラスの支柱的存在だった平田・櫛田が精細を欠く状況で掘北と共に坂柳率いるAクラスと直接対決することに。一方、Dクラスと対決することになったBクラスは、Dクラスの不気味な動きを感じており……。
生徒達が勝負種目や細かいルールを決めることが出来る学年最後の「特別試験」。クラスメイトの情報を詳細に分析して勝てる競技と最適な組み合わせを模索しつつ、他クラスと腹の探り合いをするという頭脳バトル的な前哨戦の攻防が楽しかった!そして久しぶりの堀北の活躍にも胸が熱くなる。相変わらずヒロインっぽい動きは全くないのだけど、なんというか綾小路と背中を合わせて戦える存在に成長しつつあると言うか、以前のようにただ綾小路の知略に頼るのではなく、綾小路の苦手とする部分から攻めて情報や協力を勝ち取ろうとする堀北の頭脳プレーが最高に楽しかったです。色っぽい展開が1ミリも期待できない手料理披露にニヤニヤしてしまう。あと須藤は本当にいい男になったね……掘北もう須藤とつきあっちゃえよ……。
Aクラスだけでも厄介なのに、Dクラス内には退学者を出した前回の試験をきっかけに自分の殻に引きこもってしまった平田と、綾小路を陥れようとする策略に加担した人物として致命的にではないが求心力に傷を付けられてしまって元気のない櫛田、そして相変わらず動きが読めない高円寺──という最大の問題が残っていて、代わりに掘北が立ったとはいえまずクラスをまとめ直すところからスタート。高円寺の問題は完全に二年生編に持ち越し感だなあ…。櫛田の問題なんかはうまいこと振り出しに押し戻した感はある。
クラスメイトの退学につながってしまった現実を認められない平田に過去と現在の過ちを直視させ、結果的に誰かを切り捨ててでもそれを受け止めて先に進ませる力を与えた綾小路。わざとどん底まで追い詰めた上でそれ以上の「闇」を持って立ち直らせるやり方は軽井沢相手でもやってましたけど、今回は少しだけ平田への友情的な何かが見て取れなくもないような気がするのが印象的でした。いや実際どうなんでしょうかあのあたりの解釈…綾小路あいつ地文でも平気でミスリードするから…男の背中の挿絵良いですね(現実逃避)…………。
Dクラス内部での攻防、CクラスvsAクラスの戦いも楽しかったのだけど、並列で語られるDクラスvsBクラスも最高に楽しかったと言うかキャー!!龍園サーーーン!!もうカラー口絵からして龍園復活の期待しかできなかったんですけど、久しぶりの悪どい作戦と腕力にモノを言わせたDクラス(旧Cクラス)の大暴れを見ることができて楽しかった。その分、相性の悪いBクラスが割りを食った感はあるけど、むしろ星ノ宮先生の意味深ムーブからしても2年になったら一気に盛り返してきそう。眩しいほどのひたむきさでまっすぐに上を目指す一之瀬率いるBクラスと、担任教師の中では一番汚い手を使ってきそうな星ノ宮先生の組み合わせ、正直期待しかできない。
「ホワイトルーム」で綾小路の存在を知ってから、ずっと彼との直接対決を夢見てきた天才少女・坂柳。両親の愛情を一身に受けて育った少女と生まれたときから無機質な部屋の中で愛情を知らずにそだった少年の、生徒の目が最小限になったからこそ実現できた「本気」のチェス対決が最高にアツかったです。坂柳が綾小路に向ける同情でも憐憫でもなく恋焦がれるようなしかして恋というには苛烈すぎるような想いが、激戦の後で綾小路に投げかけられた言葉が、とても良かったです。しかし最後でそうひっくり返してくるのかー!!綺麗に事が運んだようで最後でだいなしにしてくる流れはまるでこれまでの綾小路のやり口を見ているようで、「やりかえされた」感がすごい。終わり方も踏まえて最高に燃える「負け戦」だったと思う。
悲喜こもごも受け止めて、かけがえない何かを手に入れ失いながら良くも悪くも「振り出しに戻った」学年末。学園側vs生徒の対決も見据えてきそうな二年生編に期待しか無い。
東京レイヴンズ 13 COUNT>DOWN
著あざの 耕平絵すみ兵夏目の窮地を機に、身を潜めていた仮初の巣から飛び立ち集結した仲間たち。再会を喜ぶのも束の間、わずか数日後に大規模霊災テロが計画されていることを知る。それは過去2度にわたり上巳の日に起こされてきた霊災テロの3度目―「本番」とも言うべきものだった!陰陽庁のトップ・倉橋ら、強大すぎる敵を前に、夏目たちは味方を増やすそうと行動を開始。が、それを阻むかのように陰陽庁がある声明を発表し…!?奔走する若き闇鴉たち、荒御霊を従えた元講師、独自の行動をとる『十二神将』、退路を断たれゆく春虎―刻々と迫る決戦の日に向け、星々が錯綜し戦況は目まぐるしく変転する!(「BOOK」データベースより)
春虎とは合流できなかったものの、数年ぶりに集結した夏目達。大規模霊災テロを数日後に控えてそれに立ち向かうため、陰陽庁の木暮と連絡をつけようとするがなかなかうまくいかない。しかも、陰陽庁が霊災テロの首謀者が春虎であると発表してしまい!?
あとがきにあるとおりのクライマックス前の雌伏の回。もどかしい展開が続くんだけど、その間にも秋乃や冬児の力の正体やそれぞれの思惑が明かされたりしてノンストップで惹き込まれていきました。木暮が上のやりかたに疑問を持ちながらも、陰陽庁に残った理由いいよね……。
初対面である冬児達と、彼らと親しくしている自分の知らない夏目の姿に気後れして一歩下がろうとする秋乃と、かつての自分と似たような境遇の彼女を不器用に気遣う鈴鹿の関係が特によかった。なかなか真意が伝わらなかったり、上手くいかなかったりするけど辛抱強く秋乃の心を開こうとする鈴鹿の姿に、彼女の精神的な成長を見ることができて胸が熱くなりました。
仲間たちの成長と、確かな絆を感じることが出来る巻だったのですけどその反面で夏目の身体の状態や大友の教え子想いであるが故の単独行動などなど不安要素が増えてしまったのも事実で。色んな意味で物凄いところで次巻に続くしてしまっていてここからどうなるのか気になりすぎる!
それにしても、一部ラストからこっち殆ど表面的な動向しかわからなかった春虎側の動きが見れたのが胸アツ。まだまだその真意を覗くことはできないけれど、昔のような年相応の少年らしい一面と、何より夏目の為に行動していると知ることが出来たのは良かったです。
ようこそ実力至上主義の教室へ10
著衣笠 彰梧絵トモセシュンサク季節は春、3月を迎えた高度育成高校の1年生。だが3学期末試験時点で歴史上初めて退学者を出さなかった結果、1年の全クラスに追加の特別試験『クラス内投票』が実施されることとなった。それは生徒自身が退学者を選ぶ非情な試験。誰かが退学しなければならない。その現実を前に冷静な平田の声も届かずCクラスは分裂。疑心暗鬼が広がる中、裏切り者も現れ最大の危機を迎える。一方他クラスの状況はAクラスが早々と退学者を決め、Dクラスは龍園が退学濃厚。そんな状況の中、Bクラス一之瀬はクラスメイトを救うため南雲生徒会長とある取引をしようとしていた。だがその条件は一之瀬が南雲と交際するというもので―!? (「BOOK」データベースより)
三学期の期末試験を好成績で終えた一年生を待っていたのは、クラス内で評価投票を行い最も評価の低かった生徒一人を退学させるという過酷な追加試験だった。退学を回避する手段は、2000万プライベートポイントの支払いのみ。これまでまとまりを見せていたCクラスの面々も、たちまち疑心暗鬼にかられバラバラになっていく。そんな中、水面下で綾小路を退学させようという陰謀が動き出して……。
クラス内部・そして外部で繰り広げられる駆け引きが熱かった。クラス内の投票で全てが決まるようにみせかけておいて、蓋を開けてみたらむしろ他クラスから投じることができる浮動票的なプラス評価をどう集めるかがキモになっているのが面白い。
借金をしてでもクラスメイトの退学を阻止しようとするBクラス、表立って動くことはできないがなんとかして龍園を退学させたくないDクラスの石崎一派、そして何者かの陰謀により一転して退学の危機に陥った綾小路。利害が一致した三者が水面下ギリギリで行う攻防戦がめちゃくちゃおもしろかったけど、友人の幸村がピンチのときですら「退学にならないといいな」くらいだったのに龍園の退学阻止の為にDクラスに入れ知恵する綾小路、実は龍園のことめっちゃ好きでは!?読者として、綾小路にとって一番強敵だったのは明らかに龍園だったと思うし復活してまたやりあって欲しいというのはめちゃくちゃにあるんだけど、平穏な毎日を望むといいながら龍園の復帰を内心で待ち望んでいるような動きを見せる綾小路も大概に人間らしくなってきている。
なんとか被害を最小限に抑えることはできたけど、残された傷跡は深そう。平田はもっとヤバいことになると思ってたんだけど、正直この流れで今後使い物になるかは疑問が残るし色んな意味でまだまだ闇を吐き出しきってない感じが凄い。Bクラスも結果として溜め込んでいたプライベートポイントをすべて吐き出してしまい、最後の特別試験を前にして生命線を失う羽目に。それにしても今回退学になってしまったあの人はよく考えると本当にひとりだけ何の役にも立っていなくて、もうかなり序盤からこの時のために暖められていた存在なんだなという感じがして……やりきれないものがあるな……。
次巻は一年生生活最後の巻にして、Aクラス坂柳との直接対決。どんな駆け引きが行われるのか、とても楽しみだけど同時にこれまで中立を保ってきた学校側に綾小路を排除しようとする人物が現れたり……と、いよいよ物語が本題に入り始める気配を感じてそちらもどうなるのかとても気になる。南雲生徒会長も動かないわけないしどうなるんだろうな……。
ようこそ実力至上主義の教室へ9
著衣笠 彰梧絵トモセシュンサク綾小路への宣言通り、ついに坂柳有栖による一之瀬帆波潰しが始まった。暴力沙汰、援助交際、窃盗、強盗、薬物使用の過去があるといった一之瀬への誹謗中傷が学校中に広まっていく。噂の出所は間違いなく1年Aクラス。Bクラスの神崎らが止めにかかるが証拠がない。さらに一之瀬の動きも消極的。膠着した状況の中、ある人物が綾小路の前に現れる。「坂柳を止めてよ。あんたならそれが出来るんじゃないの」1年Aクラスの神室の要請に対し綾小路が下した決断は?そして櫛田桔梗が生徒会長の南雲雅に接触し、学校内に不穏な空気が流れ始め―。大人気クリエイターコンビが贈る、新たな学園黙示録第9弾!(「BOOK」データベースより)
Bクラスのリーダー・一之瀬に関する悪い噂が流される。それは、Aクラス坂柳一派によるBクラス潰し目的の策略だった。Bクラスの面々は彼女を守ろうと動きだすが、肝心の一之瀬本人が事態を荒立てるのを望まないような態度を見せる。一方、事態を静観していた綾小路の元にはAクラスの神室が現れて…。
1年生の終りも近いということで、何気にクラス内の人間関係の変化が顕著。平田と別れた軽井沢、篠原と距離を縮めていく池、そして体育祭を境に精神的に成長しつつある須藤の姿が印象的でした。というか堀北のためにわざと汚れ役をやろうとする須藤かっこよくない!?オタク喋りを矯正したら「個性がない」とか言われてしまった外村と、ついに女子からの好感度が須藤を下回ってしまった上に次巻以降への仕込みをされている山内は強く生きてほしい。チン…ネタを本気で嫌がってる綾小路に思わずニヤニヤしちゃう。
8巻の動きが割と控えめだったのでどうなるのかと思ってたけど、今回は久しぶりに綾小路が水面下で「黒幕」として大暴れ。一之瀬を救うことで目の上のたんこぶであるAクラスの坂柳一派と身内の敵である櫛田をけん制し、桐山に「貸し」という名で枷を嵌め、南雲率いる新生徒会から「戦力」を削ぐ。自らは表に出ず裏から操って美味しいところは全部かっさらうこの感じ、原点回帰感があってとても楽しかった。いや〜さすが綾小路やり方が汚いなーー!!
一之瀬を救い上げたのは例によって自分の手駒の一つにしたい、そこまで行かなくても南雲側の戦力を削ぐという打算が大きいと思うのだけど、同時に「ホワイトルーム」で脱落していった子供たちに彼女を重ねている部分も感じられて、そういう意味でもやはり以前よりは人間らしくなってきてるのかな。以前より地文での感情発露が増えた気がしますよね。
それにしても、生徒会はともかく自分の進退に直結しそうな坂柳と櫛田の件は三学期中のスピード解決を狙ってると思うんだけど、もうすぐ一年生編も終了ということでどうなるんだろう。櫛田桔梗の情報網が有効だというのは今回の件ではっきり示されたし特に裏から事態を操る綾小路の共犯者としてはかなりアリだと思うんだけど流石に難しいか。
ようこそ実力至上主義の教室へ8
著衣笠 彰梧絵トモセシュンサク3学期開始と共に、高度育成高等学校の全生徒は山奥の校舎へと案内される。実施される特別試験の名称は『混合合宿』。男女別に1学年を6つのグループに分割。さらに2年、3年もグループに合流するという。最終的に所属する全生徒の平均点が高かった上位3つのグループにボーナスポイントが与えられる一方、最下位のグループ責任者は退学となるという。退学処分有りの特別試験に慄く一同。そしてグループの分け方は生徒に一任。敵同士だったはずのクラスと手を組むという感情的なもつれが波乱を生む!さらに新生徒会長の南雲、そしてあの高円寺にも動きがあるようで―!? (「BOOK」データベースより)
3学期初の特別試験は、男女別々に1学年を6組にグループ分けし、更にそこに上級生を加えた6グループ×2で行われる点取合戦。勝利できれば大量のポイントが手に入るが、一定条件で退学が確定してしまう危険な試験だった。友人の幸村がリーダーを務めるグループに入ることにした綾小路だが、そのグループは同じクラスの高円寺や先日揉めたばかりのDクラスの石崎を始めとして各クラスからひとくせある面子が揃い、一筋縄ではいかない気配。しかも、同じグループになった2年の生徒会長・南雲が元会長・堀北に点数勝負を仕掛けてきて……。
ちょっと男子ーーー!!!!!!
中盤で何の脈絡もなく始まる男のシンボルの見せあい正直めちゃくちゃご褒美なんですけどこれひょっとして誰かのコミケ原稿かなんかが混入しちゃってない!?こういうの女子向けの下ネタ系ギャグ本で何冊か持ってる……。唐突に明かされた主人公の巨○設定に爆笑してしまったし高円寺の言語センスでまたクソ笑ってしまうし龍園までが嫌がらせ目的で煽ってくるの笑ってしまった。更に、地文の綾小路が実に淡々といつもの調子で高円寺のエクスカリバーを妙に耽美に描写してくるのとか本当に無理でした。キレッキレで面白かったけどほんとになんでこの流れで突然このシーン書いちゃったの!?
物語全体としては新たな敵、乗り越えないといけない試練の存在を匂わすお話、だったのかなあ。2年の生徒会長・南雲の汚いやり口にはドン引きしたんだけど、その悪意がこちらに向いてたわけではないので対岸の火事感が強い。南雲は今後の大きな障害となっていくのでしょうけど、支配圏の広さとは裏腹になんか行動原理から小物感が漂っていると言うか、特に7巻までの対龍園戦が盛り上がりすぎてたので比較してしまう。
むしろ今回はクラスの異端児・高円寺への対応がメインだったのかなという気がしなくもない。のらりくらりと周囲の追求をかわし続けてきた高円寺から、最低でも「退学はしたくない」という本意を聞き出せただけでも大進歩では。しかし、今回はなんとか最低限の協力を取り付けたけど、仲間として解り合えたとは言えず。今後上に上がるためには高円寺の協力は必須だと思うので、そこも今後は大きな問題として降り掛かってくるんだろうなあ。
あと、地味にリーダーとしての振る舞いや自分の至らなさに葛藤する幸村が良かったです。幸村の真摯な姿に打たれて思惑はどうあれ協力するグループメンバー達の様子にもほっこりした。序盤の頭の固いガリ勉メガネが良くここまで成長した……。
それにしても、この手のラノベで全体の9割以上ひたすら男子しか出てこないの、なんというか人気作じゃなければできない贅沢な構成だと思ってしまう。軽井沢さんは相変わらず可愛かったし、ドキ★男だらけの林間学校私得ではあったんだけど、本来のファン層的に大丈夫??
ようこそ実力至上主義の教室へ7.5
著衣笠 彰梧絵トモセシュンサク過去の呪縛から救ってくれた綾小路のことを意識するようになってしまった軽井沢恵。そんな彼女に、友人の佐藤麻耶から綾小路とのクリスマスデートについて相談が持ちかけられる。さらに同時に綾小路からも、佐藤について知っていることを教えて欲しい、と軽井沢に連絡が!?綾小路の行動は純粋な異性への興味のためのものなのか、それとも佐藤を利用するためのものなのか。「あーもう!何なのよあいつはあ!」クリスマス目前、軽井沢のモヤモヤは止まらない。一方、綾小路は新学期に向けて複数の人物と接触。一之瀬帆波のウィークポイント、新生徒会長・南雲雅の抱える闇、新たな情報は今後の波乱を予期させるもので―!? (「BOOK」データベースより)
クラスメイトの佐藤から恋愛相談を受けた軽井沢。彼女の片思いの相手は、なんとあの綾小路で!?なしくずしに平田を加えてクリスマスにWデートをする計画が持ち上がるが、綾小路のことが気になり始めている軽井沢は心中穏やかではなかった。一方その頃、綾小路は三学期に向けて複数の人物と接触をしており……。
クリスマス前後の3日間の出来事を描く連作短編集。綾小路は3日の間に一体何人の女と二人きりになってるんですか!?学園ラブコメかなにかか!?そしてメインヒロイン然としていた堀北や櫛田の出番の少なさは一体。いや、櫛田は一瞬の登場なのにめちゃくちゃ存在感ありましたが……。
そんなラブコメ展開(笑)の裏で、並み居るヒロイン達を雑にあしらいつつ三学期に向けた地固めに動き始める綾小路。これ以上面倒事に関わりたくはないが、掘北元会長の「頼み事」で新生徒会長・南雲降ろしを手伝うことになってしまう。その件で、よりによってクリスマスイヴに龍園と元会長の男三人で会談してるの俺得でしかないんですけど、特にCクラスのリーダーを退いた龍園と綾小路の絡みがとにかく美味しかった。戦略の建て方、考え方は似ているがなんだかんだでクラスのために動いていた龍園と徹頭徹尾自分のためにしか動かない綾小路という間逆な立ち位置の二人の関係が印象的でした。というか前巻から引き続き綾小路と龍園で挿絵を対でもってくるのなんなの大きいお姉さん向け?(ありがとうございます)龍園と対というのも大変美味しいのですが、生まれて初めての雪に浮かれてる感が漂う、頭に雪を乗せたままの綾小路の挿絵(ただし無表情だ)がめちゃくちゃ好き。
そして軽井沢さんがとにかく恋するイイ女なので困る。いやもう綾小路の闇まで知った上でついていくと言ってるんだからどうしようもないのだけど、やはり綾小路はやめておいたほうがいいって!!と言いたくなる。軽井沢さん、相手が平田でも綾小路でもいいから最後には幸せになってほしすぎるんだけど、イイ女すぎて途中退場しそうなフラグを感じるんだよな……綾小路をかばって死にそう(人死にが出る話ではない)。
はじめての雪に対する反応もそうだし、佐藤と会話が続かなくて内心で慌ててたり、佐藤との関係を切り捨てることに少しだけの未練を感じていたりと綾小路の情緒面での成長(?)を感じる展開が多かった。感情が無いわけではなくて、感情で動くことがないというか打算でしか動けないだけなんだよなあこの男。周囲に「合わせよう」とする動きも現在手に入れた人間関係への執着を僅かながらに感じるし、なにより一瞬でも軽井沢との「未来」を思い描いてたのなんか本当に衝撃的で……軽井沢さんマジヒロイン……。
例によって本編より気軽に楽しめてそれでいて今後の本編への仕込みたっぷりの一冊でした。いよいよ次巻からは三学期。どう転がっていくのかとても楽しみです。
しかし、以下は考察以下の何かなんですけど
綾小路が過去に居たという「ホワイトルーム」、遺伝子操作とか強化人間とかそういう系の科学的にやばい施設だと思ってたんですが今回の話を総合するとひょっとして「感情が擦り切れるまで徹底的に人間の時間を管理して無茶苦茶努力させたら完璧超人が出来るかも」とかそういうコンセプト?ひょっとしてほぼただの根性論なのか…?
坂柳との会話を聞く限り、綾小路父のやってたことって「行き過ぎた努力は天才をも超越する」とかそういうアレに思えるんですが、そうだとしたらある意味薬物や肉体改造なんかよりも遥かにクレイジーな話だなあ……。