ページ 21 | 今日もだらだら、読書日記。

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ヴィクトリア・ウィナー・オーストウェン王妃は世界で一番偉そうである

 

ヴィクトリア・ウィナー・グローリア公爵令嬢。 フレデリック・オーストウェン王子の婚約者である彼女は ある日婚約破棄を申し渡される。 だが、それを「我は婚約破棄を許可しない」の一言で 切って捨てたヴィクトリアが取った行動は―― 「フレッド。……そなたはさっき、我に婚約破棄を申し出たな?」 「ひゃ、ひゃい……」 「では我から言おう。――もう一度、婚約をしよう。我と結婚しろ」 「はいぃ……」 かくしてグローリア公爵令嬢からオーストウェン王妃となったヴィクトリアは その輝かんばかりの魅力で人々を魅了し続ける――!

フレデリック・オーストウェン王子は男爵令嬢であるマリアと恋に落ち、婚約者である公爵令嬢ヴィクトリアに婚約破棄を言い渡した。ところが、当の婚約者・ヴィクトリアはそれを聞き入れない──どころか、どこまでも偉そうに愛を囁いてきて…。

えっこの王妃イケメンすぎ…!?

とにかく偉そうで覇王のような物言いのイケメン王妃様がその偉そうな態度と物言いに相応しい才能を持ってライバル令嬢達を蹴散らし、自分に言い寄る間男も物ともせず、国家を揺るがすトラブルを解決していくお話。

とにかくイケメンすぎる王妃がひたすら偉そうに最初は自分の身の回りから、そのうちに国に関わるような事件までも解決していってしまう姿が爽快。おおむね偉そうな態度とその場の勢いで周囲を圧倒しつつ、その反面しっかりと相手の求めるものをリサーチ・提示して納得させて味方に引き込んでいく手腕がまた見事でとにかく気持ちよかった。常にWin-Winで解決するので誰も損してない。こんなん王子じゃなくても惚れてしまう。

王妃のキャラが強烈で、しかも彼女の行動に誰も彼もが巻き込まれていってしまうため常に本編は慢性的なツッコミ不足ではあるのだけど、そんなツッコミ不在の物語に対してかなり軽めのノリでツッコミを入れてくる地文のテンポがとても良くて、そこもなかなか新鮮でした。いや、その他の登場人物も金のために王にすりよる令嬢やら農家に引力を引かれすぎてる前王の愛人やら猫とふかふかお肉が大好きなライバル令嬢やらなかなかの濃さなんですけど…!!登場人物の中ではヴィクトリアの間男を目指す術士のミカエルだけがツッコミを頑張ってた。

強い王妃×かよわい王、意外なまでにいちゃラブだった

王子フレドリックの婚約破棄騒動から始まる本作ですが、王子が「ざまあ」される展開とかヴィクトリアが王をほっぽってひとりで無双するような展開は一切なく(幾度となく「愛の暴走特急」になってる時はあった)、むしろ最初に婚約破棄を切り出した後はひたすら王と王妃(序盤で結婚した)のいちゃラブになります。ヴィクトリア、世界で一番偉そうだし覇王のような女帝だけど、そんな彼女がなんだかんだと伴侶であるフレドリックの意志を尊重するし、彼の治世をもりたてるために尽力するし、そして夜となれば可愛らしい一面を見せ……見せ…………なんかもう色んな意味で夜の描写も襲い攻めって感じでしたがフレドリック的には可愛い女に映っているのではないかと…はい!!!

そんなヴィクトリア、一見何の弱点もないような「強い女」であると同時に正確に自分の弱点や欠点も把握していて、そこを補うためにフレドリックや周囲の人の力を借りることを厭わない。囚われのフレドリックを取り戻すため、ヴィクトリアがこれまで培ってきた人脈すべてを駆使して奮闘するクライマックスがとても良かったです。

どこまでも破天荒な物語でありながら、その実その破天荒さがきめ細やかなリサーチや正確な自己分析によって補強されているので気持ちよく読めるんですよね。あと誰も不幸にならないので安心して読める。楽しかった!小説家になろうのほうで続編も予定されているようなので、続きをとても楽しみにしています。

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「好きラノ 2021年上期」投票します。

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2021年上期の人気ライトノベルはこれだ!!

今回も参加させていただきます〜!!

七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
【21上ラノベ投票/9784040741116】
ストゼロクズな「自称」清楚系Vtuberが主役の会話劇。企業系Vtuberの女の子たちの仲の良いやり取りと、コメント欄で繰り広げられるテンポの良いの会話劇がとても楽しかった!2chの面白スレまとめを読んだような読後感が新しいようでどこか懐かしい。
紫大悟「魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿」→感想
【21上ラノベ投票/9784040739588】
SFと異世界が融合を果たした近未来の東京で繰り広げられるファンタジー系サイバーパンク。一度は力を失った魔王が配信者として信者を増やすことで力を取り戻していく設定が面白い。あと勇者と魔王の男同士の決して馴れ合わない巨大感情、推せます。(2巻もとても良かった)
小田一文「貴サークルは“救世主”に配置されました」→感想
【21上ラノベ投票/9784815608873】
マイナージャンル弱小サークルの主人公が未来を救うため、未来からやってきた戦士なヒロインと共に「100部完売」を目指す。マイナージャンル同人サークルの描写が絶妙で、提示される目標数値がまた絶妙だった。同人ものの描写のリアルさにこだわりを持っているマイナージャンルのオタクには是非読んで欲しい。
香坂マト「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」→感想
【21上ラノベ投票/9784049136883】
無害なはずのギルド受付嬢による理不尽な暴力(残業の夜に天から貰った超絶スキル)がダンジョンボスを襲う!!という展開がとにかく爽快。そんな彼女の胸のうちに秘められた冒険への恐れと、強引な行動の裏に隠された「もう誰も死んでほしくない」という思いが、とてもアツかったです。
コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」→感想
【21上ラノベ投票/9784049137903】
ジャンルの違う社会人オタクカップルの偽装結婚もの。社会人として、そしてオタクとしてどちらの生活も充実している二人の適度にソーシャルディスタンスの保たれた生活がとても読んでいて心地よく、お互いに気遣いを欠かさない生活で自然に距離が縮まっていく関係性が大変良かった。
栗原ちひろ「死んでも推します!! 〜人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします〜」→感想
【21上ラノベ投票/9784065241172】
死なせてしまった「推し」を守るため、令嬢から騎士へと華麗に転身した主人公による「やりなおし」もの。とにかく随所に挿入される「推し語り」が健康によく、その合間にそれとなく匂わされる不穏な気配にワクワクした。「推し」でありながら恋愛、な主人公カップルの恋路の行方も楽しみ。
羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典19」→感想
【21上ラノベ投票/9784040741475】
最終決戦目前、次々と明らかになる真実とグレン達の成長がどこまでもアツく、大切な人との別れに涙が止まりませんでした。本当に面白かった…!!ロクアカは本当に11巻以降どこまでもストップ高で面白くなり続けているので、ちょっと長いけど今からでも読んでみて欲しい…。

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典19

 

幾年の時を超えーー伝説の時代に、グレンが駆ける
ついに姿を現した魔王から逃れ、導かれたのは超魔法文明時代。失踪したセリカを取り戻すため、伝説の時代を駆け回るグレンとシスティ。圧倒的な実力差戦いに巻き込まれる2人は、この時代で新たな力を手に入れる!?

失踪したセリカを追って《星の回廊》からいずこかへと飛んだグレンとシスティーナ。そこは約5800年前の超魔法文明時代で……。

「メルガリウスの魔法使い」の謎が今明かされる

いや〜〜本当に面白かった!!童話「メルガリウスの魔法使い」で描かれる“魔王”と“正義の魔法使い”の最終決戦にセリカを追ってタイムスリップしたグレンとシスティーナが現れる…というお話。

敵は魔王ティトゥス=クルォーとその配下にいる魔将星たち……ということで、現代で全く歯が立たない状態だった魔王との決戦はともかく、魔将星との戦いはグレンたちにとって何人かは「一度戦ったことのある相手」でもあるわけで…古代魔術すら使えない、魔術師にとって虐げる対象である『愚者』のふたりがこれまでの戦いの経験や「メルガリウスの魔法使い」の内容を手がかりに下剋上していくのがアツかったです。雑兵すら古代魔術を使うような時代ではシスティーナの魔術師としての才能も役に立たず……と、一見無茶な戦力差があるようで、下衆な魔術師達を相手になんだかんだと互角以上に渡り合っていく姿が爽快でした。

特にシリーズ前半のクライマックス、『フェジテ最悪の三日間』で戦った《鉄騎剛将》アセロ=イエロとの戦い(グレンたちにとっては再戦)がめちゃくちゃ良かった!!もう完全に攻略法までわかっている相手とはいえそう簡単に隙きを見せては貰えず、必殺の一撃を届けるための最後の一手をグレンの行動・言葉によって奮起させられた民衆達が担うという展開が熱い。というかそもそも、物語の中でずっと描かれてきた『正義の魔法使い』と、めちゃくちゃ不自然な登場の仕方する『魔法使いの弟子』の正体がコレだなんて本当にズルいじゃないですか……。

この他にもグレン達がこの時代で取った行動、彼らが目にしたものが確かに5800年後の「現代」に確かに繋がっているという描写がこれでもかというほどあり、また過去と照らし合わせることでこれまで物語の謎とされてきた様々な部分が紐解かれていくのが最高に気持ち良い。あと個人的に“イグナイトの矜持”の源流がそれなの、本当に泣いてしまうな……。

グレンとシスティーナ、それぞれの成長が熱い

無事にセリカと合流し、魔王との最終決戦の地に向かうグレンたち。セリカの前には魔王ティトゥスが、そしてシスティーナの前には最後の魔将星《風皇翠将》シル=ヴィーサが立ちふさがる。

現代では手も足も出なかった魔王と唯一情報のない、最後の魔将星。現代知識チートが効かない二人に対してグレンとシスティーナの二人がそれぞれの限界を超えて成長し、セリカに対してあまりにも不利な最終決戦の場に介入し、勝利を掴み取っていく展開が熱かった。シル=ヴィーサは色々な意味で、システィーナを本当に殺すつもりはなかったわけではありますが……。

最後の展開は中盤くらいからはっきりと匂わされていたのでなんとなく予想がついていたけど、グレンの最後の呼び方で泣いてしまったと言うかいやそれはもうほんと反則では………前巻であれほどグレンにとってセリカがいかにかけがえのない存在かを描かれた上でのこの展開は本当に泣いてしまう。そして5800年前からグレンに託された最期の親心でもう一回泣いてしまった。本当に今回の話、中盤から泣きっぱなしだったんですが……。

セリカが記憶を失っていた理由とその正体、ナムルスとグレンの関係、そして初期のナムルスがルミアを憎んでいた理由……などなど、とにかく物語の核心部分が次々と明かされる展開で楽しかった!!いよいよ次巻は舞台を現代に戻して、魔王との最終決戦。グレン達が得た新たな力が戦局にどのような力をもたらすのか、というか現代は色々な意味でどうなってしまっているのか。本当に続きが楽しみです。

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ロクでなし魔術講師と追想日誌 8

 

初めて会ったその人は震える程に恐ろしく、本当に優しい人だった
フェジテのみんなが不在のなかで、グレンの家にルミアが住み込み!? まるで新婚夫婦な2人きりの生活に、ドキドキが止まらないルミア。そして思い出す。初めてグレンと出会った、3年前のあの日のことをーー

特務分室の栄光を描く前巻の短編集の直後にこの「狩られる側から見た特務分室時代の冷酷な魔術師殺し・グレンの話」入れるのマジで温度差がすごい。ラブコメからちょっといい話まで、今回もバラエティに飛んでいて楽しい短編集でした。

グレンとハーレイ先輩をもっとセット売りしろ

どの話もすごく良かったんですけど、グレンが馴染みの店からの依頼で幻のキノコ「ゴルデンピルツ」を探すハーレイの案内人をする『キノコ狩りの黙示録』が最高に良かった。システィーナ達を巻き込んで、醜いキノコ争奪戦と化していくのが最高にカオスだし、一触即発どころか最初から最後まで喧嘩しっぱなしのふたりの様子がめちゃくちゃに面白かった。仲悪すぎ通り越して仲良すぎか!?

そして、そんな犬猿の仲のふたりが共通の目的を理由に手を組んだら最強の相方に……って普通に大好きな奴なんですが!!???いやほんと、このふたりにここまでのポテンシャルが秘められているとは思いもしませんでしたよね……ハーレイ先輩、バトルの時は割と後方で生徒たちを護りつつ戦ってること多いから、最前線で問題の解決に勤しむグレンと手を組むこと、殆どないもんな。もっとこのふたりセット売りして欲しい(グレンにはアルベルトという最強の相方がいるし本編で組ませるのには限界があるかもしれないけど)

システィーナの「趣味・小説」の設定、本編ではこれが初出か〜!

趣味で小説を書いているシスティーナがひょんなことから自作の主人公と同じ名前の女性・ミスティナと出会い、彼女に小説の続きを見せることになってしまう短編『貴方に捧ぐ物語』も良かった。はじめてのファンに舞い上がり、読者の意見を意識しすぎて本来書く予定だった結末を捻じ曲げてしまうシスティーナがミスティナの本当の気持ちと家の事情を知り、彼女に自分のような後悔をさせたくないと奔走する姿が印象的でした。

ここで今回の件とは全く関係ないのにミスティナを救うために手を貸してくれるグレン先生がめちゃくちゃ教師してるし、どこまでもシスティーナの思い描いた「ヒーロー」そのものなんですけど、それだけにシスティーナの書いてる小説の内容がほぼグレン×自分の事実をベースにした妄想恋愛小説だったり、その小説の「取材」と称してグレンに催眠術を掛けてイチャイチャしようとするシスティーナのやらかしぶりが輝いちゃってますよね。いやあ恋する乙女はバカだなぁ〜〜!!(褒めてる)

グレンとルミア、初めての出逢い

書き下ろしの過去編『再び出会うその日まで』は3年前、まだフィーベル家になじめていなかったルミアが特務分室時代のグレンに助けられたときのお話。このエピソード、原作初期から開示されてはいましたが……思った以上に血なまぐさい話だ!!というか前の短編集であれだけ特務分室時代の光のようなエピソードをやっておいて、今回は打って変わって外道魔術師達の視点から特務分室の冷酷無比な魔術師殺し、《愚者》グレン=レーダスが任務で敵を殺しまくるエピソード出してくるの温度差がすごくて風邪引く。それにしてもどう考えても助かる余地のない状況から帰還してくる特務分室時代のグレン、異能生存体系の異能持ってそうだよなあ……。

母アリシアの真意を知らぬまま親子の縁を切られてフィーベル家に居候することになり、なかば自暴自棄になっていたルミア。システィーナと間違えられて誘拐されてしまった彼女が「どういう訳か」子供の誘拐事件なんかに駆り出された特務分室時代のグレンと出会い、冷酷な殺し屋という前情報とは違いすぎるグレンの優しすぎる本心と葛藤に触れて本来の優しさを取り戻し、母子の縁を切られる原因となった自らの異能とも折り合いを付ける…という展開がとても良かったです。ラストシーンで改めて第一巻のいちばん最初、ルミアがグレンと“再会”するエピソードがルミア視点で描かれるという構成がまた実にニクくて、ホロリとしてしまう。

ただ、彼女が本来の自分を取り戻すきっかけはグレンの言葉であったけれど、ルミアが再び人間を信じることが出来るようになったのは自分を本当の「家族」として受け入れてくれたフィーベル親子の存在が物凄く大きいんですよね。ルミア→グレンへの思いの強さを改めて感じるのと同時に、彼女がシスティーナやフィーベル家の人々をどれだけ大切に思っているか、その一端が覗けるエピソードでありました。しかしわがまま放題でシスティーナのことが大嫌いだったルミア、何度言われても全く想像できないな……。

ところで、この話を読んだ上で改めてこの巻の最初に収録されているセリカ&システィーナ&リィエル不在の隙にグレンの家で押しかけ女房するルミアが描かれるエピソード『もしもいつかの結婚生活』を読むと、別の意味でニヤニヤできてしまいますね。女王としての権限を利用して軽率に娘の恋路をゴリ押ししようとするルミア母・アリシアに振り回されるルミアの姿を見ていると本当に和解出来てよかったね、という気持ちに……。

いつもとは違う環境に舞い上がってやたらと大胆になってしまうルミアも微笑ましかったですが、合間に襲来してテンプレすぎる安いツンデレとメシマズを振りまくイヴ=サンも最高でした。システィーナさんマジでグレン×自分の妄想恋愛小説書いてる場合ではない。

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魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原

 

伝説の魔王――奇怪なる進化を極めた“秋葉原”に君臨する!
秋葉原市。革新的な発展を続ける“電気街”と古き伝統を重んじる“魔法街”が対立構造を呈する未来都市に、魔王・ベルトールは降臨した……超名門学園への留学生として。新たな舞台を駆ける、未来の魔王譚第二幕!

裏切り者・マルキュスの脅威を排除した魔王ベルトールは、いまだ消息不明の六魔侯を探すため、彼らの居場所を示す財宝『魔侯録』を探すことに。秋葉原市の魔法学園地下にある宝物庫にそれが保管されていると知り、高橋・マキナと共に留学生として学園に潜り込むが、宝物庫の封印を解くためには秋葉原市を統べる御三家が持つ秘宝・王徴(レガリア)が必要で……?

「魔法」と「科学」が対立する街・秋葉原

相変わらず近未来SFとファンタジーが融合したような世界観が面白い。新宿は文字通り魔法と科学が融合した混沌の街であったけど、今回は魔法学園を中心にしてファンタジー世界の古き伝統を重んじる“魔法街”、現代日本の秋葉原の趣きを色濃く残す革新的な“電気街”という正反対の特徴を持つエリアが対立を続ける街。描写としてはあまり多くないですが、昼の魔法学園パートと放課後の電気街での散策パートのギャップがとても楽しかった。

そんな中で焦点が当たるのが秋葉原の「御三家」の一角・レイナード家の当主の少女山田・レイナード=緋月。様々な事情から学園内で孤立し、自分自身も周囲の人間に対して壁を作っていた彼女がいろいろな意味で破天荒で内部の慣習にとらわれないベルトール達に少しずつ心を許していく姿が可愛かったです。また、そんな彼女を受け止める魔王のカリスマ性がまた凄く良いんだよな。緋月の一件もそうですが、生徒たちが人質に取られた一件を収めたときの手口が実に最高。緋月への発言を巡って一度は決闘までした男・アルバートとのやりとりが個人的に好きすぎるんですが、一度は完璧に自分を負かした相手に絶対に失敗できない場面であんな形で声をかけられたらそりゃアルバートだって惚れちゃうよなあ(惚れたとはいってない)

物語の最後に緋月が選んだ道は自らが預かった街からの逃避、両親や大切な人たちを手に掛けた者達への「復讐」という、決して前向きとはいい難いなにかであったけど、そんな彼女の選択をも受け入れ、見守ろうとする魔王の姿が印象的でした。

相変わらず魔王と勇者の関係性が最高

勇者グラムに「不老」を授けた恋多き女神・メルディアとの対決!ということで、そして序盤からめちゃくちゃ勇者さんの存在が匂わされていてこれは終盤でまた絡んでくるな!?と思っていたのですが、いやスルーするんか〜〜〜い!!!あれだけお膳立てされておいて「あっちに行ったらなんか面倒なことに巻き込まれそう」っていって全スルーしていく勇者さん御一行がマグナムドライすぎて最高か!!??テンションめちゃくちゃ上がってきた。

そんな感じで勇者さんとニアミスしてるとはつゆ知らず、勇者のいないところで女神メルディアに対して「勇者グラムのこと一番わかってる余」アピールするベルトールさん、グラムのこと大好き過ぎてヤバイ。割としたり顔で根拠のないグラムの内心とか語っちゃってるけど、なんか最終的にしっかり核心を付いたこと語ってるのが実にズルいんですよね。ていうかひょっとして勇者と魔王、この調子で暫くすれ違い続けるつもりなのか〜〜〜最高では〜〜〜!?

続きが楽しみ(魔王が配信してるだけの短編読みたい)

物語本線としては秋葉原を2つに割る全面戦争を阻止し、緋月という新たな仲間を得て、『魔侯録』をも手にした魔王達。しかしその反面、マルキュスすら下っ端でしかなかったという大きな敵対組織《新生教会》の姿が明らかになり……という、今後への種蒔きとしての一面も強かった巻。果たして残った六魔侯のふたりは仲間となってくれるのか、《新生教会》の目的とは何なのか、魔王のチャンネル登録数はどこまで増えるのか。色々な意味で続きが気になる終わり方で、続きが楽しみです。

ところでこの話、配信のチャンネル登録数が魔王の力の源になってる割に配信関係の描写があまりにもおざなりというか、短編集に定評のある富士見だしそろそろドラマガあたりで魔王ベルトールがただ配信するだけの短編とかやってくれてもいいとおもうんですがその辺どうなんですか??作者さんが配信モノの描写苦手とかそういう感じなら他の作家にスピンオフ書かせてもいいと思うんですが(無茶振り)。

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ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

 

『雛宮』――それは次代の妃を育成するため、五つの名家から姫君を集めた宮。 次期皇后と呼び声も高く、蝶々のように美しい虚弱な雛女、玲琳は、それを妬んだ雛女、慧月に精神と身体を入れ替えられてしまう! 突如、周囲から忌み嫌われ、鼠姫と呼ばれるそばかすだらけの慧月の姿になってしまった玲琳。 誰も信じてくれず、今まで優しくしてくれていた人達からは蔑まれ、劣悪な環境におかれるのだが……。 「息切れしない、失神もしない……。なんて健康な体でしょう! う、うらやましい……っ」 誰もが羨む玲琳は、隣り合わせの"死"とずっと戦ってきた鋼メンタルの持ち主だったーー!? 大逆転後宮とりかえ伝、堂々開幕! コミカライズも同時発売!

病弱であること以外全てが完璧な雛女・玲琳が落ち目の雛女・慧月の呪術によって体と精神を入れ替えられてしまう。蝶よ花よと周囲から守られる生活から一転して自分(玲琳)を害した罪で処刑の危機、それを脱しても周囲の誰からも完全に見捨てられた粗末な生活を送ることに──なるのだが、当の玲琳は健康な肉体を得たことに大喜びで…!?

儚げ美少女、メンタルは超合金

楽しかった…!儚い見た目、病弱という言葉から感じるイメージからは正反対に、どこまでもへこたれない主人公が自分に向かってくる逆境の数々を「体力がもったいのうございます」と言ってものともせず、健康な肉体に歓喜しながら畑を耕して自給自足の生活を送り、唯一残された慧月付きの侍女を構い倒しながらも没落生活をエンジョイするのがあまりにも楽しい。

それもそのはず、「病弱」なんて言葉では済まされないほどの虚弱な肉体を持って生まれた彼女は、肉体が入れ替わる前から常に明日をも知れぬ生活を送っていたのだった。常に死と隣り合わせで生きてきた彼女にとって処刑による生命の危機だってただの「日常」と何ら変わりがなかったし、病弱すぎる故に常に周囲の人間たちから体調を気遣われ、自分ひとりで出来ることなど殆どなかった彼女にとってむしろほぼ自分ひとりでなんでもやっていける没落生活は長年夢見た「自由に満ちた生活」ですらあり。異常なまでの前向きさの合間に覗く“玲琳”時代の過酷な生にホロリとしてしまう。

「努力」と「根性」は全てを解決する

一方、そんな玲琳に成り代わるため呪術で肉体を入れ替えて全てを手に入れたはずの慧月の方も当然ただでは済まないのだった。周囲の目を引くための仮病では?と疑っていた玲琳の「病弱」が実は普通の人間ではまともに立っていることもままならないような重いものであると知り、普段の“玲琳”のたおやかな姿はそんなポンコツな身体に限界を超えた無理と努力を重ねさせてなんとか成り立っていたことをも知ってしまう。周囲の女官や医者にちやほやしてもらえる…と思っていたら、女官達が元気よく手習いの道具を持ってきて腰を抜かし、体調を崩せば自分で薬を調合しろといわれて呪術で本物の玲琳に泣きつく羽目になったり……玲琳はなにもしていないのにいい感じに自業自得、ざまあ展開になってしまっている展開がぶっちゃけ面白い。

すべての才能を持って生まれてきた運の良い女、病弱も併せ持ち周囲からチヤホヤされていて羨ましい……と思っていたら文字通り血の滲むような努力でその人となりが形成されていたというのがなんとも皮肉なんだけど、華やかな後宮モノでこんなにも「努力」と「根性」をゴリ押ししてくる話があっただろうか。発想が体育会系すぎる!!

しかし、努力と根性でギリギリ生きてるみたいな玲琳の過酷な生に触れ、涙目になりながらそれでもなお「誰も見てくれない慧月より皆に気にかけてもらえる玲琳が良い」とその座にすがりつこうとする慧月には生き汚さというよりもある種の「努力」と「根性」の文脈を感じてしまう。この入れ替え劇だって前向きなものではないとはいえ慧月の必死な努力の成果なわけだし、よくも悪くも努力の方向性を間違えなければ再起できそうと思ってしまう。そしてそんな彼女を、「努力や根性を愛する」血族の玲琳はまんざら悪くないと感じていそうな気がするんだけどどうだろう。

どうにも事件の黒幕がいそうな雰囲気だし、慧月も玲琳も幸せになれる終わり方になるといいなあ。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4.5

 

豪華客船での波乱含みの夏休みスタート! 
様々な出来事を乗り越え無人島試験も終了。待望の豪華客船での夏休みが始まった。だが試験は多くの爪痕を残し、龍園が小宮を襲撃した犯人探しを開始、他の生徒達も今までとは違う動きを見せ始めていた。そんな中、綾小路の前に3年の桐山が現れる。「おまえの存在は邪魔でしかないんだ綾小路」告げられたのは南雲の変貌。奇怪な行動を取り始め、綾小路1人に対して、3年生全体による『監視』という奇妙な指令が下される。 一方で告白に対しての答えを返すため、綾小路は一之瀬との約束の場所に向かい――!? 大人気学園黙示録、2年目の夏休みは波乱含み!?

不穏な展開が目立つ中で1学期までの因縁に一旦の決着を付けて二学期に進むための展開が目白押しの夏休み編。他学年が敵に回る展開がおおかったせいか、無人島サバイバル試験から引き続き、クラス内だけでなくクラスを超える関係性が生まれ始めているのが印象的な話だった。とはいえ次の巻は久しぶりに学年内での潰し合いみたいな展開になりそうで、追加された新キャラたちも含め、ここで生まれた関係性がどうなっていくのか気になる。

余談ですが今回の試験の結果でまたクラスが入れ替わって、遂にクラス名称が基本的にABCDではなく「板柳クラス」「一之瀬クラス」「龍園クラス」「堀北クラス」という名称になってたの凄いわかりやすくなってよかったですね。いやほんと最近はABCDで言われちゃうとどこの話してるのかわからなかったからね……正しい判断だよね……。

試験をやってないだけで紛れもなく「本編」な夏休み編

よう実、恒例の夏休み編。一年生編のときは一応「.5」のタイトルはガワだけでも「番外編短編集」の体をとっていた気がしますが、今回は普通に「試験がないだけの本編」でしたね。いや、「.5」が番外編短編集だなんていうのがそもそも他の作品によって培われた思い込みでしかなかったのかもしれないけど……。

前巻で綾小路によって邪険にあしらわれ、一気に小物感が出てきてしまった南雲生徒会長が三年生全員に「綾小路の監視」という司令を出し、綾小路にプレッシャーを掛ける。南雲生徒会長、4巻の時点ではかませだと思ったけどそもそも彼の本領発揮は団体戦にあるのだなと改めて思わされる展開でした。堀北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプと個人でやりあったら敵わないけど、大勢の人間を使う絡め手が強いタイプ。まあそんなタイプの人間が掘北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプの人間への個人での勝敗に拘ってしまうところが彼が小物に見えてしまう元凶でもあるんだと思いますが…。

かませといえば、櫛田ちゃんがいろいろな意味で心配なんですけど、次の試験が次の試験っぽいし本当にこの娘そろそろ退学フラグ建てられてる気がする。無人島サバイバルでのかませ具合がひどかったし、今回の慢心ぶりもヤバイ。仲間になるにせよ退学オチにせよ、次あたりで決着突きそうだよなあ。

これまでにない、“にぎやかな”夏休み

それにしても、無人島サバイバル試験を通して新たに生まれた関係、復活した旧知の関係なども含めてすごく賑やかなお話でしたね。なんだかんだで休暇中は休暇中で色々な手回しで忙しい印象を受ける休暇期間の綾小路ですが、普通に遊びに行ったり大勢でワイワイするような展開が続くのは初めてだったのでは。一度は途切れかけていた池・須藤との関係が復活したのもそうだし、石崎にじゃれつかれてたり、一之瀬クラスの女子達に囲まれたり、軽井沢との件を通して普通の友人関係となった佐藤と宝探しに挑んだり、綾小路グループの面々でプールに行ったり。今後のことを思うといろいろな意味で薄氷の上で築かれた関係という印象もありますが、そんな休暇を綾小路自身がまんざらでもないと思っているような雰囲気ににやりとしてしまう。

一方で綾小路とは関係ないところでも伊吹と堀北が無人島試験の所からじわじわと距離を縮めていたり、クラス内で弱いところを見せづらい一之瀬が板柳に相談をしていたり…とクラスの枠を超えた関係性が印象的な巻でした。また、ここにきて追加された2年生の新キャラも気になる所。個人的には姫野が一之瀬になんでも言い合えるブレーンとして彼女の下についてくれたりしたら面白そうなんだけど、どうなるかな。

とはいえ、次巻での話はまた学年内での話に戻りそう、というかこれまでにない過酷な試験が待っていそうな雰囲気なので今回登場した新キャラも踏まえて、今後の関係性がどうなっていくのかとても気になるところではあります。っていうか「2年の退学者少ないからキツイ試験ぶちこんで減らさない?」みたいなノリで担任組のトラウマ試験(?)持ってくる学園側って実は綾小路をホワイトルームに連れ戻すために悪巧みしてた月城よりも邪悪じゃない?あのへんのって南雲の意向だとおもってたんだけど普通に学園の上層部から出てるっぽいの衝撃だった。1年次のときのクラス投票試験といい、マジであのへんの鬼畜な試験を考案してるのは誰なんだ(理事長があの穏やかそうな笑顔でこういう事考えてるんだとしたらホラーすぎる)。

恋愛方面でも色々動きが

そしていよいよ軽井沢が綾小路との関係を表に出すことを決めて、恋愛方面も色々動きそうな予感。個人的に綾小路が恋愛感情を利用して複数の女子を自分の策略のために動かすようなタイプじゃなく、一之瀬や愛里のことをなんだかんだでちゃんとフろうとしてることには本当にホっとしたんですけど(綾小路ならやってもおかしくないと思っていたのは内緒だ)、愛里の気持ちを知っているのに軽井沢との関係を公言させる方向で間接的にフろうとしてるところとか、南雲の横槍で一之瀬との話し合いが有耶無耶にされてしまったのとか、なんかこう全体的にやはり恋愛面での駆け引きはうまくないなって印象が残りますよね。この辺、よくないフラグにしか見えないんだよなあ。

軽井沢としっかりやることやっておきながら既に終わったあとのこと考えてるのマジそういうところだぞ!!って感じだけど、綾小路は高校卒業したらホワイトルームに戻るつもりなのは明白なのでまあそうなるのか。ホワイトルーム生といえば4巻では消化不良だったもうひとりのホワイトルーム生の正体がいよいよ明かされて、そっちの動きも気になるしますます櫛田ちゃんの前途がヤバイ。結果的に「もうひとりのホワイトルーム生」の足取りを知らないうちに追わされてしまっている堀北・龍園の動向も気になるところ。

本当に、骨休めの休暇編とは思えないほどの情報量が詰まった1冊で言及したいことが……言及したいことが多い!!二学期がいろいろな意味で楽しみだな〜!!(ぐるぐるお目々)

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オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。
同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

金銭面に余裕のあるオタク男女が偽装結婚をして、広い家でシェアハウス的な共同生活を送る話。適度な距離感の保たれた楽しそうな「上質な暮らし」が、読んでて心地よかった。オタク要素はあらすじから想像したものと比較してやや薄めという印象を受けましたが、旦那のハマっている「地下アイドル」話が奇抜な設定で面白かったです。ただ、ちょっと起承転結の転のまっただなかで切れちゃってる感じなのが少し残念で、出来ればもう少し先まで読みたかったなあ。

隠れオタクの男女が織りなす、“上質な暮らし”。

会社には内緒で同人作家をやっているOL・相沢咲月。イベント会場で「結婚しろ」と口うるさい母親の愚痴を言っていたら、なぜかその場に居合わせた会社の同僚・滝本(※隠れアイドルオタク)から「それなら僕と偽装結婚しませんか?」とプロポーズをされてしまい!? 話を聞いてみると向こうにも結婚を急ぎたい家庭の事情があるようで……お互いの利害が一致して偽装夫婦になったふたりが“夫婦生活”と言う名のシェアハウス生活を送るお話。

親戚から管理を任されている一軒家の2階に滝本を住まわせ、基本的には別個の生活を送りつつも時折なにかあれば「同居人」としてお付き合いをする。社会の中でそれなりにうまくやっているふたりが首都圏郊外にある広い家の一階と二階で一定の距離感を保ちながら趣味や生活にお金をかけていくという生活、なんというかすごく生活に潤いがあって読んでいて心地良い。そしてお互いの趣味に没頭しながらも「ふたりぐらし」という新しい生活をエンジョイしている様子がとにかく楽しそう。一時期BLで「上質な暮らし」という概念が流行ったけど、まさにこういう話のようなもののことをいうんだろうなあと思った。もうとにかく暮らしの質が高いんですよね……。

滝本のハマってる「地下アイドル」の話が濃い

出会いの場が同人イベントの会場ということもあってどうしてもあらすじを読んだ時点ではオタク男女のラブコメ的な要素を想像してしまっていたんですが、同人オタク的な要素はかなり薄くてどちらかというと滝本がハマっている地下アイドル・デザートローズの話の比重が多め。宇宙からやってきたアイドルユニットという設定に対してアイドルもプロデューサーもファンもその世界観に即した活動をしている…というのがかなり奇抜で面白いし、メジャーなアイドルではないからこそのファンと公式の距離の近さが印象的。書籍版書き下ろしで描かれる、「デザートローズ」の結成秘話も濃厚な女の子同士の巨大感情案件で楽しかったです。

滝本側の趣味の話がめちゃくちゃおもしろい分相沢の同人活動の話が薄めなのが若干気になってしまうんだけど、正直同人オタクの話は今かなりメジャーな題材になってきているので無理に深堀りしなくてもいいのかもとも。それにしても毎日定時で仕事を済ませて原稿をコツコツ仕上げるて二次創作では壁サー+一次創作では商業を少々…いう姿勢がデキるオタクにもほどがあって、締切前にまとめて原稿するタイプのオタクは震えた。こんなところまで生活の質が高い。

ラブコメとしてはまだ、はじまったばかり

実は結婚を申し入れる前から相沢に好意を持っていた滝本。営業マンとして、そして地下アイドルのオタク活動で磨いたリサーチ力を駆使して彼女の好きなことや嫌いなことをリサーチし、着実に相沢の好感度を上げていくのが良かった。下心があるにはあるんですけどどちらかというと純粋に「好かれたい」という感情が主な感じで、いやらしさが感じられないというか彼の行動が純粋に二人の生活の暮らしやすさに繋がっている感じなのが良かった。相沢の一挙挙動に内心で「かわいい!」と転がっている姿も微笑ましい。

ただ、恋愛ものとしては始まったばかりというかまだ滝本の独り相撲感が拭えない。特に相沢の方には毒親問題が立ちふさがっているのでそっちを解決させないと恋愛的なアレコレは考えられないんだろうな。逆に相沢の実家問題さえどうにかなればあっさり両思いになってしまいそうな雰囲気を感じるんだけど……1巻そこで切るのか〜!!原作のカクヨムの方を見ると今回くらいの分量×3巻でピッタリ終わるくらいの内容っぽいので、たしかにこれはここで切って残りは2巻回しになるのかな〜って感じなんですけど、正直ちょっと本が厚めになってもいいから相沢の実家の件が解決するところまでは入れてほしかったな。良くも悪くもなろう小説の書籍化1冊目にありがちな、中途半端な終わり方してるのが残念。

相沢とのふたりぐらしの暮らしやすさを支えていたのは滝本の営業マンとしてのリサーチ力だったと思うので、今度はそれが相沢の実家に対してどう働くのか、母親の攻略には自信ありそうだけど相沢の話を聞いてると癌は兄貴っぽいけどそのへんもどうなのか。いろいろな意味で2巻が楽しみです。

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「ラノベの定義」について14年ぶりに考えたよ

昨晩Twitterで「ラノベの定議論スペース」というものがあり、そこでラノベの定義論について色々話されているのを聞いているうちに自分の考えをまとめたくなったのでつらつらと書きます。議論の内容はこちらの動画から聞くことができますので興味のある方は聞いてみると良いと思います。あくまで個人の認識の話をしているので、異論反論あると思いますがスルーしてほしいです。

最初に前置きしておくのですがラノベ定議論スペース自体は楽しく聞いておりましたし人の話を聞いて自分の考えをまとめ直すという意味ですごく有意義な時間だったと思います。私のラノベ定義論スペースに対する感想の総括は一言でいうとコレですよろしくお願いします。


私が考える「ラノベの定義」はこれです

個人的には定義って万人がぱっとみて共通の認識を共有出来るものじゃないと行けないと思っているので私はずっと基本的に「ライトノベルの定義はレーベル毎でやるべき」っていう考えです。こういう話をするとおおむねレーベル論者は思考停止している!!とかいわれるんですけど思考停止した状態でもラノベかそうじゃないか判断できるのが究極のゴールだと思っているので……フィーリングで十人十色の回答が出てきちゃうような定義は論外だと思っているので……。

まあそういう意味では究極的には「BOOK☆WALKERのラノベ・新文芸ジャンル基準でいいんじゃないの?」と思ってますし、今回この図を作る上でもめちゃくちゃ参考にしました。電子書籍サイトの区分はおそらく概ね出版社側の意向が強めに反映されてるであろうという目算もあります。



※便宜上「少年向け」「少女向け」というラベルを採用していますが、これは読者の性別を示すものではありません。ラベルだと思ってください。

少年向けラノベ

おそらく「ライトノベル」と言われて万人がまっさきに浮かべるの、電撃や富士見ファンタジア文庫、スニーカー文庫あたりの少年向けレーベルだとおもうので赤枠で囲いました。TRPGリプレイが大半を占めるの富士見ドラゴンブックのみ赤枠からは外しました。

黄緑色の所

ビズログ文庫アリスとオーバーラップはWEB小説に力を入れてるみたいなことを創刊時にいってませんでしたっけと思ったけどオーバーラップはソースが見当たらなかったから勘違いかもしれない。ビズログアリスは確か言ってたけどそのうちビズログ本家の方にWEB小説原作モノが大量に流れ込んでしまった。

定議論スペースでも言及されてたけど、やっぱ一番狭い「ライトノベル」の定義は文庫サイズじゃないかなと個人的に思っているので新文芸とラノベの間に分けました。

新文芸

ラノベを読んでる人からすると「ラノベの判型でかいやつ」、ラノベという枠に特にとらわれてない人だと「特にラノベだとは思ってない」みたいな印象。私事なんですが去年ラノベの二次創作系WEBオンリーを主催した時に転スラや盾の勇者はラノベですか?みたいな質問が結構多かったの興味深かった。私の中ではラノベだったので言うまでもないと思ってた……。

ひょっとして新文芸をめちゃくちゃ遡ると「ケータイ小説」文明にたどり着くのだろうか…と考えるのですがケータイ小説文化には無知なので詳しくはわからない。

少女小説・少女向けラノベ

私は少なくてもビーンズとビズログとアイリスはラノベだと思うんですけどコバルトとホワイトハートは人によって判定が違うなって印象。あとスペースでも言われてたけど「少女小説」という単語でのラノベとの差別化も若干感じますよね。うちのブログの感想記事のカテゴリは、できるだけ広めの言葉を使いたいという意味で「少女小説」を採用しています。感覚的には「少年漫画」「少女漫画」に近い。

よく話題にされるコバルト文庫はなんか良くも悪くもかつての「ヤングアダルト」って言われてた頃の生き方のまま存在しているみたいな……ホワイトハートは現在概ねBLレーベルって感じなんですけど昔はティーンズハートの少し大人向けの内容みたいな感じの少女小説も出ていたので完全なBLレーベルとは言えなくてこういう感じ。

ジャンルは初出レーベルに依存するよ派なので「赤川次郎・氷室冴子・新井素子・小野不由美あたりがラノベっぽくないからコバルトとホワイトハートはラノベじゃないみたい」なのは個人的には支持してないです。ただ、「昔のコバルト文庫」がラノベかどうかっていわれるとラノベではないかもなあ……って思う。昔のスニーカー文庫はだいたいラノベだと思ってる。

ライト文芸

殆ど読まないので言及できないんだけど多分こんな感じかなと思っている。表紙がイラスト主体で文庫サイズで挿絵がほぼないラノベと一般小説の間くらいにいそうなジャンル。

余談ですが定議論スペースで「ミミズクと夜の王」が売れなくてこっち(メディアワークス文庫)に切り離されたみたいな話に対して「ミミズク〜」は普通に売れてたと思うって話はスペース内で指摘されてましたが、なんなら直接の続編である「毒吐姫と星の石」、キャラは繋がってないけど流れを同じくする「MAMA」「雪蟷螂」という実質的な続編もありますって言う話も言及しておきたいです。

ノベルズ

西尾維新とか私は個人的にめちゃくちゃラノベだとおもってるんですが「講談社ノベルス」がラノベかといわれるとそれは絶対に違うよねと思うのでレーベル論の限界を感じた。

BL・TL・男性向けエロノベル(ジュブナイルポルノ)

BLはラノベじゃないと思うんだけどX文庫・コバルト文庫がBLを出してる関係でレーベル論者としては判定が悩ましくなる。TLはTLだとおもうんですがたまにマカロン文庫とか電子書籍ショップによってはラノベの所に並んでるときがあるような記憶。(eロマンスは記憶違いでした)

エロラノベ、オシリス文庫は一応自称は「官能小説」なんですけどレーベル公認のカレー沢薫先生のレビュー連載ではアダルトライトノベルって言ってるのでちょっとラノベにまざりたいみたいな色目を感じており。余談ですが私は「ちょっとエッチなライトノベル」っていいながら二次元ドリームノベルズばりの濃厚なエロ小説を出してたキルタイムさんの「あとみっく文庫」さんのこといまだに忘れられません。

美少女文庫さんはなんていうか「ジャンル:美少女文庫」さんだと思うんですが、最近はめちゃくちゃラノベ読者を引っ張りたいという強い意思を感じる。近辺のラインナップを見ると「さかきいちろう」先生をはじめ見たことあるお名前がいっぱいならんでるけど、どのくらいラノベ読みが手を出したのかは正直きになりなる。

ノベライズについて

ラノベスペースの中でノベライズの定義論がありましたが私はレーベル帰属派なので各作品自体は各レーベルの居住地で判断したい。ただ、コミケジャンルコードに魂を惹かれた人間でもあるので作品そのものは原作本体に依存するとも思っています。たとえば「閃光のハサウェイ」だと、「宇宙世紀ガンダムの1作品としての閃光のハサウェイはアニメジャンル」「それはそれとして閃光のハサウェイ単体はスニーカー文庫だからライトノベル」みたいな……。

あと、コミケジャンルコード論でいくと「京アニエスマ文庫のアニメ化作品」なんかはアニメと認識してる人が多い印象。エスマ文庫割と特殊な立ち位置だと思うので詳しい人の見解をいつかきいてみたい。

ノベライズ主体のレーベル、集英社少女漫画作品のノベライズをやってた「コバルト文庫ピンキー」とか乙女ゲーム・女子受けの良いボカロ曲のノベライズが多めの「ビーズログ文庫アリス」とかオリジナル作品と並行してなのはさんのノベライズとかをやってた「メガミ文庫」とか全年齢向け美少女ゲームノベライズをやってた「なごみ文庫」とかいろいろありましたが概ね今息してないので難しいんだろうなあと思っている。

14年前に書いた定議論の記事↓
https://urara.tank.jp/log/2007/08/240141650

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死んでも推します!! 〜人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします〜

 

「私は、お飾りになりたいわけではありません」 「ならば、何になる」 「あなたの剣に」
公爵令嬢・セレーナの婚約者は、帝国が誇る『黒狼騎士団』の団長であり、近く皇帝となるフィニス。幼い頃に肖像画を見て以来彼の美貌の虜となり、全力で萌え、全霊をかけて推してきたフィニスといよいよ結婚――という時に、ふたりは何者かに謀殺されてしまう。一度目の人生は、これで終了。気づけば、前世の記憶を持ったまま『二度目』がスタートしていた。 今度の人生では、絶対にフィニスを殺させない! 推しには健康で長生きしてほしいから――そう考えたセレーナが選んだのは、フィニス率いる『黒狼騎士団』に入り騎士として彼を守ること。 無事入団を果たしたセレーナだが、一度目の人生では見ることがなかったフィニスの素顔や振る舞い、すべてが尊すぎて死にそう! だが、ふたりの周りにまたもや不穏な影が――!?

語彙を溶かしながら豊富な語彙で「推し」のことを語るひとを見るのはとにかく健康になるものですが、この作品は主要人物がのきなみ、隙あらば推し語りを入れてくるので本当に健康になる。そんな健康過ぎる推し活の合間に、それとなく不穏な気配が見え隠れしてくるのも良かった。面白かった!!

他人の「推し活」を見るのは健康に良い

肖像画を見て一目惚れしていた騎士団長・フィニスと婚約することになった公爵令嬢・セレーナ。間近で推しを見られる幸せを噛み締めていたのもつかの間、二人は何者かの襲撃に遭って命を落としてしまう。──という『前世の記憶』を持ったまま、セレーナとしての人生を赤ん坊からやり直すことに。婚約者としての立場を放棄したセレーナは男装してひたすら身体を鍛え、フィニスの騎士団に入隊することに……!?

「推し」について楽しそうに語るひと(キャラ)を見るのは本当に健康に良い。なんかもうマイナスイオンとか出てる。特に語彙力が豊富な人が語彙力を半ば溶かしながら言葉を尽くして推しについて語っているところは本当に最高。

本作はヒロインのセレーナをはじめ、作中の主要人物の殆どが濃ゆい推し語りを展開してくれるので本当に読むだけで健康になれます。一度目の生では自分の気持を胸のうちに秘め、ただ一人でフィニス様に萌えていたセレーナが、騎士団に入って同僚やらライバルやらフィニス様大大大大好きな面々と友誼を結んでいくのにニヤニヤし、本人が目の前にいるのもお構いなしにフィニス様語りで盛り上がってしまう姿にニヤニヤしてしまう。そして、真面目なカタブツかと思っていたフィニス様も、幕間で一人称視点になるととたんに「かわいい×かわいい=大大大大大宇宙。」とかいいだしてしまうので360度隙がなかった。もはやフィニス様の副官であるトラバントが最後の聖域みたいなとこあるんですけど、彼まで萌えを語りはじめたらツッコミが全滅してしまうので頑張ってそのままで居てほしい。

時折顔を覗かせる、不穏な空気がまた良い

登場人物の半数以上が声高らかに推しへの愛を叫ぶコミカルな展開がひたすら楽しい半面、時折どうしようもなく不穏な空気が顔を覗かせるのがまたすごい好き。一度目の生でセレーナとフィニスが命を落とした事件についてはまだ全く真相にたどり着けていない状態だし、フィニスにはそれだけではないなにか重い事情がありそうだしで暗くなる素養はいくらでもあるんですよね。明るい展開の合間にさりげなく挟まれる不穏な雰囲気って興奮しませんか???私はします。

過酷な最前線において、死の恐怖を一時忘れさせるための萌え。そして、ともすれば危険ですらある「盲目的な愛」すらも無害なもの変えてしまう萌え。フィニス様が語る「萌え」のもうひとつの姿はちょっと危うい気配を感じさせて。今回は色々ない意味で萌えが世界を救う的な展開だったのですが、今後これがどっちの方向に転がっていくのかはとても気になるなあ。

萌えを語る一方で、セレーナの中で少しずつ一人の人間としてのフィニスへの恋心が育っていくのも印象的でした。この手のやつ紙一重で夢女子になってしまいがちなんだけどなんか絶妙に「推し対象」と「恋愛」が両立してる感じなのがポイント高かったです。それとなく示されたフィニスの今生での婚約者の話もひともんちゃくありそうな気配で気になる。次巻どうなっていくのか楽しみです。

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