ページ 22 | 今日もだらだら、読書日記。

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ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

 

『雛宮』――それは次代の妃を育成するため、五つの名家から姫君を集めた宮。 次期皇后と呼び声も高く、蝶々のように美しい虚弱な雛女、玲琳は、それを妬んだ雛女、慧月に精神と身体を入れ替えられてしまう! 突如、周囲から忌み嫌われ、鼠姫と呼ばれるそばかすだらけの慧月の姿になってしまった玲琳。 誰も信じてくれず、今まで優しくしてくれていた人達からは蔑まれ、劣悪な環境におかれるのだが……。 「息切れしない、失神もしない……。なんて健康な体でしょう! う、うらやましい……っ」 誰もが羨む玲琳は、隣り合わせの"死"とずっと戦ってきた鋼メンタルの持ち主だったーー!? 大逆転後宮とりかえ伝、堂々開幕! コミカライズも同時発売!

病弱であること以外全てが完璧な雛女・玲琳が落ち目の雛女・慧月の呪術によって体と精神を入れ替えられてしまう。蝶よ花よと周囲から守られる生活から一転して自分(玲琳)を害した罪で処刑の危機、それを脱しても周囲の誰からも完全に見捨てられた粗末な生活を送ることに──なるのだが、当の玲琳は健康な肉体を得たことに大喜びで…!?

儚げ美少女、メンタルは超合金

楽しかった…!儚い見た目、病弱という言葉から感じるイメージからは正反対に、どこまでもへこたれない主人公が自分に向かってくる逆境の数々を「体力がもったいのうございます」と言ってものともせず、健康な肉体に歓喜しながら畑を耕して自給自足の生活を送り、唯一残された慧月付きの侍女を構い倒しながらも没落生活をエンジョイするのがあまりにも楽しい。

それもそのはず、「病弱」なんて言葉では済まされないほどの虚弱な肉体を持って生まれた彼女は、肉体が入れ替わる前から常に明日をも知れぬ生活を送っていたのだった。常に死と隣り合わせで生きてきた彼女にとって処刑による生命の危機だってただの「日常」と何ら変わりがなかったし、病弱すぎる故に常に周囲の人間たちから体調を気遣われ、自分ひとりで出来ることなど殆どなかった彼女にとってむしろほぼ自分ひとりでなんでもやっていける没落生活は長年夢見た「自由に満ちた生活」ですらあり。異常なまでの前向きさの合間に覗く“玲琳”時代の過酷な生にホロリとしてしまう。

「努力」と「根性」は全てを解決する

一方、そんな玲琳に成り代わるため呪術で肉体を入れ替えて全てを手に入れたはずの慧月の方も当然ただでは済まないのだった。周囲の目を引くための仮病では?と疑っていた玲琳の「病弱」が実は普通の人間ではまともに立っていることもままならないような重いものであると知り、普段の“玲琳”のたおやかな姿はそんなポンコツな身体に限界を超えた無理と努力を重ねさせてなんとか成り立っていたことをも知ってしまう。周囲の女官や医者にちやほやしてもらえる…と思っていたら、女官達が元気よく手習いの道具を持ってきて腰を抜かし、体調を崩せば自分で薬を調合しろといわれて呪術で本物の玲琳に泣きつく羽目になったり……玲琳はなにもしていないのにいい感じに自業自得、ざまあ展開になってしまっている展開がぶっちゃけ面白い。

すべての才能を持って生まれてきた運の良い女、病弱も併せ持ち周囲からチヤホヤされていて羨ましい……と思っていたら文字通り血の滲むような努力でその人となりが形成されていたというのがなんとも皮肉なんだけど、華やかな後宮モノでこんなにも「努力」と「根性」をゴリ押ししてくる話があっただろうか。発想が体育会系すぎる!!

しかし、努力と根性でギリギリ生きてるみたいな玲琳の過酷な生に触れ、涙目になりながらそれでもなお「誰も見てくれない慧月より皆に気にかけてもらえる玲琳が良い」とその座にすがりつこうとする慧月には生き汚さというよりもある種の「努力」と「根性」の文脈を感じてしまう。この入れ替え劇だって前向きなものではないとはいえ慧月の必死な努力の成果なわけだし、よくも悪くも努力の方向性を間違えなければ再起できそうと思ってしまう。そしてそんな彼女を、「努力や根性を愛する」血族の玲琳はまんざら悪くないと感じていそうな気がするんだけどどうだろう。

どうにも事件の黒幕がいそうな雰囲気だし、慧月も玲琳も幸せになれる終わり方になるといいなあ。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4.5

 

豪華客船での波乱含みの夏休みスタート! 
様々な出来事を乗り越え無人島試験も終了。待望の豪華客船での夏休みが始まった。だが試験は多くの爪痕を残し、龍園が小宮を襲撃した犯人探しを開始、他の生徒達も今までとは違う動きを見せ始めていた。そんな中、綾小路の前に3年の桐山が現れる。「おまえの存在は邪魔でしかないんだ綾小路」告げられたのは南雲の変貌。奇怪な行動を取り始め、綾小路1人に対して、3年生全体による『監視』という奇妙な指令が下される。 一方で告白に対しての答えを返すため、綾小路は一之瀬との約束の場所に向かい――!? 大人気学園黙示録、2年目の夏休みは波乱含み!?

不穏な展開が目立つ中で1学期までの因縁に一旦の決着を付けて二学期に進むための展開が目白押しの夏休み編。他学年が敵に回る展開がおおかったせいか、無人島サバイバル試験から引き続き、クラス内だけでなくクラスを超える関係性が生まれ始めているのが印象的な話だった。とはいえ次の巻は久しぶりに学年内での潰し合いみたいな展開になりそうで、追加された新キャラたちも含め、ここで生まれた関係性がどうなっていくのか気になる。

余談ですが今回の試験の結果でまたクラスが入れ替わって、遂にクラス名称が基本的にABCDではなく「板柳クラス」「一之瀬クラス」「龍園クラス」「堀北クラス」という名称になってたの凄いわかりやすくなってよかったですね。いやほんと最近はABCDで言われちゃうとどこの話してるのかわからなかったからね……正しい判断だよね……。

試験をやってないだけで紛れもなく「本編」な夏休み編

よう実、恒例の夏休み編。一年生編のときは一応「.5」のタイトルはガワだけでも「番外編短編集」の体をとっていた気がしますが、今回は普通に「試験がないだけの本編」でしたね。いや、「.5」が番外編短編集だなんていうのがそもそも他の作品によって培われた思い込みでしかなかったのかもしれないけど……。

前巻で綾小路によって邪険にあしらわれ、一気に小物感が出てきてしまった南雲生徒会長が三年生全員に「綾小路の監視」という司令を出し、綾小路にプレッシャーを掛ける。南雲生徒会長、4巻の時点ではかませだと思ったけどそもそも彼の本領発揮は団体戦にあるのだなと改めて思わされる展開でした。堀北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプと個人でやりあったら敵わないけど、大勢の人間を使う絡め手が強いタイプ。まあそんなタイプの人間が掘北兄や綾小路みたいな個人戦が強いタイプの人間への個人での勝敗に拘ってしまうところが彼が小物に見えてしまう元凶でもあるんだと思いますが…。

かませといえば、櫛田ちゃんがいろいろな意味で心配なんですけど、次の試験が次の試験っぽいし本当にこの娘そろそろ退学フラグ建てられてる気がする。無人島サバイバルでのかませ具合がひどかったし、今回の慢心ぶりもヤバイ。仲間になるにせよ退学オチにせよ、次あたりで決着突きそうだよなあ。

これまでにない、“にぎやかな”夏休み

それにしても、無人島サバイバル試験を通して新たに生まれた関係、復活した旧知の関係なども含めてすごく賑やかなお話でしたね。なんだかんだで休暇中は休暇中で色々な手回しで忙しい印象を受ける休暇期間の綾小路ですが、普通に遊びに行ったり大勢でワイワイするような展開が続くのは初めてだったのでは。一度は途切れかけていた池・須藤との関係が復活したのもそうだし、石崎にじゃれつかれてたり、一之瀬クラスの女子達に囲まれたり、軽井沢との件を通して普通の友人関係となった佐藤と宝探しに挑んだり、綾小路グループの面々でプールに行ったり。今後のことを思うといろいろな意味で薄氷の上で築かれた関係という印象もありますが、そんな休暇を綾小路自身がまんざらでもないと思っているような雰囲気ににやりとしてしまう。

一方で綾小路とは関係ないところでも伊吹と堀北が無人島試験の所からじわじわと距離を縮めていたり、クラス内で弱いところを見せづらい一之瀬が板柳に相談をしていたり…とクラスの枠を超えた関係性が印象的な巻でした。また、ここにきて追加された2年生の新キャラも気になる所。個人的には姫野が一之瀬になんでも言い合えるブレーンとして彼女の下についてくれたりしたら面白そうなんだけど、どうなるかな。

とはいえ、次巻での話はまた学年内での話に戻りそう、というかこれまでにない過酷な試験が待っていそうな雰囲気なので今回登場した新キャラも踏まえて、今後の関係性がどうなっていくのかとても気になるところではあります。っていうか「2年の退学者少ないからキツイ試験ぶちこんで減らさない?」みたいなノリで担任組のトラウマ試験(?)持ってくる学園側って実は綾小路をホワイトルームに連れ戻すために悪巧みしてた月城よりも邪悪じゃない?あのへんのって南雲の意向だとおもってたんだけど普通に学園の上層部から出てるっぽいの衝撃だった。1年次のときのクラス投票試験といい、マジであのへんの鬼畜な試験を考案してるのは誰なんだ(理事長があの穏やかそうな笑顔でこういう事考えてるんだとしたらホラーすぎる)。

恋愛方面でも色々動きが

そしていよいよ軽井沢が綾小路との関係を表に出すことを決めて、恋愛方面も色々動きそうな予感。個人的に綾小路が恋愛感情を利用して複数の女子を自分の策略のために動かすようなタイプじゃなく、一之瀬や愛里のことをなんだかんだでちゃんとフろうとしてることには本当にホっとしたんですけど(綾小路ならやってもおかしくないと思っていたのは内緒だ)、愛里の気持ちを知っているのに軽井沢との関係を公言させる方向で間接的にフろうとしてるところとか、南雲の横槍で一之瀬との話し合いが有耶無耶にされてしまったのとか、なんかこう全体的にやはり恋愛面での駆け引きはうまくないなって印象が残りますよね。この辺、よくないフラグにしか見えないんだよなあ。

軽井沢としっかりやることやっておきながら既に終わったあとのこと考えてるのマジそういうところだぞ!!って感じだけど、綾小路は高校卒業したらホワイトルームに戻るつもりなのは明白なのでまあそうなるのか。ホワイトルーム生といえば4巻では消化不良だったもうひとりのホワイトルーム生の正体がいよいよ明かされて、そっちの動きも気になるしますます櫛田ちゃんの前途がヤバイ。結果的に「もうひとりのホワイトルーム生」の足取りを知らないうちに追わされてしまっている堀北・龍園の動向も気になるところ。

本当に、骨休めの休暇編とは思えないほどの情報量が詰まった1冊で言及したいことが……言及したいことが多い!!二学期がいろいろな意味で楽しみだな〜!!(ぐるぐるお目々)

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オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。
同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

金銭面に余裕のあるオタク男女が偽装結婚をして、広い家でシェアハウス的な共同生活を送る話。適度な距離感の保たれた楽しそうな「上質な暮らし」が、読んでて心地よかった。オタク要素はあらすじから想像したものと比較してやや薄めという印象を受けましたが、旦那のハマっている「地下アイドル」話が奇抜な設定で面白かったです。ただ、ちょっと起承転結の転のまっただなかで切れちゃってる感じなのが少し残念で、出来ればもう少し先まで読みたかったなあ。

隠れオタクの男女が織りなす、“上質な暮らし”。

会社には内緒で同人作家をやっているOL・相沢咲月。イベント会場で「結婚しろ」と口うるさい母親の愚痴を言っていたら、なぜかその場に居合わせた会社の同僚・滝本(※隠れアイドルオタク)から「それなら僕と偽装結婚しませんか?」とプロポーズをされてしまい!? 話を聞いてみると向こうにも結婚を急ぎたい家庭の事情があるようで……お互いの利害が一致して偽装夫婦になったふたりが“夫婦生活”と言う名のシェアハウス生活を送るお話。

親戚から管理を任されている一軒家の2階に滝本を住まわせ、基本的には別個の生活を送りつつも時折なにかあれば「同居人」としてお付き合いをする。社会の中でそれなりにうまくやっているふたりが首都圏郊外にある広い家の一階と二階で一定の距離感を保ちながら趣味や生活にお金をかけていくという生活、なんというかすごく生活に潤いがあって読んでいて心地良い。そしてお互いの趣味に没頭しながらも「ふたりぐらし」という新しい生活をエンジョイしている様子がとにかく楽しそう。一時期BLで「上質な暮らし」という概念が流行ったけど、まさにこういう話のようなもののことをいうんだろうなあと思った。もうとにかく暮らしの質が高いんですよね……。

滝本のハマってる「地下アイドル」の話が濃い

出会いの場が同人イベントの会場ということもあってどうしてもあらすじを読んだ時点ではオタク男女のラブコメ的な要素を想像してしまっていたんですが、同人オタク的な要素はかなり薄くてどちらかというと滝本がハマっている地下アイドル・デザートローズの話の比重が多め。宇宙からやってきたアイドルユニットという設定に対してアイドルもプロデューサーもファンもその世界観に即した活動をしている…というのがかなり奇抜で面白いし、メジャーなアイドルではないからこそのファンと公式の距離の近さが印象的。書籍版書き下ろしで描かれる、「デザートローズ」の結成秘話も濃厚な女の子同士の巨大感情案件で楽しかったです。

滝本側の趣味の話がめちゃくちゃおもしろい分相沢の同人活動の話が薄めなのが若干気になってしまうんだけど、正直同人オタクの話は今かなりメジャーな題材になってきているので無理に深堀りしなくてもいいのかもとも。それにしても毎日定時で仕事を済ませて原稿をコツコツ仕上げるて二次創作では壁サー+一次創作では商業を少々…いう姿勢がデキるオタクにもほどがあって、締切前にまとめて原稿するタイプのオタクは震えた。こんなところまで生活の質が高い。

ラブコメとしてはまだ、はじまったばかり

実は結婚を申し入れる前から相沢に好意を持っていた滝本。営業マンとして、そして地下アイドルのオタク活動で磨いたリサーチ力を駆使して彼女の好きなことや嫌いなことをリサーチし、着実に相沢の好感度を上げていくのが良かった。下心があるにはあるんですけどどちらかというと純粋に「好かれたい」という感情が主な感じで、いやらしさが感じられないというか彼の行動が純粋に二人の生活の暮らしやすさに繋がっている感じなのが良かった。相沢の一挙挙動に内心で「かわいい!」と転がっている姿も微笑ましい。

ただ、恋愛ものとしては始まったばかりというかまだ滝本の独り相撲感が拭えない。特に相沢の方には毒親問題が立ちふさがっているのでそっちを解決させないと恋愛的なアレコレは考えられないんだろうな。逆に相沢の実家問題さえどうにかなればあっさり両思いになってしまいそうな雰囲気を感じるんだけど……1巻そこで切るのか〜!!原作のカクヨムの方を見ると今回くらいの分量×3巻でピッタリ終わるくらいの内容っぽいので、たしかにこれはここで切って残りは2巻回しになるのかな〜って感じなんですけど、正直ちょっと本が厚めになってもいいから相沢の実家の件が解決するところまでは入れてほしかったな。良くも悪くもなろう小説の書籍化1冊目にありがちな、中途半端な終わり方してるのが残念。

相沢とのふたりぐらしの暮らしやすさを支えていたのは滝本の営業マンとしてのリサーチ力だったと思うので、今度はそれが相沢の実家に対してどう働くのか、母親の攻略には自信ありそうだけど相沢の話を聞いてると癌は兄貴っぽいけどそのへんもどうなのか。いろいろな意味で2巻が楽しみです。

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「ラノベの定義」について14年ぶりに考えたよ

昨晩Twitterで「ラノベの定議論スペース」というものがあり、そこでラノベの定義論について色々話されているのを聞いているうちに自分の考えをまとめたくなったのでつらつらと書きます。議論の内容はこちらの動画から聞くことができますので興味のある方は聞いてみると良いと思います。あくまで個人の認識の話をしているので、異論反論あると思いますがスルーしてほしいです。

最初に前置きしておくのですがラノベ定議論スペース自体は楽しく聞いておりましたし人の話を聞いて自分の考えをまとめ直すという意味ですごく有意義な時間だったと思います。私のラノベ定義論スペースに対する感想の総括は一言でいうとコレですよろしくお願いします。


私が考える「ラノベの定義」はこれです

個人的には定義って万人がぱっとみて共通の認識を共有出来るものじゃないと行けないと思っているので私はずっと基本的に「ライトノベルの定義はレーベル毎でやるべき」っていう考えです。こういう話をするとおおむねレーベル論者は思考停止している!!とかいわれるんですけど思考停止した状態でもラノベかそうじゃないか判断できるのが究極のゴールだと思っているので……フィーリングで十人十色の回答が出てきちゃうような定義は論外だと思っているので……。

まあそういう意味では究極的には「BOOK☆WALKERのラノベ・新文芸ジャンル基準でいいんじゃないの?」と思ってますし、今回この図を作る上でもめちゃくちゃ参考にしました。電子書籍サイトの区分はおそらく概ね出版社側の意向が強めに反映されてるであろうという目算もあります。



※便宜上「少年向け」「少女向け」というラベルを採用していますが、これは読者の性別を示すものではありません。ラベルだと思ってください。

少年向けラノベ

おそらく「ライトノベル」と言われて万人がまっさきに浮かべるの、電撃や富士見ファンタジア文庫、スニーカー文庫あたりの少年向けレーベルだとおもうので赤枠で囲いました。TRPGリプレイが大半を占めるの富士見ドラゴンブックのみ赤枠からは外しました。

黄緑色の所

ビズログ文庫アリスとオーバーラップはWEB小説に力を入れてるみたいなことを創刊時にいってませんでしたっけと思ったけどオーバーラップはソースが見当たらなかったから勘違いかもしれない。ビズログアリスは確か言ってたけどそのうちビズログ本家の方にWEB小説原作モノが大量に流れ込んでしまった。

定議論スペースでも言及されてたけど、やっぱ一番狭い「ライトノベル」の定義は文庫サイズじゃないかなと個人的に思っているので新文芸とラノベの間に分けました。

新文芸

ラノベを読んでる人からすると「ラノベの判型でかいやつ」、ラノベという枠に特にとらわれてない人だと「特にラノベだとは思ってない」みたいな印象。私事なんですが去年ラノベの二次創作系WEBオンリーを主催した時に転スラや盾の勇者はラノベですか?みたいな質問が結構多かったの興味深かった。私の中ではラノベだったので言うまでもないと思ってた……。

ひょっとして新文芸をめちゃくちゃ遡ると「ケータイ小説」文明にたどり着くのだろうか…と考えるのですがケータイ小説文化には無知なので詳しくはわからない。

少女小説・少女向けラノベ

私は少なくてもビーンズとビズログとアイリスはラノベだと思うんですけどコバルトとホワイトハートは人によって判定が違うなって印象。あとスペースでも言われてたけど「少女小説」という単語でのラノベとの差別化も若干感じますよね。うちのブログの感想記事のカテゴリは、できるだけ広めの言葉を使いたいという意味で「少女小説」を採用しています。感覚的には「少年漫画」「少女漫画」に近い。

よく話題にされるコバルト文庫はなんか良くも悪くもかつての「ヤングアダルト」って言われてた頃の生き方のまま存在しているみたいな……ホワイトハートは現在概ねBLレーベルって感じなんですけど昔はティーンズハートの少し大人向けの内容みたいな感じの少女小説も出ていたので完全なBLレーベルとは言えなくてこういう感じ。

ジャンルは初出レーベルに依存するよ派なので「赤川次郎・氷室冴子・新井素子・小野不由美あたりがラノベっぽくないからコバルトとホワイトハートはラノベじゃないみたい」なのは個人的には支持してないです。ただ、「昔のコバルト文庫」がラノベかどうかっていわれるとラノベではないかもなあ……って思う。昔のスニーカー文庫はだいたいラノベだと思ってる。

ライト文芸

殆ど読まないので言及できないんだけど多分こんな感じかなと思っている。表紙がイラスト主体で文庫サイズで挿絵がほぼないラノベと一般小説の間くらいにいそうなジャンル。

余談ですが定議論スペースで「ミミズクと夜の王」が売れなくてこっち(メディアワークス文庫)に切り離されたみたいな話に対して「ミミズク〜」は普通に売れてたと思うって話はスペース内で指摘されてましたが、なんなら直接の続編である「毒吐姫と星の石」、キャラは繋がってないけど流れを同じくする「MAMA」「雪蟷螂」という実質的な続編もありますって言う話も言及しておきたいです。

ノベルズ

西尾維新とか私は個人的にめちゃくちゃラノベだとおもってるんですが「講談社ノベルス」がラノベかといわれるとそれは絶対に違うよねと思うのでレーベル論の限界を感じた。

BL・TL・男性向けエロノベル(ジュブナイルポルノ)

BLはラノベじゃないと思うんだけどX文庫・コバルト文庫がBLを出してる関係でレーベル論者としては判定が悩ましくなる。TLはTLだとおもうんですがたまにマカロン文庫とか電子書籍ショップによってはラノベの所に並んでるときがあるような記憶。(eロマンスは記憶違いでした)

エロラノベ、オシリス文庫は一応自称は「官能小説」なんですけどレーベル公認のカレー沢薫先生のレビュー連載ではアダルトライトノベルって言ってるのでちょっとラノベにまざりたいみたいな色目を感じており。余談ですが私は「ちょっとエッチなライトノベル」っていいながら二次元ドリームノベルズばりの濃厚なエロ小説を出してたキルタイムさんの「あとみっく文庫」さんのこといまだに忘れられません。

美少女文庫さんはなんていうか「ジャンル:美少女文庫」さんだと思うんですが、最近はめちゃくちゃラノベ読者を引っ張りたいという強い意思を感じる。近辺のラインナップを見ると「さかきいちろう」先生をはじめ見たことあるお名前がいっぱいならんでるけど、どのくらいラノベ読みが手を出したのかは正直きになりなる。

ノベライズについて

ラノベスペースの中でノベライズの定義論がありましたが私はレーベル帰属派なので各作品自体は各レーベルの居住地で判断したい。ただ、コミケジャンルコードに魂を惹かれた人間でもあるので作品そのものは原作本体に依存するとも思っています。たとえば「閃光のハサウェイ」だと、「宇宙世紀ガンダムの1作品としての閃光のハサウェイはアニメジャンル」「それはそれとして閃光のハサウェイ単体はスニーカー文庫だからライトノベル」みたいな……。

あと、コミケジャンルコード論でいくと「京アニエスマ文庫のアニメ化作品」なんかはアニメと認識してる人が多い印象。エスマ文庫割と特殊な立ち位置だと思うので詳しい人の見解をいつかきいてみたい。

ノベライズ主体のレーベル、集英社少女漫画作品のノベライズをやってた「コバルト文庫ピンキー」とか乙女ゲーム・女子受けの良いボカロ曲のノベライズが多めの「ビーズログ文庫アリス」とかオリジナル作品と並行してなのはさんのノベライズとかをやってた「メガミ文庫」とか全年齢向け美少女ゲームノベライズをやってた「なごみ文庫」とかいろいろありましたが概ね今息してないので難しいんだろうなあと思っている。

14年前に書いた定議論の記事↓
https://urara.tank.jp/log/2007/08/240141650

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死んでも推します!! 〜人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします〜

 

「私は、お飾りになりたいわけではありません」 「ならば、何になる」 「あなたの剣に」
公爵令嬢・セレーナの婚約者は、帝国が誇る『黒狼騎士団』の団長であり、近く皇帝となるフィニス。幼い頃に肖像画を見て以来彼の美貌の虜となり、全力で萌え、全霊をかけて推してきたフィニスといよいよ結婚――という時に、ふたりは何者かに謀殺されてしまう。一度目の人生は、これで終了。気づけば、前世の記憶を持ったまま『二度目』がスタートしていた。 今度の人生では、絶対にフィニスを殺させない! 推しには健康で長生きしてほしいから――そう考えたセレーナが選んだのは、フィニス率いる『黒狼騎士団』に入り騎士として彼を守ること。 無事入団を果たしたセレーナだが、一度目の人生では見ることがなかったフィニスの素顔や振る舞い、すべてが尊すぎて死にそう! だが、ふたりの周りにまたもや不穏な影が――!?

語彙を溶かしながら豊富な語彙で「推し」のことを語るひとを見るのはとにかく健康になるものですが、この作品は主要人物がのきなみ、隙あらば推し語りを入れてくるので本当に健康になる。そんな健康過ぎる推し活の合間に、それとなく不穏な気配が見え隠れしてくるのも良かった。面白かった!!

他人の「推し活」を見るのは健康に良い

肖像画を見て一目惚れしていた騎士団長・フィニスと婚約することになった公爵令嬢・セレーナ。間近で推しを見られる幸せを噛み締めていたのもつかの間、二人は何者かの襲撃に遭って命を落としてしまう。──という『前世の記憶』を持ったまま、セレーナとしての人生を赤ん坊からやり直すことに。婚約者としての立場を放棄したセレーナは男装してひたすら身体を鍛え、フィニスの騎士団に入隊することに……!?

「推し」について楽しそうに語るひと(キャラ)を見るのは本当に健康に良い。なんかもうマイナスイオンとか出てる。特に語彙力が豊富な人が語彙力を半ば溶かしながら言葉を尽くして推しについて語っているところは本当に最高。

本作はヒロインのセレーナをはじめ、作中の主要人物の殆どが濃ゆい推し語りを展開してくれるので本当に読むだけで健康になれます。一度目の生では自分の気持を胸のうちに秘め、ただ一人でフィニス様に萌えていたセレーナが、騎士団に入って同僚やらライバルやらフィニス様大大大大好きな面々と友誼を結んでいくのにニヤニヤし、本人が目の前にいるのもお構いなしにフィニス様語りで盛り上がってしまう姿にニヤニヤしてしまう。そして、真面目なカタブツかと思っていたフィニス様も、幕間で一人称視点になるととたんに「かわいい×かわいい=大大大大大宇宙。」とかいいだしてしまうので360度隙がなかった。もはやフィニス様の副官であるトラバントが最後の聖域みたいなとこあるんですけど、彼まで萌えを語りはじめたらツッコミが全滅してしまうので頑張ってそのままで居てほしい。

時折顔を覗かせる、不穏な空気がまた良い

登場人物の半数以上が声高らかに推しへの愛を叫ぶコミカルな展開がひたすら楽しい半面、時折どうしようもなく不穏な空気が顔を覗かせるのがまたすごい好き。一度目の生でセレーナとフィニスが命を落とした事件についてはまだ全く真相にたどり着けていない状態だし、フィニスにはそれだけではないなにか重い事情がありそうだしで暗くなる素養はいくらでもあるんですよね。明るい展開の合間にさりげなく挟まれる不穏な雰囲気って興奮しませんか???私はします。

過酷な最前線において、死の恐怖を一時忘れさせるための萌え。そして、ともすれば危険ですらある「盲目的な愛」すらも無害なもの変えてしまう萌え。フィニス様が語る「萌え」のもうひとつの姿はちょっと危うい気配を感じさせて。今回は色々ない意味で萌えが世界を救う的な展開だったのですが、今後これがどっちの方向に転がっていくのかはとても気になるなあ。

萌えを語る一方で、セレーナの中で少しずつ一人の人間としてのフィニスへの恋心が育っていくのも印象的でした。この手のやつ紙一重で夢女子になってしまいがちなんだけどなんか絶妙に「推し対象」と「恋愛」が両立してる感じなのがポイント高かったです。それとなく示されたフィニスの今生での婚約者の話もひともんちゃくありそうな気配で気になる。次巻どうなっていくのか楽しみです。

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ティアムーン帝国物語II〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「――来てますわ、波が!」
処刑台から12歳に逆転転生【タイムリープ】した元わがまま姫ミーアは、調子に乗っていた。 かつての記憶と周囲の深読みで、飢饉時の小麦確保や内戦回避に成功し、ついに前世の日記帳ごと「処刑」の二文字が消えたからだ。だが、呪縛から解き放たれて小躍りする彼女の下に、凶報が舞い込む。想い人である王子アベルの国で革命が勃発したというのだ。危険を冒して救助に向かうべきか、我が身の保身か……?変わり始める未来を前に、彼女が下す「最初の選択」とは?ポンコツ姫よ行け、 ギロチン回避のその先へ!運命に抗う一世一代の歴史改変ファンタジー第2巻!

ポンコツだけど失敗を指摘された時に自分の行いを改善しようと頑張れるミーア姫と、いつも完璧であるがゆえに自分の失点も他人の失点も許せないシオン王子との対比が良かった。怒涛の「さすミア」展開にやや食傷気味になる部分もあるけど、大きな敵の存在が示唆されて良い意味で先が読めなくなってきたな。

日記が消えて、良い意味で先が読めなくなってきた

わがままな性格と周囲を省みられない性格が祟って一度は断頭台の露と消えたはずのティアムーン帝国の姫・ミーアが少女時代からやり直し、1回目の人生での経験を元にギロチン回避を目指…していくうちに、なぜか周囲から思慮深い女と勘違いされて「帝国の叡智」とまで呼ばれるようになってしまうシリーズ第2巻。

1周目の人生でミーアをギロチンにかけた復讐者・ディオンが色々あって(復讐される原因となった事件を事前に解決して)仲間に。とはいえ、前世での印象が悪すぎて彼の前だけでは完全に借りてきた猫になるミーアが可愛かった。ミーアの思惑(※特に何も考えていない)を深読みして株を上げてしまうあたりは概ね他のキャラと同じなんだけど、彼のそれはなんというか圧が強すぎるので、自分を殺した相手からそんな圧を掛けられたらそりゃミーアも涙目になるわ。ところでミーアの参謀・ルードヴィッヒと彼の間に悪友的な相棒的なアレが生まれそうな気配でわたし、とても気になります。

1巻の時点で概ねの破滅フラグは潰している気がしたので2巻どうするんだろうと思っていたのですが、思った以上にフラグが複雑だったというか解除しないといけない爆弾の数が多かったというか。ミーアの破滅をきっかけに連鎖的に周辺国を衰退していく未来と、そんな未来を望む「黒幕」の存在が明らかに。更に、ギロチン回避した流れでこれまで未来を指し示していたミーアの日記が消滅して…。ミーア自身の1周目での経験や、2周目の人生での成長を加味しても、その『叡智』の一端を担っていたのはあの日記だったと思うので今後がどうなるのかいろいろな意味で気になるところ。

ミーアとシオン、正反対な二人の対比が良い(ただしすれ違ってる)

今回はひょんなことから二人で行動することになったミーアとシオンの対比が印象的でした。一周目のミーアは確かにポンコツで考えなしで無能な姫だったと思うんだけど、自分の失敗を指摘されればそれを受け止め、改善するために努力することができた。逆に、完璧であるがゆえに他人に同じだけの完璧さを求め、他人の失敗も自分の失敗も許すことも出来ず、ミーアのほんの少しの側面を見た途端に彼女を切り捨ててしまったシオンは正反対の意味で「不完全な」人間だったと思うんですよね。その欠点があるがゆえに1周目のルードヴィッヒも失敗を知るミーアを支持し、自分と同じような考えを持っているはずのシオンにはついていかなかったわけだし。

優秀すぎるゆえにそうでない人間の心がわからなかったシオンが、ミーアの「失敗を知れ」という言葉で自らの弱点を自覚し、真の意味で公平であろうと変わっていく姿がとても良かった──これ、何が一番面白いかって、このミーアの言葉がそういう深い意図があって出てきた言葉では全くないってことなんですが……事実を並べてみると一瞬すごい深イイ話みたいになっちゃうんですが、これもいわゆる「さすミア案件」なんだよな……。

ともあれ無事にギロチンの運命も回避し、以前の生で敵対した人々とは手を取り合うことができ……完璧ではないもののとりあえず幸せな未来を勝ち取ったミーア。とはいえ、今回示された黒幕みたいな存在も不穏ですし、今回は第一部完扱いでまだまだ波乱が待ち受けてそうな気配。これからどうなっていくのか、とても楽しみです。

ところでエピローグで一瞬だけ示唆された「現在の状況での」未来予想図、100%のベストエンドとはいえないけれどこれまでの殺伐とした展開からは打って変わったイチャコラぶりで笑ってしまう。子供出来すぎでは!?

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ティアムーン帝国物語 〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

崩壊したティアムーン帝国で、わがまま姫と蔑まれた皇女ミーアは処刑された――はずが、目覚めた彼女は12歳に逆戻り??第二の人生でギロチンを回避するため、帝政の建て直しを決意する。手始めに忠義に厚い下っ端メイドと、左遷されたが優秀な文官を味方につけ、失敗した過去をやり直す日々が始まった。けれど、ミーアの本音は「我が身の安全第一」。仇敵を遠ざけ、人脈作りに励むうちに、なぜか周囲の忖度で次々と奇跡が実現!やがて、身勝手なはずの行動は大陸全土の未来を大きく変えていくのだった……。 「こ、これぐらいわたくしにかかれば簡単ですわ!」 保身上等!自己中最強!小心者の元(?)ポンコツ姫が前世の記憶を使って運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!

コミカライズが可愛かった+BWで1巻無料だったので手に取りました。飢饉・疫病・革命という多方面からの国難によって亡国となった母国ティアムーンの運命を、人脈を作り直していくことで変えていこうとする展開が面白い。決して高い志を持つわけではない、小心者で保身最優先の駄目王女ミーアが誤解がきっかけとはいえ自分に期待を寄せてくれる人々に(へっぽこながらも)少しずつ応えようとしていく姿が印象的でした。

お調子者で小心者な王女が繰り広げる、「やり直し」の物語

わがままし放題で周囲から反感を買いっていたティアムーン帝国の王女・ミーア。革命が起きて数年間地下牢に幽閉された後、処刑されることになってしまった。断頭台の露と消えたはずの彼女が次に目を覚ますと、まだ帝国が健在だった頃の少女時代に戻っていて……!?自らの記憶と処刑までの日々を描いた日記帳の記述を頼りに、一度は処刑されたはずの王女が過去に戻って処刑を回避するため奮闘するお話。

決して頭が良いとは言えないミーアがやることなすこと良い方に誤解され、前世で親身になってくれた人達だけでなく、前世では見向きもされなかった人たちからすらも誤解され、「帝国の叡智」とまで言われて高い評価を受けていく……という展開がコミカルで楽しかった!どちらかというと本人は短絡的で何も難しいことは考えていないんですが、誤解が誤解を重ねて信者状態になっていく周囲の人々と、その誤解を受けて「よくわかんないけどとりあえずノッておこう!!!」ってノリでとりあえず便乗していく軽率さに笑ってしまう。また、やり直しモノとしてはミーアが処刑台まで持っていった日記が二度目の生での彼女の行動を受けてリアルタイムに書き換わっていくという設定が面白かったです。

身の丈に合わない過大評価が続いて主人公が持ち上げられていく系の展開、個人的には座りの悪いものを感じてしまいがちであまり得意ではないのですが、この作品はミーア自身がとりあえず周囲のヨイショにノッていく一方でそれを過大評価だと認識してしまってもいるので割とその手のストレスを感じることなく読めました。好転していく状況を喜ぶ一方で周囲からの過剰すぎる期待に内心頭を悩ませている姿が微笑ましかった。

一番大事なのはあくまで自分だと言いながらも1周目の人生で味わったしんどい思いを他人にさせたくもないし、自分のことを大切に思ってくれた相手には幸せになってほしい。そんな思いが根底にあるからこそ以前の生では届かなかったはずのミーアの行動が周囲の人々の心を打ち、動かしていくんですよね。「未来に起こることを既に知っている」というのはたしかに大きなアドバンテージであるんだけど、それ以上に前回の生を経て相手の気持ちを推し量ることができるようになったのが2周目ミーアの最大の武器なんだろうな。

それは中盤から始まる学園生活編でも同じで、かつての生では周囲の状況を考えずわがまま放題で過ごしてしまったせいで様々な失敗をし、最終的に革命の火種を自ら作ってしまったという経緯があるわけですが、その失敗を糧にしたミーアがなんだかんだで周囲の状況や思惑を推し量りながら行動していくことで、少しずつ前世では実現できなかった様々な人脈を築いて行く姿が印象的でした。というか前世でのミーアの「勘違いムーブで失敗して少しずつ孤立していく」の流れ、個々の失敗で見ていくとコミカルでめちゃくちゃ面白いんだけど改めて考えると孤立の仕方がリアルできっついな…!!

ちょくちょく挟まれる一周目の生での孤立エピソードがリアルなだけに、処刑の未来やかつて敵となった人々からの心象に内心で怯えまくりつつも今度こそ様々な友人を得て楽しく過ごしているミーアの姿には思わずほっこりしてしまう。また、隣国との戦争を回避するために近づいたはずの近隣国の第二王子・アベルとの勘違いラブコメが大変可愛く、最初は利権で近づいたはずなのにミーア自身がすっかりアベルにときめいていってしまう流れにはによによしてしまいました。

個人的には剣術大会に出場するアベルのためにお弁当を作ろうとする流れがメッチャ好き。自分でお弁当を完成させられる自信がないから友人たちを頼ろうとするも誰も彼もが明らかに不穏な事言いだして……からのブレーキのない暴走列車みたいな展開がすごいし、シオンの従者・キースウッドの心労がマッハで強く生きてほしすぎる。ていうかこの流れで事故らないの逆にすごくない!?絶対事故ると思った。

もう1巻ラストの時点で前世で革命が起きた際に彼女が作り上げた火種はほぼ回収し終わってる感じで今後どうなっていくのかが気になるけど一番の原因はやはり飢饉と疫病だと思うのでそう簡単に処刑ルート回避はできないのか。終盤でそれとなく示唆された貴族達の農耕民族への差別的な風土を見ると最大の敵は革命よりも疫病よりも飢饉なのか。続きがどうなっていくのか、楽しみです。

余談ですがコミカライズの姫の表情変化がめちゃくちゃ可愛いくて楽しいので原作気になった人、原作読んで面白かった人は読んだほうが良い。

杜乃ミズ(著), 餅月望(著), Gilse(著) 「ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜@COMIC1 (コロナ・コミックス)」
杜乃ミズ(著), 餅月望(著), Gilse(著) (著)
TOブックス
発行:2020-01-20T00:00:00.000Z

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた

 

配信事故から人気Vに!? どうして清楚Vはこうもヤバイやつが多いのか。
Web発、衝撃の問題作が遂に書籍化! 大人気VTuberコメディ! 数々の華やかなVTuberが所属する大手運営会社ライブオン。その三期生で『清楚』VTuberの心音淡雪が、不注意から配信を切り忘れた結果――「やっぱロング缶の鳴る音は最高だぜ!」「は? どちゃしこなんだが?」「わたしがママになるんだよ!」素の性格(酒カス・女好き・清楚(VTuber))がバレてしまい!? そして翌日「めちゃくちゃ切り抜かれてる!? トレンド世界1位!? なにこの同接数!!!!」大炎上するかと思ったら、ギャップがウケて大バズ! その結果「おっしゃー配信始めるどー!」開き直った彼女は、大人気VTuberへ駆け上がっていく!!

テンションの高い会話劇とコメントの掛け合いが軽妙でとても楽しかった!昔の2chの面白スレまとめを読んだような読後感。今読まないと楽しみきれないであろう、イマドキのオタク作品ネタを大量に含んだ掛け合いの数々をそのまま書籍化してくるの、さすが生徒○の一存を生んだ富士見ファンタジア文庫だな強い。

おまえは今までに飲んだストゼロの本数を覚えているか?

ブラック企業を退職して清楚系Vtuberとしてデビューしたものの、配信数はイマイチ、収益化も出来ない状況で鳴かず飛ばずの毎日を送っていた心音淡雪こと田中雪。ある日、配信を切断し忘れて独りでストゼロで酒盛りして寝落ちする所までをあますことなく配信してしまい……!?清楚あらため「ストゼロ系」Vtuber・心音淡雪の快進撃がここからはじまる!

ストーリー的な要素はタイトル部分以上のものはあまり無くて、「清楚系」の皮を脱ぎ捨てて思うがままにテンションの高い配信を繰り返す淡雪と、色々な意味でフリーダムすぎる彼女の配信にツッコミを入れるリスナーたちの掛け合いがとにかく楽しいお話でした。とにかく会話のテンポが良くて何度も笑ってしまった。Vtuber配信の面白いところと優秀なコメントだけまとめてテキスト化したみたいな、ラノベというよりも2chの面白スレまとめを読んだような読後感で懐かしかったです。

個人的にはもう少し波風があっても良かった気が気がしなくもないけど、女ライバー同士の確執とか炎上みたいな展開も特になく、アンチに攻撃されるみたいな話もなく、ひたすらライバー達の仲良しのところを見せてもらえるので安心して読めるのも強み。百合の下ネタにはちょっと引く部分もありましたが、同時に主人公の淡雪がとにかくVtuberという存在が大好きなんだなということが丁寧に描写されていくので憎めない。色々な意味でストゼロの消費量が凄すぎて主人公の肝臓が心配になりますが、途中で休肝日が儲けられて安心したし、周囲もそこまで無理やり飲ませようとするわけじゃない(煽るくらいはする)のでその辺も安心して読めました。

コメント欄はネットスラング全開、既存作品やエロゲーネタもバンバン入ってくるような会話が色々な意味で今じゃないと完全には楽しめない系の作品であって、これをそのまま書籍にしてくるの強いなあ……と思ったけどよく考えたら富士見ファンタジア文庫的には「生徒会の一存」あたりですでに通過した所って気もしました。大筋のストーリーが殆どないところも生存を思い出す。その割に最後はしっかり2巻に続くみたいな終わり方だったけど次巻はどうなってしまうのか。楽しみです。

用語関係はこれまでにいくつかVtuber物を読んでいたおかげでほぼ戸惑わずに読めたんですけど、唯一、カステラの意味が解らなくてしばらく困惑した。思わずtwitterで聞いた。ああそうかマシュマロかぁ…というか原文読みに行ったら普通にマシュマロだったわ。あとがきまで「カステラ」になってたから一瞬なんかそういうサービスが有るのかと思ったわ…。

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典18

 

タウム天文神殿、メルガリウスの謎ーー決戦の時、来たる!
天の智慧研究会が、帝国に宣戦布告!  フェジテに迫る危機を前に、頼みの切り札・セリカが姿を消した。向かう先はタウムの天文神殿。そこで待ち受ける最高指導者・フェロード=ベリフ。その、驚愕の正体はーー

唯一の家族であるセリカ・守るべき生徒達の間で揺れ動くグレンと、そんなグレンの背中を押して上げられるまでに成長した生徒達の姿が印象的でした。その一方でルミアが狙われる理由や敵の正体がいよいよ明らかになり、最初から最後まで衝撃の展開すぎて気が抜けない。3巻連続で続きが気になりすぎる、酷い引きだ…!!!

動揺するグレンと、彼の背中を押してくれる生徒達の成長がアツい!

問題は山積しているものの、なにはともあれミラーノからフェジテに帰還したグレンと生徒達。ところが、セリカが書き置きを残して姿を消してしまっていた。セリカを追いかけたいグレンだが、そのころフェジテにはアルザーノの首都を陥落させた死者の軍団が迫ってきており……。

ミラーノでの魔術祭典から続く一連の事件では生徒達やイヴの精神的支柱であり続けたグレンだけど、そんなグレンだからこそ心を許して甘えられる相手は自分を拾ってどんなときでも影に日向に自分の隣にいてくれたセリカ以外にありえなかったんだなあと。普段の「ロクでなし」でも頼れる「正義の見方」でもない、ありのままのグレンの姿と、そんなグレンがセリカの失踪を受けて動揺する姿が衝撃的。

今セリカを追わなければ二度と彼女と会うことは叶わない、でも生徒達やフェジテの人々を見殺しには出来ない……二律背反の思いの中で思い悩むグレンの背中を押してくれる生徒達の成長した姿が本当にアツかった。フェジテを取り巻く状況が最悪であることに変わりはないんだけど、それでも彼らに背中を預けられると思えてしまうのは、このシリーズがこれまでの物語で堅実に「生徒達の成長」を描き続けてきたからなんですよね。かつての事件で学園が戦場になったときとは別人のように落ち着いて行動出来る彼らの姿に確かな成長を感じて、ぼろぼろと泣いてしまいました。

明らかになった真実と、衝撃のラスト(※1冊ぶり3回目)

生徒達に見送られて、システィーナやルミアと共に「タウムの天文神殿」に向かうグレン。ところが、天文神殿はかつてとは大きく姿を変えていた。更にイヴやアルベルトから、王家に関する不穏な事実を聞かされて……。

あとがきでも言われてましたけど正直セリカと天空神殿の話とかルミアの正体に関する話とかガッツリ記憶から抜けてて、原作読み直しの必要性をひしひしと感じましたね。いや、その変うろ覚えで読んでも十分面白いんですけど。短編集除いても天空神殿の話って12冊も前か……ルミアの鍵とフェジテ最悪の三日間がだいたい8冊前…思えば遠くにきたものだ……。

ルミアが禁忌の子供とされた一連の事件の真相、禁忌教典とは何なのか、天の智慧研究会のトップ・フェロードの正体とその目的──など、これまで伏せられてきた多くの謎が一気に明かされます。いや、フェロードの正体まわり予想以上にえげつないですね!?ルミアだけでなく、無関係かと思われていたシスティーナの方にも因縁が被さってくる展開が大変にえげつない。というかグレンも出自を考えるとなにか関係してくるような気がしてならないんですよね…今回セリカとのアレコレでそれとなく掘り返されてましたしその辺の設定。

圧倒的な敵の姿に翻弄され、更にはルミアまで奪われ……絶体絶命の中、なんとかその場を離脱したグレンとシスティーナ。彼らがたどり着いたのは六千年近く前の超古代。これからどうなってしまうのか……ってまた酷いところで続いた!!次巻が楽しみです!!!

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魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿

 

第33回ファンタジア大賞――異次元の《大賞》受賞作!
統合暦2099年――新宿市。究極の発展を遂げた未来都市に、伝説の魔王・ベルトールは再臨した。巨大都市国家の輝かしい繁栄と……その裏に隠された凄惨な“闇”。新たな世界を支配すべく、魔王は未来を躍動する!

サイバーパンクにファンタジー要素を融合させたバトル描写と、500年の因縁を超えて共通した目的のために手を取り合う魔王と勇者の関係性が大変に良かった。欲をいえば魔王としての力を取り戻すためにゲーム実況をして成り上がるという展開がイマドキ風で面白かったので、もうちょっとがっつり読みたい。しかしもう挨拶の時点でめちゃくちゃに面白かったので勝ちという感じはする。

近未来の新宿で繰り広げられる、ファンタジー系サイバーパンク。

定命の者と不死の者達が生存戦争を行う魔導文明の世界とデジタル技術が発達した機械文明の世界が融合し、急速で歪な進化を遂げた2099年の新宿。500年の永き眠りから目覚めた魔王ベルトールだったが、その間に世界は大きく変わってしまっていた。魔王は再び力を、失われた信仰を取り戻すため(そして日銭を稼ぐため!)に動画配信をはじめることに……。

ファンタジーと近未来が融合したバトルや物語がとても面白かった!500年前は圧倒的な力を誇っていた魔王の無詠唱魔法というアドバンテージが、デジタル技術の発展によって補われるどころか更に上に行かれてしまう、という展開が現代の技術進化の光と闇を見ているようで面白い。世界の変化に加えて部下の裏切りにも遭って誰でも受けられるはずのデジタル技術の恩恵を受けることが出来ず、現代社会に戸惑っているうちにまともな職に着くのも難しくなってしまう魔王の凋落ぶりが印象的でした。

そんな彼が力を取り戻すために選んだ手段は「動画配信者」として名前と顔を売ること。彼に向けられる知名度が良いもの悪いものどちらも含めて彼への「信仰」という力になる、という展開が上手いなあと。動画配信を肯定的に見てくれるユーザーの興味だけでなく、アンチに粘着されることすらも一つの負の「信仰」として彼の力になると描かれているのが印象的で、ベルトールが以前よりも丸くなったみたいな話が後半で出てくるけど、動画配信者として正の信仰を集め続けたことと関係あったりするんですかね?結構集めた信仰の質によって本人の気性が左右されるみたいなのはありそうですよね。

一方で動画配信者としてのベルトールの様子はかなり必要最低限にしか描かれていなくて、もうちょっと読みたかった…!!そこがメインじゃないのはわかっているんですけど、気がつけば配信者として成り上がっているまであるのでちょっぴり物足りない感じ。でも彼の面白さは最初のカラー口絵の2Pだけで十分面白さが伝わっちゃうみたいなところもあるのでそれ以上は蛇足なのか。いやあのイラストと魔王の挨拶最高すぎない!?ドラマガにただひたすら魔王が配信するだけの短編とか載ったら雑誌ごと買うわ。

力を一時的にでも取り戻した魔王が、デジタル技術の革新による魔導技術のインフレを純粋な魔導の力のみで捻じ伏せていく終盤がまた大変に良かった。良くも悪くも500年前の魔王の凄さというものが序盤だけでは伝わりづらい部分があるんだけど、絶望的にも見えた戦力差を一瞬でもひっくり返してしまうパワーはさすが異世界の魔王!という感じで爽快。最初は致命的な弱点と思われていた「デジタル技術が一切使えない」という設定が一周回って最終決戦での強みになる展開には思わずニヤリとしてしまいました。

この魔王と勇者の関係性が美味しい!!!!

動画配信者として一角の地位を築きつつあった魔王は、思わぬ人物と再会する。それは、500年前に自身を倒した勇者グラムその人であった。定命の者であるはずの彼がどうして500年後の世界に、と疑問に思い声を掛けるが……

女神の手によって魔王達の「不死」とは違う「不老」の身体を手に入れてしまったグラム。魔王も勇者も必要のなくなった世界でヨゴレ仕事にも手を染め、かつての志を失って朽ち果てるように生きてきた彼が再臨した魔王と再び巡り会う。魔王と志を同じくすることは出来ないが、同じ目的の前に協力することは出来る──と、不死者を利用した非人道的な企みを前にして不倶戴天の敵同士であるふたりが手を取り合う展開が大変良かった。絵に描いたような正義の人だった勇者が現代社会で心が折れて擦り切れてる姿も印象強かったですが、そんな彼に本来は敵である魔王その人こそがかつての気持ちを思い起こさせてくれるというのがとても良い。いや、ほんと、お互いにしてきたことを思えば許すことは出来ないけれど背中を合わせて戦ったら誰よりも信頼できるという関係性は本当に最高なんですね!!!

魔王と勇者、二人を取り巻く女達とその関係も大変に魅力的でした。ベルトールの腹心の部下であるマキナが魔王との二人暮らしにどぎまぎする一方で魔王も500年後の生活を経て様々な変化が生まれてきて…と、だんだんラブコメのようなコントを繰り広げる二人がほほえまかわいいし、マキナの数少ない友人であり、ベルトールを配信者としてプロデュースした少女・高橋とベルトールのどこかビジネスライクな関係性も良かった。一方、勇者の方にも戦いの中で生まれた絆というか腐れ縁というかみたいな何かがはじまりそうだったり…で。この勇者と魔王の関係性は本当に美味しかったので今後もちょくちょく腐れ縁していってほしいし、できればお互いの大事な女を護るために共闘とかしていただきたい。

ファンタジーと近未来SFが融合したような世界観といい、キャラクター達の関係性といいとても楽しかったです!2巻が楽しみ。個人的には配信者魔王の挨拶、早急に声つけてもらったほうが良いって思ったんですけど確認したら原作PVがすでにやってくれてましたのでとりあえずPVを見てください。

日野聡×伊藤美来『魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿』PV【第33回ファンタジア大賞《大賞》】

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