ページ 22 | 今日もだらだら、読書日記。

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伝説の勇者の伝説10 孤軍奮闘の王様

 

ライナ・リュートは死んだ――。今、ストーリーが加速する!
≪おまえの中の、真実を見ろ≫。何者かに胸を刺され、血が流れ、意識が薄れ、ライナ・リュートの生命の灯火が、消えた……その瞬間、世界が、歪んだ。何者かに襲われ、何処かへ連れ去られてしまったライナ。彼は生死の境で新たな事実を知ると同時にさらなる重荷を背負わされる。一方、ローランド帝国王シオンにおかしな言動が見え始めるのだが――。遂に衝撃的展開を迎える、アンチ・ヒロイック・サーガ、第10弾!

シオンの仕事を手伝った帰りに何者かに襲われたライナ。胸を刺され、死んだと思ったのもつかの間、一面が真っ赤な、おかしな空間に導かれていた。一方、いつものようにだんご屋巡りをしていたフェリスは、どこか雰囲気がライナに似たおかしな男と遭遇する。その男は「ライナは死んだ」と言い……。

ライナとフェリスとシオン、最後の平穏な日常

ライナが死にかけたりフェリスが謎の記憶欠損を起こしたりシオンが知らない所でナニカに蝕まれていたり……と全く不穏要素が消えないまま突然始まる、なにもない、ただ平穏な「空白の1年」。とり伝のローランド編はここに繋がるのか。本当に本編の半分以上は重たい話なんだけど、短編を読んでると本当にちょっとだけ描かれた「平穏な1年間」が絶大な重みを持ってくる。そしてその話の直後に「一番最後の平穏」とかいって短編11巻分の重みでぶん殴ってくるのズルくない!?富士見ファンタジアの短編シリーズって割とちょくちょくこういうことするよな!!(フルメタのOMOとか、東レ2部後に突然重みと尊みを持って来る日常短編とか)

本編とは全く関係ないけど、前から思ってたシオンの異常な徹夜仕事について医者が健康面からマジレスしてくれる展開めちゃくちゃスカっとした。やはり徹夜はよろしくない。あと、クラウがライナと拳で解り合いに行くエピソードが好きです。それにしてもあの二人も孤児出身→軍の異常な教育施設の出なんですね……過去のローランドにはいったいいくつ狂った教育施設があったんだ。

無印は泣いても笑っても次巻が最後。突然姿を表したライナの父親・リューラの存在や、なによりシオンの様子が不穏な件とか。どう決着がつくのか楽しみです。いやアニメで見たので概ね知ってるけど……いやでも……。

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伝説の勇者の伝説9 完全無欠の王様

 

シオンのもとに帰国したライナだったが!? 物語の核心に向け、ローランド編、突入!
ガスターク帝国の魔眼狩りによって、行き場を無くしたライナ。だがフェリスの説得により、再びローランドに帰ってきた彼を待っていたのは、相棒の執拗なイジメと、親友が用意してくれた膨大な仕事の山。悪魔王シオンによって不眠不休で働かされ死にそうになりながらも、ひとときの平和に浸るライナ。しかし、その水面下では様々な者たちの思惑が絡み合い、ライナたちを時代の渦のなかに呑み込もうとしていた……!

やりたいことを見つけて、フェリスとともに一ヶ月ぶりにローランドに帰還したライナを待っていたのは笑顔のシオンと地獄のような量の書類仕事だった!?忙しいなりに楽しい毎日を送るふたりだが、その裏では様々な思惑が動き出していた……。

久しぶりの明るい展開が楽しい……と思ったら……

戻った途端に大量の仕事を押し付けられる展開でめちゃくちゃ笑った。手紙の破壊力が高すぎるし扉越しにだんごでフェリスの買収合戦行われるの微笑ましすぎるし、ライナ失踪からの前巻のクライマックスでのライナとフェリスのやりとりであれだけ感動したのに、その数日後に本人たちが自らお互いの良い台詞をネタにしあって傷つけあってる(互いのメンタルを)ってそんなことある〜!!?

一方、フロワードの手によって昏睡させられたミルクは改めて自分が「忌破り追撃隊」の隊長として抜擢された意味を改めて考えることに。あくまでミルクの想像でしかないからシオンの真意こそわからないけど、お節介なおばちゃんみたいなノリでミルクをけしかけたのかと思ったら普通にクソデカ感情の延長線というか、いやもっと更に重たい話だった……でも確かに、そう言われるとルークにライナの監視の命令が別口で出てた話とかさもありなんだし、なによりライナの記憶が無いのって5歳よりも前って前巻で断言されちゃってるので(ミルクと出会ったのは短編の情報から推測する限り最低でも十代の頃)何らかの事情でミルクのことを知らないふりしてたのは確実なんだよなあ……。

しかし、ミルクが追いかけてきた時点でライナがシオンの意図を薄々察してたんだとしたらそれはそれで相当しんどさがあるし、シオンが自分の抹殺命令出してるのを全然気にしてないと言ってるのもなんともしんどいし、一方のシオンがライナに困ったことがあったらなんでも相談しろみたいなこといいながらなんだかんだで自分の悩みは自分で抱え込んでたりするのがまたこう……ままならないし不穏……。

国際情勢はもうギリギリのところまで来てるし、ライナに思い入れのあるジュルメを関わらせないように動こうとするミラーとか(っていうかやっぱり結婚してた!!!)、執拗にライナを始末しようとするフロワードとか、そのフロワードに別人のように冷たい態度を取るシオンとか、もう明るい話の裏で不穏な話しかない。故ステアリード公爵の後ろに居たはずの黒幕、そんなのもありましたね!!そこまだ解決してなかったんかい!!

とかいってたら最後が衝撃の展開すぎて!!!休む暇がない!!!

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伝説の勇者の伝説8 行方知れずの恩知らず

 

遂に訪れた、物語のターニング・ポイント――激動のアンチ・ヒロイック・サーガ!
「俺の手が、おまえに届かない理由はもう、知ってるんだ……」シオンたちの前から、ライナ・リュートは姿を消した。魔眼保持者とともに。国王シオンに与えられた極秘任務にもとづき、ライナ抹殺を実行するべく、ローランドを発つ『忌破り』追撃隊ルーク。――一方、フェリスも相棒を連れ戻すために旅出つ。七つのリュックにだんごを詰め込んで! ライナは何処に向かっているのか? 皆の心の内に、ついに転換点が訪れる――!

エスタブールを震撼させた魔眼の持ち主・ティーアと共にシオン達の前から姿を消したライナ。ティーアに連れて行かれた隠れ家には、自分達と同じ「魔眼」を持った子どもたちが保護されており……一方、ライナを連れ戻すためにその行方を追うフェリスとシオンの命を果たすために動き出すルーク。勇者の遺物や魔眼を収拾するガスタークの刺客も行動を開始し……。

様々な思惑が動き出す、物語の転換点

失踪したライナを巡って、様々な思惑が動き出すお話。あそこで都合よく突然出てきたシオンの命令書どこから……と思ってたらそこだったか〜〜!(いい感じにアニメの内容が頭から抜けてる顔)

前巻での活躍もどこへやら、一緒に旅しているのにライナの長考に突き合わされてけんもほろろに扱われるティーアさんは強く生きて欲しいけど、自分以外の魔眼保持者と出会い、これまで目を背けるだけだった「魔眼」について改めて向き合うことになるライナの姿が印象的でした。ガスタークからの刺客の言葉によってますます疑問点が増えた部分は多いけど、自分の持つ力に付いてある程度の理解と折り合いを付け、自分自身のやりたいことを見出していく展開がとても良かった。あれほど化物と言われることを怖れていたライナが自分のことを「化物」だと言ってしまうの、良いことなのか悪いことなのかはまだわからないけど、少なくても自分の在り方を少しだけでも受け入れられたのかなと思ってほっとした部分がある。

それにしても、6巻のルシル、7巻のリーレvsカルネ、今回のフロワード・ルークと頂上決戦みたいなバトル展開が多すぎて、たしかにティーアvsクラウみたいな番外編もあったんですけど、ローランドどんだけの魔境だよって思ってしまう。ルークを前にして「最強とは……」ってなってるライナ(ローランド最強の魔術師)にめちゃくちゃ笑ってしまった。

フェリスの感情の動きがめちゃくちゃよかった……

だんご屋の前での「一人はつまらない」から、クライマックスの「お前が死んだら寂しい」に繋がってくフェリスの心情の動きがめちゃくちゃ良かった……あれだけ本編でも短編でもだんごに執着していたフェリスが、「こんなに重い荷物を持っていたらライナを追いかけられない」とだんごの詰まったリュックを置いてライナを追いかけていくのがあまりにもエモいし、それはそれとしてだんごを完全には諦めきれずに2本だけ持っていくのが微笑ましい。あと「お前が死んだら〜」のところで、一貫して無表情で描かれてきた挿絵のフェリスがちょっとだけ微笑んでいてうあーー!!!!となる。

時間の長さで言えばライナよりもずっと長い時間、エリス家での過酷な仕打ちに耐えてきたフェリスって実際旅の開始の時点で相当感情が死滅していたんじゃないかと思うんですよね。ライナは「フェリスの感情の機微が感じ取れるようになった」と言ってて、実際そういう部分もあるとおもうんだけど、それ以上にライナとの旅が彼女に感情を取り戻させてくれてたんじゃないかな、と思うと込み上げてくるものがありました。否定されるのが怖くてずっと言えなかった言葉をはじめて吐露するライナと、そこで初めて誰の目に見える形で感情を露にするフェリスのやりとり、良すぎる。

それにしてもプロローグとエピローグのシオンがめちゃくちゃ不穏。

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伝説の勇者の伝説7 失踪の真相

 

ライナが失踪!? 激震のアンチ・ヒロイック・サーガ!
フェリスは怒っていた。なぜなら……。あいつは、約束の場所に来なかった。ふたりで逃げるはずだったのに。ライナ・リュートは、失踪した。――その報せと同時に、ローランド王シオンのもとにエスタブールから書簡が届く。それは『複写眼』保持者が出現し、暴れているというものだった。ライナの失踪と、何か関係があるのか? 早速、ライナ捜索隊が出されるが、彼の足取りは掴めない……。物語に隠された謎が、いよいよ明らかに!

数カ月ぶりに勇者の遺物探索の旅からローランドに帰還した(というか事故で戻ってきてしまった)ライナとフェリス。だが帰国した数日後、ライナが失踪してしまう。フェリスはシオンから貸し出されたローランドのメンバーと共に捜索隊を組織してその行方を追うが、意外な所からその情報がもたらされることに。

同じころ、併合したエスタブールの兵達をまとめ上げるためにエスタブールに向かったクラウは『複写眼』保持者が暴れているという話を聞き、その鎮圧に向かう。相手は、かつて自分の腕を食い千切った因縁の『複写眼』保持者で……。

一度持ち上げてから落とす展開がとてもしんどい

6巻は概ねフェリスの実家・エリス家とその当主ルシルの話。そして今回はルシルとの会話、シオンが裏で出していた命令を知り失踪したライナとそれを追うフェリスのお話。6巻のサブタイ「シオン暗殺計画」とそのあらすじ読み直してそういう話だったっけ?と思ったけどたしかに暗殺計画あったし実際襲撃もされてましたね意味に気づいて笑った。

7巻。紆余曲折あって、やっとの思いでフェリスがライナに追いついて、いつものノリになってきて色々引っかかりは残ったけど元サヤに戻れるのか……と一度持ち上げてからティーアの襲撃・シオンの到着で再び突き落とす展開がしんどい。ルシルに刺激された「自分が化物である」というトラウマを、ティーアが的確に(しかも、その言葉をシオンに言わせる形で)抉ってきて。色々と仕方ない部分があったんだけど、シオンはここに来ないほうが良かったと思うんですよね……ローランドの英雄王としての立場に邪魔されて傷ついている親友に望んだ言葉を掛けることも出来ず、フェリスとも隔たれてしまって……傷ついて消えていくライナもしんどかったけど、それ以上に取り残されたシオンの情緒が目に見えて歪んでいくのがしんどかった。「しんどい」しか言ってないなこの文章。

1巻でローランドを離れたキファの視点から敵対する国家ガスタークの情勢やライナ達の持つ「複写眼」の秘密が少しだけ明らかになったり…と、物語の中で謎とされていた部分が少しずつ見えてきて、いよいよ物語が動き出した感じ。レファルとキファの関係、というか敵国の王とそれに一人で立ち向かおうとする女、二人の駆け引きが地味にめちゃくちゃ好きでこの二人の関係もどうなっていくのか楽しみです。

それにしても短編集との温度差が……

6巻読んだ時にどう見ても間が抜けてる!と短編8冊読んで戻ってきましたが結局ミルクの葛藤とかは本編そのまま読まないと駄目だったみたいで(※この感想を書いてる時点で10巻中盤まで読んでる)でも短編普通に面白かったし、本編終盤を読むのにあたって理解を深められる話も多かったので良かった。短編の忌破り追撃隊の皆さんのおこちゃまミルクと後方保護者面の皆様の印象が強すぎて、今回のカルネvsリーレのシリアスなバトル展開で違和感しか感じないという弊害は残った。

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とりあえず伝説の勇者の伝説8 権力のワンダーランド

 

ついにライナがローランドに帰ってきた!待望のローランド編開始!
イエット崩壊の際、海に投げ出されたライナは、何処とも知れぬ無人島に流されていた。実は、そこはフェリスの私有地──つまり、ローランド国内であった。そんな彼をシオンはいぢめをもって迎える。ローランド編開始

イエット崩壊時に起きた洪水で海に投げ出されてしまったライナたち。見知らぬ無人島に漂着した……と思ったら、そこはなんとローランド帝国にあるフェリスの家の領地だった。数カ月ぶりに帰国したふたりが真っ先に思い出したのは、自分たちをこんな境遇に落としたシオンに復讐することで……!?

舞台はローランド帝国へ!#シオン寝ろ

長かったイエット共和国編が終わり、舞台はローランド帝国へ。ライナとフェリスがこれまで以上にシオンの巧みな動きで仕事を与えられて右往左往したり、逆にシオンがライナ達に振り回されたりというお話が中心。なんだかんだで内政の手伝いしてるライナは結構楽しそうにやってる気がするんですけど、なにはともあれシオンの仕事の仕方が睡眠時間度外視のブラック労働で、頭おかしいんだよなあ……ていうかこういう判断力を求められるような頭脳労働の人が睡眠時間取らないのどう考えても駄目だと思うし、これだけ徹夜が常態化してたらそりゃあ思い詰めて極端なこと考えたりするわけだよ……シオンは本当に寝ろ。

シオンの仕事を手伝わされることになったライナがシオンのベッドに居着いてしまい(シオンはそもそもベッドにほとんど戻ってこないので別に同衾はしていない)シオンの男色疑惑が発生するの味わい深さが凄いんですけど、本編であれだけ冷酷で危険な人物として描かれ続けてきたフロワードがほぼ、娘(シオン)の行き遅れを心配する面倒くさい母親みたいになってるの面白さが凄い。彼の本質自体は変わってなくてただ単純に視点を変えただけなんだけど、視点を変えただけでこれだけ変わるの面白いな……。

それにしても素朴な疑問なんですけど、二人がローランドに戻ってきてシオンに会いに行く話、今回の「きる・ざ・きんぐ」と本編6巻の両方に全く別のシチュエーションで載ってる気がするんですけど微妙にシチュエーションが違うんですよね。あと本編6巻だと戻ってきてすぐにライナが○○してる気がするんですけどこれどういう時系列……?一回戻ってきてまた出ていってたりする……?読み進めていけばわかるかな……。

ゾーラとライナの悪友っぷりが良かった…!!!

書き下ろしの過去編「天才の流儀」は前巻に引き続きライナが『隠成師』に所属していた頃。彼が『ローランド最高の魔術師』と呼ばれるようになった由縁や、前巻でメインになったゾーラとの出会いのお話。

前巻でピア達と出会って改心(?)したゾーラがなんか逆の方向に面倒くさい男になっててめちゃくちゃ笑ったし、そのノリでそのままライナにウザ絡みしていくのめちゃくちゃ楽しい。一方、暗殺者の少女・ビオとの一件やらなにやらを経て心を閉ざし気味のライナがゾーラのあまりのウザさに辟易しながらもだんだん心を許していくのがとても美味しかった。いや、なんかこの二人ものすごく「悪友」なんですよね……フェリスのような異性の相棒ともシオンのような相互クソデカ感情な親友ともピア達のような苦楽を共にした良きライバルとも微妙にちがって、いい感じにお互いに執着がないと言うか、カラっと遠慮がないのがとても良い。それにしてもゾーラは自分が懸想してる人物の名前をそっとライナに教えてあげて欲しい。ぜったいよろこぶから。いやローランド帝国側に万が一にでも伝わるの避けたくてわざと伏せてるのかもしれないけど。

ゾーラ、前巻のあとがきで「そのうちドラマガ掲載分にも出てくる」と言ってたし、ライナのようにただ上からの命令を拒絶して割を食うだけではなく、自分の譲れないポイントは死守しつつ組織の中でうまく切り抜けるような器用さも持っているようだから死んではいない気がするんですよね。ドラマガ掲載分=おそらく現在軸の短編でライナと絡むの、めちゃくちゃ楽しみになってきたなぁ。

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とりあえず伝説の勇者の伝説7 努力のタイムリミット

 

イエット編クライマックス!いつもよりちょっとシリアス短編集、第七弾!
ローランド帝国から遠く離れた辺境の国イエットでのんきに過ごしていたライナとフェリスだったが、その平和な時も終わりに近づいてきていた。イエットは突如出現した無数の化け物に襲われる。それはある呪いで――。

勇者の遺物探しでやってきたはずのイエット共和国で惰眠を貪っていたライナ。ところがある日の夜、寝込みを異形の化け物に襲われる。それはイエットの地を5年ごとに襲う「呪い」であった。対処魔術が開発されたため現在はほぼ無害化しているそれだが、調べていくととんでもないことが発覚して…!?

最後までシリアスになりきれない、イエット共和国編クライマックス

雑誌掲載分5編のうち4編が続き物という、実質長編スタイルのイエット共和国「崩壊編」がめちゃくちゃ面白かった。いつになくシリアスな雰囲気で始まり、ライナもフェリスも苦戦するような敵が現れ、イエットどころか世界の危機が示唆されていく……という緊迫した展開からフューレル姉弟やシルが登場したあたりで風向きがおかしくなってきて、世界の危機に反してなぜかどんどん下がっていくシリアス度……という展開が最高に頭おかしかった。目前に世界の危機があるのに誰もライナの言うこと聞かないし、話の腰折るし、説明しても脳に届かないし……で、戦いが始まる前から全力で疲弊してるライナさんほんと強く生きて欲しい。そして最後にほとんど何もしてないのにしっかり美味しいところをかっさらっていくヴォイスくんに笑った。

それにしても本編を読んでいたのでふたりが何らかの事情でローランドに帰還することは知ってましたが、イエット共和国とライナ・フェリスの相性が良すぎて一向に出ていく気配なかったし遺跡の調査もまともにしてなかったし彼らどうやってこの国の外に出るんだろうな?と思っていたらまさか国の方を崩壊させて強引に帰還させるとは思いもしなかったですその発想はなかった。天才かな??

小悪魔美少女に成長したピアが可愛すぎる

書き下ろしの過去編「天才の限界」は2巻に収録された短編と同じ時間軸、『隠成師』の少年ゾーラがローランド帝国からの指示で中央大陸に居る『忌破り』の少年少女を暗殺しに行く、というお話。忌破りの少年少女、というかジュルメ訓練所でライナの同期だったふたり・ペリアとピアなわけですが、二人を殺しに来たはずのゾーラが軽くあしらわれて追い返されてしまう姿が爽快だし、ワガママな少女としての一面は以前よりおとなしめになって小悪魔系美少女になったピアに手のひらの上で踊らされてしっかり惚れさせられて帰ってきちゃうゾーラの姿にニヤニヤが止まらない。

国に都合の良い暗殺者になるために自尊心を歪まされたゾーラが、報われない恋に身を焦がしてすっかり改心してしまうのめちゃくちゃ微笑ましくて楽しいお話だった。最後がいい感じに死亡フラグっぽいんですけどあとがきで「ドラマガ短編でも出る」っていわれてるってことはまあ死なないだろうし、次巻書き下ろしのライナとの絡みが普通に楽しみだな。

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とりあえず伝説の勇者の伝説6 死力のダンスパーティ

 

超無気力人間ライナと超絶美形だんご剣士フェリスの「勇者の遺物」探索の旅は、あいかわらず辺境の異様な国イエットでストップしたまま。そこにシルという迷惑野郎までやってきて、ライナの安眠をおびやかす──。

槍(ブタのぬいぐるみらしき何かにフォークとナイフを刺した物体の事を刺す)が動き出して勝手に修行したり、伝説の勇者の遺物らしき何かを追いかけたり、ライナが下着泥棒の濡れ衣を被せられたり…「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの番外編を収録した短編集第6巻。

ライナ→フェリスの名称不明のクソデカ感情、良いよね……。

ともかく一番最初の「ブーちゃんず・とらいある」がカオスすぎてともかくカオスだったということしか突っ込めない。ブーちゃんというのはブタのぬいぐるみらしき形状のものにフォークとナイフが刺さった槍です。今回の話では喋るし動くし目からビーム出るし主人から離れて勝手に修行します。何をいっているかわからねえとおもうが俺も略。

今巻は割と与太話から勇者の遺物もどきや何らかの魔術遺産的な物体につながっていく話が多くて、これまでのイエット共和国でのエピソードの中だと一番くらいにライナとフェリスが仕事しているのでは?なんですけど、入り口が割としょうもないところからなのでどうしてもシリアスになりきれない感じが相変わらず楽しい。全然関係ないんですけど、何故か占いアプリに偽装した会員制の出会い系アプリみたいなクリスタルがイエット共和国中に出回る「でぃてくてぃんぐ・くりすたる」のクリスタルで昔流行った通信機能付き占いゲーム付き電子手帳を連想して懐かしくなりました。年齢がバレる話をするのはよせ。

これまで以上にカオスな短編が多い中、「ぐれいてすと・まじしゃん」がめちゃくちゃ面白かったです。手品師の行う手品を“魔法”だと勘違いするフェリスに魔法と手品の違いを説明しようとするライナだが、何かフェリスのやりとりに違和感を感じて……というところから、気がつけば「勇者の遺物」と思しきアイテムを巡るシリアス展開につながっていくんですけど、傷ついたフェリスの姿を見た時のライナの豹変ぶりがめちゃくちゃ好き。普段はフェリスが強すぎてなかなか出てこないんだけど、時折ライナが見せる、フェリスが傷つくことへの過剰反応から溢れ出る「化物である自分と対等な存在になりうる強者」への執着というか、愛とも恋とも友情とも違いそうなクソデカ感情の気配というか……。

書き下ろしの破壊力が高すぎる

今回の書き下ろし「禁断の書」は久しぶりに現在軸の話。ローランドにいるシオンの元に『真実の勇者の伝説』というタイトルの呪われた本が送られてきて……という、導入だけはめちゃくちゃシリアスなんですが実はフェリスとライナが自分たちの書いた本をシオンに出版させて印税を得ようと送りつけてきていた、というお話。本の内容がもう、物語とは名ばかりの「童話を作る」というお題でフェリスとライナが夫婦漫才してるだけみたいなナニカで、ローランドで地獄のブラック労働に身をやつしながらライナの見せた理想と血なまぐさい現実の間で葛藤している時期のシオンにこれを送りつけてくるのマジでふたりの心が強すぎて震えるしシオンはもっと怒った方が良い。いつも通り我道を突き進むフェリス(主人公)とその主人公にいいように弄ばれるライナ(多分ヒロイン。全裸)の掛け合いが面白すぎて腹筋が辛かった。もうこういう、作中で素人がトンチンカンなリレー小説するだけみたいな話好きすぎる!!!!

一方、その原稿を受け取ったシオンも泣き寝入りするはずがなく……なぜか本当に二人の名前で出版された本がイエット共和国に届くほどの大ブームになってしまう。困惑する二人がふたりがその本を開くとそこにはとんでもない内容が…!?という展開で二重三重に畳み掛けてくるの本当に笑いすぎて過呼吸になるのでやめてほしい(もっとやってください)。フェリスパートもライナパートも基本の流れが完全に一致してる所とか微妙な投げやり感を感じてポイント高いですし、絵本の内容、その後の展開を(アニメで)知ってるとライナの方とか素直に笑ってよいのか不安になるんですがこれ大丈夫ですよね!?本当に最初から最後まで(腹筋の)破壊力が高くて凄かったです。

次巻はいよいよイエット共和国編の終盤戦とのことで、あとがきによるとイエット共和国だけどちょっぴりシリアスな展開もあるよとのこ…………シリアス????(困惑)

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とりあえず伝説の勇者の伝説5 魅力のオーバーヒート

 

万年無気力男ライナとだんごのことしか頭にないフェリスは「勇者の遺物」探索という使命を帯びイエット共和国に入る。だが、美人コンテストにでたり、薬草を探しにいったりで、本来の目的はどこえやら――。

化粧品会社で開催されている今季のテーマカラーを決めるための発表会、ピンク担当のモデルとしてフェリスが選ばれた。気のないフェリスをだんごで説得し、その敏腕マネージャー(?)として発表会の場に同行するライナだが、ライバルとして現れたのは見知った面々で……!?「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの過去編を収録した番外編短編集第5巻。

ピンク×フェリス

フェリスが化粧品発表会のモデルに採用される「すぷりんぐ・びゅーてぃ」、ライナの行動及びその後の言い訳が一見完全にハーレムラブコメの主人公みたいなことになってて笑ってしまった。いやラブコメ……間違ってはいな……いないのか……?もうこの3人が揃った時点で誰に投票しようがしまいが結末は変わらなかった気がするんですけど!いつもと違う女性らしい格好をライナに見られて微妙に照れてるフェリスさん可愛い。

今回何故かフェリスにピンクの女性らしい服を着せる短編が2つも入っているんですけど、もう1つの方のフェリスが推しの団子屋を倒産の危機から救うためにちょいエロ制服で団子屋の看板娘をする「ぷりんせす・DANGO」の方は、もう可愛いというかカラー口絵で見ると完全にいかがわしい店の人なのでヤバいし、見知らぬ男にそんな服を着せられても大人しく従ってしまうフェリスさんマジチョロい(※だんごに対して)。ライナに看板娘の格好を見られてて恥ずかしさのあまり逆ギレしてるけど、化粧品発表会の衣装でも照れてたフェリスさんなんだからそりゃああんな格好見られたらキレる。

お話自体はちょっとホロリとする、良いお話でした。いつもの通り脅されたからとはいえ、毎日400食分のそれなりに美味しいだんごつくってくれるライナは良い旦那ですね…(※結婚してない)

ますたー・おぶ・すぴあ」「すぴあらあ・すとらいくす・ばっく」ではフェリス家をライバル視する槍術の使い手・シルが登場。槍をナイフで破壊された彼がフォーク・ナイフを槍と言い張ってリベンジしにくる……のは百歩譲ってわからなくもないような気がしなくも無いとして、何故ブタの人形!?イエット共和国とローランド帝国の間をどうやって短時間で往復してるのかが気になりすぎるけどまあギャグ短編だし、普通に山経由で走って移動してるとかなんだろうなあ……。というか、そういえば本編にも居たわこの人……めちゃくちゃシリアスなシーンで出てきたからシオンの名前を出てくるまで気づかなかった……。

シオン視点から語られるライナとの出会い

書き下ろしの過去編「最良の選択」は、シオンの視点から描かれるライナとの出会い、当初彼の描いていた輝かしい未来とその挫折、その後に至る長い後悔と葛藤、そして決断を描くお話。この話、シオンの視点なのにシオンのこと何もわからないしシオンの視点だからライナの考えてることもまったくわからなくてすごい……二人がお互いに巨大感情持ってそうな雰囲気を感じるような気がする(あいまい)ってことくらいしかわからない。

もともと伝勇伝本編がシオンとライナのW視点の物語であるんですが、このお話は本編だとライナの視点から描かれていた部分をシオンの視点から描きなおしていて……授業中に声を掛けてきたのがライナとの初めての出会いではなかったということとか、シオンが様々な打算や思惑で彼に声を掛けたことなんかが語られます。ライナ視点だと余裕たっぷりに声を掛けてきたように思えるシオンが案外ライナの気のない返事にヤキモキしてる姿は予想外でニヤニヤするんですが……なんかもうこれ、逆に二人の感情がわからなくなるように描いてるよなあ。これまでの本編・短編のライナを知った上で読むと「俺のことを知ってて欲しいって?」というライナの台詞はものすごく意味深に聞こえますし、それに対する「僕が欲しがってやらなきゃ〜」というシオンの言葉に対するライナの反応がぼやかされてるのとか逆に謎が深まる感じ。本編1巻のライナの視点では描かれず、シオンの視点からは敢えて語られないこの部分、どういう意味なのか考えれば考えるほどぐるぐるしてしまい……。その後の図書室でのシーンも果たしてライナがシオンの手を取ったのか、動くの面倒だからこっちに来いという言葉でシオンがライナの手を取らされてるのか。

それにしても前巻でなんとかいい話っぽくまとまったジュルメ教室での出来事からその後の三○七号特殊施設でライナに何があったのか気になりすぎると言うか、この辺もそろそろ詳細が語られそうな気がするんですけど、ほんと前巻であんなにきれいにまとまったあの話のその後がシオンが集めた書類の情報として淡々と台無しにされるのキツイですね!

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悪役令嬢の中の人

 

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したエミは、ヒロインの《星の乙女》に陥れられ、婚約破棄と同時に《星の乙女》の命を狙ったと断罪された。婚約者とも幼馴染みとも義弟とも信頼関係を築けたと思っていたのに……。ショックでエミは意識を失い、代わりに中からずっとエミを見守っていた本来の悪役令嬢レミリアが目覚める。わたくしはお前達を許さない。レミリアはエミを貶めた者達への復讐を誓い――!? 苛烈で華麗な悪役令嬢の復讐劇開幕!!

Twitterで流れてきたコミカライズの1話目の続きが気になりすぎてなろうを探し、そのまま書籍版も手に取りました。乙女ゲームの悪役令嬢に転生・憑依し、持ち前の人の良さと暖かい心で破滅ルートを回避しようとしていたのにもかかわらず何故か婚約破棄言い渡されてしまったヒロイン・エミに変わって再び身体の支配権を取り戻した悪役令嬢レミリア。エミの暖かい心に触れて彼女に想いを寄せるようになっていたレミリアは、追放された先でエミの望んだ平和な未来を目指すために動き出し、その一方でエミに害をなしたゲームヒロインや攻略対象達に復讐しようとする……というお話。

愛を知って最強になった悪役令嬢(中の人)による復讐劇

愛を知らなかったばかりに破滅するはずだった悪役令嬢が運命共同体となった転生ヒロインによって愛を知り、改心する……のではなく、悪を知らずに破滅するはずだった悪役令嬢が愛を知ってもっと狡猾で完璧な悪女になる、というのがとても良かった!身体の支配権を取り戻しても「エミの理想の《レミリア》」を完璧に演じきる彼女は外面は文句なしの善人で、数々の正義を為し、善行を重ね、世界を救っていく。その反面、周囲には一切悟らせない、自らの手は汚さないままに周囲の人間を動かすことでエミを追い詰めた人間たちを陥れていく。完璧な形で復讐を成し遂げた彼女がエミへの深い執着を覗かせるラストがたまりませんでした。自分の中で眠りにつくエミと対話する=身体を与えるために嬉々として非道な人体実験を繰り返していくその姿、そしてエミが肉体を得た後の猫かわいがりっぷりというか本来なら叶えられないようなエミの悩みが 何 故 か 次々と解決していくこの展開……や、ヤンデレじゃないですかやだ〜〜!!!(※褒めてる)

本性バレ・逆ざまぁ的な展開があるのでは…とビクビクしていたのですが、あとがき読んだら「本性がバレることは一生ありません」と書いてあるので安心。

乙女ゲーム転生というより転生要素のある「憑依」モノ

転生令嬢の物語でありながら、彼女達が憑依したキャラクターの中に肉体の主導権を奪われた「中の人」の意識が残留している……という設定と、その設定を生かした上で全員に焦点を宛てていくという、いわゆる「憑依モノ」的な展開が面白かった。エミとレミリアの関係は本編でも語られますが、後日談として語られるゲームヒロイン側であるピナと転生者であるリィナの関係がしんどいというか……元々乙女ゲームヒロインになるまでのピナの半生が過酷なだけに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならなかったのか……という気持ちになってしまう。霊魂となった彼女がレミリアに救われるところは感動的なんですが、レミリアはレミリアでめちゃくちゃどす黒い思惑があって……いやでもまあそのどす黒いあたりはピナ本人には永遠に伝わらなかったわけだし……Win-Winだと思えば彼女に救われてから先は悪い人生ではなかったのかな。

ベースとなる世界観は乙女ゲーム……というか乙女系ソーシャルゲームという設定なのですが、ゲーム内では絶対的な効果を発揮するはずの「課金アイテム」が現実であるこの世界ではどういう扱いになっているかも面白かったです。ライバルであるゲームヒロインのピナ(リィナ)は課金アイテムを使うことでエミの築いた攻略対象達との絆を奪い去っていくんだけど、実は彼らもゲームヒロイン自身の事を好きになっているのではなく、エミへの愛情を歪まされてゲームヒロインに傅いていくことでわざとエミを傷つけ、その姿に愉悦を感じるようになっていく……という関係性があまりにも虚無だし、どす黒い。これ多分リィナの視点から見たら薬の力で調教され、身体だけじゃなく心まで屈服していく攻略対象達みたいな……○辱系エロゲー路線な感じで映ってたんだろうなあ……。

ゲームでは雑に利用できた好感度アップアイテムが現実だと個人の好みとか使用する状況とか相手との関係性によってちゃんと力を発揮しないというのも洗脳アイテムで心までは奪えない事も冷静に考えてみりゃ当たり前なんですけど、既に「現実」となったこの世界を最後まで「ゲーム」としか認識できなかったリィナが滑稽で哀れ。ゲーム内では通用した「金に明かした廃課金プレイ」では何も得ることが出来ず、結局エミのように地道な努力を重ねていくしかないという展開には考えさせられるものがありました。いやでもソシャゲ運営側としては課金プレイヤーがいないと採算が取れないみたいな部分もあるはずなので……まあリィナは相当痛いファンだったみたいだからどう思われてたかはわからんが!!

一貫して誰からも愛されなかったリィナが少しずつ全てを奪われて失意のままにレミリアの手の中の生き地獄に堕ちていく展開はゲームでのレミリアの末路を擬えているようで、なんともいえない気持ちになる。これだけ肉体関係を駆使して周囲を籠絡したりもしてるみたいなのに、攻略対象の誰とも肉体関係はなかったみたいだしな。これ、エミが知っていたらそれこそ感情移入してしまったのかもしれない……まあエミは何も知らないままだったんだけど……。

なろう版も併せて読みたい

「小説家になろう」版では尺の都合で削られたと思しき王子以外の攻略対象視点の話やレミリアの侍女・スフィア視点での番外編なども掲載されているので、本編が面白かったという人はこちらも合わせて読むのをオススメしたいです。というか攻略対象視点の話はページ数増やしてもいいから全部入れてほしかった。書籍版でもざっくり経緯は語られるのですが、全員が完膚なきまでにピナ(リィナ)に気がなかったことがわかってなんとも言えない気持ちになるので。あと、レミリアの実験台にされた人たちの話とリィナ視点の番外編の胸糞悪さが最高。
ハッピーエンド 乙女ゲーム 悪役令嬢 ざまぁ ヤンデレ 主人公にとっては R15 残酷な描写あり ガールズラブ

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とりあえず伝説の勇者の伝説4 魔力のバーゲンセール

 

無節操脱力系ファンタジー第四弾!
伝説の勇者の遺物を探すという使命はどこへやら、グータラな日々をおくるライナとフェリスの前に本当の勇者が現れる?絶好調短編集の第四弾!

イエット共和国で引き続き勇者の遺物の探索を続ける……とは名ばかりに割と楽しく(?)日々を送るライナとフェリス。そんな彼らの前に“勇者”本人の噂が舞い込んできて…「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの過去編を収録した番外編短編集第4巻。

ライナ、働く(働けてない)

いろいろな意味で怠惰が服を着たような男・ライナがフェリスに食費を絞られて空腹のあまり泣く泣くレストランでアルバイトする「わーきんぐ・ぶるーす」が色々と凄い。でも予想通り働けてなかった。面倒くさくて動かないところまでは割と予想できる感じなんですけど厨房担当に回された時のメシマズの理由が「動きたくないから遠くにある食材を使わない/動いて取れる距離の食材で済ませる」であまりにも斬新すぎる…レシピ通りに作らなくてマズい、は定番ですけど流石にその理由は予想できなかった。いやでもさすがにこれはさすがに虐待では……フェリスちゃんとライナに餌あげて!(ライナは犬ではない)

あと、エステラからの依頼でフューレル姉弟の祖b……伝説の魔獣を倒しに行く「がーでぃあん・モンスター」がめちゃくちゃ好き!!こういう人間なのに人間の範疇を超えてる謎の超人が出てくる短編めちゃくちゃ好きで!その伝説のまじゅ……お婆ちゃんが姉弟に対して行った意趣返しがまた絶妙で、二人の反応にもニヤニヤしてしまった。それにしてもヴォイスきゅん無敵の人か?

過去編思ったより酷くなくて良かった

書き下ろしの過去編「ジュルメ、最後の授業」は前巻の過去話の1年後、互いに切磋琢磨しながらも気心の知れた間柄になっていった天才児3人だが、訓練所の卒業試験はお互いを殺しあわせて最後の1人のみが卒業できるという残酷なものだった。師匠であるジュルメは彼らを逃がそうと独り奔走して……というお話。

2巻の過去編があんなだったしタイトルが「最後の授業」だしでもう重たい想像しかできなかったのですが思ったよりも救いのあるお話で良かった。いや、もうタイトルでビビりまくってるところに短編の方で勇者の遺産によってライナのトラウマが掘り起こされる「ぷりしえんと・ますく」とかありましたし。いやでも何回も絶望的な未来を想像させるようなひっかけがあって生きた心地がしなかったし、感情のジェットコースターが凄い。結局ライナがローランド帝国から逃げられるわけではないんだけど、まあアレやらコレやらの展開にならなかったのは本当に良かったよね…。

厳しいけれど愛情を持ってライナ達に接するジュルメ、昼行灯に徹して革命の時機を待つラッヘル・ミラーという元同期の二人の関係性も良かったです。というかミラー確か現在軸だと結婚してましたよね。ね!!!(思わずWikipediaに調べに行った顔)

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