グリーンムーン家の令嬢・エメラルダから夏の舟あそびに誘われてシオンやアベル達と共にガレリア海に赴いたミーア姫。ところが無人島で遭難したあげく、エメラルダが行方不明になってしまう。彼女を探して寝床にしていた洞窟内の捜索を行うが、そこで一行はティアムーン帝国建国に纏わる、とんでもない秘密を知ってしまい…!?
帝国建国の謎が解き明かされる、第二部クライマックス!(からの第三部開始)
同じ巻の間に第二部終わって第三部始まるの斬新すぎない?って思ったんですけどあとがきで「うっかり筆が乗ってしまった」みたいなこと書かれてて、作者さんが楽しんで書いてるなら良いことだ…!と思いました(しかし上手くページ数調整したりできなかったのかなとかと編集さんの仕事を疑ってしまう何か)。ミーアの処刑フラグ回避を経て始まった第二部、日記帳のような明確な指針もないまま始まって各国を破滅に導こうとする組織の存在が明らかになり、そしてついにその裏にいた者の存在が明かされる──というクライマックスがとても面白かった!!タイトルに張られた伏線の回収が見事で、そういう意味だったのか…と。ミーアとアンヌの主従関係を見て、そして自分を助けに来てくれたアンヌと実際に話してみて自分の主従関係を見つめ直すエメラルダがとても良かったです。彼女自身もかつてのミーアと同じように、貴族社会という狭いしきたりに縛られている人というだけで悪い人ではないんだよなあ。……からの、まさかのニーナの面倒くさいオタクみたいな言い分にめちゃくちゃ笑ってしまった。確かに、彼女達の関係性を知らない読者が一発で見抜けるくらいミエミエな態度だったんだからそりゃわかるか〜!!
預言書、ダイエットする。
そしてミーア達が海から帰還し、再び学園に舞台を移して始まる第三部。ミーアの未来を教えてくれていた「ミーア皇女伝」が唐突なダイエットに成功!!ミーアの死亡予定が「大人になってから毒殺」から「聖夜祭の夜、馬で夜駆けしている所を野盗に襲われて死ぬ」という衝撃の展開になり、慌ててフラグ回避のため動き出すミーア姫。夜駆けの最中に野盗に襲われても逃げ切れるよう、馬術の訓練に力を入れ始めたが、そこに四大公爵家のひとつ・レッドムーン家の令嬢ルヴィが現れ、何故かミーアに決闘を挑んでくる。軍事に強いレッドムーン家が所有する馬に対抗するには、馬術部に2頭しかいない『月兎馬』を乗りこなす必要があるが、ミーアは貸し出された馬・荒嵐となかなか息を合わせることが出来ず……。
ルヴィを無意識下に苛む「前回」の生で経験した失恋の記憶とそれが原因で道を誤ってしまったという悔恨。今度こそ後悔のない人生を……と、ミーアとの決闘をきっかけに新しい自分へ踏み出そうとする姿に胸が熱くなりました。一方、立場的には決闘を受けなくてもなんの問題もないミーアが「自分に恨みを持った誰かが自分と同じように人生をやり直して世界改変を行うかもしれない」という理由でルヴィの禍根を残さない形で事を収めようとする姿が印象的。結果的にレッドムーン家に借りを作りつつ、ルヴィの本当の願いを見抜いて叶えてあげる、どちらもWin-Winな形で事件を収めてしまったのは本当に上手かった。
前の巻くらいから薄々思ってたけどミーア姫、自身に政治の才も剣の才もないけど、こと「自分が出来ないことを他人に任せて上手くやらせる」ということにかけて天才的な才能を持っているんですよね……そこに前回の生を踏まえての経験と一度はどん底まで堕ちたために獲得した危機管理能力が加わるものだから普通に有能な政治家なのではないかという気がしてきた。
肝心のフラグ回避はまだこれから……というかもう、もう一頭の月兎馬・花陽とイエロームーン家が地雷な気がしてならないんですが!花陽の世話をしたことで荒嵐からの好感度を上げたことがフラグ回避にどう関わってくるのか。いろいろな意味で、次巻が楽しみです。