ページ 23 | 今日もだらだら、読書日記。

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とりあえず伝説の勇者の伝説2 無気力のクロスカウンター

 

やる気度マイナス100%(前巻比)
超ど級無気力人間ライナと絶世の美女にしてだんご命の剣士フェリス。「勇者の遺物」を見つけだすという当初の目的はどうなってしまったのか?短編5本に書き下ろし中編を加えた脱力系ファンタジー短編集第二弾。

ルーナ帝国での様々なトラブルを乗り越え(半分くらい自業自得だった気がしなくもない)、隣国イエット共和国に向かうライナとフェリス。山に囲まれているおかげで他国との交流が少ないこの国に向かうためにはとある問題があって……「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソード+書き下ろしの過去編を収録した番外編短編集第2巻。

チキチキ☆国境突破チャレンジ!!!

ルーナ帝国からイエッタ共和国に向かうためにライナとフェリスが登山に挑む「くらいまー・くらいまー」と登山を断念した二人が一転海路でイエット共和国を目指す「ぱいれーつ・あたっく」のノリがめちゃくちゃに好きだな……いつものフェリスとミルクのどつき合いに、短編のオリジナルキャラ(になるのかな?)のエステラを含めた掛け合いがとても楽しい。っていうか書き下ろしを除くと2巻のラスト、海中で遭難したまま終わったんですがいいんですか!?

あと、ルーナ帝国編は兵士として働いている女性が殆どないせいでフェリスが男性だと間違えられるネタが多くて男女逆転ぶりが楽しいなあとおもっていたら初っ端の「くえすと・いん・ざ・ぱーく」で遂にライナが女装してしまった。挿絵だと背中側しか描かれてないんですけどもう見るからに似合ってない女装なんですよね!!最高だな!!!

現在を知っていると最初から最後までしんどい過去編

書き下ろしの中編「暗殺者の見る夢は……」はローランド帝国軍に暗殺者として使われていた少女・ビオが最後の仕事と言われてライナを殺しに行く話。もう流れからして完全に殺す気で送り込んでますよねとか現在の伝勇伝の物語を知っている限り絶対にこの二人が幸せになれるわけないよねとか色々察してしまえてしかも概ねその通りなのがなかなかしんどいものがある。ずっと人を殺して生きてきたビオが、生まれてはじめて自分に優しくしてくれたライナと共に生きる未来を、叶わない未来を見てしまうのはほんとうにしんどいし、ローランドの軍部がライナにやろうとしてるのいつかの原作でアルアにやられた拷問に近いのがまたこれまでライナが何をやられてきたのか想像できてしまってきついし、彼女の今際の際の行動によって暴走はできないライナ(これもういっそ暴走してしまったほうが楽になれたのでは…という気持ちになってしまうけど、そしたらそれはそれでライナは一生後悔し続けるんだろうしなあ…)がますますしんどい。

もうぜったいこういう終わりになるのは見えてるっていう話なんだけど、覚悟をしてたよりも遥かにやるせない気持ちになるお話でした。それにしてもほんとうにさすが(シオンが革命する前の)ローランド汚い本当に汚い。

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とりあえず伝説の勇者の伝説1 脱力のヒロイック・サーガ

 

やる気がなくなる脱力系ファンタジー
究極の無気力人間ライナと超絶美形の女剣士フェリス。王の命令で伝説の「勇者の遺物」を探す旅に出ることになった二人は、行く先々で無差別破壊を繰り返す。大好評脱力系ファンタジー!

本編6巻を読んだら明確にこれ本編で語られてないエピソードが間に入ってるよね!?という感じだったので取り急ぎ手つかずだった一旦短編集の方に戻ってきました(6巻の感想は大したこと書けなさそうなので7巻と一緒にやります)。「伝説の勇者の伝説」シリーズの幕間のエピソードを描く短編集です。

本編の別視点や幕間を描く短編集

というか初っ端の「すたーてぃんぐ・れじぇんど」がまず原作3巻のミルクとライナの初邂逅(というか再会)のエピソードになってるんですけど、全く同じことやりながら微妙に視点が違っていて…なんだこれすごいな……。本編の方はミルクの心情が割と多めに入っていてライナに対する執着とかライナの態度に対する戸惑いとかが入っていてややシリアス調、その一方外伝の方はミルク視点は割とバッサリ切り落とされていてコミカル調になっているというか……同じエピソードがなんだかんだと微妙に別の話になってるの凄いな……。本編3巻とこの本のあとがきで「かなり面倒くさいことやってる」って書いてあるけど本当にこれは面倒くさいことをやってるなと思う。

同じく本編3巻クライマックス目前くらいのエピソードを描く書き下ろし「都会は危険がいっぱい」は、エピソード自体は本編とは関係ないのですが3巻を読了済みだと例の遺物で竜が生えちゃった村に他の村の経済が脅かされるくらい観光客が集まってたって話めちゃくちゃ背筋が寒くなりました。いやだってあの村ってさあこのあと……(ネタバレ)

書き下ろし、お話自体はいろいろな意味で強キャラすぎる女性達に振り回されて都会恐怖症になる誘拐犯達の迷走ぶりと、その迷走の結果何故か囚われのヒロイン(笑)と化すライナとそんなライナにわかりづらいデレが炸裂するフェリスが可愛すぎてニヤニヤしてしまうお話でした。いやほんとフェリスのデレはわかりづらすぎて可愛いな……。

ミルク→ライナ・フェリスの追いかけっこが楽しい!

ミルクとの出会い(ミルクにとっては再会)以来、どこにいっても神出鬼没に現れてはライナ達にちょっかいかけてくるミルクと愉快な仲間たちの暴れっぷりにによによしてしまう。「えきさいてぃんぐ・ちぇいさー」で敵のはずのネルファの兵士達と意気投合して後方父親目線になってる忌破り追撃部隊の面々が微笑ましすぎるんですけど、「都会は危険がいっぱい」で行きずりの民間人にまで可愛がられてるミルクさんのカリスマ性、もうカリスマってレベルじゃなくない?異能かなにかでは??

一方のフェリスの方も、前述の書き下ろし短編のエピソードといい本編よりもラブコメみたいな展開が多くて楽しかったです。ライナと何故かBLカップルに間違われてカップリングにされそうになる「えきせんとりっく・かっぷる」の挿絵の二人の表情めっちゃ好きだな…………普通に読んでてライフェリ可愛いな〜って思う反面、この挿絵見てどうしようもなく「ライナは受けだよねわかるぅ〜〜」ってなってしまったので駄目だ……。

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「このラノ2022」感想と自分の投票の話

『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) 「このライトノベルがすごい! 2022」
『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) (著)
宝島社
発行:2021-11-25T00:00:01Z

多分5年ぶりくらいで「このラノ」アンケートに参加したのでざっくり本の感想と自分が投票した作品の話をします。昔は協力者でしたが今はそんなに読めてないのでWebアンケート経由でした。

いろんな切り口のランキングがあって面白かった

去年買ったときもつぶやいた気がするんですけど「年代別ランキング」と「女性票ランキング」いいよね〜!!少女向け作品はこの手のランキングでどうしても弱くなりがちなので女性票ランキングでランキング圏外作品が入ってるのみると嬉しくなってしまいます。女性主人公モノが強い中、「よう実」と「86」が比較的上位に入ってるのもわかるー。

総合ランキングのラインナップについては特に言うことないんですが、「春夏秋冬代行者」の冬主従が男男だと知って読みたくなりました。「佐々木とピーちゃん」は実は詰んでるので読みたい。あとキャラクターランキングはTOP5の代わり映えしなさがちょっと面白いですね……。

概ね私が参加した頃よりも紙面充実してる〜!!いいね〜!!って感想なんですけど、電書で読むと文字が小さすぎるのと「心が震えた名セリフ」のコーナーが消えてしまったのは残念でならないです。心が震えた名セリフのコーナー復活させてくれ。いやでもランキングと関係ないし紙面作る人の労力凄そうってのもわかる……。あと電書といえば、「このラノ2020」がおおむね2010年代ベスト的な内容で紙面としてめちゃくちゃ面白かったので後追いで電書化してくれないかなーって思ってる。

「人の推しコメントを見たい」欲が満たされた

わたし概ね「このラノ」についてはランキングじゃなくて自分の好きな作品の良質な推しコメントを摂取するために買ってるのですけど(人が好きな作品について語っているのを見るのは健康に良いので)、ここ数年のこのラノはコメント部分がめちゃくちゃ強化されていたのでそうだよ!これが読みたかったんだよ!!ってなりました。作品部門は文庫・新書部門合わせて30位まで載ってるし新作やキャラクター部門のコメント採用も拡張されてるし、ランキングとは関係ない後半の「ライトノベルジャンル別ガイド」の方にもしぶとくコメントが載ってる。印象的だったコメントのピックアップもある。推しコメント見たくて本買ってる身としてはこんなに嬉しいことはないですね。

投票する側としてもあまりマイナーな作品や少女レーベルの作品に投票しても死票が増えるだけで面白くないのである程度界隈で人気のある傾向の作品にハマれてない時期は投票へのモチベ下がってたみたいな部分があったんですが、こういう形でコメント採用されるとなるとランキング圏外確定な作品にも入れやすくなって良いなあと思いました。いやだって、コメント考える労力もタダじゃないじゃん……。

あと、協力者の投票については別個誰が何に投票したか、投票した人の所感が書かれているの凄く良かったです。実は2010年〜2014年の5年間「このラノ」の協力者として参加させていただいていたのですが、協力者の票って割と死票率高かったと記憶しているので……まああの頃はブログ文化が今よりも活発だったのでブログや当時の「好きラノ」が代わりを果たしていた気がしなくもないですが。

なお、たいへんな余談ですが「人様の推しコメントを摂取したい」という気持ちが昂じてラノベの推し作品を推してもらう企画本を3冊ほど出してます。3冊目は全文WEBから読めますので興味のあるかたはぜひどうぞ。こちらから読めます。以上宣伝でした!!!

これに投票しました

「声優ラジオのウラオモテ」だけコメント採用していただいてたので省いてます。声優ラジオ、コメントの採用があそこだけ全員30代以上なの地味に面白かったんですが読者の年齢層高めだったのか?いやフォローしてる20代の人も推してたからそんなことないはず……(震え声)

作品部門

1:紫大悟「魔王2099」→感想
サイバーパンクとファンタジーが融合した世界観に加えて、デジタル技術の恩恵を受けられない魔王が「動画配信」で力を取り戻す、という展開が面白かった。時代に忘れられた者同士である魔王と勇者の不倶戴天の敵同士でありながら背中を預けられる存在、という関係性も良い。
2:羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
短編を含め20巻の大台を突破した本作だが、衰えないどころかクライマックスに向けて加速していくばかりの面白さは随一。キャラクターたちの謎も次々と明かされ、この後に待ち受けているであろう最終決戦に向けて期待が高まるばかり。
3:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
学校全体で争われる特別試験で、3学年分のキャラクターたちの攻防を余すことなく描ききる展開がとにかく凄かった。ホワイトルーム生との水面下の戦い、綾小路を巡るラブコメ戦線もますます盛り上がってきており、更に波乱の予感しか感じさせない二学期に期待しかない。
4:石川博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
現実はでないVR空間上だからこそのインモラルな展開が最高に面白かった。どこまでも「命の軽い」軽薄な世界観と、それでいて物悲しくてロマンチックなラストが良かったです。
5:二月公「声優ラジオのウラオモテ」→感想

女性キャラクター部門

◆イヴ=イグナイト(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
「デキる女」としての一面とは対象的に、私生活ではポンコツ気味なところがたまらない。実は世話焼きで苦労性なところもかわいい。

◆軽井沢恵(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
彼女にはどんな形であれ幸せになってもらいたい。

◆堀北鈴音(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
軽井沢とは違う方向で綾小路の「相棒」として成長してきた彼女の姿が頼もしい。

男性キャラクター部門

◆綾小路清隆(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
冷徹無比な強キャラとしての一面とは別に、世間慣れしていない一面を時折覗かせるので目を離せなくなってしまう。特に軽井沢との「恋愛」が彼に何をもたらすのか、少し怖い反面楽しみで仕方がない。

◆グレン=レーダス(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
普段のやる気のない言動とは裏腹に、誰よりも熱い心を持っているところ。システィーナやルミアなどヒロインたちの「ヒーロー」であると同時に、情に脆くて家族の情に厚い一面を覗かせる最近のセリカとの展開がとても良かった。

◆龍園翔(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
登場当初は暴力に頼るチンピラのような男だったのが、巻を重ねる毎に綾小路の好敵手として成長していく姿がたまらなくかっこいい。

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伝説の勇者の伝説5 出来心の後始末

 

言っとくがな俺の子じゃねーぞ!脱力系アンチ・ヒロイック・サーガ、第五弾!
フェリス・エリスは忙しかった。超絶変態色情狂の父親そっくりの少年を、せめて性格だけは、あの恐ろしい凶悪幼女誘拐変質男に似せないようにと、保護するのに。「だぁから俺の子供じゃないって言ってんだろうが!」と、必死の抗議をするライナ・リュートの声は、当然のごとく、まるっきり無視された……。とにもかくにも『複写眼』を持つ少年アルアをルーナ帝国軍から救い出したライナとフェリスは、依頼人であるアルアの幼なじみの少女が待つレジット村へと向かっていた。だが、そこでライナたちを待っていたのは……。なんとなく緊迫感が増しているような気がするアンチ・ヒロイック・サーガ、そういうわけで第五弾!

ルーナ王国で『複写眼』を持つ少年・アルアを助け出したライナとフェリス。ところが今度は彼の幼馴染の少女・ククが拘束されてしまう。一方、着々と領土を広げるガスターク帝国の存在を驚異に感じるシオンは、同盟国であるルーナ王国に腹心・フロワードを向かわせて……。

ガスタークの登場で物語が加速するシリーズ第5巻

消息不明だったキファの視点から彼女とガスタークの王・レファルの出会いが描かれて、物語が加速してきた感じ。シオンと同じく「誰もが笑って暮らせる世界」を目指しながらもシオンが通りたくない血塗られた道を真っ向から歩き、その一方で理想の実現のためには自分が傷つくことを厭わないレファルの姿が衝撃的でした。ていうか汚れきったローランドのシオン反対派貴族達の後ろにいたのがなんていうか、こんな理想に殉じることができる男だっていうのが皮肉すぎるというか……。

絶大なカリスマとそれを実現するだけの力を持つレファルを目の当たりにしながらも「世界よりもライナが大事」と言い切るキファの姿がかっこいい。本編第一巻で、そして今回の過去回想で、様々な人間たちの思惑に翻弄され葛藤し続けてきた彼女の姿を知っているだけに特に。

ライナとシオン、両者の視点から描かれる物語が(改めて)しんどい…

『複写眼』を持つ少年・アロアの処遇と幼馴染の少女ククの奪還を巡ってスイ・クゥの兄妹と再び対峙するライナとフェリス。ガスタークの間者であることを明かした二人からガスタークの王のことや彼の持つ理想を聞かされて、それでもシオンの事を信じる、帰る国はそこにある……というライナ、正直めちゃくちゃアツい展開なんですけど、このシリーズってライナとシオンのW視点から描かれていてシオンの王としての葛藤を散々目の当たりにしてきているので素直に燃えられないというか……ライナの信頼、重てえ〜〜〜〜!!!!!ってなってしまうのあまりにも原作の構成が巧妙すぎて頭を抱える。ていうかほんとライナは今すぐローランドに戻ってシオンを3発くらい殴ったほうが良い。今なら多分?ギリ…?まだ……?間に合う??から???!!

ほんとこの話、いやもういいからライナはシオンの傍に居て見張ってろよ!!!ってなるシーン多すぎるんですけどライナを諸国周遊させてるのもシオンだからどうにもならない。シオン→ライナへの巨大感情もなかなかだなと思ってたんですけどライナもなかなかどうしてシオンにクソデカ感情抱えてたんだな。無事にククを救出してフェリスとともに光の中にいるライナと、道に迷い心折れそうになりながらも暗闇の中で独り明かりを探してさまようシオン、対比するにしてもしんどすぎるししんどいにしても情景が美しすぎてキレてる。フェリスとの背中合わせの相棒関係はいよいよツーカー感が増してきてよかったです。良かったですけど!!!

なんか割とコミカルな序盤、いつもどおりに貴族きたねえ中盤からの、もう終盤で一気にしんどい話が詰め込まれて読み終わって発狂!!て感じに情緒の撹拌が凄い一冊でしたがそんな中でククを奪還するためにアルアに魔術を教えるライナのシーンが唯一の癒やし。『複写眼』を持つが故に天才肌というか常人には理解しがたい解説をするライナと、そのライナの言葉を同じ『複写眼』持ちのおかげで直感的に理解しちゃうアルアという、はたから見ると何もわからない授業シーンが微笑ましい。ライナ絶対教師向いてないタイプだよな〜!!!いやもっと時間があって普通のこどもに教えるんならもっとまともな授業するのかもしれないけども……。

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薄幸な公爵令嬢(病弱)に、残りの人生を託されまして 前世が筋肉喪女なので、皇子さまの求愛には気づけません!?

 

回し蹴りを皇子に見(初め)られた!? スカッと爽快!悪は拳で解決します
武闘派OL呉葉は溺れていた子どもを助けて死亡。 すると『その強靭な魂わたくしにください』と虚弱な公爵令嬢クレハに転生――するも、寝たきり生活がツラくて町に下り、ごろつき相手に大立ち回りする現場を隣国の皇子イザークに見られてしまう。 その姿を気に入られた(?)呉葉は彼と秘密を共有し、本物クレハの命を奪った犯人を追い詰めることに!?

男子顔負けの運動能力とメンタルの強さが自慢のOL・呉葉は子供を助けようとして川に落ち、意識を失ってしまう。死んだ──と思ったその時、不思議な少女と出会い──次に目を覚ましたときには夢(?)の中で出会った令嬢・クレハの身体に入ってしまっていた!?慣れない環境、過保護すぎる兄に翻弄されつつも兄の親友で隣国の皇子・イザークを巻き込み、この身体の本来の持ち主を殺した犯人を追うことになるが……。

やはり筋肉は裏切らないんだよ!!(迫真)

他人の人生を途中から引き受けることになり「引き継ぎが足りない!!」と悲鳴を上げながらも兄妹のより良い未来のために奔走する主人公の行動がいちいち気持ちよく、とても楽しいお話でした。魂の強さが肉体の強靭さに直結する=筋肉に裏切られる世界観という認識で笑ってしまったけど最終的には(前世から引き継いだ)筋肉でなんとかした感があるような気がしてしかたない。あとがきでもめちゃくちゃ筋肉トークしていて、こんなに筋肉の圧が強い少女小説読んだこと無い。やはり筋肉は裏切らないんだなあ(洗脳)

基本的にはパワフルな脳筋系OLが儚げで魔力の強い令嬢の肉体に入って彼女の生命を奪った犯人を追い詰めるというお話なのですが、その一方で他人のためでも軽率に命すら張れてしまうクレハの危なっかしさが内外から描かれていくのが良かったです。クレハを毒殺した犯人を追うのも「この身体の持ち主(クレハ)」とその兄のためであって、決して呉葉自身のためではないんですよね。でも、呉葉自身も生命を落とす前に職場の後輩から言われた「先輩自身は空っぽ」という言葉が小骨のように引っかかっている。決して強いだけではない、女性らしい繊細な心と不安定さが透けて見えるのが印象的でした。

過保護兄が最後に美味しいところを持って行き過ぎた

少女小説的にはクレハの秘密をいち早く知ってしまいって彼女の破天荒な行動に巻き込まれていくイザークとの、共犯というか背中を預けられる関係というかとにかく色気のないところから始まって、だんだん距離が縮まっていって互いに好意を持っていく関係性がとても良かった。色恋沙汰に無縁すぎた二人がお互いに抱いているその感情の名前をみつけるまでまだまだかかりそうだけど、そのもどかしさがとても美味しい。

……とか思いながら読んでたのですが、最後の最後でクレハの兄・テオバルトが美味しいところを全部持っていった感が凄くてですねええ!!妹のことを心配しすぎてちょっと引くくらいの過保護ぶりであるテオバルトがその裏で冷静に状況を分析し、妹への深い愛情故に起こったことを受け入れ、その上でこれまでと同じように接してくれるのあまりにも良い。本当にエピローグで大逆転ホームラン打たれた感がすごいんですが、同時に微妙に不吉な伏線も張られていて、続きが気になる所。

いやいろいろな意味で主人公カップルの関係性も「恋」に至る前の所で終わってしまったということもありますし、ちゃんと続きが出るといいなあ。楽しみにしてます。

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伝説の勇者の伝説4 大掃除の宴

 

新国王シオン、腐敗した王国内部のお掃除大作戦!
万年寝不足男のライナと、絶世の美女剣士兼理不尽だんご大王のフェリス。二人は『勇者の遺物』を求めてルーナ帝国へ潜入。そこで出会った少女に、ライナと同じ『複写眼』を持つ少年を助けてほしいと頼まれる。一方、ローランド帝国の新国王となったシオンは、いまだ勢力を誇る反国王派の貴族たちを一掃する必要に迫られていて…。眠気もふっとぶアンチ・ヒロイック・サーガ、なにはともあれ第四弾!

伝説の勇者の遺物を求めて、ローランドの同盟国・ルーナ帝国にやってきたライナとフェリス。悪魔の呪いを受けたという村を訪れた二人はひょんなことからライナと同じ『複写眼』を持つ少年を助けることに。一方、シオンはいまだに大きな力を持つ反国王派の貴族たちへの対応を迫られていて……。

忌破り追撃部隊の「唯一の癒やし」具合がすごい

ローランドの同盟国・ルーナ帝国で出会った『複写眼』の子供アルアを通して描かれるライナの過去がとてもしんどい。回想シーンもそうですがリアルタイムで展開される残虐シーンにライナが自身の過去を重ねていく(=本人も同じ体験をしたことがある)ところとかほんとエグいんだよな……小説だとライナ本人の視点から物語が描かれるものだから余計しんどかったです。このへんはアニメで先の展開を知ってるぶんあまり語れることがないんですが……。

今巻はライナ&フェリスの方もローランド側も全体的にしんどい展開で、時折展開されるライナとフェリスのテンポのよい掛け合いの他には、ローランドに帰還して短い休みを取ってる忌破り追撃部隊のミルク達が唯一の癒やしまであった。というかシオンさんひょっとして完全に好奇心でミルクにライナ追いかけさせてたりする?ラブコメを見たいのかな?お見合いを勧めてくるお節介な田舎のおばちゃんか何かかな?

フロワードとクラウの関係性いいですね!!

一方のローランド、国内もまとめきれないうちに国外からガスタークという国が周囲の国を併合しはじめて彼らとの衝突は避けられないであろう状況に。シオンとフロワードは反対派の貴族たちの大多数を一箇所に集めて粛清することで国内をまとめようと考える。ローランドの貴族どもにおかれましては本当に1巻からろくなことをしてないことが散々語られてるので「目の上のたんこぶがやっと!!」という気持ちになってしまうんですが、大きな犠牲を払って行われた粛清は思わぬ伏兵の活躍により妨害され、完全に成功したとは言えない結果に終わってしまう。

正体不明の伏兵の手によって自らも生命の危機に陥ったフロワード。そんな彼を助けに来たのが、普段から彼のことを一番嫌っているはずのクラウでした。この二人の、「シオンが居なければ互いの人生に深く関わり合うこともなかっただろう(けどシオンがいるから関わらざるを得ない)」みたいな関係性めちゃくちゃ良いですね……シオンに対する役割や支え方・国を良くするための考え方が真逆であることも常日頃から冷戦状態な所もなかなかポイント高かったんですけど、クラウに助けられたフロワードがまさか自分が助けてもらえると思わなくて冷静を装いつつも内心ちょっと困惑している風なのとかたまらなかったです。でもこいつら、シオンが間にいなかったら殺し合っていてもおかしくなかったと思うんですよね。これからももっと積極的に絡んでほしい……。

それにしてもアルアの件にしてもフロワードの大粛清にしても、これだけ派手なお話やっておいてどう考えても今後への伏線でしかないよって終わり方するのがな……いやアニメで続きはざっくり知ってるんですけどこれ多分リアルタイムで読んでたら次の巻が待ちきれなくてソワソワしちゃうやつですよね……。

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伝説の勇者の伝説3 非情の安眠妨害

 

ライナとフェリスが指名手配!? アンチ・ヒロイック・サーガ、それなりに第3弾!
「…あんなぁ…おまえ、無理って言葉の意味、知ってるか?」 万年無気力男のライナと絶世の美女にしてだんご至上主義の女剣士フェリス。”勇者の遺物”を探す旅を続ける二人は、なぜか魔法を無断で国外へ持ち出した犯罪者、忌破りとして追手をかけられてしまう。彼らを追うのはエリート追撃部隊、しかもその隊長は…。――果たしてライナに安眠の日々は訪れるのか?

伝説の勇者の遺物を追って引き続きネルファ公国で探索を続けるライナとフェリス。ところが、他でもない王のシオンの命を受けて行動しているはずなのに、『忌破り』としてローランドからも追われる羽目に!?追撃部隊の隊長・ミルクはライナの事を知っているようで……。

短編集とのリンクが気になる(情報量が、情報量が…多い!)

ライナとミルク達との邂逅、『勇者の遺物』を追う者たちとの衝突、エスタブールの内乱…と情報量が多い巻だった。シオン側の最大のイベントは間違いなくエスタブール内乱ですが、フロワードの提案した血も涙もない計画に乗ると見せかけて直前に不意打ちで計画の責任者に人情派のクラウを当てるのにはニヤリとしてしまう。良くも悪くも非情になりきれないシオンの方針を、フロワードも悪くなく思っているようではありますが。そしてエスタブール内乱、アニメでも割と印象に強いお話だったので誰が黒幕だったとかは覚えていたんですがその上で読むと問題の人が露骨に怪しい動きしててなるほどな……。

忌破り追撃部隊のミルクとライナ達が遭遇する話、これよんだことあるな…?とおもったら短編集の第一話の別視点になってるんですね!?同じエピソードを描く物語なのにこちらは少しだけミルク視点より、恋い焦がれたかつての幼馴染との再会とそのライナが自分のことを覚えていないことに対する不安で少しだけシリアス寄せのエピソードになっているのが印象的でした。いやその後の展開を考えると全く本来コミカルなエピソードでもない気がするんだけど。

あとがきでもそれとなく短編集とのリンクを匂わせてきていて、短編集読めという圧を感じる。第一話だけはアニメでもやってた話なので軽く読んだのですが……そうか……。

相変わらずライナとフェリスの関係性が良い…。

せっかく見つけた遺物を扱いきれず、その場に残してきてしまったふたり。シオンからの依頼で再度遺物のもとに戻る羽目になるが、そこでは周辺住民達が皆殺しにされていた。同じ勇者の遺物を狙う二人組と戦う羽目になるが、ライナの複写眼が暴走してしまい……。

暴走したライナに立ち向かうフェリスがかっこ良かった…!!!本来なら戻ることがないはずの複写眼保持者の暴走、しかもそれだけじゃなくてなんか更にヤバそうな天の声まで登場して……という絶望的な展開と、前巻からそれとなく描かれてきた「複写眼が暴走して彼女を傷つけたら」というライナの心配を見事にぶったぎってくれる、フェリスの目のさめるような身のこなしと口上が最高でした。

バトルの前に描かれた、フェリスの微妙な表情変化に気づくライナとか、衣食住だんご+昼寝に端を発したふたりの仲良さそうなやりとりとか、そういう空気感の描写が丁寧に入ってくるからこそ暴走したライナにフェリスが伝えた「茶飲み友達」という言葉が刺さるんだよね……。一見興味なさそうな彼女がライナの書いたレポートの最初の文章を心に焼き付けているという事実に、胸が熱くなる。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編5

 

試験史上最も容易で、最も残酷な『満場一致特別試験』開始!
2学期が開始と共に2つのイベント、体育祭と初の文化祭の開催が発表された。文化祭に胸躍らせる高度育成高校の生徒達だが、茶柱が唐突な特別試験の開催を発表する。 試験名は『満場一致特別試験』。クラス全員の意見が一致するまで投票を繰り返すという一見容易な試験内容。だがその本質は茶柱の10年来のトラウマになるほどのもので……。 全員が投票で意思表明する必要がある『満場一致特別試験』によって否応なくその混沌に巻き込まれていく生徒達。 「では、最後の課題を表示する。投票の用意を」 試験史上最も容易で、最も残酷な試験! 悔いなき選択を生徒達は果たして選ぶことができるのか!

二学期が始まり、体育祭や文化祭の準備で湧き上がる二年生の元に新たな特別試験の開始が告げられる。それは、クラス全員が同じ意見になるまで投票を繰り返す『満場一致特別試験』。制限時間内に全ての質問をクリアすればクラスポイントが得られるが、時間切れで失敗した場合には甚大なペナルティが発生する。最初は簡単だと思われていたその試験だが、茶柱を始め担任教師達にとってはトラウマものの、曰く付きのシロモノで……。

久しぶりのクラス内での対決がキレッキレで楽しい!!!

面白かった〜!!2年生編になってから勢いこそ落ちていないものの、3学年分全員の動向が縦横無尽に描かれる関係で展開を追うのがしんどい時も多かった。久しぶりのクラス内での動きを主体とした2年生同士の戦い、めちゃくちゃに楽しかったです。文句なしに二年生編になってからのお話の中ではぶっちぎりで好き。そしてホワイトルーム生との争いでは守りに入ることが多かった綾小路、久しぶりにキレッキレだった。

メインはあくまで「満場一致特別試験」となっていますが、今後のイベント予定も示唆してきててそれも楽しかったです。外部からの来賓で俄然きな臭くなってきた体育祭、緻密な広告戦略・営業戦略が問われそうな文化祭、そして修学旅行。どう頑張っても外部との接触がありそうなイベントの連続じゃないですかやった〜〜!!内部で行われていたホワイトルーム生との対決とは違った直球の対決が期待できそうで、今からワクワクしてしまう。

一見簡単そうな「満場一致試験」、何も起きないわけがなく…

お題を聞いたときからずっと「これ絶対1年生編の『クラス内投票』と同じ系列のやつ!!!」と思ってたけどもっと始末が悪く、残酷な試験だった。任意の生徒を選んで退学させれば少なくはないクラスポイントが手に入るがクラスで満場一致の決断を行う必要がある。一方でクラスポイントは手に入らないが誰も退学させないという選択肢を取ることも出来る。時間切れにはAクラス争奪戦からの脱落に等しいペナルティを。クラスポイントを取って能動的に退学者を出させることでクラス内の不和を呼ぶか、退学者を出さないことで不要な犠牲を避けて結束を高めるか。様々な思惑を持った生徒たちによる意見のぶつかり合いが熱かったです。

もちろん堀北クラスの展開も最高に面白いんだけど、他3クラスの動向も面白かった。特に葛城の加入をきっかけにして独裁政権ではなくなりつつある龍園クラスのやりとりがめちゃくちゃ良かった。無人島試験のときも言ってたけどほんと、龍園と葛城って良いコンビなんですよね。一方、こういう試験で安定感を見せるはずの一之瀬クラスの流れが不穏すぎる……言ってることは正論だけどその正論で思考停止してどこまでも状況が見えていない生徒たちの盲目さが……怖すぎる……。

他3クラスがなんだかんだで特別試験を終えた後も頑なに意見の一致が取れない堀北クラス。堀北と綾小路を退学させたい櫛田vsこの機に櫛田を退学させたい綾小路vs櫛田と和解したい堀北。水面下で繰り広げられる、2対1のように見えて実はみつどもえの戦いがアツかったです。そろそろ没個性の皮を被るの完全にやめつつある綾小路が櫛田を追い込みにかかるのは納得の展開でしたが、そこからまさかの堀北の行動が……!!!ただ闇雲に和解しようとするのでも切り捨てようとするのでもなく、櫛田という人間が能力を正しく発揮した場合にクラスにもたらす価値を測った上での判断。おそらく綾小路の想像すらも超えていただろう(多分)彼女のリーダーとしての成長に、胸が熱くなりました。とはいえ、いろいろな意味でこれ試験後のこのクラスどうなるんだよって気持ちがすごすぎるんですが。とりあえず一件落着といえば一件落着なのか。

……からの、結末が……ああ……。

綾小路がいつか誰かを切り捨てるような選択を取るであろうことは予想がついていたし、その相手についてもそれらしき伏線が張られている感じがあったので納得なんだけど…どこまでもしんどいなこれ……最後の最後で綾小路の独白がめちゃくちゃ冷静なのが逆にしんどいわ……。

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ロクでなし魔術講師と追想日誌 9

 

私が生きている意味はーーこれだったんだ
「Project: Revive Life」から生まれ、グレンに救い出されたリィエル=レイフォード。しかし、彼女には生きる意志が消えていた。帝国に存在を偽り、彼女を育てることに決めたグレンは……

生きる気力を失ったリィエルにかつての自分を重ねるグレンが印象的。一度はグレンに依存させることで立ち直らせるしかなくて……という苦味が沁みるラストから、リィエルが本当に守りたいもの・「生きる理由」を改めて実感する本編の時間軸につなげていく構成にホロリとしてしまった。それにしてもレーン先生の短編もっとください。

レーン先生の短編もっとください。(大事なことなので2回略)

まさかのレーン先生再登場!!な短編「レーンの受難」でテンション上がりまくってしまった。女子寮に出没した下着ドロを捕まえて欲しいというマリアからの依頼を受け、グレン先生写真集(どうみても盗撮)で懐柔されたセリカがグレンを再び女体化させ、女子寮に送り込む!!!という内容なんですけどグレンの実態をよく知らない下級生達から歓待され、マリアに迫られて不純同性交遊の疑いをかけられたり、一転下着ドロの容疑者として冷たい目を向けられたり…と始終女子生徒たちに振り回されがちなグレンの様子にニヤニヤが止まりませんでした。これまで本編にしか出てこなくて割とシリアス要因だったマリアちゃん、コメディに回すとこれまで出てきたヒロインたちとは違う形でグレンを振り回す、良いキャラでしたね。彼女が学園主体の短編に登場できる時系列が限られすぎてるんだけど、レーン先生主体の回をもう一回くらいやってほしい気持ちが凄い。本編も終わりが見えてきているこのタイミングですが、ぜひシリーズ化して!!!

普通の人間のような楽しみを書物でしか知らないナムルスがルミアの身体を借りてグレンと1日デートする「名も無きビューティフル・デイ」。例によってナムルスの壊滅的なファッションセンスから始まり、現実と書物の区別がついてなかったりシスティーナから借りた本のラインナップのせいか半端に恋愛脳になっちゃってるナムルスの姿に思わずニヤニヤしてしまうんだけど、そんな彼女を意外にしっかりエスコートするグレンが良かったです。いつものメンツだとこういう状況の時、割とグレンが寄りかかっても問題ない人材が揃ってますからね……そんなグレンをこっそり尾行した結果、巻き添えでシロッテの枝をかじることになってしまったシスティーナは強く生きて欲しい。

君に教えたいこと」もよかった。グレンが訳あり母子家庭の親子からの依頼で家庭教師を引き受け、親子を襲うトラブルを解決するというまさに正統派なロクアカ短編な内容で、シンプルに良かった。ウル、本編で再登場してほしいなあ(もう色んな意味で最終決戦しか残っていないような状況ですが!)

過去から本編に連なる展開が印象的なリィエル過去編

書き下ろしの過去編『迷子の戦車』はグレン達が「Project: Revive Life」の産物であるリィエルを救い出し、まっとうな人間として生きていけるまで寄り添おうとするお話。正体を偽り天の智慧研究会の暗殺者として育てられていた少女を保護する…という形で特務分室で身柄を預かることになったものの、「天の智慧研究会」という組織の情報そのものが切望されており、軍部の心無い人間たちからその身を狙われてしまう。更に、天の智慧研究会からも追手が差し出され……周囲の協力も満足に受けられない状態で心神喪失状態のリィエルを介護しながら孤独な戦いを強いられることに。

生きる気力を失ったリィエルにかつての自分を重ねるグレンが印象的でした。自分がセリカに救われたように、自分も誰かの救いになることが出来れば……と奮闘してみるものの彼女が負った傷はあまりにも深く、一度はグレンに依存させることで立ち直らせるしかなくて。とりあえず生命の危機は脱したけれど、完全に立ち直らせる事はできなくかった……という、グレンのひとかけらの後悔が心に沁みました。少しホロ苦いラストから一転、フェジテを襲う死者の群れに敢然と立ち向かうリィエルがアルザーノ学院の仲間達に囲まれて自分が本当に守りたいもの、「生きる理由」を見出していく。過去編から本編の展開に連ねていく構成が今回もとても良かったです。

しかしラストのリィエルや生徒たちとのやりとりが素晴らしいだけに、現在(グレン達が過去から帰還した時点)のフェジテがどうなっているのか本当に気になる。20巻が早く読みたい…!!

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伝説の勇者の伝説2 宿命の二人三脚

 

緊張と脱力のアンチ・ヒロイック・サーガ、とりあえず第2弾!
シオンの陰謀で「勇者の遺物」探索を命じられたライナとフェリス。いたってやる気のない二人をよそに、シオンの周辺では、王となった彼の失脚をもくろむ者たちが暗躍していて……? 暗雲渦巻くネルファ皇国で何かが起きる!

シオンの命令で伝説の勇者の遺物を探すため、隣国ネルファ公国にやってきたライナとフェリス。ひょんなことからネルファ公国の傍流の皇子・トアレを助けたふたりは、公国図書館で調べ物をする都合もあって彼の家に滞在させてもらうことに。一方、革命を成功させて今では英雄王と謳われるシオンだが、彼を排除しようとする貴族たちが依然としてその近辺を狙っていて……。

シオンとトアレ、二人の王子の対比が良かった

父王や兄達を排除して血塗られた道を歩むシオンと、政治には関わらずに弟たちと穏やかな毎日を送るトアレ。同じ傍流の王子(シオンはもう王だけど)でありながら真逆の道を歩むふたりの在り方が印象的でした。というかシオンは自分の一番身近にいて抱え込みすぎるシオンのストッパーになってくれて自分にまっすぐな信頼を寄せてくれたフィオレが死んだところにタイミング良くフロワードのようなヨゴレ役を自ら引き受けてくれる人材が来てしまったもんだから完全に引き返せなくなっている感じがあってしんどいですね……「国」と「仲間」を天秤に乗せて、本人も自覚があるのかないのかくらいの認識の中で徐々に前者が重くなっていく様子が見て取れるのがなんとも言えない。

クラウやカルネではだめで、フィオレでないと止められない何かがあったんだよなあ……あるいはそれこそライナが旅に出てなくて傍にいたら何かが変わった気もしなくもないけど、特に何も変わらなかった気もする。

ライナとフェリスの距離の近づき方、良いですね!!!

突然ネルファを訪れたシオンはライナとフェリスに自分の護衛をするよう依頼する。シオンを狙う暗殺者を返り討ちにしたライナ達だったが、帰還した彼らを待ち受けていたのはトアレの命を狙ってやってきたフロワードで…。

強敵・フロワードと彼が呼び出した『悪魔』と対峙して苦戦を強いられるライナとフェリス。傷ついたフェリスを目の当たりにして、ライナが放った口上がとても好きでした。「殴られ損」という言葉の裏に隠された、フェリスにはいつだって強い女でいてほしいという気持ちを感じると言うか、暗にその裏に“自分にも殺されないような”強い女、という意味が隠れてそうというか。

常に複写眼の暴走の危険がある、それを理由に誰かと深い関係を築く事を避けてきたライナにとってフェリスって多分初めて対等に付き合えるかもしれない相棒なんだろうなあ……。自分の正体を知ってもなお傍にいてくれるフェリスや自分を必要だと言ってくれるシオンを見て、彼らを遠ざけたい気持ちと傍に居たい気持ちで内心葛藤している様子が印象深かったです。

三人の物語と並行して、いよいよミルクが忌破り隊の隊長としてシオンの命を受け動き出す。なるほどここから短編版の第1話に繋がるのか!アニメではちょっとわかりづらかった彼女が隊長に任命された理由、彼女が歩んできた決して平坦ではなかった道が描かれていてよかったです。短編の方も併せて読みたいけど巻数多いから悩むな…。

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