“食事”をテーマにした「はたらく魔王さま!」の番外編短編集。庶民派成分増量でとても楽しかったー!天界の話が出てきたあたり(12巻)から読めてなくて、人物関係の変化に驚いたところも多かったんですが、基本的に本編の話とはつながっていないので気にせず楽しく読めました。それにしても今、本編は一体どういうことになって…!?
あとがきでも触れられていたけど初っ端の「悪魔大元帥、米を炊く」の圧が強い。文字とおり日本に来たばかりの真奥と芦屋が米を炊く話なんですけど白米を炊飯するだけで1話できちゃうの、なんというか本当にこのシリーズの強みですよね。大家から支給された米と炊飯器(解説なし)を手に、僅かな手がかりから炊飯を行おうとする二人の姿が最高に面白いんですけどこの内容で「グルメ編」っていうの詐欺では!?(本書あらすじの話)
その他、真奥が大量に持ち帰ってくるフライドポテトに閉口した漆原がネットでアレンジレシピをググったり、鈴乃vsカレーうどんだったり、恵美がアラス・ラムスの食生活で悩んだり、真奥がアシエスと休日を堪能したり……と、どこにでもあるような地についた日常のエピソードが最高に楽しい。「魔王さま」に求めていた要素はこれなんだよ!!みたいなのを思う存分に投げつけられた気持ち。唯一“異世界グルメ”っぽいことをしているのがちーちゃんがエンテ・イスラ料理のフルコースをいただく「女子高生、異世界料理を堪能する」ですけどこれもちーちゃんが舌鼓を打っているのが、あの…!!って考えるだけで笑いが止まらなくなってしまうのでずるかった。
そして日本に来たばかりで不安定な日雇い労働者をしていた真奥がマグロナルド幡ヶ谷店のアルバイトになるまでを描く書き下ろし「魔王、飯のタネを得る」が良かった。原作1巻では既に日本社会に溶け込んだ後の彼らだったのでなんとなく序盤にこそ苦労はあったけど、その後はスムーズに適応できたんだと思いこんでいたけど、よく考えたらそんなに簡単にいくわけないよなあ。文化も常識も日本語の機微も解らない、お金も人脈もなくて自力で適応するしかない異世界人の彼らがあの手この手で日本の常識を学び、適応していこうとする真摯な姿が印象的でした。
いや本当に楽しかった……本編の展開落ち着いてからでもいいのでまた続きを書いてほしい。本編も読みたい……。
はたらく魔王さまのメシ!
今回は、魔王と勇者と二人を取り巻く者達の「メシ」に注目するグルメ編!未知の食材「コメ」を食べるのに四苦八苦する芦屋。ポテトをきっかけにパソコンを手に入れたことを思い出す漆原。愛するうどんを食べることを全力で拒否する鈴乃。忘れていた趣味を思い出し散財してしまう魔王。突然同居することになった「娘」の食欲不振に「母」として悩む恵美。エンテ・イスラからの来訪者達がそれぞれに日本の「メシ」に向き合う中で、千穂はエンテ・イスラの豪華な料理に舌鼓を打っていた!「電撃文庫MAGAZINE」に掲載された六話に書き下ろし短編を加えた特別編が登場!『メシ』がテーマの庶民派ファンタジー・グルメ編! (「BOOK」データベースより)