人間の姿をとり、不思議な力を持つ『Dアーム』。両親と妹の仇を討つためかつて九郎義経が持っていたという複数の顔を持つ刀・薄緑の伝承者となった少年・若林練司はしかし任務でも人間を斬ることが出来ず、苦悩する。そんな時、偶然Dアームと契約してしまった少女・島原糸の護衛をすることになって…というお話。
さまざまな重い過去を持つキャラクターたちが、その問題と折り合いつけながらちょっとずつ前進していく姿がアツかった。特に、最初は自らの『呪い』におびえて状況に振り回されるだけだった糸が最終的には思い悩む練司の背中を叩くポジションにまで成長するのにはニヤニヤがとまらない。あとは終盤の膝丸が無邪気かわいかった。
ただ、世界観設定や物語やキャラクターには凄く惹かれるんだけどバトルをメインに押し出してるせいか全体的に物凄く駆け足というか、なんか物足りなさが拭えない。主人公の過去とか、重い展開も多いんだけどなにか重くなりきれてない感。個人的にはバトル展開よりもキャラクターとか掘り下げてほしかったんだけど…。
1巻から次巻への伏線はりまくりなお話だったので2巻か3巻あたりで面白さが一気に右肩上がりしそうな気配を感じるので次巻以降を楽しみにしたいです。
▼ 最近の記事
銀狼王の求婚 箱庭の花嫁
兄達に虐められていたエレンシアを叱咤し、励ましてくれた憧れの王子様・フレドリクセン。彼の所に嫁ぐことになり長年の想いが叶った、と喜んだのも束の間フレドリクセンはその身に降ろすフェンリルの力に振り回され、すっかり人格を変貌させていた……というお話。
北欧神話の世界観をベースにした、コメディ要素完全排除のどシリアス「死神姫」みたいな感じ。フレドリクセンにも物凄く残念夫フラグが立っているんだけど、それが1巻では全く発揮されなかったのがちょっと残念。
5人の兄たちから酷い苛めを受け、唯一慕っていた兄は変貌し、すっかり男性恐怖性になってしまったエレンシアが、男ばかりの中でも精一杯奮闘する姿がなかなかかっこよかったです。
面白かったんだけど、個人的にはもうちょっとコメディっぽいノリの話の方が好みだったのでどうしてもその辺期待してしまったというか…いや、もう最初から最後までシリアスならそれはそれでいいんだけど、コメディの伏線だけは見えるだけに…奥手ぶりを中二病で押し隠すフレドリクセンの迷走っぷりが見たかった。2巻あるのかなあ……
死神姫の再婚 -ひとりぼっちの幸福な王子-
ゼオルディスの望む「物語の続き」が書けたらグラネウスの処刑を取りやめてくれる、という言葉を受けてゼオルディスと向き合う覚悟を決めたアリシア。その一方で、王子に味方する人間はどんどん減っていき……というお話。アリシアの脳内カシュヴァーン様が光輝きすぎてやばい。
アリシアが漸く突き止めたゼオルディスの「物語」の真実がとても切ない。ゼオルディスの態度からして薄々そういう方向だろうなというのは解っていたんだけど、ずっと張り続けてきた虚勢の裏から覗く本音が、切なかったです。
着々と味方を失っていく王側と、離脱した軍勢も取り込んで大きくなっていく女王側の対比が凄かった。特に女王側のドンチャン騒ぎの直後、王宮側の話をもってこられるともう。個人的に今回ある意味一番の見所だったのはジスカルドと、トレイスかなと。肝心な事にまるで鈍感なジスカルドのうろたえぶりと、そんな状況でも小姑根性忘れないトレイスの肝の据わりっぷりに大変ニヤニヤした。トレイスは嫌かもしれないけど、なんだかんだいってシャンテとお似合いなんだよね……しかしなぜトレイスの服装をちゃんと挿絵にしてくれなかったんですか。
長く続いた夫婦の離別編もそろそろクライマックス。これまでなかなか動きを見せなかったカシュヴァーンがついに動き出して、夫婦の再会に向けての期待が高まって仕方ありません。そしてカシュヴァーン様夫馬鹿一代ここにきわまる。
(仮)花嫁のやんごとなき事情 〜離婚できたら一攫千金!〜
巨額の報酬につられ、守銭奴の鉄腕アルバイター・フェルが請け負ったのは自分とそっくりの王女・シレイネの身代わりとして隣国の皇子に嫁ぎ、離縁して戻って来いというものだった……というお話。
ドS男子×男前女子さいこおおおおお!!!
下女達に嫌がらせを受けても、仮とはいえ旦那に冷たい態度を取られまくっても庶民根性全開でへこたれないフェルがかっこいいそして可愛い!王女モードのシレイネがとんでもなくかっこよくて、本当にたまらない。これまでも何度も「入れ替わり」を体験してきたタマモノなのかフェルが元々併せ持つ男顔負けの行動力・潔さに王族らしい高潔さ・美しさが加わってもうどうしたら良いのか。特に201ページのアレは展開・挿絵も併せて転がらざるをえない。
王女の『シレイネ』と下女の『フェル』のときでガラっと態度の変わるドS皇子・クロウにも散々転がされました。この基本鬼畜・ドSなところに微妙なヘタレぶりと、冷たい態度の裏に隠された優しさのバランスが絶妙でたまらない。振り回してやったとおもったらいつのまにか自分が振り回されてるこの手綱握られてる感とか、終盤はすっかりフェルにベタボレな感じがにじみ出る発言の数々とか。本当にごちそうさまでした。
実際に離縁できずにこのままくっつくとなると、彼女が身代わりになっている本当のシレイネ姫はどうなるのかとか、彼女を送り込んだ祖国・ユナディア側にも色々思惑がありそうな感じだし、今後どうなってしまうのかとてもたのしみ。是非続刊をお願いします!凄く面白かったけど「花狩のロゼ」が事実上打ち切りになってしまったっぽいのが本当に悲しいのでこちらは是非2巻をお願いします!!
はたらく魔王さま!5
魔王さま、地デジテレビを買うの巻き。あらすじ読んだとき絶対この話のラスボスは1巻で出てきたNHKの集金のおじさんに違いないとおもってたら既に大家サイドで解決してた!なんてこった!テレビの話は、むしろニート堕天使こと漆原が執着しないのがちょっと予想外だったのですがそうだよね……彼はネットの申し子……アニメ見るならネットで見るよ……(魔王城にある旧型PCで動画再生可能なのかはこの際置いておいて
とりあえず序盤の一流ニート堕天使vs三流ネカフェ難民大天使で萌え死んだわけですが、物語はフリーターネタが減ったせいか予想以上に天界・魔界入り乱れてのシリアス展開。恵美の両親や千穂まで巻き込んでの総力戦でした。天界の話が絡むと漆原が活躍するなあ……「一流のニート」語りで盛大にふきだしましたが、双方の情報を整理する探偵役を務める中盤はびっくりするほどの漆原無双。味方側でも突き抜けて年齢を重ねている事もあり、まだまだ色々魔奥や芦屋のしらないネタを握っていそうな感じ。
人間側は千穂ちゃんがうっかり○○しちゃったり(アルティメットまどかにしかみえなかったのは私だけで良いです)、いよいよ本格的に梨香と芦屋にフラグが立ったり……でこちらも目が放せない。梨香さんは今回で履歴書が出ていよいよレギュラーメンバー昇格なのか。次巻もとてもたのしみです。
シリアス分多めで魔奥の労働ネタは少なかったけど某うどんチェーンの話とか、新人バイトの教育の話とか、値切りの話とかなんだかんだで庶民ネタも忘れてはいないあたりがさすがすぎる。そろそろこういう小ネタで短編集とか出せるんじゃないですかね!本編シリアス気味だからそろそろ、ね!!ニート堕天使とネカフェ難民天使ズの怠惰な一日とか見たいですね!!
ところで、大変個人的に今回の「あとがき」にぐっ……となりました。言葉にうまくできなくてもどかしいけど、あの震災ってやっぱり何かを決定的に変えてしまったんだなあというかなんというか。
魔法少女育成計画
宝島社様より献本をいただきました!
このマスコットキャラがゲスい。
16人居る魔法少女の枠を半分にすることになった。週に1度、人助けをすると貰えるキャンディの数が一番少なかった魔法少女を発表し、その娘を魔法少女でなくす。魔法少女でなくなるとは、『死』を意味していた。最初は平和的な方法で魔法少女枠の争奪戦をしていた彼女達だったが、脱落=死のルールをはじめとして様々な事実が明らかになり、次第に追い詰められていく。あまりにもあっけない最初の魔法少女の『死』からはじまる物語の転落具合が凄かった。
ちょっと希望が見出せたと思うと即それ以上の絶望によって行く手を塞がれていく絶望感がはんぱない。ちょっとギスギスし始めた時に絶妙にそれを煽るような追加ルールが出てきたり、魔法少女内も当然一枚岩ではないので騙し騙されて殺し殺されていく展開が本当に凄かった。殆どの魔法少女達の事情は深く触れられないんだけど、死んだ後に描かれる「本来の姿」だけでも彼女達の想いや無念が透けて見えてきて、辛い。
マスコットキャラが外道な魔法少女モノというとどうしても「魔法少女まどか☆マギカ」が出てくるけど、キュウべえが根っこから別次元の生物だったのに対してこちらのマスコット役を務めるファヴはある意味魔法少女達なんかよりもずっと人間臭いのでタチが悪い。そして端々から感じる悪趣味さがどこまでも本当にゲスい。まじ、ゲスい。
個人的には「まどか☆マギカ」よりも「扉の外」を思い出させる悪趣味さだよなあ、と思う。ゲームマスター側に感じる悪趣味なゲスさとか、プレイヤー達を意識的に追い詰めるために存在する追加ルールやアイテムなんかのあたり。
とてもよい悪趣味さだった。そういうの好きな人なら超オススメ。
↓あわせて読みたい
しずまれ! 俺の左腕
宝島社様より献本をいただきました!
リア充高校生が爆発したら、左手に魔王が憑依していた。な、なにをいっているかわからねえとおもうがry←あらすじ
左手に憑依した魔王は無類のゲーム好きだった。ことあるごとに左手を操ってはネトゲやソーシャルゲーをやりこもうとする魔王を抑えようとする主人公・紳士だけど、その行動が結果的にどうみても邪気眼にしかみえなくて……という周囲とのディスコミュニケーション具合が楽しい。
そんな奇妙な一身同体生活を送るうちに魔王の可愛いところが少しずつ見えてきて、いつしか……という流れは少々強引に思えたけど、魔王への気持ちを自覚した後の紳士の恋する男子高校生具合はたいへんニヤニヤできました。彼女を護る為に強くなろうと思って空回りし、魔王と引き離されても彼女を助け出す為に頑張る男子高校生の妄想力マジ最強。
個人的には、魔王を追う勇者や警察の特殊部隊が動き出してからが本番かなあという印象。浪人生で超豆腐メンタル系ヤンギレ勇者・赤井川兎や頭髪に不安のある大鳥局長とのやりとりが楽しかった。シリアスバトルの最中にヅラだの浪人だの入ってイチイチ脱力させられるグダグダ具合は好き嫌いわかれそうだけど、個人的には結構好きです。
あと、幼なじみの2人が可愛すぎる。邪気眼認定されてクラスメイト達が距離を置いても、引きながらも以前と変わらぬ付き合いをしてくれる二人の友情って実は凄く貴重なものだとおもうんですが、正直恋する幼馴染暴走特急・巻名ちゃんが濃厚すぎて友情とか幼馴染とのほのLOVEとか感じてる場合じゃない感。健気可愛いんだけど、健気可愛いんだけどいろんないみで強キャラすぎる!!!
君の隣で見えるもの
東北の田舎町にとある事情で里帰りした都会っ子が、田舎の人々と交流しながら年下の従兄弟と相思相愛になるお話。
うーん、正直、東北弁に対するフォローがあとがきまで行かないと一切無いのがちょっとキツかった。かなりガチで東北弁なのですが、音が似てるからと共通語であてはめて意味を取ってたところが最後に答え合わせしたら全然違う意味で……みたいなの多数。なんらかの形で注釈が欲しかったなあ、と。
正直メインの二人はあんまり好みじゃなかったなあとおもうんだけど、方言の話はともかくとして田舎特有のゆったりとした雰囲気とか、そういうのが伝わってくるのが凄く良かったです。雪かきの話とか翌日筋肉痛とかニヤニヤする。
それにしても、元彼の城田先生が清々しいまでのクズで思わず笑った。
読了記録まとめ[2012年5月分]
5月の読了数は感想書いてない再読本2冊を含め21冊でした。
……うち12冊がBL……もう何のブログだかわからない……ラノベの感想を求めてうちに来てくださってる方にはほんとうにすいませんでも自重しない。
今月のオススメマンガ
今更過ぎるくらいの定番だけど「プラナス・ガール」最新刊が絆可愛すぎて死んだ。「魔法のアメ」からはじまってまさかのメイド祭に転がり、ウェディングドレスに飛び跳ねるよ。「男の娘」という単語はあまり好きじゃないけど、こればかりは至高の男の娘モノとして全力で押したい。絆かわいい。
あとなんか色々な人からオススメされて手に取った「月刊少女野崎くん」が猛烈に面白かった!無骨でごつい外見なのに少女漫画家の野崎君に惚れてしまった女の子がなぜかアシスタントにされてしまうお話。少女漫画家なのに恋する乙女の気持ちなど1ミリもわからない野崎君のすっとんだ発言の数々にふきださざるをえない。あとみこりんマジヒロイン。
5月の読書メーター
読んだ本の数:29冊 / 読んだページ数:6193ページ続きを読む
ごめんなさいと言ってみろ
出版社のパーティでいけすかない男・と大喧嘩をしてしまった少女漫画家の律は、親友だとおもっていた元担当編集・能代からとんでもない事実を聞かされる。そのショックから立ち直る暇も無く、能代から久々野とのコラボ企画を持ちかけられ…というお話。
俺様系で傲慢で尊大な久々野と、プライドが高くて男前だが意地っ張りな律の喧嘩ップル具合にときめきがとまらない。謝る気がないわけじゃないけど毎度いい具合に久々野に煽られて謝罪の言葉をひっこめてしまう律の姿に超ニヤニヤする。自分とは正反対に男らしい外見の久々野にコンプレックス刺激されまくる姿も美味しかった。
そんな二人が出版社の企画でコラボをすることになり、最初は断るつもりだったのにお互いの『作品』に夢中になってしまって……という流れがとてもたのしかった。特に、コラボ小説の第一稿を読んでその世界に引き込まれていく律の姿なんか、こっちまでその世界に引き込まれていく感じで。普段はぶつかってばかりなのに全く作風の違う二人がこれまでの彼らの持ち味を生かしあったまま、新しい世界を切り開いていく姿にわくわくする。
しかし、メイン2人のやりとりにワクワクが止まらない反面、能代の空気読めなさ・天然だからこそ邪気なくダイレクトに律のトラウマを抉ってくる姿がちょっとキツかったです。お前もうちょっと空気を……お願いなので空気を読んでください……。