ゲームによる決闘ですべてがきまる帝王学園に転入し、学園を影から『演出』することを目指す田中叶太。同じ転校生の霧谷透を「主人公」にしようと奔走した結果、なぜか自分が一年生最強の一角として目立ってしまった挙げ句に美少女たちとハーレムのような新生活を送ることになってしまった!?騒がしい毎日をなんだかんだ楽しみながらも新たな「主人公」を探す叶太の前に、3年生の先輩・我狼雫が現れる。実家のために強くなりたいという雫を師匠として鍛えて(利用して?)いくうちに我狼家と霧谷家の対決に巻き込まれていって……。
改めて「ふたりの霧谷」に焦点を当てていく展開が良かった
新ヒロイン登場……と思わせておいて、改めて霧谷透の家庭の事情と主人公である叶太自身に焦点を当てていく展開がメチャクチャ面白かった。後天的に作られた完全な別人格……であるはずの二人の透がそれぞれ持つ悩みと葛藤、それぞれの形で自分を救ってくれた叶太に惹かれていく流れが印象的でした。新ヒロイン(?)の雫ちゃん良くも悪くもかませ犬感が凄かったけど、まあ今回表紙の時点でそうなるのはわかってたとこあるよね仕方ないね。色々あったけどとにかく終盤の叶太と透の共闘がめちゃくちゃ良くて〜〜!!満を持しての作中最強キャラ二人の共闘、こんなん燃えないわけがないじゃないですかやだ〜!!自分が勝利するために叶太の手を取った男霧谷の華々しい活躍とそこから一転しての最大のピンチ、その裏で彼をもり立てるために暗躍しフォローしていく叶太というバディ展開がたまりませんでした。一見霧谷無双のように見えてむしろ文句なしの叶太無双だったんだよなこれ。
ゲームを楽しむことを至上とする叶太を自分と同じ裏社会のアレコレに巻き込んで曇らせたくない葛藤、男性としての自認を持つが肉体は女性という男霧谷の冷酷なようで根は優しいという複雑な感情のせめぎあい、女霧谷とは完全な別人格のように見えて根の部分は繋がっていそうな、それを象徴するような終盤の挿絵の複雑な表情含めてとってもとっても良かったです。
主人公に思ったよりも人の心がないの最高かよ〜!!!
そんなこんなで突然現れた年上の新ヒロインとか女霧谷の葛藤とか男霧谷と叶太の共闘とか色々見どころはあったんですけど……ほんと最後の最後で叶太自身の深淵を掘り下げる展開に全部持っていかれた!最高かよ〜!!!いや、物語の最初から叶太が唱えてきた「みんなを楽しませたい」というお題目と、それに対して自らの「演出」のためなら他者の感情を踏みにじることも厭わないという手段のチグハグさがずっと気になってたんですよね。純粋に空気読めない無神経男な可能性もあったけど、そうなるには叶太ってクレバーすぎるので。
ずっと持ち続けてきたその違和感が今回のラストであまりにもきれいに昇華されて大興奮した。自分のことを規格外だと認識しながらも意図的に凡人の中に埋没しようとしていて周囲を楽しませようとしているという気持ちにも別に嘘はないけど、根本的な部分でひとのこころがなさがはみだしてる規格外、人間のふりをしている人外、好き……(ここまで一息)
新人賞受賞作ということである程度の謎は残しつつも1巻の時点でちゃんと綺麗にまとまっている物語ではあったんですけど、2巻を読み終わってみると良い意味でこの2巻ありきの1巻だったので2巻までの刊行が確約されているらしいオーバーラップからの刊行だったの本当に良かったな。いやでも学園長の思惑通りに規格外として生きていくことになるのか、それともこれまで通りに人間のふりを続けて生きていくのか……今後の叶太の行動までありきで最低でももう1冊ほしくないですかこれ!?
3巻出てくれ!!続きが気になる〜!!!