王都クエストを無事にクリアした蓮華はゲームログインもままならないまま吸血鬼用に改造してもらったコクーンの試作品完成の知らせを受け、息子・洋士に連れられて東京へ。いよいよNPC扱いから脱却する日がやってきたが……『配信』という見慣れないメニューを発見して!?
配信バレしても変わらない空気感が引き続き良かった
機械オンチな吸血鬼作家の主人公(鎌倉時代から生きてる)がアナログ原稿脱却のためにVRMMOを始める物語、シリーズ第二巻。王都クエストの報酬受取、スケルトンくんが正式に相棒に、念願のPC化→配信のアレコレバレ、東京での息子との同居、装備周り更新、ヴィオラさんとのリアル邂逅、そして初めてのダンジョン探索と……と、とにかくイベントが多い巻だった。いろいろな意味で配信の存在に気づいていない蓮華をコメント欄や周囲がなんだかんだで見守っていく展開が面白かったので配信バレでどうなる!?と思ったけど、コメント欄とのやりとりが増えたくらいで良くも悪くも配信の存在を気にせず進んでいくスタイルで良かった。蓮華に直接絡みに行く方向性になった配信のコメント欄/これまでと変わらず本人が居ない前提でこっそりとレスが進む掲示板……と切り分けられているのも上手いなあ。ここにきて(というか蓮華がPC化したことで)浮上してきたゲーム本編シナリオに関する謎とそれに関する考察、遅れて始まった他国でのメインクエストの話も盛り上がり、更には吸血鬼以外の種族の存在、蓮華自身の過去も匂わせてきて……色々と気になるところで終わって、続きが気になりすぎる。
それにしても、最初の登場人物紹介を見ると蓮華やヴィオラだけじゃなくて他のゲーム内で知り合った面々もリアル人類であるとは確定してないんですよね。全員人外の可能性もあるわけなのか。というかナナさんとか自覚あるなしは解らないけどあの終わり方からして明らかに純粋な人類ではなさそうというか……ガンライズさんいろいろな意味でどうなってしまうんです。
洋士さんがお父さんのこと好きすぎる。
マイペースなお父さんに振り回されてやれやれしつつもほっとけない、苦労人の息子・洋士さん…………と思っていたら、序盤の東京に移動中のやりとりから少しずつ様子がおかしくなり、「あれひょっとしてこのひと蓮華の配信見てますよね?」「っていうかひょっとして父親のこと大好きでは?」とか思いつつ読み進めていたのですが…………「短編 . それぞれの一日」と電子書籍版特典SSの「洋士、散在する」を読んで無事ひっくり返りました。いやこの人、父親(蓮華)のこと大好きじゃないですかーーー知ってたけどここまでだとは知らなかったなぁ!!!!!?? この人予想以上にガチ勢だし予想以上にファザコンを拗らせてるし予想以上に父親のことしか考えてないぞ!?いや、いろいろな意味でお互いに腹を割って話せずに遠慮しあった結果として感情を拗らせてしまった感が凄くて洋士さんも被害者……と思わなくもないし、蓮華の辛い時期(詳細不明)を見守ることしかできずに歯がゆい思いを抱いていた彼が配信で楽しくしている父親を見て「守りたい、この笑顔」になってしまったのも仕方ないといえば仕方ない気がするのですが……。
蓮華もそのへんの遠慮してた部分はちゃんと話すよみたいな終わり方だったので(というかあそこで次巻に続くするの結構鬼畜じゃないですか!?)、腹を割って話し合って遠慮しなくて良い関係性になれるといいね……と願わずにはいられない短編と書き下ろしでした。
いやこれどうせヴィオラさんのストーカーも洋士さん(もしくは洋士さんの手の者)なんでしょう!?とか一周回ってヴィオラさんとは蓮華好き仲間として通じ合えるのではないかとか色々思う所はあったんですが個人的にはクリスマスと年越しは絶対に親子水入らずのホームパーティーを楽しみにしてるとおもうのでお父さんなんとかしてあげてください。腹壊してでも父さんの作ったクリスマスディナーと年越しそばを食べる気満々だとおもうよ。というか洋士もうてっとり早くあっちにキャラ作ったほうがいいのでは!?