今日もだらだら、読書日記。

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いまだVtuberに疎いオタクがオススメするVtuberラノベ13選

「キミラノ」が7月15日にサービス終了とのことで、キミラノでまとめていた記事をサルベージしてきました。2023年に作成した「Vtuber観てないオタクがVtuberラノベを読んでまとめてみたよ」というまとめに、キミラノで取り扱いのなかったタイトルや最近読んで面白かったタイトルをいくつか足して作成しています。まとめ直すにあたり主人公や視点ごとにまとめ直して、紹介する順番を変更したりしています(基本的に内容の変更はしていません)。

2023年1月の時点ではVtuberラノベのほぼ全部を漁れていたと思うのですが、このあと一気にVtuberラノベブームが来て追いきれなくなりました。ちなみにVtuberは2025年になったいまでもほとんど実物の配信を見たこと無いのでタイトル詐欺はしていない。長尺生放送多いのもあって最後まで見れたこと無いんだよな……ちょっと前のにじさんじとSideMの企画コラボとライブを見たくらいです。

ちなみにこちらのまとめですが「激推しラノベまとめ賞」という企画向けに作成したもので、こちらの企画で第3位、カクヨム運営チーム様から下記のような選評をいただきました。こういう企画で賞をいただいたのは初めてだったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。ありがとうございました!!(問題があるようなら消します)

「Vtuber観ないしな…」と離れかけた人の心をもグッとつかむタイトルで、各コメントの冒頭に作品を読み解くキーワードを列記しているのが目を惹きました。「どんな人におすすめか」が一目でわかる工夫が素晴らしい。フランクな口調ながら作品のコアにある要素を鋭く押さえて解説していると感じ、強く推薦いたしました。

「カクヨム」運営チーム


女性V主役

七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
【V視点】【Vtuber楽しい】【会話劇】【コメディ】【百合】
冴えない企業Vtuberをしていた主人公が事故配信を切っ掛けに成り上がっていくVtuber系コメディ。コメント欄との軽快なやりとりには往年の2chまとめを読んでいるような楽しさがあり、少し前に流行った会話劇主体のコメディの血脈を感じます。アンチの霊圧が殆ど無い優しい世界観で、主人公のMCとしての成長や女性Vtuber達のわちゃわちゃが楽しめるのも魅力の一つ。なるほどこれが「てぇてぇ」という感情か……。直近の巻では百合カップルが正式に成立したのでそういうのが好きな層にもおすすめです。
石川博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
【V視点】【エロス&バイオレンス】【百合ハーレム】【バディ】【だが男だ】
広大なVR空間を舞台に、バーチャル美少女のアバターに身を包んだサラリーマンの主人公が同僚女性を巻き込んで推しの風俗嬢に貢ぐために危険な配信に手を染める。男である主人公が人気デザイナーが手掛けた一点ものの美少女アバターで配信者的にも性的にも無双していく展開がクレイジーでとにかく面白いし、百合ハーレム化していく中で同僚女性との肉体を介さないバディ関係が浮き上がってくるのも良かった。本編から打って変わってプラトニックでロマンチックなラストが印象的。タイトル伏線回収がまた胸に来る。
せひらあやみ「異世界召喚されたVチューバーですが、皆様コメントで助けてください!」→感想
【V視点】【異世界転移】【ファンタジー】【ゲスコット】
兄がやっていたVtuberのガワで異世界に飛ばされてしまった主人公がクソみてえなマスコットや信用できない異世界人やラブコメの気配を察知すると低評価かましてくるリスナー達に囲まれて頭を抱えながらもリスナーの応援を力に変えて異世界の脅威と戦う(無理ゲー)。コバルトから出てるのにイケメンとイチャイチャしたら低評価とか無理ゲーすぎる。あまりにも基本設定が無理ゲーすぎたのでどう乗り越えてくるのか気になりすぎてどうしても続きが読みたかったのですが続きが出なかったのでかなしい。

男性V主役

とくめい「アラサーがVTuberになった話。」→感想
【V視点】【お仕事ラノベ】【コメディ】【炎上】【兄妹】
デビュー以来炎上しっぱなしの男性Vtuberの主人公が「前職(ブラック企業勤務)よりマシ」と強烈なストレス耐性を発揮してなんだかんだで楽しく活動していくお話。元々はVtuberに興味がなかった主人公が妹の勧めで企業に応募……という「お仕事モノ」としての一面が強めの作品で、才能があるとはいえないけど本人はそれなりに楽しくやっている…という感じが良かった。あと何気に相思相愛みの強い兄妹関係が大変美味しゅうございました。隙あらば配信で妹自慢はじめる兄可愛いし、匿名掲示板で慣れない工作する妹ちゃん可愛いかよ。
烏丸英「Vtuberってめんどくせえ!」→感想
【V視点】【炎上】【ネットの闇】【家族関係】
女性だらけのVtuber企業からデビューして炎上する主人公が、自分をコラボに誘ってくれた同期の女性Vtuberが巻き込まれたトラブルを解決するために奔走する物語。「炎上」というネットの闇の理不尽さ・ままならなさを余すことなく描きながら、それに必死に立ち向かうヒロインと、その炎を覆すために立ち上がって敵地へと赴く主人公の姿が描かれていくのがアツかった。家族関係で似たような「傷」を持つ二人の関係性も良かったです。ところでこれは軽くネタバレなんですが主人公にガチ恋男性ファン出来るの笑った。いやでもこれ絶対に「男が好きな男」なんだよな…。
芦屋六月「妹の好きなVtuberが実は俺だなんて言えない」→感想
【V視点】【オタク視点】【学園ラブコメ】【兄妹】
久しぶりに再会した妹が自分の演じている男性Vtuberのガチ恋ファンになってしまっていた。正体を隠して接していたら、彼女のオタ活につきあわされる羽目に……というお話。Vtuberモノというよりは兄妹モノ&ラブコメ(妹以外のヒロインが出ます)としての要素が強め。作業BGVとしての配信需要が高いという設定に納得。とにかく妹ちゃんの拗らせオタクっぷりが凄まじく、そんな彼女の夢を壊さないために奔走する兄の姿が微笑ましい。いやこれ声でバレない?というツッコミをしてはいけない。親友(男)がママという設定はもっと推して行って欲しかったな。
犬童灰舎「やさぐれ執事Vtuberとネガティブポンコツ令嬢Vtuberの虚実混在な配信生活」→感想
【V視点】【アーティスト】【Vtuberユニット】
全員がなんらかのかたちで夢破れてVtuberに転身したという過去を持つ異色のVtuberユニットを描く物語。とにかく全員が芸術家肌かつ自身のやりたいことに対して覚悟ガンギマリなのが印象的で、そんな彼らが現実と虚構の狭間で揺れ動きながらそれぞれ独自の世界を切り開きつつ、共にひとつの「物語」を形作っていく姿が心地よかったです。それぞれの強みを活かした配信内容も含めて、良い意味で他のVtuberモノにはない味わいの作品。

ファン(オタク)視点

朝依しると「VTuberのエンディング、買い取ります。」→感想
【オタク視点】【女性V】【炎上】【推し活】【ダークヒーロー】
炎上によって「推し」のVtuberを亡くした主人公が光のトップオタから闇の炎上ブロガーへと転身。そんな彼の元にVtuberを炎上させて欲しいという依頼がやってくる…というお話。炎上によってVtuberやVtuberオタクを救済するダークヒーローモノ的な一面も印象的でしたが、それ以上に炎上によって推しを喪った主人公を含めたオタク達の「推し心のあとしまつ」的な展開が胸に沁みました。推しの炎上、対岸の火事ではないからね……。Vtuberモノとしても面白かったですが、「推し」を持つ全てのオタクに読んで欲しい(クソデカ主語)
塗田一帆「鈴波アミを待っています」→感想
【オタク視点】【女性V】【推し活】【VR空間】
1周年記念を前に突如として失踪してしまったVtuberのファン達が生放送の待機所で過去の配信を振り返りながら配信を待ち続けるお話。ファン目線から鈴波アミの1年間の足跡が輝かしく語られる前半、待機所が炎上してコミュニティが崩壊し、現実を受け入れられない主人公が醜く迷走し堕ちていく中盤、そんな彼が地獄の底から這い上がって最後に一瞬だけ推しを輝かせていくラスト……場面ごとにいろどりを変えていく物語がとても美しかったです。
小路燦「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」→感想
【オタク視点】【女性V】【Vtuber楽しい】【コメディ】【憑依】
推しVtuber(バイト先の同僚女性)のマイクに乗り移ってしまった主人公が意図的に配信事故を起こして彼女の「素」を晒してしまう。そのキャラクターがウケて一気にスター街道を成り上がり…というお話。とにかくVtuber「加々宮エリン」の個性が只事ではなく、アンチまでも完全に捌き切ってしまうトークスキルが半端ない。そんなダイヤモンドの原石でありながら肝心なところで実力を発揮しきれていなかった彼女をあるときはリアルの同僚としてそれとなく、あるときはマイクとして半ば強引に「舵取り」していく主人公の存在が面白かった。

クリエイター視点

黒鍵繭「Vのガワの裏ガワ」→感想
【クリエイター視点】【女性V】【学園】【青春】
商業絵師として活躍する高校生の主人公が、同級生の美少女からVtuberのガワをデザインしてほしい…と依頼されるところから始まるクリエイターとワケアリ新人Vtuberの物語。モデリングの出来る同級生やVtuberをしている隣人を巻き込み、プロジェクトチームとしてひとりのVtuberをプロデュースしていく前半、彼女がVtuberになった「理由」と主人公の過去に切り込んでいくシリアスな後半、どちらも良かった。Vtuberというよりはタイトル通り「Vのウラ」=クリエイターもの・青春学園ラノベとしての一面が強いかも。
下垣「自作3Dモデルを売るためにサキュバスメイドVtuberになってみた」→感想
【クリエイター視点】【V視点】【だが男だ】
自身の作った3Dモデルを販売するためにVtuberをはじめたら、ガワが売れないままガワばかりウケてしまうというお話。クリエイターとして売れたいのにVtuberとしてどんどん成功してしまう主人公のジレンマが印象的で、Vtuberモノとしても面白かったけどそれ以上にクリエイターものとして良かった。ネットのつながりの中にじんわりとリアルの繋がりも絡んでくるのが面白かったです。
田口仙年堂「きみがVtuberになるまで」
【クリエイター視点?】【青春ラブコメ】【一方通行】
自作Vtuberの動画を撮ってラブレターとして送りたい女の子と、彼女の事が好きなのに動画レター作りに協力することになってしまった主人公が繰り広げる一方通行気味な青春ラブコメ。読んでいると自分もVtuberできるかも?という気持ちになれてしまう前半の解説部分にワクワクした後やってくる、甘酸っぱいラストが大変可愛いお話でした。短編を単品買い出来て気軽に読めてしまうので気になったら読んでみてほしい。

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地獄銭湯 〜Chilla's Art ノベライズ集2〜

 
 
原作
Chilla's Art

大人気インディーホラーゲームメーカー、ノベライズ第2弾!
天涯孤独の身のまいなは、かつて世話になった施設からの紹介で、小さな田舎町の銭湯で働くことになった。だがオーナーに宛がわれたアパートはおんぼろで、銭湯に訪れる客も一筋縄ではいかない者ばかり。しかも謎めいた男の子から「このお風呂の家には幽霊がいるから気をつけてね……」と奇妙なことを言われてしまう。確かにこの銭湯はおかしい。誰もいないはずの浴場に響く不気味な声。忽然と消える客。鏡には見知らぬ女の姿が浮かび、湯船の底を何かが這いずる……。次々と起こる不気味な出来事に怯え続けるまいなの身に、さらに想像を絶する悪夢が迫ろうとしていた。果たしてまいなを狙う者の正体とは? やがて銭湯に隠されたおぞましい過去が明らかになった時、まいなは自身に秘められた真実を知ることになる――。田舎の銭湯での因縁を解き明かす表題作『地獄銭湯』ほか、『行方不明』『事故物件』『例外配達』『ヒトカラ』の計五編を収録!

インディホラーゲームメーカー「チラズアート」さんの人気ゲーム5作品ををノベライズした短編集第二弾。前巻の感想で「『地獄銭湯』とか読みたいな〜〜」といってたら表題作になっててひゃっほうしましたやったね!

船橋三兄弟ついに揃ってしまったか……。

前巻の「夜勤事件」から引き続き、原作ゲームの展開を知ってても普通に怖くて面白かった。ゲームだけだと分かりづらい部分、語られることのない登場人物たちの心象描写などを中心に描かれていくのが良いですね。

個人的にホラーとして一番楽しんで読んだのは『事故物件』で、幼馴染家族が巻き込まれた理不尽な怪奇現象を追ううちに主人公自身も同じ怪異に巻き込まれて少しずつ正気を蝕まれていく恐怖、これ以上進んではいけないと思っていてもなにかにせかされるように先に進んでしまう恐ろしさ、そして後味の悪いラストも含めてとても良かったです。主人公が助かった理由がちゃんと明示されてるのポイント高い。

とある事件をきっかけにイジメ専門の探偵になった主人公がとある村の少女達が巻き込まれた失踪事件を追う『行方不明』、配達員をしている主人公が配達に行ったマンションで怪異に巻き込まれ、その裏にあった事件の真相にたどり着いてしまう『例外配達』はホラー仕立てな味もありつつ普通にひとこわヒューマンドラマな感じでとても楽しく読みました。特に行方不明、主人公の亡くなった息子である匠まわりの展開がちょっと追加されていて普通に泣ける話になっている……あと主人公のバディ的な役割で登場する船橋次男のキャラが次男感強くて地味に良い。「夜勤事件」に出てくる船橋長兄はちょっと反省したほうがいい。

『ヒトカラ』は分岐ルートであることを活かした展開〜とあとがきで書かれていたけど、個人的には要所要所で分岐ルートが入ってくるせいでストーリーに没入しづらく、あまり好みではなかったかも。確かにメインのルートだと犯人のやってた事がイマイチわからないまま終わる気がするし、かといってルートによってはホラーにならずに終わったりするので難しい話ではあると思うのですが……。

表題作である『地獄銭湯』は去年発売されたリメイク版をベースにしたストーリー。改めてみるとこのゲームに出てくるお客さんの変人度凄いな。『閉店事件』にも変な客いっぱいいたけどこっちは本当にヤバい客しかいない。変な客が登場するたびに最初に提示された禁止事項を読んで「こんなの守らない人めったに居ないでしょ」って思ってた主人公のことを思い出してしまい、なんともいえない気持ちになる。

原作ゲーム(リメイク版)のほう割と実況動画とか見てても長尺になりがちで、ミニゲームもいろいろはいっているのでその辺は抑えめにノベライズしてくれるのかなり嬉しかった。というかゲームだと突然発生する理不尽ミニゲームみたいなのがしっかりストーリーの中に組み込まれてるの凄い。オリジナル版とリメイク版で結構設定自体が変わってたよな、あちらのほうが謎が多かったよなオリジナル版の方ベースでも読みたかったな……と思ってあらためて考察とか読み漁ってたんだけど、「まいな」と「えれな」の扱いとか大きく変わった部分もあるけど、基本的にはほぼほぼ変わってない感じっぽい?

オリジナル版はバグの関係でもう実況動画とかで見直すしか手段が無いんですね(そういやそんな話をリメイク版の実況動画でみた記憶あるけどあんまりちゃんと聞いてなかった)。アレがきっかけでホラーゲーム実況見始めたので、久しぶりに見に行ってみたいな。

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俺は学園頭脳バトルの演出家!2〜突然家に転がり込んできた学園最弱の美少女も、すべては最強転校生の手のひらの上のようです〜

 

学園最弱の美少女を「最強主人公」に!? 至高の頭脳バトル×メタコメディ第2弾!
ゲームによる決闘ですべてが決まる帝王学園。そこで、現実世界を『演出』することに命を懸ける田中叶太は、裏社会からやってきた転校生の霧谷透を最強主人公にするべく奔走するのだが、事態は思わぬ展開へと転がり──。 そして迎えた新フェーズ。一年生は上級生との決闘が解禁され、一年生四天王の霧谷、西園寺、ソフィー、そして叶太に上級生たちが襲いかかる。そんな大ピンチのなか、叶太へ救いの手を差し伸べたのは三年生の美少女である我狼雫。学園最弱とされる雫は叶太に「私と……赤ちゃんを作ってください!」と宣言し!? 実力隠し最強主人公?学園頭脳バトル?メタコメディ、第2弾!

ゲームによる決闘ですべてがきまる帝王学園に転入し、学園を影から『演出』することを目指す田中叶太。同じ転校生の霧谷透を「主人公」にしようと奔走した結果、なぜか自分が一年生最強の一角として目立ってしまった挙げ句に美少女たちとハーレムのような新生活を送ることになってしまった!?騒がしい毎日をなんだかんだ楽しみながらも新たな「主人公」を探す叶太の前に、3年生の先輩・我狼雫が現れる。実家のために強くなりたいという雫を師匠として鍛えて(利用して?)いくうちに我狼家と霧谷家の対決に巻き込まれていって……。

改めて「ふたりの霧谷」に焦点を当てていく展開が良かった

新ヒロイン登場……と思わせておいて、改めて霧谷透の家庭の事情と主人公である叶太自身に焦点を当てていく展開がメチャクチャ面白かった。後天的に作られた完全な別人格……であるはずの二人の透がそれぞれ持つ悩みと葛藤、それぞれの形で自分を救ってくれた叶太に惹かれていく流れが印象的でした。新ヒロイン(?)の雫ちゃん良くも悪くもかませ犬感が凄かったけど、まあ今回表紙の時点でそうなるのはわかってたとこあるよね仕方ないね。

色々あったけどとにかく終盤の叶太と透の共闘がめちゃくちゃ良くて〜〜!!満を持しての作中最強キャラ二人の共闘、こんなん燃えないわけがないじゃないですかやだ〜!!自分が勝利するために叶太の手を取った男霧谷の華々しい活躍とそこから一転しての最大のピンチ、その裏で彼をもり立てるために暗躍しフォローしていく叶太というバディ展開がたまりませんでした。一見霧谷無双のように見えてむしろ文句なしの叶太無双だったんだよなこれ。

ゲームを楽しむことを至上とする叶太を自分と同じ裏社会のアレコレに巻き込んで曇らせたくない葛藤、男性としての自認を持つが肉体は女性という男霧谷の冷酷なようで根は優しいという複雑な感情のせめぎあい、女霧谷とは完全な別人格のように見えて根の部分は繋がっていそうな、それを象徴するような終盤の挿絵の複雑な表情含めてとってもとっても良かったです。

主人公に思ったよりも人の心がないの最高かよ〜!!!

そんなこんなで突然現れた年上の新ヒロインとか女霧谷の葛藤とか男霧谷と叶太の共闘とか色々見どころはあったんですけど……ほんと最後の最後で叶太自身の深淵を掘り下げる展開に全部持っていかれた!最高かよ〜!!!

いや、物語の最初から叶太が唱えてきた「みんなを楽しませたい」というお題目と、それに対して自らの「演出」のためなら他者の感情を踏みにじることも厭わないという手段のチグハグさがずっと気になってたんですよね。純粋に空気読めない無神経男な可能性もあったけど、そうなるには叶太ってクレバーすぎるので。

ずっと持ち続けてきたその違和感が今回のラストであまりにもきれいに昇華されて大興奮した。自分のことを規格外だと認識しながらも意図的に凡人の中に埋没しようとしていて周囲を楽しませようとしているという気持ちにも別に嘘はないけど、根本的な部分でひとのこころがなさがはみだしてる規格外、人間のふりをしている人外、好き……(ここまで一息)

新人賞受賞作ということである程度の謎は残しつつも1巻の時点でちゃんと綺麗にまとまっている物語ではあったんですけど、2巻を読み終わってみると良い意味でこの2巻ありきの1巻だったので2巻までの刊行が確約されているらしいオーバーラップからの刊行だったの本当に良かったな。いやでも学園長の思惑通りに規格外として生きていくことになるのか、それともこれまで通りに人間のふりを続けて生きていくのか……今後の叶太の行動までありきで最低でももう1冊ほしくないですかこれ!?

3巻出てくれ!!続きが気になる〜!!!

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スーパーコラボ・オンライン 〜無理ゲー世界にコラボキャラを集めた最高のパーティーで挑みます〜

 

俺だけの最高パーティー(全員コラボキャラ)を組んで無理ゲー世界に挑め!
 『スーパーミスティックヴァース・オンライン』。様々な作品とコラボして人気を集めた異色のゲームに、俺は転生した。  もちろんこの世界にも、きちんと歴代のコラボキャラたちは実装されているようで……。心優しいエルフのお姉さん(神の一族)、天下を支配した第六天魔王(美少女)、ホラー系ゆるキャラ(人類を滅ぼした)etc. 「こういうのって、もっと世界観が作り込まれた名作ゲームに転生するもんじゃないのか?」 【――次のコラボは宇宙最強の戦士達です。】  言ってるそばからこんなの無理ゲーだろ! こうなりゃ、俺だけの最高コラボパーティーを組んで挑んでやる!

生前ハマっていたソシャゲの世界に転生してしまった主人公。前世の知識を適度に活かして強キャラとして生きてきたが、前世の世界に実在した商品がゲーム内でも売られていることをきっかけにしてとある事実に気づいてしまう。そう、この世界はゲーム本編だけでなく「コラボイベント」も実装された世界だったのだ。しかも、このゲームは「スーパーコラボ・オンライン」と渾名がつくほどコラボの多いソシャゲで……!?

中堅マイナーソシャゲ好きにはたまらない、ソシャゲあるある感が楽しい

ソシャゲ世界に転生した主人公が襲来する「コラボキャラ」の脅威に立ち向かおうとするお話。世界観もタイトルも出落ち感半端ないんだけど、ひとたび世界を脅かすような能力を持ったコラボキャラが原作性能のままでやってきたらガチで天災、世界の危機!!さてこのキャラは……?というバランス感が多世界物としてめちゃくちゃ面白かった!

ベースになっているソシャゲの、粗製乱造の果てに生まれなんとなく運良く生き延びて死なない程度に人気になってしまった中堅にはなれない程度のソシャゲ感がリアル。多分10周年を超える人気ゲームにはなれないけどそこそこ長生きして5〜8年くらいで死んで厄介もといコアなファンからことあるごとに思い出語りされちゃうくらいのポジだ。そしてこのくらいのポジションのソシャゲといえば新規獲得目的でメインストーリーそっちのけで展開される期間限定シナリオ&コラボイベントという発想、ありそうでなかったというか少なくともそれをソシャゲ転生もののメインにする発想はありそうでなかったな。

そしてゲーム=今は自分の生きる世界に「実装」されるコラボキャラを巡って繰り広げられる駆け引きがめちゃくちゃ面白い!ストーリー要素のあるコラボイベントならともかく、ストーリーなしコラボのキャラが原作沿いの性能でそのまま実装されるのかコラボ向けに性能調整させられているのか確かめてみないとわからないので一見無害なキャラでも最新の注意をもって接しないといけないのが趣深い。見た目カワイイキャラがとんでもない力を隠し持ってるのもあるあるですからね。そして初っ端から実装されるのはインフレの極みに至ったバトル漫画のキャラ達で……本当に彼らがやってきてこの世界で戦えばそれだけで大惨事、完全に天災扱いされてるのに笑ってしまった。いやでも確かにその作品(おそらくベースはあのへんの作品だろうなあと目測)そうだよ……。

そんな最初に実装される最強バトル漫画のキャラたちに「穏便にお帰りいただく」ため、前世の知識を元にコラボキャラの仲間を集める主人公。コラボキャラ達をゲーム内ユニットの感覚で便利に使うというわけでもなく、自分の世界に影響を与えそうなチートコラボキャラを害悪扱いするでもなく、「異世界からやってきた一方的に知ってる隣人」として上手く付き合っていこうとする姿が良かった。一方でソシャゲのコラボイベストにはお約束の「仲間にしたコラボキャラを元の世界に返せるのか問題」とかもしっかり絡ませてきていて……帰還の手段が限られている時点で生まれる「誰を返すのか」という問い、元の世界に帰りたいコラボキャラ側の葛藤も印象的に描かれていました。

何より主人公が攻略Wikiもなしにこのゲームの詳細を記憶している理由、特にゲーマーでもない彼がこのゲームのトッププレイヤーに比肩するほどやりこんでいた理由にニヤリとしてしまった。いや〜〜ソシャゲのオタクの行動源っていうのはえてして「そういうもの」だよね!!

バトルキャラだけではなくアイテムだけの企業コラボやVtuberコラボ、ログイン配布でのコラボキャラ配布、果ては運営会社内での別ゲーからの使いまわし設定まで登場して……中堅以下〜サ終ソシャゲあるあるネタがガッツリ詰め込まれているのも楽しかったです。1巻で綺麗に終わっている感じではあるけれどコラボ要素ありのゲーム世界転生という設定、ありそうでなかった切り口だったのでまったりと続いてほしいな。いくらでも続けられそうな話ではあるんだけども……。

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サンバカ!!!

 

面白おかしい旅に出よーぜ!!!
「私の名前はイグニス・ファルフレーン。かつて世界を治めていた聖女です! が、能力を九十九分割されて封印されてしまったので探してる真っ最中です!」 「何言ってるのかわからないと思いますが、とりあえずアイテム探し系ロードムービーだと思ってください。どうも、主人公のネモです」 「うらぶれた街で腐るチンピラ・ネモくんが清楚で巨乳でS級美女の私と出会い、旅に出る! これはえっちな予感がしますよぉ!」 「……見ての通り、基本的に聖女なんて名ばかりな、ただのバカです、ウチの相方は」 「そんな我々が、巨大な亀の中にある街やら、バニーガールがわんさといる永遠の祝祭やらに乗り込むわけですね!」 「ケツと器のデカい獣人の姉御を道連れにしたりしながらな」 「ネタバレすると道中では臓物の雨が降り注ぎ、ラスボスは黒ギャルです!」 「破天荒な聖女とチンピラと獣人の旅が、第31回電撃小説大賞《銀賞》を受賞して刊行!」

路地裏で血まみれになって倒れていたチンピラ・ネモに声をかけてきたのは自らを神話の時代より幾千年を生き、かつては世界を治めていたと自称する聖女(と書いておかしな女と読む)・イグニスだった。ひょんなことから彼女の言葉が真実だと知ってしまったネモは生まれ育った街を飛び出し、99の契約書に分かたれた彼女の異能──『聖女の契約書』を取り戻す旅に同行することになるが……!?

テンポ良い掛け合いと「気安い」物語が楽しい!

面白かった〜!街の底辺チンピラだけど根は善人で夢は「面白おかしく生きたい」なネモ、自称かつて世界を治めていた不老不死の聖女で現在は「真っ当に老いて死ぬ」のが夢で残念美人で色々と倫理観やリミッターが外れ気味なイグニス。生まれも性格も対称的な主人公ふたりの遠慮のない掛け合いがとにかく気持ちよかった!

四千年の時を経て現在は清楚を装っているけど一歩ネジが外れると人を人とも思わないような異常な精神性をはみ出させてくるイグニス。そしてたった1枚の契約書でも規格外の能力を発揮する彼女がかつて持っていた異能。契約書を取り戻してかつての狂気を覗かせるイグニスを怖れながら、彼女の巻き起こす異常な事件に翻弄されながら……それでもどうしようもなくイグニスに惹かれていくネモが最初はその場の勢いで、そして次は心からの願いとして彼女の「ブレーキ役」として共に在ることを誓う展開がアツかった。

どうみても異常な経歴とバックグラウンドを持つイグニスに対してその過去を強く知りたがるわけでもなく、かといって彼女の打ち明け話を聞くのを拒否することもなく、狂気を肯定するわけでも異能を崇拝するわけでもなく……常に自然体で接するネモの在り方が凄く良かったし、これはイグニスさんも惚れるわ。そのへん、今回のラスボスであった黒ギャルさんの在り方とは真反対になっていたのも印象的でした。

1枚でも人間を狂わせるには十分な「聖女の契約書」、イグニスの過去、現代から遠く繋がっていそうな世界観設定……ストーリーや世界観は相当重たいんですけど実際はとにかく地元異常に大好きストーカーおじさんからはじまり砂漠を徘徊する超巨大亀とか永遠に続くバニーガール祭りとかラスボスは百合属性の黒ギャルとかトンチキ展開の連続で、軽妙な会話劇も相俟ってサクサク読めてしまった。あとがきで書かれている「気安い関係にある作品」という言葉がまさにぴったりで、カラっと笑って読み終わったら楽しい気持ちだけを残して本棚にしまえる物語であったと思います。だからあんまり感想でゴチャゴチャ書くのもちょっと違う気がする。いや本当に楽しかったな……。

既に次巻予定が決まっているっぽいのも嬉しいなあ。今回はまだまだ絡みの薄かった、第三の主役であり色々デッカい生真面目な獣人・ガガガが今後どう絡んでくるのかも楽しみです。

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これが魔法使いの切り札 4.蒼穹の剣士

 

リクス、まさかの魔法大会に参戦。そして明かされる真実ーー!
進級資格を満たせる成果がなく、(またしても)退学の危機に陥ってしまうリクス。一発逆転を賭けて、ダードリック魔法大会に参加するが、同じく大会に参加していた少女リアと好敵手のような関係となりーー

またまた進級に必要な単位や成果が足りず、退学の危機に陥ってしまうリクス。そんな中、数年ぶりに開催されることとなった「ダードリック魔法大会」の話をシノから聞かされ、その代表選手を決めるための学内選考レースに参戦することに。同学年のリアと呼ばれる少女とライバル関係になったりしながら順調に勝ち上がっていくが、そこには《宵闇の魔王》復活を目論む祈祷派の陰謀と、その障害となるリクス自身をも取り除こうとする陰謀が渦巻いており……。

リクス自身の正体に迫る物語とその覚醒がアツかった!

レースを隠れ蓑にいよいよ動き出した祈祷派の首魁。《宵闇の魔王》シェノーラとしてリクス達の前に立ちふさがるシノ。彼女を救わんとするリクスの前に立ち塞がるのは過去から呼び出された本物の《黎明の剣士》……!?リクス自身の正体を含めてこれまで謎とされてきた部分が一気に明かされていくお話が楽しかったです。

今回の主軸のひとつである影魔法を操る謎の少女・リアとリクスのライバル関係(?)も凄く楽しかったのですが、個人的には第2回戦で行われたダンジョン探索パートが面白すぎた。様々な魔術試練・謎解きをかたっぱしからゴリ押しで物理的に突破していくリクス、ほんとおもしれえ男だよ……魔法でやるべき部分を魔法が使えないリクスがゴリ押しで解決していく話、1巻以来ご無沙汰だった気がしますがめちゃくちゃ好きだな。あと、巻を追うごとに「愛すべきツンデレ」と化していくアルフレッドくんが大変に愛おしい。

そして遂に明かされたリクス自身の出自と正体。《宵闇の魔王》シェノーラを救うためだけに《黎明の剣士》を似せて生み出された、まがい物の存在──「人形」でしかなかったリクスがオリジナルとは別の生き様を見出し、その上で魔王シェノーラではなく、今を生きる大切な友人であるシノを救うために新たな力を求めるという姿がとにかくアツかった!自身に「夢」を与えてくれた傭兵時代の生活、その「夢」を叶えるために辿り着いたエストリア魔法学院での友人たちとの騒がしくも楽しい1年間の学園生活……物語の開始当初から語られていたリクスの野望「戦う人生を辞めて平穏に生きたい」がリクス自身の力を目醒めさせていくという展開がめちゃくちゃ良かったです。

良い最終回だったすぎて、色々不安になった

とにかく面白かったんだけど、あまりにも完璧にこれまでの謎や伏線を回収しすぎてる今回の結末……「良い最終回だった」と冗談で言うには最終回感がすごすぎていろいろな意味で不安になった。あとがきの書き方もなんか最終回っぽい……いやここで完結じゃないよね!?

表面的にはいろんな謎が全て明らかになって綺麗に終わってて、ここで完結ということでも全然問題ない気がするんですが……これまでの伏線回収を優先した結果本来あったはずの日常パートを思い切りすっとばしてここまでやってきた感があまりにも強いので物語としては凄く面白かったのですがシリーズ全体としては「まだやれるだろ!!??」感というか、綺麗に終わったけどそれ以上の消化不良感がある。特に今回の序盤でダイジェストで語られた日常パートの話が面白そうすぎてそのへんがちゃんと短編になってないのもったいなさすぎる。

いやほんとうにこれ、日常短編だけであと2〜3冊分くらいのプロットが羊先生の頭の中にはありますよね!?生徒会見習いとして部活間の折衝やってるリクスの短編とか、魔法が使えないリクスが無理くり単位を稼ごうとしてトラブルを巻き起こす短編とか読みたすぎない!?文庫描き下ろしでリクスとトランの傭兵時代の過去短編とか、宵闇の魔王と黎明の剣士のシリアス過去短編とかも読みたくない!?3年前ならなら間違いなく今頃「これが魔法使いの日常」みたいな安直タイトルのこれがまの短編シリーズはじまってるし連載してるでしょ。だから早くドラマガ本誌で…………ドラマガが…………ない…………!?

「完結」を名言していないということは売り上げ次第で続きもある──ここで終わっても良いようにはしてある──という認識で良いのかなあと思っているんだけど、続き読めるといいなあ……。

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大伝説の勇者の伝説18 みんなが昼寝王国民

 

昼寝してるだけで褒められる世界を作る! 伝勇伝ついに完結!
目の前で起こった“絶望の瞬間”。苦しみにもがきながら、ライナは未来の果てを視る。なぜ生きるのか? 何のために生まれたのか? 昼寝王国とはなんなのか? 世界を救うために、いま、史上最大の魔法が発動する!

結婚式を目前にして起きてしまった悲しい事件。敵の予言通り心が折れやるべきことを見失ってしまうライナだったが、フェリスの剣の柄におかしな模様が付いていることに気づく。それは父から託された最後の希望で──果たしてライナ達は世界を救い、いつか夢見た「昼寝だけしていれば良い世界」を実現することが出来るのか!?

登場人物たちの関係性の変化が良かった

面白かった〜〜!!最終巻となってもずっと絶望的な展開の連続でドラマガの連載時もここから彼らがどう救われるのかわからないと頭を抱えながら読んでいたけど、そんな絶望的なフラグの数々をきっちり回収しつつそれでも諦めないで手を取り合って足掻き続けた彼らが最後の最期で最高のハッピーエンドを掴み取る物語でした。今回の章題、フェリス→ライナ→シオンで主人公三人の名を冠して綺麗に終わるの胸熱。

それぞれの理由で大切な人と手を取り合うことを恐れ続けていた登場人物達がこの最終章を経ることでその勇気を得て、どんなことがあっても生きたいと決意を新たにしていく展開がアツかった。主人公であるライナ・フェリス・シオンの三人は言うまでもないけれど、この伝勇伝という物語に登場するキャラクターたちって本当に誰も彼もが自分のことが好きになれない/自信を持てない故に自身の好意を他者に伝える勇気が持てなかった人たちばっかり(クラウとノアとか、カルネとエスリナですらそう)なんですよね……それが、ライナがフェリスに気持ちを伝えたことをきっかけに少しずつ隣りにいる大切な人に気持ちを伝える勇気を持てるようになって。そこかしこでカップル成立していく展開は色んな意味で最終回感がありましたが、最終章って短いながらもこれまでの本編で掛かった以上の時間が作中で流れてますし、むしろ「どうして両思いにすらなってなかったんだ」ってカップルも多かったので割と納得感高い。

最後の5年間で様々な登場人物たちのその後が語られましたが、個人的にめちゃくちゃ好きなのはミルク隊長のその後。いや、彼女とキファの話については賛否分かれるのかもしれないなあとは思うのですが、ああなったらああなったで存外ドライなミルク隊長が妙に「らしく」感じてしまったし、ライナのことをふっきったミルクとライナの、それぞれに別々の帰るところを見つけた二人の会話がめちゃくちゃ性癖に刺さったので個人的にはめちゃくちゃ良かったです。いやあれ、ミルクの心の整理が付かない限りどこまでも拗れる問題でもあったとおもうのでそこに至るまでに彼女だけに作中経過5年が与えられたの凄く良かったなあと……(他のメンバーは5年前の時点で何かしら決着が付いていたので)

あと、ここは割とコメディな部分ですがライナとシオンが下手かつ雑すぎる下ネタ会話をしようとして、フェリスとフロワードに聞かれてしっちゃかめっちゃかになる展開めっちゃ好き。ガチでショックを受けるフェリスと目を輝かせるフロワードが微笑ましすぎるのもありますが、ここまで紆余曲折あったライナとシオンが、そしてこの巻の冒頭でおきた惨劇によって一度は全てに絶望して死んだ目で虚空を見ているばかりだったふたりが──ただの年頃の男の子達みたいにしょうもない下ネタ言ってるのめちゃくちゃな感慨深さあった。たとえそれが全く心のこもってない「女とやりまくりて〜」だったとしても。

ライナとフェリスの結婚ももちろん嬉しかったけど、この物語が最後まで「ライナとシオンとフェリスの物語」として二人の結婚後もシオンを含めた三人で一緒に居てくれたことが嬉しかった。

みんなで最後まで足掻き続けて、掴み取った最良の結末

とにかくこの最終章に至っても最後の最後まで全然ハッピーエンドの兆しが見えなくて、少し希望が見えてはそれ以上の絶望で押しつぶされるような展開の連続なのがしんどかった。状況を整理すれば整理するほどただの人間だけど寿命を超えて300歳まで生きたいみたいな無理ゲーであることが明らかになっていくのがただただ辛かった。

最終的に突きつけられたのは「多大な犠牲を払い外世界を敵に回してでも状況の根治を目指す」「成功率は低いが全員が個を保ったまま現状を大幅に先延ばしにする」の2つ。もう本当にあの結末に辿り着いたのは他に選択肢がなかった以上のなにものでもないのですが、そこにたどり着くことが出来たのはライナ達の必死の頑張りと、最後まで絶対に全員で生き抜きたいという強い意志と頑張りがあったから。

状況が根本的に解決したとは言えないし今回の戦いでやったことが未来にどのような影響を及ぼすかは全く未知数なままではありますが、少なくても現在のライナ達が笑って暮らせる世の中になったのは事実で、そうだとしたらそれこそがどうしようもなく彼ららしい最良のエンドだったんじゃないかな。そして、そこにたどり着くための鍵となるのがライナがシオンやフェリスや仲間たちが自身を愛すことができるかという一点に収束していくの凄かったです。ひょっとしたらサブタイの「みんなが昼寝王国民」、そういうことだったのかもしれないね。

2021年という大分最近になったところから追いかけ始めた新参読者でしたが、ちょうど良いタイミングでドラゴンマガジンでの連載がはじまり、その連載を見届けた末にこうして書籍版として完結する姿を見ることが出来たのが本当によかった。楽しかったです!

……それはそうと、本編が完結して本当に綺麗に終わったのでそこは本当に嬉しい限りなのですが、どう考えても短編で読みたいエピソードめちゃくちゃあるよなあ!!???いや、レムルス帝国からローランドに戻るまでの楽しい帰還の旅とか!ローランドに帰って神からの干渉が再開するまでの期間とか!!最終章なんか1冊で5年分も月日流れてるんですよ!?その間にあらゆるところでカップル成立してるんですよ!!???幕間挿入チャンスだらけじゃないですか!!!あと、完結後の物語も蛇足と言われようが読みたい。

もう10冊……とはいわなくてもあと1〜2冊くらい短編集出してくれてもいいと思うんですけどどうですか!!ああ、ドラマガが休刊したのがタイミング悪すぎる!!!

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ベル・プペーのスパダリ婚約〜「好みじゃない」と言われた人形姫、我慢をやめたら皇子がデレデレになった。実に愛い!〜 1

 

旦那様。これからは蕩けるほど私の愛に溺れてくれ。
ベル・プペー《美しい人形》とあだ名される公爵令嬢レティシア。その儚げな容姿とは裏腹に、中身は男女問わず魅了する屈指のスパダリだった!?魔導具によって最強の傭兵騎士に変身し『氷の竜帝』としても活躍していたが、正体を知るのは一部の者たちだけ。そんな彼女が婚約したのは素行に難ありと噂される『呪いの皇子』ジルベール。初対面から冷たい態度で接してきたジルベールだが、彼の孤独と不器用な優しさに触れたレティシアは心を射貫かれてしまい――。「必ず幸せにするよ、旦那様」最強スパダリ令嬢と愛が重たい旦那様の波乱万丈な新婚生活が今始まる!

儚げな美貌を持つ美少女・公爵令嬢レティシアは「ベル・プペー《美しい人形》」と呼ばれて貴族の男性達から絶大な人気を誇る。でもその中身は、豪胆で最強の武力を持ち合わせる「スパダリ」だった!?家族たっての願いで無口な令嬢を演じ、時に正体を隠して「最強の傭兵」として活躍したりてきた彼女だが、浮いた噂と赤い瞳を持つ「呪われた皇子」ジルベールと婚約することになり……。

見た目儚げ中身男前スパダリ気質脳筋最強美少女(TSあり)×幸薄め愛重め策士系美青年のイチャラブファンタジー

面白かった〜!!漢前すぎるスパダリヒロイン・レティシアがその深すぎる愛と圧倒的な包容力と国内最強と謳われる武力で「呪いの皇子」として疎まれ続けて愛されることを知らずに育った旦那様をメロッメロに蕩けさしていくのが楽しいし、はじめて自分を愛してくれたレティシアに対してヤンデレと思える程の激重感情をこじらせていくジルベールの様子が大変美味しい。

ジルベールが初手でドロドロに蕩けてしまってヤンデレみたいな発言しはじめた時は正直どうしようと思ったのですが、基本脳筋で正面からの力押しタイプで回りくどいことが苦手なレティシアに対してジルベールは喧嘩は強くないけど陰で暗躍して策謀を巡らせて最後は勝つ、頭脳タイプの最強であり、時にはレティシアをもってしても御しきれない人物であることに気がついてにっこりしました。これ共依存要素や重い境遇もさることながら、根本的には強い女×強い男のつよつよカップルじゃん!!大好きなやつだ!!そしてジルベールの方が語彙力が高くてわかりやすいのでひとりでヤンデレこじらせてるように見えますが、レティシアも同じくらい激重感情拗らせてる。激重感情の相思相愛でバランス取れてるの良いね。

ジルベールの何気ない一言に内心照れてるレティシアがいたり、男女逆転カップルのようでいて要所要所でレティシアがヒロインしてるのもとても可愛かったですね。「人形姫」と称される外見に惑わされず彼女の男前すぎる中身も愛してくれたジルベールが、その奥に隠されたレティシアの少女としての一面までガッツリ引き出して暴いてくれるの強かった。レティシアのキャラが強すぎるんだけど、それに飲まれすぎない形でジルベールもちゃんと強キャラなんですよね。

最強火力の美少女×最強頭脳の美青年、もはや敵なしの状態で国家を揺るがす謀略や自身を脅かす陰謀を暴いて蹂躙する!!というストーリーがどこまでも楽しかったです。

性転換した超イケメン(中身は女子)×全力女装の魔性の美女(中身は男子)の倒錯カップル最高

「反転の魔道具」によって変身したレティシア扮する正体不明の最強の傭兵『氷の竜帝』がとにかく絵に描いたようなスパダリ攻なので見た目だけだと銀髪スパダリ攻×黒髪儚げ受BLみたいなことになってるの最高に興奮する……とかいってたら、中盤からジルベールを女装させて氷の竜帝様と犯罪の証拠を掴むために人には言えないカップルたちの集いに潜入……みたいな展開になって手叩いて喜んだ。大好きなシチュなんですが!!魔道具のパワーと全力の化粧によって線の細いイケメンから一転して魔性の美女と化したジルベール最高かよ。女装させられていることに不満を感じつつノリと勢いで後戻りできないところまで来ちゃうし隙あらばイチャイチャする展開最高かよ見せつけてやるといいつつ互いの艶姿に嫉妬し合う展開までありがとうございますそういうのヘキです!!!!!

もうそれでさえ本編の女装潜入展開がヘキなのに、巻末に入っていたオマケマンガで更に大喜びしました……いや、ここまで全力でもりもりの性転換イケメン女子×女装男子を堪能した後に似合わない女装まで頂いちゃって良いんですか!?そのふたつは両立しないと思ってたのに両立した!!同じ顔なのにおまけマンガの方だとジルベールの女装が全然似合わないの興奮するんですけど!!!

とにかくヘキの全部盛りみたいな勢いの物語で楽しかったな〜!!1巻で綺麗に終わっていて満足度の高い物語ではあったのですが、タイトルのうしろに「1」と付いてるので2巻もあるのかな?と期待してしまう。いいんだよね!?ナンバリングしたからにはあるんだよなあ!?(これまで「1」と付いてたのに「2」が出ないまま終わった作品群にもだもだされ続けてきたラノベオタクの咆哮)

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声優ラジオのウラオモテ DJCD

 

声優からマネージャーまで、本編にはないウラ話を聴けるスピンオフ!
声優事務所のマネージャー、加賀崎りんごは思い出していた。自分がこの業界に入るきっかけになった大学の先輩のことを。「わたしでは、あの子たちを幸せにできない」と言って事務所から去って行った、優しすぎた先輩のことを……。 コ―コーセーラジオのやすみ誕生日回! 朝加の担当しているラジオで修羅場が巻き起こる! 乙女がライブ後に行う”堕落の会”とは……? 由美子や千佳といったメインキャラも、いままであまりスポットライトが当たってこなかったあのキャラも……。 TVアニメやコミカライズなどメディアミックス展開が目白押しな『声優ラジオのウラオモテ』、そのキャラクターたちのウラ話を描く、スピンオフ作品!

10月12日は声優・歌種やすみの誕生日!コーコーセーラジオでも彼女の誕生日回が放送されることに。それに合わせて由美子にプレゼントを送ろうと決意した千佳だったが、何をあげたら彼女が喜ぶのかわからず悩んでしまう。対して、3月15日は渡辺千佳の誕生日。誕生日に何が欲しいか直接聞いた由美子は、千佳からこっぴどく怒られてしまって……!?

一般声優ファン女性藤井杏奈ちゃんの短編定期的に摂取したい

主役ふたりの微笑ま可愛い相互誕プレ話から始まる、「声優ラジオのウラオモテ」シリーズの短編集。由美子のマネージャー・加賀崎りんごの過去と現在の物語を中心に、本編の裏話や幕間・サブキャラたちの意外な素顔を描くスピンオフとなっていました。

どの話も良かったけど、特に職業声優一般声優ファン女性藤井杏奈ちゃんもとい柚日咲めくる先輩関係の短編の安定感が凄まじい。本当に彼女の話って何やっても面白すぎるので今後も定期的に摂取したい。タイトル通りの内容の『めくる、佐藤家にお泊まりする』、出張で新幹線に乗ったら桜並木乙女と夕暮夕陽に左右を挟まれてしまう『柚日咲めくるのサンドイッチ』どっちもホントに最高でした。いやもうタイトルとあらすじで色々と察して欲しい。たいへんだ。

あとはやっぱり主役二人のドタバタ話は別の意味で安定感というか安心感がある。一番最初に入っていた誕生日プレゼントの話とか本当に可愛かったですね。興味がないといいながら必死にサプライズしようとがんばるけどな〜んか納得いかない千佳、良くも悪くも自然体すぎて千佳にキレ散らかされるけどなんだかんだで最後はしっかり完璧なプレゼントによって千佳のハートを掴んでいく由美子……良い意味でいつもの関係性が詰め込まれていて最高に可愛かったです。

加賀崎りんごの因縁話、今読むと色んな意味で沁みる……

とにかくどのお話も可愛くて面白かったのですが、一見繋がりのない短編集の物語達をまとめて読んでいくと加賀崎りんごと彼女が声優のマネージャーをやることになるきっかけを作った大学の先輩・南雲沙希の因縁の物語『加賀崎りんごのウラオモテ』に帰結していく構成が凄い良かった。明るく楽しい物語の裏でこっそりと進行する、南雲が立ち上げた声優事務所カラメル・プロモーションによる引き抜き騒動。かつて憧れた先輩の背中を忘れられずにいたりんごがその変貌に大きく心を揺らされながらも、由美子のために彼女の手を取らないという選択をする姿が印象的で。

加賀崎の視点から語られる声優・歌種やすみの過去と現在も凄く良かった。本編はデビュー三年目崖っぷち声優の状態から始まるのでわからなかった、デビュー直後の彼女が見せた不思議な魅力。担当声優に対してできる限り私情を挟まないようにしようとしていた加賀崎の心の障壁を打ち破り、なんとしてでも売ってやろうと入れ込んでしまったのに、事務所の意向や何やらもあってなかなか機会に恵まれなくて……もどかしい思いを隠して由美子に接する姿に胸が熱くなりました。いや、彼女が由美子のことを高く評価してくれているだろうことは知っていたけど、こんなにも推してもらえてたんだなあ。

南雲の立ち上げた事務所が作り上げる所属声優に優しくて温かい世界では多分ダメだった、これまでの様々な逆境がなければ「声優・歌種やすみ」は輝けなかった──結果論かもしれないけど絶対にそうだとおもうんですよ……。でも一方で本編最新刊(12巻)を先に読んだ身としては、「あの展開」を受けたりんごちゃんがなにを思ってたのかに思いを馳せてしまう……いやあの話の前にこの話やったのめちゃくちゃ人の心がないでしょ絶対りんごちゃんあの事件の時にこの件思い出しちゃうでしょ……。

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リスナーに騙されてダンジョンの最下層から脱出RTAすることになった2

恋狸
 

リスナーの一人に騙されて(自業自得)、 最下層に転移してしまった、新人ダンジョン配信者の世迷言葉。 中華鍋でスキーをしたりなど、 吹雪フィールドもエンジョイ(?)しつつ、 配信を続けながら、リスナー頼りで強くなっていく。 そしてついに、世迷言葉救出の名目で、 アレン・ラスター、ユミナ・ラステル、シエンナ・カトラルといった、 ランキング上位者たち(全員世迷リスナー)が動き出す。 かくして、救出という名の世迷言葉オフ会が始まる……!? コミカライズも好評連載中の、 ダンジョン最下層からの脱出RTAストーリー、待望の第二弾!

リスナーの冗談を真に受けて、ダンジョン探索初日にうっかり誰も足を踏み入れたことのない最下層に飛ばされてしまった世迷言葉。なんとか五百階層をクリアした彼は相変わらず面白半分でいまいちあてにならないリスナー達のコメントを頼りに上層に進んでいく。一方、一連の事件に責任を感じて言葉救出のために下層攻略を進める風間雪音は言葉リスナーとなって「オフ会をする」という名目で下層攻略に乗り出したトップランカー達と合流して……?

脳筋ゴリ押し感と狂気はそのままに、戦略性広がってきた

いや〜2巻も引き続き面白かった!1巻を読んでいた時に個人的に懸念していたのが基本戦略が脳筋ゴリ押しなので戦闘関係がワンパターンになるのではないかという部分だったのですが、絶妙に毎回違う流れで敵を倒していく展開になってて先が見えない。1巻のラストでゲットした四肢を犠牲にして超火力を出すスキル(犠牲になる四肢はランダム・一定時間回復不可)をはじめ、追加で取得するスキルが絶妙に無双にならない範囲で戦略性を広げてきて上手いな。いや、本当に言葉自体の戦闘能力が殆ど成長しなくて頭脳戦も出来ないこの物語で、リスナー達の酔狂と主人公の狂気だけでこんなにおもしろいの色々な意味でズルいな……!!

相変わらずの「一歩間違えれば死」のヒリつきはそのままにやれることが増えていったのが面白かったです。何より面白かったのが合縁奇縁によって可愛らしいウサギの見た目から進化してキモッキモの筋肉ウサギになってしまった「キモラビくん」とのアレコレ。色々とひどすぎる出会いから始まりこれは終盤で手酷い反撃を喰らうパターンか……!?と思いきやキモくなって戻って来るの死ぬほど笑ったし、なんだかんだ戦いの中で絆が芽生えていくアツい展開になるのズルかったし、オチがヒドすぎて笑ってしまった。容赦ねえな!!いやあの流れからアツい共闘展開になるのマジで先が読めないよ!!

一方、彼のリスナーである世界ランクの探索者たちが「オフ会」とかいいながら救出に向かい始めて……流石にひとりで500階層上がる必要なさそうなのは本当に良かったよね。というか1巻で1〜2階層しか登れてないのを考えるとどう考えても490とか480階くらいでランカー組と合流しそう。ランカー組、これやりながら結構ガッツリ言葉の配信にコメントも入れまくっているので余裕がすごかった。

どのくらいで合流できるのかまだまだ先が見えない感ですが、新しい仲間(笑)も得て色々な意味で先が見えない展開で、続きがますます楽しみになりました。

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