唐突に再開された神からの干渉。このままでは7ヶ月後を待たずに今すぐにでもシオンは『堕ちた黒い勇者』となり、世界は終焉を迎えてしまう。それを止めるためにライナの中の『悪魔』から提示されたのは、その場に居るシオン以外の「誰か」を犠牲にする4つの選択肢。どれも選べず苦悩するライナに、数多の「絶望の未来」が突きつけられる……。
前巻からの温度差が酷い!!!
レムルスが結界を張ってから──大伝12巻から15巻までの展開は本当に色々と不穏なフラグに怯えつつも神からの干渉から開放された彼等を見るのがめちゃくちゃ楽しかった。それだけに神からの干渉が再開……という展開だけでめちゃくちゃしんどいし、それ以上にライナが見せられた幾多の未来という名の地獄絵図がひたすらしんどい。一見幸せそうに見えた「全てを諦めてフェリスと幸せな家庭を築く未来」の絶望が一番深かったというライナの言葉が本当にしんどかったですね……そこに逃げることすら許されないのかと。ライナが家庭を築く未来の甘い絶望もなかなかのものでしたが、個人的には戦場で終わりのない戦いの中で生命を落とす世界の絶望もなかなか酷い。というかこの間に入るライナとシオンの挿絵、ぱっと見今巻の表紙と近い二人の顔が近いイラストで、表紙は二人が仲良く笑い合ってるのにこちらは絶望の中で死んでいくイラスト……ってなってるのがめちゃくちゃしんどいんですよ……いや意図してこうなってるのかは知らないんですけどどうしてもこのイラストを見た時表紙を連想してしまったので……。
血を吐くように絶望しながら選んだ(選ばれた)のは、犠牲をもって力を得て、シオンのなかの勇者を……神からの干渉を再び止める選択。なんかほんとう、前巻って奇跡のような一瞬だったんだなあと。いやでも本当に、人間らしい顔をしてライナ達のわちゃわちゃに加わってくるこの人の姿をもっと見ていたかったなあ……。
なにかを「選ぶ」ということは
なんとか再び7ヶ月の猶予期間を確保することはできたものの、今回の一件で改めて世界に残された時間の短さに気づいてしまったライナ達。同じ頃、エルトリアとガスタークの戦いに巻き込まれて意識不明になっていたカルネが意識を回復する。戦争だから、釣り合わないから、自分の背負った宿命……色々な理由をつけて自分の気持ちに素直に慣れなかった男子達が次々と自分の気持を伝えることを決意していくのが印象的でした。返事そのものは描かれないけど、随所でカップルが出来ていっているであろう展開は想像すると正直楽しい。(いやノアとエスリナが二人からの告白を拒むわけ無いじゃん!?という強い気持ち)(なんだかんだでこのあとクラウとカルネが言いそこねる展開はありうる)そんな中でライナも、自分の中の気持ちに決着をつけることを決める。自分が好きなのは誰なのか……誰を失ったら耐えられないのか。前巻のハーレムラブコメ展開が本当に楽しかったので残念ではあるんだけど、ずっとずっと誰かを「選ぶ」ことから逃げ続けて両手では抱えきれないほどの仲間たちを手放せずにいたライナがフェリスとシオンのたったふたりを「選ぶ」展開、ものすごくよかった。たとえそれが、彼を想う誰かの気持ちを拒む結果になるのだとしても。
ラストの挿絵が良い仕事してる〜〜〜と言うか今回は今まで以上に挿絵が最高の高でした……絶望も希望もここにある……。