ページ 2 | 今日もだらだら、読書日記。

魔王の右腕になったので原作改悪します 2

木村
 

魔王さんが幸せになるエンドしか認めません!トールは運命を変えられるか?
異世界に転移し漫画の最推しキャラ《魔王》の右腕になった元社畜OLのトール。原作通りだと大好きな魔王さんは破滅エンドを迎える運命。物語の内容を改悪してでも、彼を幸せにしたいと奔走するが──。「俺様が死んだ後もお前には笑っていてほしい」トールの思いもむなしく、魔王は自らの役目を果たすため彼女の前から姿を消してしまい……!?

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生を諦め死ぬために生きる魔王と、何が何でも魔王に死んでほしくないヒロインのやりとりがどこまでも平行線をたどるのでしんどい前半から、そんなゴチャゴチャは全部蹴っ飛ばし力技に力技を重ねて強引にハッピーエンドに突撃していく主人公の活躍が凄いクライマックスが最高に楽しかった!最後まで謎のままの伏線があったのがちょっと残念だけど、続きはWebでか〜…。

魔王とトールのすれ違いがしんどい

世界に溢れる魔力を吸収し、いずれ死ぬことで世界を保ってきた魔王。肉体の異形化が進み、着々と自らの「死」に向かい準備を重ねていく魔王だが、トールはその死を止めようとして……。

あいも変わらず「推し」の魔王さんに始終ときめいているトールとそんな彼女にタジタジな魔王のやりとりが可愛いんだけど、その一方で死を覚悟した魔王と、原作を改悪してでも魔王の死を阻止したいトールのエゴのおしつけあいが続く前半が正直しんどい。魔王も自分が死ぬことで世界を安定させることしか考えていないけど、トールも「あなたが望むことならなんでも〜」と言いながら、自分の望むことしかしようとしないんですよね。会話してても「対話」は出来てない言葉の押収が、辛かった。

その一方で「魔王さんマジ天使」などと言いながらも、トールの中では「二次元の最愛の推しキャラ・魔王さん」ではなくて自分のすべてを捧げても惜しくはない人として「現実の魔王」さんの比重が大きくなっていくのが印象的でした。「これが二次元であったなら魔王さんが死んでしまうストーリーごと愛してみせる」という彼女の言葉は同じオタクとしてめちゃくちゃ尊いと思うし、でも目の前で死のうとしている彼は、自分に手を差し伸べてくれたその手は現実のもので、だからこそ手を差し伸ばしたい、絶対に救いたいと思う彼女の痛烈な思いに胸を打たれました。

力技に力技を重ねてたどり着く超超ハッピーエンドが良かった!

トールの記憶を消し、勇者に手を汚させないため自ら処刑される道を選ぼうとする魔王。力押しでトールとのやりとりを打ち切った彼に対して、トールが自らの記憶の欠落に苦しみながらも力技で魔王の命を「獲り」にいく終盤の展開が熱かった!

そもそも、勇者も悪い魔法使いも国王すら誰もこの優しい魔王が死ぬことなんて望んでなかったんですよね。そんな中で、彼らが直面した理不尽な運命を魔力のない世界からやってきたトールが科学と魔力の力技で強引に突破していくのが最高にズルい。魔王よりもよほど「魔王」らしい大活躍に震えてしまうし、色々と面倒くさい事言ってる魔王さんを力技で黙らせた主人公がラストのハッピーマリッジエンドに向かって物語を強引にイナズマシュートする展開が最高に好き。

トールの力技ぶりも最高に楽しいですが、終盤は本当に勇者さんのナイスアシスト力というかハッピーエンドクリエイターぶりが輝いてましたね。記憶を失っていたトールを無理やり表舞台に引きずり出したのも彼だし、色々しがらみに囚われている大人たちの気恥ずかしさをも最後に取り払ってくれる、あまりにも純粋なヒーローである彼の視点が眩しくなってしまう。

未消化の伏線が残ってるのがちょっと残念…(続きはWebで)

ちょっと終盤しんどい部分や設定が混雑している印象はあったんですけど、個人的にはこの超ハッピーなエンドとその後のいちゃいちゃ短編が読めただけで満足という部分あります。いや本当に満足度の高いエンディングだったと思うんですよこれ…色々問題が解決して、これまで通りに「天使かな?」ってやってるトールと、そこに「魔王だが」ではなくて「お前の夫だが?」って返しちゃう魔王さんにニヤニヤが止まらなかったです。

トールの異世界転移前の人間関係、「先生」と「兄」そして実崎の関係性がモヤッとしたままだったのは残念なんですが続きはWebで!とのことなので、そちらで続きが読めるのを楽しみにしていたいと思います。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編3

 

大人気学園黙示録が2年生編に突入! 第3弾!
常夏の無人島を舞台に、全学年で得点を競い合うサバイバル試験がついに開始された。得点を得る方法は2つ。毎日一定時間ごとに指示される指定エリアを訪れることと、無人島内に設置された課題を条件通りにこなすこと。グループ人数が多いほど有利かつ、退学の可能性も減る試験内容。2週間という長丁場かつ、水や食料の補給も考える必要のある過酷な試験。さらに月城理事長代理は学生同士の小競り合いを試験中は容認するらしい。そんな中単独行動で状況を窺う綾小路だが、1年Dクラスの七瀬翼が同行を申し出る。メリットのない奇怪な行動だが七瀬の出方を知るため綾小路はそれを受諾。2人組での無人島走破が始まる!

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下位チームには「退学」が言い渡される、人死にはないけどこの物語においての生死が掛かった生存戦争が熱かった!敵同士でありながら奇妙な連帯感で結ばれていく綾小路と七瀬の関係がめちゃくちゃ面白いんだけど、肝心の謎はさらに混迷の様相を見せてきて一刻も早く次巻が読みたい。ところでピンナップに全エリアが記載された無人島の地図ついてて「バトルロワイヤル」を思い出したアラフォーは挙手してほしいです。

再びの無人島を舞台に全校生徒が繰り広げる「生存戦争」

いよいよはじまった無人島でのサバイバル特別試験。正体のわからないホワイトルーム生を警戒する部分もあり、グループを組まずに個人での高得点を目指す綾小路。一日四回指定される指定ポイントへの移動ミッションをこなしながら、周辺で出題される「課題」に挑戦していくが、思わぬところで苦戦を強いられて…!?

綾小路が単独で試験に挑む、という展開からして初っ端からめちゃくちゃ人間捨てたムーブが見られるのでは!?と密かに期待していたのですが、試験の序盤はどうしても数の暴力には勝てなかったり、予想外の課題に直面したりと珍しく綾小路が苦戦している姿が見られるのが面白かったです。何よりアニメクイズで苦戦する綾小路が面白すぎる。確かにそういうの苦手だろうなっていうの解りますけどここまでポンコツになってる綾小路の姿を見れるのってこのシリーズでも金輪際ないのでは!?クイズ聞いて完全に思考停止してるの爆笑してしまった。

課題への挑戦権が早いもの勝ちだったりあらゆる方向の知識が試される内容になっているのは実にこの学校らしい展開だなあと思うし、綾小路のような単体ハイスペック人間が無双しづらい構造になっている試験が凄く考えられてるなあ。いやそれでも単体で無双してる高円寺は一体何者なんだって話なんですが。というか今回改めて高円寺の本気が描写されたわけなんですけど、普通にこいつ性能的には綾小路の上位互換では…!?七瀬が付いてきてなかったら綾小路ももうすこし良い勝負をしたと思うけど、高円寺の点数に迫れたとはちょっと思えないし、なにより直接対決で普通に負けてるんですよね今回。綾小路が(自らがホワイトルームで磨いてきたであろう分野において)負けるのって初めてじゃない!?いや綾小路のことなので普通に実は手加減してたとか言い出しそうですけど!!

何者かが故意に起こした事故で生徒がリタイアという展開があったりして不穏な空気が立ち込めてはいるのですけど、これまでずっと匂わされていた池と篠原の恋愛事情に踏み込んだり、軽井沢との短いけれども甘〜いやりとりがあったりで高校生男女の甘酸っぱい展開が多いのも実に夏休みの無人島という感じで楽しかったです。素直になれない池が初対面の七瀬に叱咤され、須藤をはじめとした友人たちに支えられながらも不器用ながらも一人前の「男」になろうとする展開が大変アツいし、友達の気配りも出来るようになってきた須藤がいい男過ぎて惚れる。あと、物凄い軽いノリで唇を奪っていく綾小路マジで悪い男だなとおもうんですけどそれはそれとして軽井沢さんと綾小路の挿絵何この……何!?こんな柔らかい表情した綾小路見たことない!!!!!

綾小路と七瀬、敵同士のふたりに生まれた奇妙な関係性が面白い

綾小路と行動を共にすることになった七瀬が、敵意を抱きつつも綾小路の才能に触れるたびに「やはり先輩はすごい」と敬意を表し、一方で「足手まといになるのは悔しい」と対抗心を燃やし、負けるまいと足掻いていく姿が印象的でした。宝泉寺と組んで綾小路を退学に追いやろうと暗躍したこともありましたが、本来の彼女はどこまでも真正面から綾小路を排斥することを望んでいるんですよね。一方、そんな彼女をぶっちゃけ足手まといに思いながらも切り捨てようとはしない綾小路どうしたの……優しいじゃん………どんな企みが!?(蘇る一年生編3巻のアレ)

綾小路清隆という存在によって人生を歪ませられた七瀬翼。彼女がずっと持ち続けてきた鬱憤と愛憎を綾小路が真正面から受け止めるクライマックスがマジ熱いしかっこいんですけど、その受け止め方がスペック高すぎて正直ジワジワ来る。いやもう今回もイヤになるくらいハイスペックでしたねこの男は!!アニメクイズはポンコツだったけどな!!

ますます混迷を深める「ホワイトルーム生」探し

一方、肝心のホワイトルーム生探しについて結局この巻では七瀬の正体くらいしか進展がなくてむしろ更に混迷としてきた印象すらある。個人的にあやしいなあと思っていたのは椿で実際に一年生グループを率いているのは椿っぽいけど、他の奴らも胡散臭すぎるんだよなあ。ホワイトルーム生とは違う気がするんだけど八神が俄然キナ臭く思えてきたし、天沢の不気味な言動もヤバかったし、今回一切姿が見えなかった宝泉の動向も気になる。一年生の動向と、ここのところほとんど動きをみせなかった櫛田の動きが繋がるみたいなのは楽しかったけど、一年生編である意味ずっと不気味な裏ボスでありつづけていた彼女が完全に噛ませ犬になってるのインフレ感あるなあ。これ一周回って共通の敵が出てきてヒロイン返り咲きみたいな展開あるんでしょうか。

全く試験中の動向が伺えなかった堀北、いろいろな意味で危険が危ない一之瀬、不気味な伏線だけ貼っていった南雲会長などまだまだ明かされてないエピソードが多すぎて、多分この話一冊で終わらないだろうな〜とはおもってたけどやっぱり次巻に進むだった!!早く続きが読みたい……!!

それにしても龍園と葛城の息が合いすぎてて石崎の心配をしてしまう。なんなんですか…利害関係の一致からうまれたビジネス主従は…完璧すぎる……薄い本出ちゃう……。

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すべては装丁内

 

本の装丁の奥深い世界を、現役の作家兼装丁デザイナーが描く! 
「何なの、あのドSデザイナー!」 学央館書房の新人編集者・甲府可能子は憤っていた。 編集長から紹介を受けた装丁デザイナー、烏口曲に企画していた詩集の装丁を即刻で「やらない」と断られたからだ。 曰く、可能子の装丁に対する考えの甘さが原因らしいが……実はこの烏口、理路整然に上から目線で仕事を選ぶ、業界内でも有名なドS&偏屈男だった! 果たして可能子は無事装丁の依頼を引き受けてもらい、本を刊行できるのか? 装丁の奥深い世界、そして今を働くすべての人に勇気をお届けする、お仕事エンターテイメント!

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現役の装丁デザイナーが描く、編集者の主人公と装丁デザイナーが繰り広げるお仕事モノ。1冊の本が生まれるまでのお話としてもすごく面白かったし、真面目なヒロインと変わり者で頑固な男のケンカップルラブコメとしてもとても楽しかったです。明らかに続きがありそうなお話だったので続きが読みたい…おのれLINE文庫。

お仕事モノとしても、ラブコメとしても楽しい

実績を出せずに燻っていた新人編集・可能子が掴んだ、詩集の書籍化の仕事。挿画家の注文が厳しくて装丁デザイナーがなかなか見つけられず、編集長から烏口曲という男性デザイナーを紹介してもらうのだが、あっさりと断られてしまい…。

一冊の本が出来るまでの物語としても面白かったんだけど、お仕事ラブコメ(?)としても面白かった!生真面目で情熱が空回りしがちな未熟者の編集者の主人公・可能子が偏屈で頑固で自分の仕事に誇りと自信を持っている装丁デザイナー・烏口にある時は振り回され、ある時は彼の姿勢から何かを学びとっていく姿が最高に楽しい。

二人を囲む周囲の人々も良いキャラだった。烏口のアシスタントをしているケイさんも好きですが、興味がなさそうに見えてなにげに後輩が可愛くてしかたがない熱盛先輩好きだなあ。

デザイナーと編集者、ふたりの仕事への「こだわり」

この話の肝はやはり、現役デザイナーが自ら描く「装丁デザイン仕事のお話」。ロゴデザインなんかは割と最近「中の人」が見えるようになってきた感じがありますけど、それだけでは伝わらない奥深いお仕事なんだなあと読みながら改めて。

見栄えを整えるだけではなく、著者の意図を感じ取ってそれに合わせたデザインをする。そのためには本の中身を読むだけでなくて時には著者の故郷に行ったり、バックグラウンドを探ったり…普通の仕事ではなかなか出来ない贅沢な仕事ぶりだとは思うのですけど、たっぷりと時間を掛けたプロのこだわりを肌で感じることが出来るお話でした。そして少しずつ出来上がっていく本の姿にワクワクしてしまう。

そして同時にこの本は、新人編集者の主人公の視点から描かれる「一冊の本が出来るまで」のお話でもある。それぞれに無茶ぶりをする作者や挿画家やデザイナーに振り回される編集者の主人公が四苦八苦しながらも彼ら全員が納得できる本を作るべく、時には会社の事情に立ち向かいながら奮闘する姿が熱かったです。

憧れの編集者になってすぐに花形の第一編集部から変わり者ばかりの「第0編集部」へと回された可能子。自らが編集者を目指した原点に近いこの本を最高の形で世間に送り出したい、と思う反面で鳴かず飛ばずの現状を変えたいと手柄を焦り、時には楽な道で妥協しそうになったり、上司の脅しに屈しそうになってしまう。そんな彼女が烏口に振り回されながらも彼の仕事に対する姿勢に触れ、少しずつ自分の仕事に対する情熱とその初期衝動を取り戻していく姿が印象的でした。

最後に色々ぶちこんできた!!

無事に本が出版されて、めでたしめでたし…と思ったら最後の最後で烏口の過去がチラ見せされたり、可能子との関係性に意味ありげな伏線が撒かれ始めたんですけどーー!?

いやもうほんとうに1巻で綺麗にまとまってるお話…と思っていたら、最後の最後で思い切り続くよって感じの展開になって驚いた。完全にコレ続編前提じゃないですかやだ〜!!続きが読みたい!!

…LINE文庫なんですよねえこれ。本が無くなる前に新刊で確保出来て本当に良かったんですけど続きは難しいのか。電子書籍は版元を変えて?出し直すと聞いたので一緒に続編も出ると良いのですが。

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女王の化粧師2

 

「わたしには、あんたの化粧が必要なの」――時代に翻弄された女王候補と化粧師の物語、続編登場!!
化粧道具を壊した主君マリアージュに怒りをぶつけてしまったダイ。 使用人たちからは非難を浴び、辞めさせられると不安を抱くなか、当主代行のヒースに化粧道具の調達に連れ出される。 花街時代の友人との再会やヒースによる励まし、鮮烈な魔術師との出逢いを経て、ダイは改めてマリアージュと向き合うことに。 しかし彼女からは、完璧に拒絶される一方で!?

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良くも悪くも1巻からの続きのお話で、2巻一気読みできて良かった…。それにしても社交デビューの話がほんとに…恋愛要素薄めのお仕事モノだと思っていたのにこんなことになるとは!!

逆境の中、お嬢様と共にダイも成長していく第2巻

癇癪を起こしたマリアージュに大事な化粧道具を壊されて激昂したダイは、これまで使用人達が隠していたお屋敷の窮状を彼女に暴露した上、「自分がどんな女王になりたいのか解らないなら、自分が化粧を施すことはできない」とまで豪語してしまう。それ以来、マリアージュは自室に引きこもるようになってしまう──。

第1巻はダイの鮮やかな化粧の腕の披露に加えて癇癪持ちのマリアージュお嬢様との激突が描かれましたが、第2巻はダイ自身の出自が掘り下げられて、そんなダイの弱い所、マリアージュと共に成長していく姿が描かれていくのが印象的でした。ダイが化粧師だけでなく使用人として積極的に動いていくところは1巻の見どころでもあるんだけど、他所からやってきた新参者のダイがそれをするのが越権行為として映るのはある意味当然のことではあるんですよね。それが、マリアージュの成長に必要なことだったとしても。

お屋敷の中で居場所をなくし、庇ってくれたティティアンナの立場まで危なくして、過去のトラウマも合わさって徐々に自信を失っていくダイ。その過程でヒースの新たな一面が見えたり、新しい出会いがあったりはするものの、なかなかもどかしい展開が続きます。でも、長い沈黙を経てやっとダイの言葉に応えてくれたマリアージュお嬢様の、なんと心強いことか。もともと冷静でありさえすれば状況を正しく判断できる技量の持ち主であるマリアージュ。思えばどんなにぶつかりあったとしても、最初に化粧を施されて以降の彼女はダイに「出て行け」とは言ってなかった気がします。たぶん、自分にとっていかにダイが必要であるか、それを誰よりも感じていたのは彼女なんだよなあ。

世間知らずではあるけど貴族社会のならわしには強く人の心の機微に敏感なマリアージュと貴族社会には疎いが世間の機微をよく知っていて直情的なダイ、良い意味で互いの持っていない部分を補い合える関係のふたりが「どんな女王になりたいか、一緒に考えていこう」と手を取り合う姿に胸が熱くなりました。

なにげに、ダイの持つ化粧用品の秘密や魔法使いの登場など、世界観に切り込むお話が多かったのも楽しかったです。華やかな魔法の世界ではないけれど、水道やお屋敷の整備などちょっとしたインフラを魔法が支えているという設定が凄く面白いですね。

恋愛要素低めの“お仕事”モノ──と思いきや

マリアージュお嬢様との確執、お屋敷内での問題もほとんど解決したところでやってきたダイの社交デビュー。ダイの出自に複雑ななにかがあるのは1巻からずっと匂わされ続けてきましたが、その一端が遂に明かされます。というかそういうことだったんですか!!!確かにこう、改めて読むと色々と伏線が貼られ続けてたなという感じではあるんですけど!!!いやもうほんと細かい名言は避けますが、いやほんといつもの倍以上に語彙がないなこの文章!!

西洋風ファンタジー世界を舞台にした硬いお仕事モノだとおもって読んでいたのに、この社交デビューのお話はずるいですよ!!一気に匂わされてきた恋愛要素というか男と女の色事にニヤニヤが止まらない。いやこれはいろいろな意味でネタバレ無しで読んでほしい感じはあるんですけど…直接的なことはなにもしてない(?)のに、そこはかとなく溢れ出るエロスにニヤニヤしてしまう。特に手を重ねる場面と名前を呼ぶ場面、えっちでは!?

物語としてはまだ序章の序章でしかない

お話としては1巻2巻合わせて綺麗に終わってるのだけど、よく考えたらまだマリアージュは女王候補として漸くスタート地点にたったようなものだし、恋愛要素もまだこれから……という感じで、壮大な序章でしかない感。マリアージュのライバル・アリュシエルが誰と喋っていたのかも気になるし……というか「小説家になろう」版ではまだこの辺だと序章が終わってさえもいないと聞いたんですけど!?

1巻だけだとそこはかとないフラストレーションが解消されないまま終わってしまう感じが強かったので、2巻が電子限定ででも出てくれたのは本当に良かったなあ思う。原作なろうなので続きを読もうとすれば読める環境ではあるんですが、なんとか頑張って3巻も出てくれるといいなあ。隙あらば2巻の紙書籍も是非……。

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女王の化粧師

 

あなたの化粧には力がある――。時代に翻弄された女王候補と化粧師の物語!
五人の候補者が次期女王の座を競う小国デルリゲイリア。 ある日、花街の化粧師であるダイの下に、女王候補の遣いと称する男ヒースが現れる。 ダイの腕を見込んだ男は、専属の職人にとダイを誘うが、主となる娘は“最も玉座から遠い”と言われていて!? 「わたしにできることはただひとつ。あなたを、あなたが望むように美しくするだけ」 WEBで大反響! グランドロマン開幕!!

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1巻だけぱっと読むつもりで一気に2巻まで読んでしまった…化粧を駆使して人々に力を与えていくダイの姿にワクワクするし、ファンタジーお仕事モノとしてめちゃくちゃ楽しい。そして、恋がはじまりそうな2巻ラストにわくわくしました。ビーズログ文庫なんとか頑張って3巻も出してくれーー!!

“化粧”が、女を強くする

花街で芸妓達に化粧を施す仕事をしていたダイは、花街に訪れた青年貴族・ヒースに才能を見いだされて女王候補のひとり・マリアージュお嬢様のお抱え職人として王都に迎えられることになった。女王候補になったものの自分に自信が持てないお嬢様に化粧の力で自信を与えてほしい──と依頼されたダイだが、貴族社会において化粧は「血筋の悪い証」として忌憚されており……。

とにかく最初に芸妓達に化粧を施していくダイの姿が鮮やかで、その姿が胸に焼き付けられる。芸妓たちの服装やコンディション、客の好みetc…と、様々な状況を踏まえて一番似合う化粧を施していく姿が、様々な色を重ねて自然な「肌色」を演出していく手付きがまるで魔法のよう。ある時は彼女達の背中を押し、自信をもたせ、またある時は、傷ついた彼女達の心と身体の傷を隠し、力を与え、奪われた誇りを取り戻させる。序盤を読むだけで「化粧なんて白粉を叩いて口紅を塗るだけのもの」などというヒースの言葉がいかに浅い認識であるかが伝わってきます。いや私も似たような認識だったんでアレなんですけど……化粧ってスゴイね…。

“化粧”だけでは変えられない展開がもどかしい

そんなダイが仕えることになった女王候補のひとり・マリアージュお嬢様は自分に自信がないだけでなく、とんでもない世間知らずで癇癪持ち。精神的にも不安定なばかりか貴族であるがゆえに化粧への偏見を持つ彼女に“化粧師”としてだけではなく、ひとりの従者として真正面から向き合っていこうとするダイの姿に胸が暖かくなりました。

そして徐々に、マリアージュひとりだけではなくお屋敷そのものの歪みも見えてくる。家の中に大きな問題を抱えながらそれを知らされもせず、いずれ人の上に立つ身でありながらろくに世間も知らぬまま育てられてしまったマリアージュ。よそものでありながら当主代行を務めるヒースを良く思わない反面、依存せざるをえない従者達。狭い世界だからこそ見えづらくなっている部分が外から来たダイだからこそ見えてしまうんだけど、ダイも一介の使用人でしか無い訳で。序盤を読んで感じた「化粧」への万能感とは打って変わって、少しずつ良くなっていく部分はあれど“化粧”をするだけではどうにもならないと思わせてくる展開が印象的でした。

ラストすごいところで切れた!!

気難しいところもありながらも少しずつダイに気を許していったマリアージュだが、ある日、これまでにない大きな癇癪を起こしてしまい──いろいろなところで気になりすぎるところで終わるラストと言うか本当に2巻までで一気読みしてほしい内容で、ほんとどうしてこれ1冊にまとめてくれなかったんだという気持ちが凄い。いや、ビーズログ文庫の1巻的に分厚すぎることになってしまうのは解るのですが…せめて2巻連続刊行とか駄目だったんですかね!!

話が綺麗に2巻までで一区切りという感じだったので感想まとめようかと思ったのですが、それはそれで上手く感想がまとまらなかったので素直に1巻分で一度切ります。いやでもほんと今から読む人は2巻まで一気読みしような。

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悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。

 

ケジメを付けろ!? 型破り悪役令嬢の破滅フラグ粉砕ストーリー、開幕!
「聞こえませんでした? 指を落とせと言ったんです」 その日、『悪役令嬢』のキリハレーネは婚約者の王子に断罪されるはずだった。しかし、意外な返答で事態は予測不可能な方向へ。少女の身体にはヤクザの女組長である霧羽が転生してしまっていたのだった。お約束には従わず、曲がったことを許さない。ヤクザ令嬢キリハが破滅フラグを粉砕する爽快ストーリー、ここに開幕!

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悪役令嬢に転生したヤクザの女組長が、破滅直前からはじまった状況を極道で培った知識と行動力とカリスマで次々とひっくり返していく痛快コメディ。とにかく任侠気溢れるキリハのキャラが最高に魅力的で、そんな彼女の破天荒な行動に振り回される登場人物たちが次々と彼女に惹かれていく裏で執事にして世界の管理者・ジェラルドが頭を抱えてる様子がとにかく楽しかった!

極道の女(ルビ:あくやくれいじょう)が乙女ゲー世界をぶった斬る

自分を狙う刺客の手から無関係な少女を守り、生命を落とした女組長・和泉霧羽。気がつくと乙女ゲームの悪役令嬢・キリハレーネに転生し“断罪イベント”に直面した彼女は、婚約破棄を申し入れてきたアルフレッド王子にこう告げるのであった──「ケジメをつけてもらおうと思いまして」

第一話から悪役令嬢からケジメとして指を請求される乙女ゲーの王子、というトンデモない展開にニヤリとして「カクヨム」で追いかけていた作品。ヤクザと悪役令嬢モノ??と最初は首を捻ったものですが、読み進めてみると現代日本に生きながらも生きるか死ぬかの生活をしていて、ちょっぴりダーティな手段も自然に考えられて、経営手腕まで持っていて違和感のない「元女組長」という職業は普通にアリよりのアリなのでは?この手のチートもの、現代日本で平凡な生活を送っていた主人公がどうしてそんな知識や行動力を…?みたいな作品が一定数あるので、そのあたりに説得力をもたせられるのは強いよなあ。

そしてそんな元・極道の女が前世で培ってきた高い判断力・カリスマで難局を切り開いていく姿がとにかく面白い!世間の常識が通用せず、自分のものさしでしか動かないけど、彼女の前でひとたび筋を通せばこの上もなく心強い味方になってくれる、気っ風が良くて裏表がないキリハのキャラクターがどこまでも魅力的で、読んでいて楽しかったです。

彼女を取り巻くキャラクターたちとの掛け合いが楽しい

元組長だった前世とおなじように、少しずつキリハの周りに頼れる仲間・友人達が集っていく姿が印象的でした。特に最初はキリハのことを下に見ていたライバル令嬢達がキリハの人となりに触れ、損得感情を抜きにして彼女を慕うようになる様子がすごく良かった。彼女たちの婚約を破棄する際のやり取りがまた痛快だし、最初は模範的な令嬢として振る舞っていた三人が徐々に本来の強かな女の顔を見せていくのも良い。

何より、キリハを乙女ゲームの世界に転生させた元凶、この世界の神的な存在でありキリハの執事を務める青年・ジェラルドが良いツッコミとして作用してましたよね。平穏に世界を運営するために毒の少なさそうな乙女ゲームの世界を選んだのにキリハの極道魂によって思惑とは違った血なまぐさい展開が連続して悲鳴をあげたり、彼女の活躍によってそこに生きる登場人物たちの知らなかった一面が明らかになって悲鳴をあげたり。事情を知っているからこそのキリハとの遠慮のないやり取りも好き。

ゲームヒロインも一筋縄ではいきません

いろいろな意味でキリハの痛快な快進撃が綴られていく本作ですが、その一方でライバルである乙女ゲームのメインヒロイン・ユリアナもただ一方的にやられるだけの存在ではなかった。前世の趣味はサークルクラッシュ、乙女ゲームはオタサーに潜入した際に知ってハマった口という筋金入りの悪女で、キリハが転生してくる以前の段階で乙女ゲームの攻略対象である男性キャラクター達は彼女の手によって全員骨抜きにされており、逆ハーレムが形成されている。

今回はキリハの快進撃に対して物事がうまく行かずに臍を噛むユリアナの様子ばかりが描かれましたが、ゲーム知識を持つ彼女が本気を出せばキリハとも良い勝負ができそう。自分以外の人間をヒトとも思わない、美しい自分を飾る装飾品であれば良いという彼女の思想はキリハと対極的で、いつか直接激突するのは間違いないと思うんだけど。今回は良くも悪くも他に敵がいないと油断していた所から突然出てきたキリハにいいところをかっさらわれた感があったので、本格的に対決するなら次巻かな。

恋愛要素もなくただカッコイイ女性が自分が信じた仁義を通すために奔走する、青年マンガ文法の悪役令嬢モノという感じでとても楽しかった!恋愛要素は正直この手の作品には求めてないけどキリハのような強い女に釣り合うような男性が出てくるなら是非読んでみたいですね…ハードルが高そうだけどなそれ…。

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魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜

 

偽りの魔王から世界を解き放つ--。「小説家になろう」の大人気作登場! 二千年の時を経て蘇った暴虐の魔王――だが、 魔王候補を育てる学院の適性――《不適合》!?
人を、精霊を、神々すらも滅ぼしながら、延々と続く闘争に飽き、平和な世の中を夢見て転生した暴虐の魔王アノス。しかし二千年後、転生した彼を待っていたのは平和に慣れて弱くなりすぎた子孫たちと、衰退を極めた魔法の数々だった。 魔王の生まれ変わりと目される者を集めた“魔王学院”に入学したアノスだが、学院は彼の力を見抜けず不適合者の烙印を押す始末。誰からも格下と侮られる中、ただひとり親身になってくれる少女ミーシャを配下に加え、不適合者(魔王)が魔族のヒエラルキーを駆け上がる!! 「小説家になろう」にて一年足らずで脅威の37,000,000PVを叩き出した話題作が登場!

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前から気になってる一冊だったんですがアニメ化を機に手に取りました。凄い綺麗にまとまっててしかも2巻が読みたいと思わせてくるシリーズ第一巻ですごくよかった。暴君のように見えて、どこかマイペースで仲間想い・家族思いな内面が見えてくるアノスのキャラ、好きだな〜。

2000年後に転生した魔王が繰り広げる人情味あふれる俺TUEEもの

戦いばかりの毎日を憂いて二千年後に転生した魔王アノス。ところが、二千年後の世界で魔法は大きく衰退し、実力よりも血統が尊ばれ、極めつけに「魔王」の名は別人のものにすげ替えられてしまっていた。魔王の生まれ変わりと目される魔族達を集めた学院に招かれたものの、アノスはただひとり「不適合者」の烙印を押され、学園の中で疎んじられる存在となってしまう。

圧倒的な力を持つ二千年前の魔王(の転生体)が、不適合者の烙印を押されながらも魔族たちの集まる学院の中で無双するお話。生まれた途端に自分で魔法を使って成長してしまったり、入学試験で対戦相手になった魔族をゾンビ化して兄弟で殺し合わせたり…と、“強い”展開の目白押しで俺様魔王の理不尽俺TUEEか!?と思ったのですが、読み進めてみるとどこかマイペースで情に厚い魔王アノスの行動倫理、本当の人物像が見えてくるのが印象的でした。

自分が舞台から消えることで人間と魔族の戦いを収めようとした魔王アノス。これに限らず暴虐の魔王という暴力的な二つ名に似合わず、かなり理性的に「魔族達の王」をしていたことが感じられるんだけど、その一方で「寝ぼけて都市を消し飛ばした話」を筆頭に魔王時代のエピソードの数々が一定確率で残念というか物凄く等身大の人間像らしさを感じて親しみが湧くというかいやウッカリで消し飛ばされた都市マジで笑えねえだろというか…。自分の後釜に遺した魔族達も名前付けないで放置したとか割と手口が雑じゃない?大丈夫??

あと「逆らうやつは皆殺し」「3秒以内に蘇生させれば大丈夫の3秒ルール」などの一連の魔王ジョークは前世でもジョークとして受け取られてない気がするんですけどこの人ひょっとして説明が下手で一部の部下に真意を理解されなくていらん恨みを買うタイプでは!?

ヒロインが主人公に惚れるのに説得力があるラノベは良作

入学試験で意気投合し、アノスが学園内で浮いた立ち位置になっても変わらず仲良くしてくれるミーシャ。そしてミーシャのことを「人形」と呼び何かと敵意を向けてくる、ミーシャの姉・サーシャ。物語のヒロインであるふたりがアノスに救われるまでの経緯がものすごく丁寧に描かれていて、そりゃふたりともアノスに惚れるよなって思えるのがとても良かったです。避けることの出来ない過酷な運命を背負ったふたりを救うため、アノスが奮闘するクライマックスの展開は本当に胸熱だし、出会っていくらも経たないふたりにそこまでアノスが親身になってあげられるのは彼自身が物凄く「家族の絆」を大切にしているからだとおもうんですよね。子供は親に愛情を注がれて育ってほしい、兄弟姉妹には強い絆があってほしい──という願いのような信念のようなものが彼の根底にあって、それを疎かにする者は許せないし、その絆が理不尽にも壊されようとしているなら手を差し伸べよう、みたいな。

というか、頻繁に挿入される実家でのアノスの様子がほんとに微笑ましい。魔王然として年相応以上の立ち振る舞いすら見せるアノスが実家では「まだ生まれて1ヶ月の可愛い坊や」として扱われているのが、正直かなり面白いんですけど、そんな両親をうっとおしく思うどころかミーシャやサーシャと仲良くなればいそいそと実家に呼んで母に手料理を振る舞わせるアノス、めっちゃ両親のこと好きだよね。最初に一人で学院にいこうとしたのも両親を気遣ってのことのようだし、息子のためであれば人間の世界から魔族の国まで付いてきてくれる両親も相当な親ばかだけどアノスくんも両親大好きすぎじゃない????(2回目)

学園内でのカーストやらなにやら割とシビアな展開も多かった中、ひたすら実家パートが癒やしでした。

きれいにまとまってる上に次巻への引きも忘れないシリーズ第一巻

ミーシャとサーシャの姉妹の問題を解決し、タイトルである「魔王学院の不適合者」という言葉への伏線まで最後の最後でしっかり回収していく、一冊ですごく綺麗にまとまってる1巻だった。その一方で魔王の名をすげ替えてかつてのアノスの部下を意のままに操っていた「敵」の存在も示唆されて、続きへの引きもわすれない展開がすごい。次巻も楽しみです。

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EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩の惑星クラフト〈上〉

 

『境界線上のホライゾン』の川上稔が贈る待望の新シリーズが登場!
気づくと現場は1990年代。立川にある広大な学園都市の中で、僕こと住良木・出見は、ゲーム部で8bit&16bit系のゲームをしたり、巨乳の先輩がお隣に引っ越してきたりと学生生活をエンジョイしていたのだけれど……。ひょんなことから“人間代表”として、とある惑星の天地創造を任されることに!? 『境界線上のホライゾン』の作中で言及される“神代の時代”――人類が宇宙に進出し神へと至ったとされる時代に人々は何を行なっていたのか? AHEADとGENESISを繋ぐ《EDGE》シリーズ! 「カクヨム」で好評連載中の新感覚チャットノベルが書籍化!

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巨乳の先輩とイチャコラしながらゲーム感覚で惑星のテラフォーミングをしたり、神話的世界の神々と相対したりする(多分)お話。良くも悪くも「川上稔の新シリーズ第一巻(上)だー!!」という感想だったんだけど、アイコンチャット形式の文章(ページデザイン?)が思った以上に作品の持つ会話文の応酬多めのテンポにハマっていて良かった。

テラフォーミング×世界神話大戦な新シリーズ

「終わクロ」以後「境ホラ」以前の時系列、“神々”の時代。宇宙に進出した人類はそのまま居住可能な惑星をみつけることができず、各国の神話的存在の力を再現することで惑星環境を整えることになった。主人公の住良木・出見は“人類代表”として日本神話由来の“神”であるパートナー・通称「先輩」(巨乳美女)と共に1990年を模したバーチャル立川で学園生活を送りながらテラフォーミングを行うことになるのだが……。

人類が居住可能な惑星を作るためにはどのような条件が必要か、というのを探りながらそこに既存の神々が持つ由来・権能に擬えて惑星を調整していく。パートナーである先輩は未だ強い力を持つ神ではなく、テラフォーミングをするためには他の神の力を借りる必要があるが、その惑星を彼女らが望む日本神話ベースの世界とするためには他国の神の力を借りすぎないことも重要になってきて──というゲームチックなテラフォーミングのシステムが物凄く面白そう。神話になぞらえて惑星を整備していく展開とか、彼らが仮初めの生活を送る地が基本的に「1990年の立川」という原則に縛られているところなど、その後の「境界線上のホライゾン」で行われる歴史再現のプロトタイプのような要素も感じられて、他シリーズを知っているとそっちの意味でもワクワク出来ました。ただのバカと思わせておいて、要所要所で的確な理解をする主人公のキャラも良いね。

しかもそこに、現在のところ唯一人類である住良木の持つ「信仰」の力を狙う他勢力の神的存在の思惑・妨害があったりするので、一筋縄では進まない。まだまだ今回は敵の顔見せという感じだったのですが、力を持つ古い神々と後発であるが故に先鋭化した神々の戦いの中にジョーカー的な感じで独自の展開を持つ日本神話がどう絡んでいくかというのも楽しみ。

良くも悪くも1巻はキャラの掴みを見せつつ物語の持つ複雑な世界観・行動目的を説明していく、本格的に盛り上がるのは次からだよという掴みの巻。テラフォーミング要素が物凄く面白そうだったので勿体ぶらずにもっと見せてほしい!というのがかなりあったのですが「終わクロ」も「境ホラ」も1上でまとめて難しい話しておいて1下がめちゃくちゃ面白い──というパターンだったんで楽しみにしてます。

主人公と「先輩」のイチャイチャが楽しい

全世界の神的存在がしのぎを削る中で何度も死亡してしまっている脆弱な人類代表の主人公。死ぬことはないが、その日のはじまるまで状況がロールバックしてしまうし、度重なる再生によって過去の記憶は曖昧になりつつあり──それでも、何度死んでも性別が変わっても、パートナーである先輩への信頼(信仰)だけは揺らがない。ちょっと重いバックグラウンドを持ちながら、ともすれば重くなりそうな物語を持ち前の明るさと巨乳信仰で吹き飛ばしていく主人公の姿が印象的。ていうかめっちゃカジュアルに性別変わるんですけど!?

一方で物語では語られないところで何度も主人公の死に戻りを経験している先輩、自らの出自が原因で自分に自信の持てない彼女が幾度となく彼と出会い直し、その度に揺るがぬ信頼を得て……人知れずすっかり好感度上がりきっちゃってるところににまにましました。1巻から既にカンスト気味の好感度も面白かったけど、ロールバックを繰り返しているせいで段々主人公の預かり知らぬところで雑になっていく出会いシーンに笑ってしまう。

あとこれは完全に個人の感想なのですが、舞台の半分が1990年代の立川ということで、東京郊外民としてはなつかしさしかなかったです。「立川オスロー」に「八王子そごう」…まさかこんなところで君たちの名前を見ることになるとは…何もかもがなつかしい…。

「アイコントーク」新しくも懐かしい物語のかたち

さてこのシリーズはかつてのアイコンチャットよろしく、会話文の前にキャラクターのアイコンが表示される「アイコントーク」という形式(※作者さんTwitterから引用)が採用されています。正直初めに見たときは「自転車に補助輪つけるようなものでは…そんなに優しくしてくれなくても!!」とか思っていたんですけどこれが思った以上にすごく良い…。

名前が大きな意味を持ち、対話相手や状況に応じて多彩に変化していく川上作品世界に於いて「アイコン」という文字情報に頼らない普遍的な情報が付与されるの、凄く合ってると思うんですよね。「名前」という情報に縛られず、この作品が本来持っているキャラクターたちの軽妙な掛け合いをストレスなしに楽しめるの良かった。そのぶん、地文での言及は最低限に絞られている印象で、公式でも「新感覚チャットノベル」と評されているけど個人的には「紙で読むノベルゲーム」に近い感覚でした。立ち絵があるやつ。

ところで電子書籍だとアイコンがカラーで表示されるのとアイコンが挿絵扱いで挟まれるせいで会話と会話の間がしっかり開いて凄く読みやすいので今後も電子書籍で買おうとおもいました。膨大なキャラクター人数と歴史再現やらなんやらで人物を示す情報が大量にありすぎる「境界線上のホライゾン」のアイコントーク版も欲しい。検討してほしい……(ネクストボックスは購入済みなので近いうちに読みます)

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悪役令嬢の怠惰な溜め息

 

私、婚約破棄します! 暴走悪役令嬢の勘違い王子粉砕ラブ(?)コメディ!
プレイ中だった乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。だけどこの世界はすっごく暇だった! 「娯楽がなければ作ればいいのよ!」 前世の知識を活かして玩具や恋愛小説を生み出し、退屈な世界をバラ色にしてみせる! 王妃様お気に入りの実業家になり、これでシナリオを外れて素敵な未来が……と思いきや書いた小説のせいで破滅フラグがやってきた――!?

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乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公が、退屈な世界を紛らわせるため前世の知識を駆使して新たな娯楽を生み出そうとしたり、ゲームのフラグ回避に奔走したりするお話。前世知識の曖昧・未熟な部分を周囲の力で埋めていく序盤の「娯楽作り」展開はめちゃくちゃおもしろかったんだけど、後半の内政干渉、無能王子をざまあする展開はちょっと合わなかったなあ。

転生令嬢、娯楽を所望する

乙女ゲームの悪役令嬢エセリアに転生してしまった元OLの主人公。娯楽のない新世界、退屈な毎日を打破するため、前世の知識を使って新しい「娯楽」を提案していく。シンプルでわかりやすい玩具に刺激的な小説、そして生活用品──彼女の生み出した物は徐々に評判となっていって…。

知識というか「アイデア」チートな展開が凄く面白かった!このお話、彼女が提案する“突拍子もない”アイデアを紆余曲折ありながらも最終的には彼女の考えた通りの形にしてくれて商流にまで乗せてくれるワーレス商会の存在がなければ成立してないんですよね。特に爪切り、あくまで一般人としての知識しかないエセリアの要領を得ない説明を聞いて皆が首をかしげているところに、意図を理解したクオールが職人としての立場からダメ出しをしてくれて、長い年月をかけて実用化してくれるという流れが好き。

新商品のプレゼンで苦戦すれば姉や他の人が効果的な売出し文句を考えてくれたり、口コミで広げてくれたり〜と、あくまで平凡な一般人でしかなかったエセリアが、周囲の力を借りることでチートをなし得ていく展開がすごく良かった。BL小説がめちゃくちゃな勢いで拡散されていくの笑ってしまう。

名声を落とそうとする目論見が全部裏目に出ていく展開が面白い

様々な商品開発に携わり、知る人ぞ知る存在となったエセリア。破滅回避のためにゲームとは違う行動を取っていたはずが、その名声が逆効果になってゲーム通り王子の婚約者にされてしまう。ゲームとは違い、横柄で傲慢な態度のグラディクトに違和感を覚えるが…。

王子の婚約者になってからはいっそ適度に変な事して評判を落として婚約破棄してもらおう!と思っていたのになぜかむしろ株が上がってしまう…みたいな展開に人知れず舌打ちしてる姿にニヤニヤしました。いや割と他の事は全体的にソツなくやっていくし彼女が上手くやれてない部分は周囲が上手いことカバーしてしまうのに、ゲームのフラグ回避活動に関してはポンコツというか、「なんでそれで回避出来ると思った!?」みたいなのが多すぎて落差で笑ってしまう。

ただ、元々エセリアのやり口・アイデアには割と抜けが多くて周囲に補ってもらうことでチートが成立している感があるので、エセリアひとりでやろうとしてるのに無理があるんでしょうね。王妃になったらこれまでの友人たちとおなじように過ごすことはできなくなることを見落としていたのはいかにも現代人の感覚だよな、と思うんですけど。

後半の展開はちょっと合わなかった…

乙女ゲームの舞台となる学園に入学したエセリア。同学年で入学したグラディクトとの溝は埋めようのないものになり、いよいよ彼女は周囲を巻き込み婚約破棄を画策し始める。

婚約相手である王子がわかりやすい差別主義者かつ絵に書いたような駄目王子なので、破滅したくないし結婚もしたくないからこっちから婚約破棄させてついでにこっちのやってることに口出されると嫌だから廃太子にしよ、って流れはまあわかるんですけど、割と学校に入学してから無能王子ざまあ的な展開が多くなってそこはちょっと苦手だった。ざまあ展開別に嫌いじゃないけど、これはなんかスカっとしない。あと内政に口出しするあたり、「それ、普通のOLがぱっと思いつく?」って展開が多かったように感じてそこも残念。物作りの展開が凄く絶妙に主人公の身の丈の知識で出来るよう違和感なく配慮されていたので余計に気になってしまったのは多分ある。

王子への攻撃が容赦なさすぎて、必死になってプレイしてたような描写が冒頭であるのにキャラへの思い入れとか全然なかったのかなって気持ちもある。キャラの性格変わってたせいもあるかもしれないけど、もうちょっとプレイした時の印象とか好きだとか嫌いだとかゲーム面白かったとかつまんなかったとか主観的な描写あっていい気がするのに不思議……。

1巻の時点で全く誰とも恋愛フラグ立ってないのは良い意味で男子向レーベルの強みだな〜!!とは思ったのですが、オタクとしてキャラの作り込みが甘い気がするんですよねこの主人公…コンテンツへの執着が感じられないっていうか。

うーん、前半の娯楽作ってるあたりは好きなんだけど後半の展開はちょっと合いませんでした。

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禁断師弟でブレイクスルー 〜勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い〜1

 
竜徹

勇者の息子と魔王の幽霊が師弟に!? 異色の異世界バディノベル登場!!
こいつと出会ってから……俺は―― 魔王を倒した勇者の息子であるアースは腐っていた。 結果を出そうが出すまいが、周囲から聞こえる声はいつも同じ。 「父親に比べれば物足りないな」もしくは「さすが、勇者の息子!!!」 色眼鏡で見られる日々に苛立つアースは、勇者の剣が収められた小部屋で運命の出会いを果たす。 『面白い。余が貴様を指導してやろう。暇だけはあるからな』 ひょんなことから出会った勇者の息子と大魔王の幽霊。 二人の出会いが、この国の、この世界の、この星の常識を覆していく……。

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「好きラノ」で見かけて気になった本その2。王道スポ魂のような修行描写、腐りかけていた主人公のコンプレックスの克服と成長がめちゃくちゃ熱い。彼の抱える葛藤を理解できない周囲とのすれ違いがどこまでももどかしいんだけど、「勇者の息子ではない自分」になるため、両親の最大のライバルである魔王とともに遥かな高みへ第一歩を踏み出そうとするラストがとてもよかった。面白かった!

魔王×勇者の息子の「最強バディ」が遥かな高みを目指す

魔王を倒した勇者二人の息子として、常に周囲からの強すぎる期待とプレッシャー中で生きてきた主人公・アース。どんなに努力しても評価されず、他の勇者の子供たちとの実力差を見せつけられる日々は着実に彼の心を腐らせていった。そんなある日、倉庫で眠っていた勇者の剣に宿る魔王の幽霊と偶然の邂逅を果たしたアースは、なぜか魔王から力の使い方を教えてもらうことに──!?

最初は片想い(?)しているメイドのサディスへの主にヨコシマな目的とかで上手いことモチベを上げられていって、そこから少しずつ、気が付けば自らのコンプレックスに真摯に向き合って行くアースの姿が印象的でした。全体の半分くらい修行の話してるんですけど、子供の遊びのような所から実践的な戦術に結びついていくトレイナの教え方がまた面白い。修行を通してこれまで流されるように父の跡を継ぐ道を選ぼうとしていたアースが自分は本当は何をしたいのかを見出し、その上でかつて強くなりたかった理由をも思い出して原点に立ち返って成長していく、ド王道な成長展開が楽しかった。

そこかしこで描かれる、周囲とのすれ違いが哀しい

「優秀すぎる親を持ち同じ道を歩まんとする子の苦悩」というのはわりと親子関係を描くお話では定番の題材だと思うんですけど、その葛藤を周囲の誰にも理解されず、それ故に少しずつ周囲からの純粋な好意をも信じられなくなっていったアースの苦悩がしんどい。トレイナとの修行は本当に楽しいのですが、その合間にもそこかしこで周囲とのすれ違いやコンプレックスを刺激させるようなエピソードが挟み込まれるのでますますもどかしい気持ちになる。そんな中でトレイナだけが自分を理解してくれて…となるので、ますます彼らとの心の距離が離れていく。

そんな周囲との軋みが表面化してしまうのが、手近な目標として二人が努力を重ねてきた御前試合。アースの成長と活躍が気持ち良い一方で、「勇者の息子ではない、俺自身を見てくれ」と必死に叫ぶ姿に胸が痛くなってしまう。しかもその叫びが、一番認めてほしかった大切な人々に、最悪のタイミングで拒絶されてしまうのだからもう。

特にサディスに関してはトレイナに弟子入りした時点でこの展開は避けられなかったのだろうなあと感じるのですが、フィアンセイなんかはちゃんと話をすればある程度は理解者になってくれたのでは…と思うのでそこが改めてもどかしい。アースの発言をいちいち勘違いして空回る恋する乙女ぶりは可愛くもあるのですが、それが全くの勘違いなので素直に喜べないこともあり。そして両親は本当にどうしてもう少し息子のことを理解してあげられなかったのか。

最悪の形で幼馴染達と、家族と離れることになったアース。それでもなお、自分を「勇者の息子」ではなく「アース自身」として世界中に認めさせるため、トレイナと共に遥かな高みを目指す──というラスト(と書いて「はじまり」とよむ)がとても良かったです。Web小説原作物は割と1巻の時点でオチてないものが多い印象なんだけど、本当に綺麗にお話をまとめつつ「長い物語のはじまり」として描かれているのがすごく良かった。

書き下ろしがめっちゃいい

書籍版描き下ろしが今回のお話をトレイナの視点から描く短編なんですけど、これが本当に良かった。アースと周囲の人達のやり取りに対して感じていたモヤモヤ感が見事に魔王の視点から解説されていて、改めてアースの境遇に胸が痛くなってしまう。特にアースの両親、愛情が無いわけではないけど親としてどこまでも未熟なんだよな…というかもういっそ愛情無かったほうがアースとしては割り切れたんじゃないかなこれ…。親子団欒の最中にアースが彼らの心からの言葉を信じられずに曲解してしまうシーン、魔王視点で描かれると改めて冷水を浴びせかけられるような衝撃が。

自分を倒した勇者の息子の境遇に共感し、敵であるはずの人間達の生み出した物語に熱中するその姿が人間味溢れすぎていて、いろいろな意味でサディスの回想の中に登場する非道な魔王の所業と重ならない。このへんも色々と裏があるんだろうか……続きが気になる。

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